※約2時間の公演となります(休憩20分あり)。
※やむを得ない理由で出演者や曲目等が変更となる場合や、公演が中止となる場合がございます。公演中止の場合をのぞき、チケット代金の払い戻しはいたしません。
ABOUT THIS CONCERT特徴
2025年12月Bプログラム 聴きどころ
母国イタリアの作曲家を中心に現代音楽の初演も積極的に手がけるファビオ・ルイージが、NHK交響楽団の委嘱作品である藤倉大の新作を初演する。ロンドンを拠点に国際的に活躍する藤倉の作品と、オルガニストでもあるフランス語圏の作曲家、フランクとサン・サーンスの1880年代の名曲を組み合わせるプログラミングの巧みさに、どのような化学反応が起きるのか、期待が高まる。その共通点をあえて言葉で表すなら、「混ざり合う領域」となるだろうか。
(安川智子)
PROGRAM曲目
藤倉 大/管弦楽のためのオーシャン・ブレイカー~ピエール・ブーレーズの思い出に~(2025)[NHK交響楽団委嘱作品/世界初演]
雲を見て海を思う。藤倉大(1977〜)自身のエッセイによると、《オーシャン・ブレイカー》は、彼がロンドンのギフトショップで見つけた雲の本にインスピレーションを受けて書かれた。雲海という言葉があるように、雲と海はたしかにとても近い。ただ藤倉の音楽作品には、拡大レンズで粒子の動きにまで迫るような物理学的魅力がある。
藤倉の作品は、これまでに尾高賞を4度受賞し、NHK交響楽団によって特別公演Music Tomorrowの枠内でいずれも演奏されている。NHK交響楽団からの委嘱作品としては2作目(1作目は共同委嘱の《インフィニット・ストリング》)となる本作は、藤倉が敬愛するピエール・ブーレーズの思い出に捧(ささ)げられている。作曲家自身が「オーケストラのための協奏曲」と性格づけているように、すべての楽器が主役となり、引き立て役となりうる。各音は予想外の動きをするかもしれないし、音の重なり合いから思わぬ光が差し込むかもしれない。音による波動にいかなる美を見出すかは、聴き手自身に委ねられている。
(安川智子)
演奏時間:約16分
作曲年代:2024~2025年
初演:2025年12月4・5日、東京、サントリーホールにて、指揮ファビオ・ルイージ、NHK交響楽団
フランク/交響的変奏曲*
セザール・フランク(1822〜1890)は現ベルギーのリエージュに生まれた。パリの教会でオルガニストを務めていたフランクの作曲活動が日の目を見るのは、普仏戦争でフランスが敗北した後、1871年に国民音楽協会が設立されて以降のことである。作曲家・鍵盤楽器奏者のカミーユ・サン・サーンスと、声楽家のロマン・ビュシーヌが中心となって設立したこの音楽協会は、フランクを含めてフランスの作曲家の名作を数多く世に送り出したが、その運営はパリのサロン文化やパトロンに支えられていた。なかでも、もっとも重要なパトロンのひとつが、ピアノ会社のプレイエルだった。
プレイエル社のサロンは国民音楽協会創立時から、演奏会場として利用されていた。1873年から、協会はオーケストラを伴う演奏会を開始したため、プレイエルも1874年から、より広いコンサート・ホール(プレイエル)を提供し、主要な会場となった。1886年にフランクの《交響的変奏曲》が初演されたのも、このプレイエル・ホールである。ピアノ独奏は、当時ピアニストとして活躍していたルイ・ディエメール(1843〜1919)が務めた。
ピアノ協奏曲ではなく、ピアノ独奏を含む交響的変奏曲という独特の編成には、プレイエルのサロン的性格も影響を与えているのかもしれない。また変奏曲とはいえ、はっきりと主題と変奏に分かれているわけではない。ピアノが最初に奏でる、濃い翳(かげ)りをもつ4小節の楽想が、全体に通底する主要主題(テーマ)である。曲を開始するオーケストラの付点リズムも特徴的だが、実質は同じ要素(半音+増2度)を用いた同族の主題である。ピアノ独奏はたっぷりと主要主題を聴かせたのち、親しみやすい旋律を和声化した第2の主題を奏で始める。これも事前にオーケストラが予告していた楽想である。これら2つの主題はその後チェロに引き継がれ、幻想的な聴かせどころとなる。ピアノの長いトリルから始まる快活なフィナーレでは、主要主題が長調化してスタッカートに彩られ、別の楽章が始まったかのようだ。オルガニストらしい、即興的な展開が魅力の作品である。
(安川智子)
演奏時間:約15分
作曲年代:1885年
初演:1886年5月1日、パリ、国民音楽協会(プレイエル・ホール)にて、作曲家自身の指揮、ピアノ独奏ルイ・ディエメール
