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2023年1月定期公演プログラムについて

公演情報2022年12月 9日

トゥガン・ソヒエフがボリショイとトゥールーズのポストを辞任するという今年春のニュースは、大きな衝撃をもって迎えられた。祖国ロシアのウクライナ侵攻を受けての、苦渋の決断だった。直後に本人から「明るい未来を祈りたい」という前向きなメッセージが届いた。私たちはこれからも、彼との共演を継続する。3年ぶりの来日が待ち遠しい。


トゥガン・ソヒエフ

「闘争から勝利」へのアンチテーゼ-ベートーヴェン&ブラームス 別の一面を聴く

Aプログラム]のベートーヴェン《交響曲第4番》は、《英雄》や《運命》に比べると革新的ではないイメージがある。しかし元々、力瘤の入った構成を目指したのではなく、即興性を交響曲に持ち込もうという、別の実験精神の現れと見ることもできよう。曖昧模糊とした導入部はのちの《第9》を予感させるし、曲全体の運びには、少し前の《幻想曲風ピアノ・ソナタ》に通じる伸びやかさがある。ロマン派を先取りするかのような木管やティンパニのソロも特徴的で、シューマンが高く評価したのも頷ける。クライバーやアーノンクールといった名指揮者が《第4番》を好んだが、ソヒエフもその一人。風通しのよい、推進力のある音楽作りがこの曲に向くのだろう。

トゥガン・ソヒエフ、ベートーヴェン、ブラームス、ハオチェン・チャン

前半は同じ変ロ長調のブラームス《ピアノ協奏曲第2番》。重厚な第1・第2楽章と打って変わって、後半はトランペットとティンパニが沈黙し、室内楽的な趣になる。これもやはり“闘争から勝利へ”のアンチテーゼというべきか。ホルンやチェロのソロなど、斬新な仕掛けにも富んでいる。理性と情熱のバランスが取れたハオチェン・チャンのピアノに期待したい。

2023年1月14日(土)6:00pm
2023年1月15日(日)2:00pm
NHKホール



ロシアの冬を思い起こさせる ラフマニノフとチャイコフスキーの初期の傑作

[Cプログラム]《交響詩「岩」》は、タイトルだけ聞くと断崖絶壁の光景を思い浮かべるが、旅の宿で出会った中年男と若い女性の束の間の交流を描いた、チェーホフの短編小説がもとになっている。旅立つ女を見送る男に雪が積もり、岩のように見えるという訳である。若きラフマニノフの作品をチャイコフスキーが激賞し、初演の指揮を約束したが、彼は間もなく世を去ってしまう。本来は同じ年に書かれた《悲愴交響曲》を組み合わせたかったが、《悲愴》の演奏に特別な思いを抱くソヒエフは、首を縦に振らなかった。またいつか別の機会を探りたい。

チャイコフスキー、トゥガン・ソヒエフ、ラフマニノフ

ラフマニノフの《岩》同様、《交響曲第1番「冬の日の幻想」》は、チャイコフスキー初期の力作である。弦のトレモロの上で舞い踊るフルートと、大地のような低音のコントラスト。民謡風のメロディ。一聴してロシアの冬を思わせる、2つの作品の共通項は多い。チャイコフスキーが《岩》を絶賛した理由には、自作へのノスタルジーもあったのかも知れない。

2023年1月20日(金)7:30pm
2023年1月21日(土)2:00pm
NHKホール



ソヒエフが20世紀の名作で 微細に描き分ける“あわい”に耳を傾ける

[Bプログラム]ドビュッシー《海》ラヴェル《ダフニスとクロエ》は、ソヒエフが繰り返し取り上げているレパートリーである。どちらの曲にも「夜明け」をタイトルに含む楽章が出てくるのは象徴的だが、刻々と移りゆく音色のグラデーション、その“あわい”を微細に描き分けることに長けた、ソヒエフの真骨頂が聴かれるだろう。

トゥガン・ソヒエフ、ドビュッシー、ラヴェル、バルトーク、アミハイ・グロス

ベルリン・フィルの第1首席奏者、アミハイ・グロスが弾くのは、バルトークがスケッチだけ残して亡くなった、遺作の《ヴィオラ協奏曲》。ヴァイオリンとチェロの“あわい”にあって、明確に定義づけられないこの楽器の音質に、グロスは強く惹かれるという。

2023年1月25日(水)7:00pm
2023年1月26日(木)7:00pm
サントリーホール



[西川彰一/NHK交響楽団 芸術主幹]

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