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定期公演 2024-2025シーズンAプログラム
第2039回 定期公演 Aプログラム

NHKホール
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※約2時間の公演となります(休憩20分あり)。
※やむを得ない理由で出演者や曲目等が変更となる場合や、公演が中止となる場合がございます。公演中止の場合をのぞき、チケット代金の払い戻しはいたしません。

ABOUT THIS CONCERT特徴

2025年6月Aプログラム 聴きどころ

日本から一番ちかい外国がどこかご存じだろうか。韓国、と答える人が多いような気がするのだが、答えはロシアである。稚内(わっかない)とサハリンの間はわずか43キロしか離れていない。それなのに、この国のなんと「遠い」ことだろう。われわれはいまだに、ロシアについて驚くほど何も知らない。まずはチャイコフスキー、ラフマニノフ、リムスキー・コルサコフの音楽を聴くことから始めようではないか。これらはまぎれもなく、隣人の音楽なのだから。

(沼野雄司)

PROGRAM曲目

リムスキー・コルサコフ/歌劇「5月の夜」序曲

19世紀のロシア人作曲家たちが一様に目指したのは、なによりもロシア語によるグランド・オペラの確立だった。もちろん室内楽も、管弦楽曲も、バレエ曲も大事だが、クラシック音楽の後進国ロシアがヨーロッパと肩を並べるためには、オペラという高い壁をどうしても乗り越える必要があったのである。
いわゆる「ロシア五人組」の中で、もっとも年少にあたるニコライ・リムスキー・コルサコフ(1844〜1908)の場合も例外ではない。彼は15作におよぶオペラを書くと同時に、ムソルグスキーの《ボリス・ゴドノフ》や《ホヴァンシチナ》、さらにはボロディンの《イーゴリ公》を補筆するなど、ロシア・オペラ確立のために生涯をささげた。
《5月の夜》は1879年に作曲され、翌年に初演された彼の2つ目のオペラ。ゴーゴリ原作による物語は、ロシアの寒村における恋愛模様を水の精ルサルカの活躍を交えながら綴ったもので、最後はハッピーエンドに終わる。ぞっとするほどの残酷さと、その対極ともいえる笑いが平然と並べられているあたりに、この国ならではの持ち味があろう。
〈序曲〉は演奏時間にして8分ほど。3番ホルンで始まる序奏は、すぐにさまざまな下方変位音を含んだ魅力的な和声を披露して、おとぎ話の世界へと聴き手を引きずり込む。この部分だけで、作曲者がドイツ・ロマン派の語法を掌中に収めていることがよくわかろう。その後もホルンが先導するなか、クレッシェンドと共にアレグロの主部へ。16分音符のパッセージが細かい泡のようにぷくぷくと増殖し、バレエ音楽のような華やかさを湛(たた)えるあたりは見事な手腕だ。中間部でロシア風のたっぷりとした旋律が何度も繰り返された後、終盤ではダメ押しのようにホルンのアンサンブルが見せ場を作る。

(沼野雄司)

演奏時間:約8分
作曲年代:1879年
初演:1880年1月9日、サンクトペテルブルクのマリインスキー劇場にて、エドゥアルド・ナープラヴニーク指揮による

ラフマニノフ/パガニーニの主題による狂詩曲 作品43*

曲の良し悪しをはかるのは難しい。現代の作曲コンクールにおいて、審査員Aは満点、Bは零点、みたいな事態が平気で起こるのはご存じのとおり。もっとも、同じ旋律をいかに巧みに処理するか、という勝負であれば少しは比較も可能だろう。パガニーニ《24の奇想曲》の終曲は、その格好の「腕くらべ」の場になってきた。ブラームス、リスト、ブラッハー、ルトスワフスキ、一柳慧(いちやなぎとし)、リシャール・アムラン、ファジル・サイetc...。
なかでももっとも高い人気を誇るのが、セルゲイ・ラフマニノフ(1873〜1943)の《パガニーニの主題による狂詩曲》である。彼は持ち前の技巧で主題をダイナミックに変奏するだけではなく、第18変奏では主題の音程を反行させて、原旋律とはまったく異なる、しかしとろけるように美しい旋律を作りだしてみせた。楽曲の後半で満を持してあらわれるこの変奏こそが、彼の「勝因」ということになろう。
作曲は1934年。ラフマニノフがロシア革命の直後に故郷を離れてから、すでに16年が経過している。
序奏と24の変奏からなる全体には、いくつかの特徴がある。まずはラフマニノフのピアニズムのあらゆる技術が網羅的に示されていること。基本的には後半に進むにつれて技巧も派手なものになっていくが、むしろオーケストラがおとなしい前半の諸変奏にこそ、彼ならではの機知と技術が織り込まれているようにも思う。
そして、ラフマニノフのオーケストレーションの特質が端的に示されていること。ファゴットをはじめとする木管楽器への偏愛、そしてそれらを軸にして全楽器がうねる様子は他の作曲家とはかなり異なった味わいがある。
途中(第7変奏)から、〈怒りの日(ディエス・イレ)〉の旋律が重ねられることも重要だ。この旋律はパガニーニの主題と似た音程関係を持っているが、曲の最後に至るまで何度もあらわれて豊かな色彩感を音楽に与える。
最後に、先にも触れた第18変奏の鮮やかさ。楽曲全体の後半にあらわれるこの旋律によって、われわれは深々と呼吸しながら、作曲者と共に遠いロシアを思うのである。

