※約2時間の公演となります(休憩20分あり)。
※やむを得ない理由で出演者や曲目等が変更となる場合や、公演が中止となる場合がございます。公演中止の場合をのぞき、チケット代金の払い戻しはいたしません。
ABOUT THIS CONCERT特徴
2026年11月Cプログラム 聴きどころ
交響曲全曲シリーズ第3弾。脂ののった中堅トゥガン・ソヒエフの指揮のもと、今回はベートーヴェンの音楽がもつ「五感を刺激するダイナミズム」に光をあてる。劇的空間を数分に凝縮した《コリオラン》、はげしい変化で聴き手に崇高な恐怖を与えた《第2番》、そして標題性と音の自律性を高次元で両立させた《第6番》。ただ耳で聴くだけの音楽を超え、ひとつの精神が音でえがきだした多感覚的なイメージを、練達のオーケストラで体感したい。
(西田紘子)
PROGRAM曲目
― N響100年特別企画 ベートーヴェン交響曲全曲演奏3 ―
ベートーヴェン/序曲「コリオラン」
劇作家ハインリヒ・ヨーゼフ・コリンは、かつて自身のとある悲劇の序文にこう書いた。「運命が完全なる重圧で英雄をうちたおすのをみると、あわれみを感じる。しかし、英雄が運命に力であらがうさまは、私に驚きも与える」。運命に立ちむかう人間の精神に自由をみる─この熱い思想はウィーン市民を熱狂させた。
シェークスピアの『コリオレイナス』やプルタルコスの『英雄伝』も知っていたルートヴィヒ・ファン・ベートーヴェン(1770~1827)であるが、本作はウィーンで成功を収めていた劇作家コリンの舞台作品に着想を得たものと考えられている。筆をとった背景には、旧体制の劇場支配人に不満を抱いていたことがある。ロプコヴィッツ侯爵らあらたな経営陣に自分たちの存在をアピールしたいという、コリンと作曲家による共同戦線の意図もあったのかもしれない。
音楽はハ短調で始まる。翌年の《交響曲第5番》へと結晶する、悲劇的な宿命との闘争に好んで選ばれた調である。冒頭、弦楽器の強奏とそれをたちきる休止は、戦士コリオランの憤りを表す。対して、変ホ長調のやさしい第2主題は、祖国ローマの敵となったわが子に「どうか思いとどまっておくれ」と涙ながらに願う母を象徴するのだろう。
英雄は、母の懇願に屈してついに包囲を解く。コーダの最後、エネルギーに満ちていたはずの英雄の主題がゆっくりと崩壊し、ピチカートのなかで息たえるように消えていく。
(西田紘子)
演奏時間:約8分
作曲年代:1807年1~3月
初演:1807年3月、ウィーンのロプコヴィッツ侯爵邸
ベートーヴェン/交響曲 第2番 ニ長調 作品36
ウィーンに出てきて8年、交響曲デビューを果たしたベートーヴェンは、破竹の勢いでこの《第2番》の作曲にとりかかった。実際、1801年には出版の豊作期を迎え、パトロンのリヒノフスキー侯爵から高額な年金を得るなど、キャリアは順調にみえた。しかし、その活躍の裏では、20代後半から悩まされてきた難聴が抜きさしならぬものとなっていた。1802年秋、まさに本作の作曲がたけなわのころ、彼は「羊飼いが歌っているのに、私には何も聴こえない。もうちょっとで自分の人生を終わらせるところだった」とハイリゲンシュタットの遺書に絶望を書きつけている。
だが、この交響曲はそんな陰をあまり感じさせない。のちにエクトル・ベルリオーズが「すこしの憂うつにも曇らされない、純粋無垢(むく)な幸せ」の描写だと絶賛したとおりである。とはいえ、従来のハイドンやモーツァルトの枠を超えるはげしいダイナミクスの変化や、既定路線ではない転調などは、当時の人々に恐怖さえ抱かせたようだ。
