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ユースチケットで、オーケストラを聴こう。 ―5人の楽員が語る「マイ・クラシック・ヒストリー」とオススメ定期公演

お知らせ2023年7月20日


ユースチケットで、オーケストラを聴こう


「N響ユースチケット」は、25歳以下限定の、定期公演を一般料金の50%以下の金額で楽しむことができる、お得な割引チケット。若い世代の人たちにも、もっとクラシックに親しんでほしい。そんな思いから行なっている取り組みです。新シーズンの開幕にあたって、N響の楽員5人にインタビュー。自らのクラシック・ヒストリー、そしてコンサートやオーケストラの魅力、そしてオススメ公演とその聴きどころを語ってもらいました。




憧れのオーケストラ・プレイヤーとなって、日々猛勉強中です。
村尾隆人|ヴァイオリン


村尾隆人

―クラシック音楽とはどのように出会いましたか。

マーラーの《交響曲第5番》が好きで、歌いながらダンスしていたらしいんです。4、5歳ぐらいの時に。小学生になってからは一度、2008年8月の「N響ほっとコンサート」に連れて行ってもらいました。《ダッタン人の踊り》が耳に残ってずっと歌っていて、あとになってボロディンの曲だと知りました。

―小さい頃からクラシックに親しむ、それはどんな体験ですか。

クラシックって、スルメみたいだなぁって思います。噛めば噛むほど、うま味が出てくる。お菓子や飴のように甘くて「ああ美味しい」とはならないけれど、自分の成長やいろいろな体験を経て、繰り返して思い出して、より深い体験になっていく。だからちょっと時間がかかると思うんです。でもそれだけ深みが味わえるんです。

―ヴァイオリンと出会ってから、オーケストラ・プレイヤーになるまでは。

4歳から始めたヴァイオリンですが、音大には行かずに一般大学の学生オーケストラで活動していました。N響には憧れていましたが、自分の手には届かないと思っていたんです。ですがその後、N響アカデミーという育成プログラムのオーディションに大学2年生の時に合格し、3年間エキストラとして弾いたり、学んだりする事ができました。その体験でオーケストラ・プレイヤーになりたいと願うようになったんです。

―N響の一員になってもうすぐ1年ですね。いかがですか。

昨年の7月に正式な団員になったので、やっと1年ですね。少しずつ慣れてきましたが、学生オケでやっている時とはこんなにも違うんだ、と実力の差に驚きました。N響は定期公演が毎月3プログラムあるんです。僕にとっては初めての曲ばかりですから、「譜読み」のスピードを求められながら、日々猛勉強中です。

―9月から始まる新シーズンの定期公演、おすすめ公演と聴きどころを教えてください。

2024年5月1112日 (Aプログラム)
NHKホール
ファビオ・ルイージ(指揮)
レスピーギ/交響詩「ローマの噴水」「ローマの松」「ローマの祭り」 ほか

「ローマ三部作」と呼ばれるこの3曲、いっぺんに演奏される機会はめったにないんです。金管楽器のすさまじくパワフルな高音、ヴァイオリンの超高速奏法など、聴きどころも満載です。作曲者レスピーギはイタリア人、指揮者ルイージもイタリア人なので、絶妙な歌い回しも楽しめそう。僕も高校時代にオーケストラ部で《ローマの祭り》を弾いた思い出があり、学生オケのメンバーや吹奏楽部員にはウケるんじゃないかな。まったくクラシックを聞かない友達を誘って来て、「スゴい」と盛り上がってほしいです。


村尾隆人

村尾隆人|ヴァイオリン Ryuto Murao

立教大学現代心理学部在学中にN響アカデミーで学ぶ。文化庁委託事業新進演奏家育成プロジェクトにて仙台フィルハーモニー管弦楽団と共演。北九州音楽祭をはじめとして国内各地でソロ、室内楽、アウトリーチ活動を展開中。これまでに佐藤明美氏、徳永二男氏に師事。2022年7月より、NHK交響楽団第1ヴァイオリン奏者。



