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2022年12月定期公演プログラムについて
公演情報2022年11月28日
首席指揮者に就任後、2度目の来日となるファビオ・ルイージが、硬軟織り交ぜた多彩な3プログラムを送る。
《第9》を思い起こさせるブルックナー《第2番》を味わい深い初稿版で堪能する
[Aプログラム]前半は、日本を代表するワーグナー歌手、藤村実穂子による《ウェーゼンドンクの5つの詩》。コロナ禍を経験し、音楽が人々の救いになり得ることを改めて実感したという藤村。醜悪なものに対抗できる最良の手段は“美”だと言い切る。巡りゆく宇宙や大自然を背景に、報われぬ恋のはかなさを歌ったワーグナーの究極の美の世界を堪能したい。
後半はワーグナーを崇拝していたブルックナーの《交響曲第2番》初稿版。よく演奏される改訂版との大きな違いはスケルツォが第2楽章に来ることで、この曲がベートーヴェン《第9》の影響を受けて書かれたことを想起せずにいられない。洗練の度合いは改訂版に一歩譲るとしても、飾り気のない宗教的な性格は初稿版の捨てがたい味わいである。
例えば緩徐楽章の終わりの大気に溶け込んでいくかのようなメロディ。クラリネットとヴィオラではなく、初稿通りホルンの方が“悠久の時”を感じさせる。終楽章で《ミサ曲》からの引用が強調され、コーダではまるでオルガンのペダルのように、低弦だけが主題を奏でるのも印象的だ。
2022年12月3日(土)6:00pm
2022年12月4日(日)2:00pm
NHKホール
ルイージが“メンデルスゾーン最上の交響曲”と呼ぶ《第3番「スコットランド」》
ブルックナーがオルガニストとして活躍したオーストリア北部のリンツは、モーツァルトゆかりの街でもある。[Cプログラム]の《交響曲第36番「リンツ」》は、旅の途中この地に滞在した作曲家が、わずか4日で仕上げたという。不世出の天才とはいえ、作品の完成度を考えると、ほとんど信じられない話である。
それからおよそ60年後、ロマン派の最盛期に生まれたのが、メンデルスゾーン《交響曲第3番「スコットランド」》。こちらは対照的に着想から完成まで12年を要したが、優美さや隙のない書法は、モーツァルトに匹敵する。詩的情感に富みながら、第4楽章のクラリネット・ソロなど、革新的なアイデアにも事欠かない。ルイージは“メンデルスゾーン最上の交響曲”と呼んでいる。
2つの交響曲は、いずれも調号なしのハ長調とイ短調。《リンツ》第1楽章に現れる、晴れやかな付点つきリズムは、《スコットランド》第3楽章で色調を変え、愁いを帯びて回帰する。
2022年12月9日(金)7:30pm
2022年12月10日(土)2:00pm
NHKホール
私たちの琴線に触れる スラヴの甘く懐かしいメロディを聴く
[Bプログラム]は直球の名曲プログラム。こうした定番のコース料理をためらいなく提供できるのも、新しいシェフ、ルイージの強みである。華々しく疾走するグリンカ《「ルスランとリュドミーラ」序曲》を前菜に、スラヴ特有の甘く懐かしい旋律がたっぷりのメインディッシュ、ラフマニノフとドヴォルザークが続く。《ピアノ協奏曲第2番》と《新世界から》の演奏回数は、どちらもクラシックのコンサートで最上位にランクインするはずだ。
ニューヨークの音楽院に校長として招かれたドヴォルザークが現地で初演し、大成功を収めた《新世界から》。アメリカで晩年を過ごしたラフマニノフの没後間もなく、ラジオや映画で空前のブームを巻き起こした《ピアノ協奏曲第2番》。2曲とも戦後、メディアやレコード産業が発展し、クラシック音楽が幅広い層に受け入れられていく過程で大きな役割を果たした。絶大な人気とレパートリーとしての重要度は、今なお薄れていない。
2022年12月14日(水)7:00pm
2022年12月15日(木)7:00pm
サントリーホール
[西川彰一/NHK交響楽団 芸術主幹]