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2022年10月定期公演プログラムについて
公演情報2022年10月 6日
御年95歳。桂冠名誉指揮者ヘルベルト・ブロムシュテットを語るとき、つい年齢のことから始めてしまうが、何だかそれはとても的外れな感じもする。清々しい香気に満ちた音楽は、円熟や老成といった形容からも遠く、まるで永遠の生命を得つつあるかのようだ。今年もN響に“ブロムシュテットの秋”がやってくる。
マーラー《第9番》で生きる喜びを晴れやかに歌い上げる
[Aプログラム]はマーラーが完成させた最後の交響曲である《第9番》。今までこの曲は、健康への不安を抱えた作曲家が、死の予感に怯えながら書いた“現世への告別の辞”と言われてきた。しかし最近、こうした見方には疑問が呈されている。脂の乗り切ったマーラーによる、充実した日々の所産だというのである。それを裏付けるようにブロムシュテットも「生きる喜びを歌い上げた、晴れやかな音楽」と語っている。この大作はむしろ、生死や美醜などあらゆる対立概念を包み込んだ、マーラーの世界観の集大成と捉えるべきだろう。
マエストロと演奏する第9番は12年ぶりだが、曲のイメージから連想される「最後の機会かも知れない」といった特別な思いは、私たちに露ほどもない。おそらく作曲当時のマーラーがそうであったように。選曲も演奏も、マエストロにとってはあくまで音楽家としての日常の一部なのだ。だが同時にそれは生きることそのもの、神から与えられた使命でもある。
2022年10月15日(土)6:00pm
2022年10月16日(日)2:00pm
NHKホール

純粋なアマチュア精神が宿るシューベルト初期の交響曲
シューベルトの交響曲は、《未完成》と《グレート》を除く6曲が、初期の完成作とみなされる。[Cプログラム]では、その最初と最後の作品を聴く。
ウィーンの神学校に通っていたシューベルトは16歳で《交響曲第1番》を書いた。この頃、彼は友人たちと日夜アンサンブルを楽しみ、作曲に励んだというが、10代のブロムシュテットも兄を含む仲間とカルテットを結成し、活動に熱中した。純粋なアマチュア精神は二人に共通するキャリアの原点であり、マエストロが一貫してシューベルトに愛情を注ぐ理由の一つかも知れない。
第1番の4年後、自ら“大交響曲”と銘打った《交響曲第6番》には、青年作曲家の自負がみなぎる。ハイドンやベートーヴェンの影響を受けながら、リートやオペラを思わせる豊かな歌謡性はまさにシューベルトの世界。
ブロムシュテットは40年以上前にドレスデン・シュターツカペレとシューベルトの交響曲全集を録音しているが、その後の研究により、当時とは全く違う作品像が提示されるはずだ。
2022年10月21日(金)7:30pm
2022年10月22日(土)2:00pm
NHKホール
ドイツ音楽を独自のものに昇華させた北欧の作曲家たち

[Bプログラム]はグリーグとニルセン。北欧の作曲家たちはドイツ音楽から多くを学んでいる。若き日のグリーグが留学したのは、ブロムシュテットゆかりのライプツィヒだった。グリーグは優れたピアニストでもあったが、《ピアノ協奏曲》を弾くオリ・ムストネンも、指揮や作曲で多才ぶりを発揮している。型通りではない演奏スタイルはそのためか。北欧出身同士、気心の知れたマエストロとの丁々発止が楽しみだ。
ニルセンはブラームスの影響を受けながら、ユニークな和声やリズム、形式を追求し、デンマークを代表する交響曲作家となった。《交響曲第3番》も、ヴォカリーズを加えるなど、意外な仕掛けに富んだ1曲。昨年の《第5番》に続き、ニルセンの伝道師ブロムシュテットによる名演が期待できよう。
2022年10月26日(水)7:00pm
2022年10月27日(木)7:00pm
サントリーホール
[西川彰一/NHK交響楽団 芸術主幹]