ヴィオラはオーケストラで一番大事。隠れながらもしっかり発信しています。
三国レイチェル由依|ヴィオラ


三国レイチェル由依

―クラシック音楽とはどのように出会いましたか。

よく覚えている体験は、小学校3年生の時に入団したオーケストラクラブで弾いた、ベートーヴェンの《運命》(交響曲第5番)。私がヴァイオリンでメロディを弾くと、そのまわりでハーモニーが鳴って、低音楽器が支えて、リズムが刻まれて、というオーケストラの構築的なおもしろさにすっかりとりこになりました。

―ヴィオラはどんな楽器ですか。

6歳の頃からヴァイオリンを習いながら、音楽教室の方針で小学校5年生の時からヴィオラも学ぶ機会があり、高校3年生の時に「ヴィオラの方が好きだな、向いているな」と思って転向しました。
ヴィオラは、オーケストラで一番大事なんです。自分の楽器だからそう思うのかもしれないですけれど。ヴァイオリンやチェロのメロディの影には隠れているけれども、オーケストラや室内楽では中音域を支えて、深みを与える大事な役割を果たす必要不可欠な楽器です。
そして、たまに奏でるメロディがとてもすてきだと思うんです。N響首席奏者の佐々木亮さんがソロを弾くと、泣きそうになるくらいグッときます。たった2小節でそんなに語れるとは、と。「どうやって弾いてるんですか」って教えてもらうんですが、全然そんな音になりません。人生経験を積まなければならないのかも。憧れの人のそばでヴィオラを弾けるといういまが、最高に幸せです。

―9月から始まる新シーズンの定期公演、おすすめ公演と聴きどころを教えてください。

2023年12月1617日(Aプログラム/第2000回定期公演)
NHKホール
ファビオ・ルイージ(指揮)
(ファン投票選出曲)
マーラー/交響曲 第8番 変ホ長調 「一千人の交響曲」

「第2000回定期公演」という歴史的瞬間に、ファン投票で選ばれた圧倒的なスケールのこの曲を、われらが「シェフ」(*)、ルイージの指揮で。どんなに壮大な音が鳴るのか、いっしょに生で体感してほしいです。イヤホンやスピーカーで聴くのとはまったく違う、コンサートホールの空間を肌で感じるからこそ生まれる感動をぜひ味わってもらえたらと思います。一度コンサートホールを体験したら、きっとクラシック音楽に対する印象がガラリと変わると思いますよ。
*ここでは「首席指揮者」など、オーケストラを率いるメインの指揮者のこと



三国レイチェル由依

三国レイチェル由依|ヴィオラ Rachel Yui Mikuni

奈良県出身。6歳からヴァイオリンを習い、17歳でヴィオラに転向。東京藝術大学音楽学部器楽科を経て、同大学院音楽研究科修士課程修了。第23回コンセール・マロニエ21入選。紀尾井ホール室内管弦楽団2021年度シーズン・メンバー。これまでにヴァイオリンを岩谷悠子、相原瞳、ヴィオラを中島悦子、市坪俊彦の各氏に師事。2022年7月より、NHK交響楽団ヴィオラ奏者。



意外な難しさもあるピッコロ。それを悟られないようにサラリと吹いて、美しい音楽に浸ってもらいたい。
中村淳二|フルート&ピッコロ


中村淳二

―小さい頃のクラシック音楽との出会いは。

兄がたまたまヴァイオリンを習っていて、「お兄ちゃんのあのオモチャがほしい」と言ったらしく、気がついたらさわっていました。京都の生家がコンサートホールのすぐ近くだったので、小さい時からコンサートにはよく親に連れられて行きました。ずっと寝ていましたけど。
小学校の卒業アルバムに「将来の夢は音楽家」って書いたくらいですから、演奏したり、音楽に関わったりとかはずっと好きでした。ただ、それをプロとして生業にするかどうかには葛藤がありました。

―フルートと出会ったのは。

中学校の吹奏楽部に入って、なんとなくフルートになりました。みんなでワイワイ練習して、夏のコンクールをがんばって、定期演奏会も張り切って、そういう普通の部活を中高通して5年間やりました。

―それでもプロのオーケストラ奏者の道を選んだのは。

親の反対や葛藤もありながらも、こうしてプロのオーケストラ奏者になれたのは、幸運だったからとしか言えません。タイミングぴったりに、自分のポジションの募集があるかどうか次第なんです。N響に入ることができたのも、セカンド・ピッコロ兼任のフルート奏者を募集していたからなわけで、とんでもなくラッキーなことでした。