第1楽章は、モーツァルトの《交響曲第38番「プラハ」》を思わせる長大でドラマティックな序奏のあと、主部では、ヴィオラとチェロの低音域のユニゾンで第1主題が提示されるというのも異例である。推敲(すいこう)を重ねて書かれた第2楽章は、弦楽器の親密なアンサンブルに木管がよりそう。クラリネットを活かしているのも斬新だ。第3楽章は、短い3音のモティーフが飛びかう、快活なスケルツォ。第4楽章は、しゃっくりや笑い声を思わせる、風変わりな2音の動機──第1楽章序奏のトリルのモティーフとも連動している──で始まる。楽章全体のおよそ3分の1を占める巨大なコーダは、「第2の展開部」と呼ばれるほどの存在感をほこる。
初演の際、リハーサルが朝8時から昼2時半までおよび、演奏家たちがその技術的な難しさに疲れはてたというエピソードもある。
第1楽章 アダージョ・モルト、ニ長調、4分の3拍子─アレグロ・コン・ブリオ、4分の4拍子。序奏付きのソナタ形式。
第2楽章 ラルゲット、イ長調、8分の3拍子。ソナタ形式。
第3楽章 スケルツォ:アレグロ、ニ長調、4分の3拍子。3部形式。
第4楽章 アレグロ・モルト、ニ長調、2分の2拍子。ロンド・ソナタ形式。
(西田紘子)
演奏時間:約37分
作曲年代:1800年中頃~1802年
初演:1803年4月5日、アン・デア・ウィーン劇場
ベートーヴェン/交響曲 第6番 ヘ長調 作品68「田園」
本作は、同時期に並行して作曲された《第5番》と対比されて語られることが多い。しかし、スケッチ研究や分析からは、2つの作品はともに革新的な試みに満ち、同じ時期の同じ様式理念から生まれた「双生児」のような関係にあるといえる。
最大の特徴は、ベートーヴェン自身が残した「音画よりも、むしろ感情の表出」という言葉に集約される。当時の描写音楽とは一線を画し、自然に触れた人間の内面を表現しようとした。これに対し、批評家ドナルド・トーヴィーは、標題を重視せず、純粋に音楽的な形式としてとらえようとした。また、美学者のエドゥアルド・ハンスリックは、自然音の模倣と実際の鳥の鳴き声をはっきりと区別し、音楽に用いられるのは前者、つまり楽音のみであると考えた。
全5楽章からなる本作は、伝統的な4楽章制の枠組みを広げ、第3楽章からフィナーレまでが切れ目なく演奏される点が大きな特徴である。第1楽章〈田舎に着いたときに、人々の心に生まれる心地よく朗らかな気持ち〉は、弦楽器による弱奏と空虚5度(ファ・ラ・ドのラを抜いた響き)の和声で、どこかなつかしい田園風景を音にしていく。冒頭4小節に置かれたフェルマータは、同じく冒頭にフェルマータを置く《運命》と双生児であることを実感させるつくりだ。
第2楽章〈小川のほとり〉では、低弦の12拍子による音型がせせらぎを表現し、高音域のトリルが鳥のさえずりを象徴する。コーダではナイチンゲール(フルート)、ウズラ(オーボエ)、カッコウ(クラリネット)の鳴き声がダイレクトに模倣される。
第3楽章〈田舎の人々の楽しいつどい〉は、農民たちの群舞を思わせるスケルツォ。ヘ長調とニ長調の対比、あるいは3拍子(主部)と2拍子(中間部のトリオ)の対比や、木管楽器による素朴なメロディが、私たちの聴覚だけでなく視覚的イメージをよびおこす。音楽と言語(標題)が手をたずさえ、五感を刺激してくるのが、第2~4楽章の最大の面白さかもしれない。
第4楽章〈雷と嵐〉は、唯一の短調楽章である。減七和音などの緊迫した不協和音、ピッコロやトロンボーンの導入により、自然の脅威がリアルタイムに描かれる。
第5楽章〈牧歌 嵐のあとの神への感謝に満ちた、寛大な気持ち〉では、ふたたび感情の表出へともどり、空虚5度の和声も回帰する。のちにベルリオーズが「自然そのものが光輝を放ってあらわれる」と評したように、本作は音楽の自律性(言葉なしに自律していること)と標題性(言語情報をそなえていること)という、一見すると矛盾する領域を高次元で融合させた作品といえるのではないか。