(沼野雄司)

演奏時間:約24分
作曲年代:1934年
初演:1934年11月7日、ボルティモアにてラフマニノフ自身の独奏、レオポルド・ストコフスキー指揮、フィラデルフィア管弦楽団による

チャイコフスキー/交響曲 第6番 ロ短調 作品74「悲愴」

作曲家の最晩年の作品は「死の予感」といった言葉とともに説明されたりする。しかし多くの場合、死は唐突な結果であり、ご本人自身は、まさか自分がもうすぐこの世を去るとは思っていなかったケースがほとんどだろう。
ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840〜1893)の《交響曲第6番》も、そのひとつと思われる。スケッチは1893年2月に開始され、3月末には全曲が完成、その後のオーケストレーションも順調に推移している。初演は10月16日、作曲者自身の指揮で行われた(同時に《ピアノ協奏曲第1番》、そしてモーツァルト、リスト作品が取りあげられた)。3日後の19日、彼はのんびりとオペラに出かけ、20日には演劇を鑑賞している。しかし翌21日、突如として不調をきたし、25日にこの世を去ってしまった。
初演直後の急死であることは事実だが、《悲愴》というタイトルが初演のはるか前に付されていること、「悲愴」と訳されるロシア語の本来の語意は、むしろ「情熱的」といったほどの意を持つことなどは、もはや一般にもよく知られている。とすれば──終楽章の中盤を過ぎて鳴らされる銅鑼(どら)の一撃が実に意味ありげであることは確かながらも──もはや作品を「神話」から解放すべき時期に来ているだろう。
第1楽章(アダージョ─アレグロ・ノン・トロッポ)は、コントラバスとファゴットの低音で幕を開ける(この音型がベートーヴェンの《ピアノ・ソナタ「悲愴」》と似ているのは興味深い)。弦楽器で提示される第1主題と、このうえなく甘美な第2主題は極端な対照を成しているが、後者を思いきって独立させているためにさして違和感はない。第2楽章(アレグロ・コン・グラーチア)は、音楽史上もっとも有名な5拍子の楽曲。とはいえ、変拍子的なギクシャク感は皆無だから、5拍子であることに気づかない聴き手もいるはず。第3楽章(アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ)は、バレエ音楽の響きが感じられる、スケルツォ的な行進曲。豪快な曲想だが、構成は緻密きわまりない。また、シンバル一閃(いっせん)、とはまさにこういうことをいうのだろう。第4楽章(終曲:アダージョ・ラメントーソ)は弦楽器のあえぐような旋律ではじまるが、おもしろいのはこの1本の旋律が第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリンで交互に担われること。珍しい書法だが、ゆれるような独特の響きは、きわめて効果的だ(ちなみに、のちの再現部では、この旋律は第1ヴァイオリンのみで演奏される)。

(沼野雄司)

演奏時間:約50分
作曲年代:1893年
初演:1893年 10月16日、サンクトペテルブルクで、チャイコフスキー自身の指揮による

[アンコール曲]
6/7:チャイコフスキー/18の小品 作品72 ― 第5曲「瞑想曲」
6/8:ラフマニノフ/6つの楽興の時 作品16 から 第4番「プレスト」ホ短調
ピアノ:ユリアンナ・アヴデーエワ

 