―ピッコロはどんな楽器ですか。

意外なところに難しさがあるんですよ。小さい音でただ長く延ばして吹く、これがものすごくきわどくて難しいんです。でもそんな努力や技量を、聴く人に感じさせたらおしまいですから、悟られないようにサラリと演奏して、みなさまに美しい音楽に浸ってもらいたいですね。

―9月から始まる新シーズンの定期公演、おすすめ公演と聴きどころを教えてください。

2024年1月1920日(Cプログラム)
NHKホール
トゥガン・ソヒエフ(指揮)
プロコフィエフ(ソヒエフ編)/バレエ組曲「ロメオとジュリエット」

『ロメオとジュリエット』の悲恋の物語はみんな知っていますよね。バレエ音楽はたくさんの短い曲で成り立っているので、クラシックは曲が長いからと尻込みしている方でも聴きやすいと思います。ポップスのライブに行くのと同じような感覚で、気軽に聴きに来てくれるとうれしいです。
指揮者のソヒエフが作る音色感はやわらかくて、絹みたいなさわり心地で、僕は大好きです。彼はバレエの指揮の経験も豊富なので、今回も良質な世界を作ってくれると、楽しみにしています。


中村淳二

中村淳二|フルート Junji Nakamura

京都市出身。幼少よりヴァイオリンを習い、13歳からフルートを始める。私立高槻高等学校を経て、2009年に京都市立芸術大学音楽学部管打楽専攻卒業。卒業時に音楽楽部賞、京都音楽協会賞を受賞。名古屋フィルハーモニー交響楽団首席ピッコロ奏者を経て、現在、NHK交響楽団フルート・ピッコロ奏者。オーケストラでの活動のほかに、フルートとピッコロ両方でのソロ活動、後進の指導にも力を入れる。第15回松方音楽賞受賞。



「カッコいい」ととりこになった中学生以来、ホルンに一直線です。
野見山和子|ホルン&ワーグナー・テューバ


野見山和子

―ホルンとはどのように出会いましたか。

小学生の頃から「オーケストラに入る」って決めていました。音楽の教科書の最後のページに載っていた「オーケストラの楽器」。これを毎日見ながら、どの楽器をやろうかなって思ってたんです。オーケストラを生で聴いたこともなかったのに。でも『N響アワー』だけはときどきテレビで見ていました。
中学校で吹奏楽部に入る時にフルートを希望したのですが空きがなく、ユーフォニアムとホルンの二択になって。あの「オーケストラの楽器」のページにはホルンがあったなと思い出して、それでホルンを選んだんです。

―ホルンは難しかったですか。

難しいったらありゃしないです。始めてしばらくたった頃に、父がモーツァルトのホルン協奏曲のCDを買ってくれたのですが、「こんなきれいな音をなぜ自分は出せないんだろう」とがっかりしました。でもその後、お気に入りを見つけて目標ができました。R. シュトラウスのオペラ《ドン・フアン》でホルンの大活躍するところ。ここだけを毎日聴きました。「カッコいい!」「これが吹けるようになりたい」って。

―これまでホルンをやってきてのエピソードは?

そこからホルン一直線でしたが、大学のオーケストラの授業に、岩城宏之先生(指揮者・故人)が指導に来てくださっていたんですよ。先日のN響足利公演(2023年6月)でも演奏したウェーバー《歌劇「オベロン」序曲》の1番パートを、練習からゲネプロまで1回も音をはずさず吹いていたんです。それなのに本番に限って、ちょっと失敗しちゃったんです。そうしたら岩城先生から「君も人間だったんだな」って言われました。温かみのある言葉に救われて、忘れられないです。

―9月から始まる新シーズンの定期公演、おすすめ公演と聴きどころを教えてください。


2023年9月15
16日
(Cプログラム)
NHKホール 
ファビオ・ルイージ(指揮)
ワーグナー(フリーヘル編)/楽劇「ニーベルングの指環」─オーケストラル・アドベンチャー―

オペラだったら4日間もかかるワーグナーの超大作をぎゅっと凝縮した、濃密なオーケストラの内容と響きが楽しめます。ステージにものすごく大勢の奏者が登場して、管楽器も「4管編成」と言って、それぞれ4人以上。ホルン・パートも8人がかり、そのうちの4人は、ワーグナー・テューバという珍しい楽器も交互に持ち替えて吹くので、ビジュアル面でも楽しめます。通常のホルンと向きがちがって、天井にベルを向けて吹くんですよ。
オペラも大得意としているルイージが指揮なんですから、重厚なサウンドを味わえますよ。いまは検索すれば何でも聴けてしまう時代ですが、演奏者とお客さんとの一体感や空気感は生の演奏でしか味わえないもの。ぜひコンサート会場でお会いしましょう!