第1楽章 田舎に着いたときに、人々の心に生まれる心地よく朗らかな気持ち:アレグロ・マ・ノン・トロッポ、ヘ長調、4分の2拍子。ソナタ形式。
第2楽章 小川のほとり:アンダンテ・モルト・モート、変ロ長調、8分の12拍子。ソナタ形式。
第3楽章 田舎の人々の楽しいつどい:アレグロ、ヘ長調、4分の3拍子。3部形式。
第4楽章 雷と嵐:アレグロ、ヘ短調、4分の4拍子。
第5楽章 牧歌 嵐のあとの神への感謝に満ちた、寛大な気持ち:アレグレット、ヘ長調、8分の6拍子。ロンド・ソナタ形式。
(西田紘子)
演奏時間:約40分
作曲年代:1807~1808年
初演:1808年12月22日、アン・デア・ウィーン劇場
ARTISTS出演者
指揮トゥガン・ソヒエフ
1977年、旧ソビエト連邦・北オセチアのウラジカフカス生まれ。サンクトペテルブルク音楽院でイリヤ・ムーシンに師事、ユーリ・テルミカーノフにも学んだ。20代前半から頭角を現し、トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団、ベルリン・ドイツ交響楽団、ボリショイ劇場等の首席指揮者や音楽監督を歴任。オペラとオーケストラ両分野で目覚ましい活躍をみせる。ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団など世界の名だたるオーケストラに客演を続け、2026–27シーズンからスイス・ロマンド管弦楽団の首席指揮者・アーティスティック・アドバイザーに就任。また、2027年元旦恒例のウィーン・フィル・ニューイヤーコンサートを指揮することが発表されている。
NHK交響楽団とは、2008年以来、定期的に共演を重ね、2023年から毎年客演し、厚い信頼関係を築いてきた。11月A・Bプログラムは、ソヒエフがその伝統を継承するロシアのレパートリー。Aプログラムは戦時下ロシアにおけるショスタコーヴィチの苦悩を、Bプログラムはチャイコフスキーとラフマニノフのロマンティシズムと洗練を、オーケストラを細部まで緻密にコントロールしながら描き出す。Cプログラムは、近年N響と取り組み始めているベートーヴェンの交響曲。ゆるぎない指揮が構築性と旋律美を際立たせた充実の演奏となるだろう。
[柴辻純子/音楽評論家]
料金
| S席 | A席 | B席 | C席 | D席 | E席 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 一般 | 12,000円 | 10,000円 | 8,000円 | 6,500円 | 5,500円 | 3,300円 |
| ユースチケット | 6,000円 | 5,000円 | 3,600円 | 3,250円 | 1,900円 | 1,600円 |
※価格は税込です。
※定期会員の方は一般料金の10%割引となります。また、先行発売をご利用いただけます(取り扱いはWEBチケットN響・N響ガイドのみ)。
※車いす席についてはN響ガイドへお問い合わせください。
※N響ガイドでのお申し込みは、公演日の1営業日前までとなります。
※券種により1回券のご用意ができない場合があります。
※当日券販売についてはこちらをご覧ください。
※未就学児のご入場はお断りしています。
※開場前に屋内でお待ちいただくスペースはございません。ご了承ください。
ユースチケット
29歳以下の方へのお得なチケットです。
(要登録)
定期会員券
発売開始日
年間会員券/シーズン会員券(AUTUMN)
2026年7月12日(日)10:00am
[定期会員先行発売日: 2026年7月5日(日)10:00am]