サン・サーンス/交響曲 第3番 ハ短調 作品78 「オルガンつき」
国民音楽協会の創立にかかわったカミーユ・サン・サーンス(1835〜1921)は、1886年に、共同創立者ビュシーヌと共に同協会を脱退する。この年にロンドンで初演されたのが、大オルガンとオーケストラが共演する、異例の《交響曲第3番「オルガンつき」》である。フランクが《交響的変奏曲》を国民音楽協会で初演した18日後のことだった。
サン・サーンスはパリの権威あるマドレーヌ教会で、1877年まで20年間にわたりオルガニストを務めた。そこには、19世紀フランスのオルガン建造家カヴァイエ・コルが製作した交響的なオルガンが備えられており、このオルガンは、さまざまなストップの種類によって、1台で交響曲のような演奏を可能とするものだった。サン・サーンスは1878年のパリ万国博覧会で、トロカデロ宮へのカヴァイエ・コルのオルガン設置と、オルガン・コンサートの実現に尽力した。
世俗ホールにおける大オルガンの設置は、パリよりもロンドンが先駆けである。サン・サーンスは、1871年に設置されたロンドンのアルバート・ホールにおけるオルガンについても詳報し、さらに1879年には、ロンドンのセント・ジェームズ・ホールのオルガンを、フィルハーモニー協会管弦楽団の演奏会で演奏している。この時は、自作の《ピアノ協奏曲第2番》と、バッハのオルガン曲《前奏曲とフーガ イ短調》を演奏したという記録が残っている。1885年にこのフィルハーモニー協会から新たな管弦楽曲の作曲依頼を受けたサン・サーンスが、オルガンとオーケストラが一体となった交響曲という斬新な着想を得たのは、こうした流れがあってのことだった。
フランスの教会における神秘的なオルガンの効果と、世俗ホールにおける祝祭的なオルガンの効果を熟知していたサン・サーンスは、2楽章形式の交響曲としながらも、各楽章を2部分に分け、その後半部分でオルガンが加わるという、変則的な4楽章構成を採用し、オルガンの2つの効果を対比させた。オルガンは独奏者ではなく、オーケストラの一員である。第1楽章の第2部の始まりは、弱音のオルガンの響き(A♭音)であり、続いてオルガンの和声の上で、弦楽による慈愛に満ちた祈りのような主題が静かに奏でられる。そこに管楽器が加わったときの主題の美しさは格別だ。一方で第2楽章の第2部の始まりは、フェルマータつきの長い休符ののち、堂々たるハ長調の主和音がオルガンの強音で鳴らされる。オーケストラも、シンバルやピアノ連弾が加わるなど、華やかな色彩となるが、そこに参加するオルガンもまた、世俗ホールならではの威厳に満ちたもので、第1楽章との対比が構想の基盤となっている。サン・サーンスのオルガンに対する深い知識と愛が、この傑作交響曲を存在せしめたと言っても過言ではない。
(安川智子)
演奏時間:約35分
作曲年代:1886年
初演:1886年5月19日、ロンドン、ロイヤル・フィルハーモニー協会(セント・ジェイムズ・ホール)にて、作曲家自身による指揮、ロンドン・フィルハーモニー協会管弦楽団
ARTISTS出演者
指揮ファビオ・ルイージ
イタリア・ジェノヴァ出身。2001年にN響と初めて共演し、2022年9月首席指揮者に就任。就任記念公演でヴェルディ《レクイエム》を、2023年12月のN響第2000回定期公演でマーラー《一千人の交響曲》を指揮した。2024年には台湾公演を率い、翌2025年5月にはアムステルダム・コンセルトヘボウでの「マーラー・フェスティバル」、「プラハの春音楽祭」、「ドレスデン音楽祭」への参加を含むヨーロッパ公演を成功に導いた。なおN響は「マーラー・フェスティバル」に参加したアジア最初のオーケストラとなり、《交響曲第3番》《同第4番》の演奏は評論家から称賛を集めた。
現在、デンマーク国立交響楽団首席指揮者およびダラス交響楽団音楽監督。またチューリヒ歌劇場音楽総監督、メトロポリタン歌劇場首席指揮者、ウィーン交響楽団首席指揮者、ドレスデン国立歌劇場管弦楽団および同歌劇場音楽総監督、MDR(中部ドイツ放送)交響楽団プリンシパル・コンダクターおよびチーフ・コンダクター、スイス・ロマンド管弦楽団芸術監督、ウィーン・トーンキュンストラー管弦楽団首席指揮者、グラーツ交響楽団首席指揮者などを歴任。このほか、イタリアのプーリア州マルティナ・フランカで行われるヴァッレ・ディートリア音楽祭音楽監督、トリノを本拠とするRAI国立交響楽団の名誉指揮者も務めている。また、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団、サイトウ・キネン・オーケストラなど最高峰のオーケストラ、歌劇場、音楽祭に定期的に客演している。