野見山和子

野見山和子|ホルン Kazuko Nomiyama

福岡県飯塚市出身。くらしき作陽大学卒業。桐朋学園大学研究科修了。日本フィルハーモニー交響楽団、東京都交響楽団を経て、2017年9月より、NHK交響楽団ホルン奏者。宮崎国際音楽祭、霧島国際音楽祭、草津国際音楽アカデミー&フェスティバルなどに出演。これまでにホルンを山田 真(故人)、田中正大(故人)、今井仁志の各氏に師事。



トロンボーンは建築物の土台を支えながら、次の土台に運んでいく役目。その息づかいを聴いてほしい。
古賀 光|トロンボーン


古賀 光

―トロンボーンとはどのように出会いましたか。

兄のいる金管バンドに小学校3年生の頃に入って、トロンボーンと出会いました。本当はコルネットをやりたかったんですよ。体格がよかったせいか、顧問の先生にトロンボーンの前に連れて行かれ、マウスピースを口に当てられて「ブーって吹いてごらん」と言われて吹いてみたら鳴っちゃったんです。「じゃあ君はトロンボーンだね」って。無理やりの出会いでした。

―トロンボーン奏者を目指したきっかけは。

いく度となく別の道に行こうとしたんですが。音楽科コースがある高校に入学して、先輩のトロンボーンの音色に「こんなにきれいなんだ」って初めて感動したんです。それからCDでアバド指揮のシカゴ交響楽団のマーラー《交響曲第2番「復活」》を聴いて衝撃を受けて、通学の時も毎日聴いてました。そして、大学1年生の時にニューヨーク・フィルハーモニックをサントリーホールで聴いて、ワーグナーの《「タンホイザー」序曲》に今度はやられてしまいました。トロンボーンがとんでもなくカッコよくて。生で聴く演奏はすごいと、やっと知りました。そこからですね、オーケストラ奏者になりたいと思うようになったのは。

―9月から始まる新シーズンの定期公演、おすすめ公演と聴きどころを教えてください。

2023年10月1415日(Aプログラム)
NHKホール
ヘルベルト・ブロムシュテット(指揮)
ブルックナー/交響曲第5番

ブルックナーの交響曲は難しそう? いやいや、とても立体的な、「飛び出す絵本」みたいな音楽なんです。ブルックナーはパイプオルガン奏者でもあったためか、ハーモニーの重厚さがすごくて、ゾクゾクするほど美しい。まるで巨大な建造物が次々に現れてくるように、めまぐるしく和声が進行していきます。トロンボーンはもともと教会でも使われた楽器なので、教会音楽家だったブルックナーの扱い方の上手さは必聴です。トロンボーンをはじめとする金管楽器群の重厚で壮大なハーモニーを味わってください。指揮者のブロムシュテットは音楽を心から愛しているので、その想いに応えて音色づくりをするのが今から楽しみです。
ブルックナーに限らず、音楽って一度ですべてを理解するのは難しいですが、出会った音を受けとめているうちに、いろいろなものが見えてきますよ。


古賀 光

古賀 光|トロンボーン Hikaru Koga

福岡県出身。東京藝術大学卒業。第20回日本管打楽器コンクール第2位。九州交響楽団、読売日本交響楽団トロンボーン奏者、首席トロンボーン奏者を経て、現在、NHK交響楽団首席トロンボーン奏者。Trio Diesel、Brass Hexagon、The Trombone Ensemble minorsのメンバー。
これまでにトロンボーンを村岡淳志、神谷 敏、栗田雅勝、秋山鴻市の各氏に師事。桐朋学園大学、国立音楽大学、昭和音楽大学各講師。



撮影:平舘 平



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