はじめてのクラシック
「セルゲイ・ラフマニノフ」


ARTISTS出演者

フアンホ・メナ※さんの画像 指揮フアンホ・メナ※

スペインとフランスをまたいで位置し、独自の文化を育むバスク地方。その中心都市のひとつ、スペイン側のビトリア・ガステイスに生まれる。地元の音楽院で学んだ後、マドリード王立音楽院でエンリケ・ガルシア・アセンシオに指揮を師事。卒業後ドイツに渡り、セルジュ・チェリビダッケから8年間にわたり薫陶を受けた。1999年、バスク地方を代表するオーケストラ、ビルバオ交響楽団の首席指揮者兼芸術監督に就任。以後ジェノヴァのカルロ・フェリーチェ劇場およびノルウェーのベルゲン・フィルハーモニー管弦楽団の首席客演指揮者、マンチェスターのBBCフィルハーモニックのチーフ・コンダクター、シンシナティ5月音楽合唱祭のプリンシパル・コンダクターを歴任する。またベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団、バイエルン放送交響楽団、シカゴ交響楽団、ニューヨーク・フィルハーモニック、クリーヴランド管弦楽団、ロサンゼルス・フィルハーモニック、フィラデルフィア管弦楽団など世界各地の著名オーケストラにも客演を重ねている。N響の舞台にはこれまで、2017年1月、2021年1月に登場。3度目の共演となる2025年6月、メナはAプログラムでラフマニノフとチャイコフスキーを組み合わせたロシア・プログラムを、Bプログラムでブルックナー《交響曲第6番》などを指揮する。

ユリアンナ・アヴデーエワ*さんの画像 ピアノユリアンナ・アヴデーエワ*

ユリアンナ・アヴデーエワは1985年モスクワ生まれ、早期の音楽教育で有名なモスクワ市立グネーシン音楽学校で学び、2003年からはチューリヒ芸術大学でコンスタンティン・シチェルバコフに師事した。
2006年にジュネーヴ国際音楽コンクールピアノ部門で1位なしの2位となって注目を浴び、さらに2010年ワルシャワのショパン国際ピアノコンクールで優勝して一躍その名声を高めた。以後は世界各地でのリサイタル、多くのオーケストラとの協奏曲の共演、ザルツブルクやルツェルンをはじめとするさまざまな音楽祭への出演など、世界のピアノ界の最前線を行くピアニストのひとりとしてめざましい活躍ぶりを示しており、フォルテピアノ奏者としても活動している。作品全体をしっかり見据えながら細部の表情を綿密に彫琢(ちょうたく)して濃(こま)やかな情感を織り込んでいく演奏は高く評価されている。
N響とは2014年以来の久々の共演。曲はラフマニノフの《パガニーニの主題による狂詩曲》で、彼女らしい確かな造形のうちに、この作品の持つロマン的な情感と演奏技巧の鮮やかさの両面を表し出してくれるに違いない。

[寺西基之/音楽評論家]

※当初出演予定のウラディーミル・フェドセーエフ(指揮)から変更いたします。

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TICKETチケット

定期公演 2024-2025シーズン
Aプログラム

第2039回 定期公演 Aプログラム

NHKホール
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座席表

1回券発売開始日

定期会員先行発売日:2025年2月26日(水)10:00am
定期会員について

一般発売日:2025年3月2日(日)10:00am

チケット購入

料金

S席 A席 B席 C席 D席 E席
一般 10,000円 8,500円 6,500円 5,400円 4,300円 2,200円
ユースチケット 5,000円 4,000円 3,100円 2,550円 1,500円 1,000円

※価格は税込です。
※定期会員の方は一般料金の10%割引となります。また、先行発売をご利用いただけます(取り扱いはWEBチケットN響・N響ガイドのみ)。
※車いす席についてはN響ガイドへお問い合わせください。
N響ガイドでのお申し込みは、公演日の1営業日前までとなります。
※券種により1回券のご用意ができない場合があります。
※当日券販売についてはこちらをご覧ください。
※未就学児のご入場はお断りしています。
※開場前に屋内でお待ちいただくスペースはございません。ご了承ください。

ユースチケット

29歳以下の方へのお得なチケットです。
(要登録)

定期会員券
発売開始日

年間会員券
2024年7月15日(月・祝)10:00am
[定期会員先行発売日: 2024年7月7日(日)10:00am]

シーズン会員券(SPRING)
2025年2月19日(水)10:00am
[定期会員先行発売日: 2025年2月13日(木)10:00am]

お問い合わせ・
お申し込み

BROADCAST放送予定

BSプレミアム4KBSプレミアム4KN響演奏会
第2039回 定期公演

2025年6月 7日(土) 6:00PM~ 8:00PM

曲目: リムスキー・コルサコフ/歌劇「5月の夜」序曲
ラフマニノフ/パガニーニの主題による狂詩曲 作品43*
チャイコフスキー/交響曲 第6番 ロ短調 作品74「悲愴」

指揮:フアンホ・メナ※

ピアノ:ユリアンナ・アヴデーエワ*

収録:2025年6月7日 NHKホール

主催:NHK / NHK交響楽団

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