録音ではデンマーク国立交響楽団との『ニルセン交響曲全集』が2023年にオーストラリアのライムライト賞とイタリアのアッビアーティ賞を受賞し、その第1集は『グラモフォン』誌の年間最優秀録音賞に選ばれた。またメトロポリタン歌劇場とのワーグナー《ジークフリート》《神々のたそがれ》のDVDはグラミー賞を受賞した。NHK交響楽団との初CD『ブルックナー/交響曲第8番(初稿)』は、2025年5月にリリースされた。
彼は優れた作曲家、調香師でもある。
ピアノトム・ボロー*
25歳の新鋭トム・ボローが、颯爽(さっそう)とN響に登場。ファビオ・ルイージとは2024年、デンマーク国立交響楽団とベートーヴェンでの共演もあり、このたびフランク晩年の《交響的変奏曲》での再会に期待が高まる。今年9月、広上淳一指揮オーケストラ・アンサンブル金沢との日本デビューに続く再来日となる。
2000年、テルアビブに生まれ、5歳からピアノをはじめる。テルアビブ大学ブッフマン・メータ音楽校でトーマー・レフに師事、マレー・ペライアからも定期的に教えを受けている。アンドラーシュ・シフ、クリストフ・エッシェンバッハ、リチャード・グード、メナヘム・プレスラーのマスタークラスも受講している。
イスラエル国内のコンクールで次々と優勝。2019年に急遽(きゅうきょ)代役を務めたイスラエル・フィルハーモニー管弦楽団との共演の成功をきっかけに、欧米の名だたるオーケストラや音楽祭に招かれようになる。BBCニュー・ジェネレーション・アーティストにも選ばれ、2022年にBBCプロムスにも出演。2024年から2026年にかけてサンパウロ交響楽団のアーティスト・イン・レジデンスも務めている。
[青澤隆明/音楽評論家]
オルガン近藤 岳
オルガニスト、作編曲家として幅広く活躍する近藤岳が、ソリストとしてN響とサン・サーンスの堂々たる大曲《交響曲第3番》に臨む。
東京藝術大学で作曲とオルガンを学んだ後、同大学大学院修士課程音楽研究科(オルガン)を修了。これまでに作曲を野田暉行、川井学、永冨正之、尾高惇忠、オルガンを今井奈緒子、廣野嗣雄に師事。2006年文化庁新進芸術家海外研修員としてフランスに留学し、当時パリ・ノートルダム寺院の正オルガニストを務めていたフィリップ・ルフェーブルにオルガンと即興演奏を師事した。
ミューザ川崎シンフォニーホールのホールオルガニストを2004年の開館当初からフランス留学をはさんで2018年春まで務めた。2022年には横浜みなとみらいホールの2代目ホールオルガニストに就任。自作自演や作品初演でも活躍する。NHK-BSやFMをはじめとする放送番組や、レクチャー・コンサートへの出演も多く、やわらかな語り口とパーソナリティーで愛されている。編著書に『オルガン奏法──パイプでしゃべろう! パイプで歌おう!』。東京藝術大学でオルガン、国立音楽大学で作曲理論の教鞭も執っている。日本オルガニスト協会会員。
[青澤隆明/音楽評論家]
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料金
| S席 | A席 | B席 | C席 | D席 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 一般 | 12,000円 | 10,000円 | 8,000円 | 6,500円 | 5,500円 |
| ユースチケット | 6,000円 | 5,000円 | 4,000円 | 3,250円 | 2,750円 |
※価格は税込です。
※定期会員の方は一般料金の10%割引となります。また、先行発売をご利用いただけます(取り扱いはWEBチケットN響・N響ガイドのみ)。
※この公演のお取り扱いは、WEBチケットN響およびN響ガイドのみです。
※車いす席についてはN響ガイドへお問い合わせください。
※券種により1回券のご用意ができない場合があります。
※当日券販売についてはこちらをご覧ください。
※未就学児のご入場はお断りしています。
ユースチケット
29歳以下の方へのお得なチケットです。
(要登録)
定期会員券
発売開始日
年間会員券
2025年7月13日(日)10:00am
[定期会員先行発売日: 2025年7月6日(日)10:00am]





