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[Special Essay] 藤倉大|《オーシャン・ブレイカー》の創作スケッチ―新作の世界初演によせて
公演情報2025年12月 1日
2025年12月定期公演Bプログラム(12/4[木]、5[金])で、NHK 交響楽団委嘱による藤倉大の新作《管弦楽のためのオーシャン・ブレイカー~ピエール・ブーレーズの思い出に~》(2025)が世界初演されます。藤倉大氏による本作品の「創作スケッチ」をご紹介します。
作曲家・藤倉大
《オーシャン・ブレイカー》の創作スケッチ─新作の世界初演によせて
僕はかなり変わった作曲家なのでしょう。管弦楽作品《Glorious Clouds》はバクテリアについてですが、今度の《オーシャン・ブレイカー》は、タイトルとは裏腹に、実は雲についてなのです。この作品のインスピレーションは、ロンドンのギフトショップで見つけた雲に関する本から得ました。その本はおそらく子ども向けのもので、さまざまな雲の形の美しいイラストが満載でした。しかし、僕が最も魅了されたのは、Fluctusと呼ばれる雲の種類でした。この雲は、上部の風が下部の風よりも大幅に速い場合に波状にうねる、海の波に似た雲です。珍しい現象のようです。
僕はこのイメージに強く惹(ひ)きつけられました。特に、このオーケストラ作品にはすでに無重力感と流動的な動きが感じられていたからです。同時に、この作品には「オーケストラのための協奏曲」の精神が息づいています。すべての楽器、テューバでさえもがスポットライトを浴びる瞬間があるのです。この音楽は絶えず焦点を移しながら、エネルギーをセクションからセクションへと伝えていきます。旋律やフレーズは異なる速度で動き、Fluctusの雲が対照的な気流によって形作られる様子を反映しています。
僕はこれまで、多くの楽器(中には珍しい楽器も)のための協奏曲を作曲してきましたが、今こそオーケストラ全体を称える作品を作る時だと感じました。《オーシャン・ブレイカー》はまさにその作品です。音の波が押し寄せ、ぶつかり合い、変化していくオーケストラ協奏曲で、刻々と変化する空のようです。
公演詳細
NHK交響楽団 12月定期公演 Bプログラム2025年12月4日(木) 7:00pm、5日(金) 7:00pm
サントリーホール
藤倉 大/管弦楽のためのオーシャン・ブレイカー~ピエール・ブーレーズの思い出に~(2025)[NHK交響楽団委嘱作品/世界初演]
フランク/交響的変奏曲*
サン・サーンス/交響曲 第3番 ハ短調 作品78 「オルガンつき」
指揮:ファビオ・ルイージ
ピアノ:トム・ボロー*
オルガン:近藤 岳








