※約2時間の公演となります(休憩20分あり)。
※やむを得ない理由で出演者や曲目等が変更となる場合や、公演が中止となる場合がございます。公演中止の場合をのぞき、チケット代金の払い戻しはいたしません。
ABOUT THIS CONCERT特徴
2026年10月Cプログラム 聴きどころ
黎明(れいめい)期からベートーヴェンを軸に骨格を築いてきたN響。本日は創立100年を祝う交響曲全曲演奏シリーズの第2弾である。公演の枠をかたちづくるのは、動乱の時代にあらがう不屈の精神──スペインの圧政に抵抗する《エグモント》と、ナポレオン戦争期の不穏な空気を歓喜へと変容させる《第5番》。だからこそ、真ん中に位置する《第8番》がなおさら新鮮に響くはず。かくれた趣向をあぶりだしてくれるだろう。
(西田紘子)
PROGRAM曲目
― N響100年特別企画 ベートーヴェン交響曲全曲演奏2 ―
ベートーヴェン/「エグモント」序曲
1809年、フランス軍の占領下にあったウィーンで、ルートヴィヒ・ファン・ベートーヴェン(1770~1827)はゲーテの戯曲『エグモント』のための付随音楽をてがけた。16世紀ネーデルラントの英雄がスペインの圧政にたちむかう物語に、オーストリア市民は、時代を超えた当事者として深く共感したにちがいない。
スケッチ帳をひもとくと、ベートーヴェンは「最後はネーデルラント人が勝利する」という言葉を書き残している。いかに作曲者が戯曲の政治的メッセージにみずからの理想を重ねていたかがわかるだろう。恋人クレールヒェンの決死の救出劇と服毒自殺、そして獄中のエグモントがみる自由の幻影といった劇の核心を、ベートーヴェンは9曲のナンバーでいろどった。のちにこの音楽を聴いたゲーテ自身も「みごとな天才によって私の意図が反映されている」と絶賛したという。
低音でうごめく導入部はスペインによる抑圧を、続く主部は民衆による反乱の動きをえがきだす。もっともドラマティックなのは終盤だ。切り裂くようなヴァイオリンの下行音型と、はりつめた休止(第278小節)──エグモントが断頭台で処刑される場面がなまなましく連想される。しかし絶望では終わらない。死を悼む和音を木管がしずかに重ねたあと、ピアニッシモから地鳴りのようにわきあがる「勝利のシンフォニー」へと突入する。
(西田紘子)
演奏時間:約9分
作曲年代:1809年秋~1810年6月
初演:1810年6月15日、ウィーンの宮廷劇場
ベートーヴェン/交響曲 第8番 ヘ長調 作品93
《第8番》のスケッチは、《第7番》とほぼ並行して書きすすめられた。このころベートーヴェンは、聴覚のおとろえによる内面の変化や、「不滅の恋人」へ宛てた手紙の執筆、弟ヨハンの結婚問題など、波乱のさなかにあった。
1814年2月に開かれた初演の演奏会は、大成功をおさめた《第7番》や、人々の愛国心を刺激した《ウェリントンの勝利》が同時にプログラミングされていた。そのため、それらに挟まれた《第8番》は、聴衆にとってやや拍子抜けに響いたようで、その反応は鈍かったという。ベートーヴェンは「それは曲が格段にすぐれているからだ」とカール・チェルニーに語ったという。本作は、演奏時間が30分弱と短く、楽器編成も後期ハイドンの標準型に近い。そのため、古典的な様式への回帰のようにうけとめられがちであるが、じつは巧みなしかけが随所にみられる。同時代の批評家から「奇想天外な音楽」と評されているのもうなずけるところ。
第1楽章は、全9作の交響曲のなかで唯一、序奏もアウフタクト(弱拍から始まること)もないという異例の始まり方をする。聴き手は心の準備をする間もなく、1拍目からいきなり全楽器がつどう第1主題に直面することになる。第2楽章は、異なるリズムがユーモラスに結びつけられている。第1ヴァイオリンが奏する短いテーマに対し、秒針のように脈打つ16分音符のグループと、弦楽器の軽快なピチカート音型がからみあう。第3楽章のトリオ(中間部)では、フルートとオーボエが休止し、2本のホルンと独奏クラリネットが、低弦の伴奏に乗って三重奏を響かせる。これまでのおどけた雰囲気とは異なり、牧歌的かつ品のある性格が耳新しい。終楽章は弱奏でかろやかに始まるが、とつぜん嬰ハ(C♯)音がフォルティッシモで割りこんでくる(第17小節)。この異質な音は、コーダでも活躍し、楽章全体をとおしてドラマの伏線のように機能する。「驚かせたい」という無邪気な意欲と、高度な構成力を兼ねそなえた作曲者らしい筆致だ。
第1楽章 アレグロ・ヴィヴァーチェ・エ・コン・ブリオ、ヘ長調、4分の3拍子。ソナタ形式。
第2楽章 アレグレット・スケルツァンド、変ロ長調、4分の2拍子。展開部のないソナタ形式。
第3楽章 テンポ・ディ・メヌエット、ヘ長調、4分の3拍子。3部形式。
第4楽章 アレグロ・ヴィヴァーチェ、ヘ長調、2分の2拍子。ソナタ形式。
(西田紘子)
演奏時間:約27分
作曲年代:1812年
初演:1814年2月27日、ウィーン、宮殿内の大レドゥーテンザール
ベートーヴェン/交響曲 第5番 ハ短調 作品67「運命」
《第5番》のスケッチは、《第3番「英雄」》の完成直後、1804年にはやくも着手された。当初、ベートーヴェンはパリへの演奏旅行を計画し、この新作を現地で披露するつもりでいた。しかし、ナポレオンをめぐる政治情勢の悪化によって旅行が中止に追いこまれると、筆はいったん止まる。その後、1807年半ばから本格的な作曲が再開され、当初献呈を予定していたオッパーズドルフ伯爵ではなく、半年間の独占上演権を買いとったロプコヴィッツ侯爵らへと献呈先を変更し、1808年に完成へといたった。
ハ短調はベートーヴェンにとって妥協を許さぬ英雄を象徴する調であった。当時、ナポレオン軍の侵攻を許していたオーストリア国内には複雑な空気が流れており、作曲者自身もフランスへの対抗心を募らせていたようだ。
1808年12月の初演は、冬の厳しい寒さのなか行われた。4時間近くにおよぶ長大なプログラムには、同時期に生まれた《第6番「田園」》や《ピアノ協奏曲第4番》なども並んでおり、聴衆はつめこまれた音楽に困惑したようだ。この時代の交響曲は貴族の気晴らしや演奏会のわき役といった域にとどまるものも多く、この特異な音楽ははじめから手放しで歓迎されたわけではなかったのである。
初演時の混乱について、のちに『一般音楽新聞』の批評家は、作品の長さと複雑さにかんがみて判断をひかえ、「たしかな評価をくだすには、さらに演奏の機会を待たねばならない」と慎重な姿勢をみせている。
第3楽章のスケルツォでは、従来の軽快な舞曲の性格を退け、不穏なテーマが低弦からうごめきだす。モーツァルトの《交響曲第40番ト短調》のフィナーレとの関連が指摘されている箇所だ。4音動機のリズムを刻むティンパニの弱奏が橋渡しとなって、そのままハ長調の勝利の行進曲へなだれこむ。
ちなみに、よく知られたエピソードに、ナポレオン戦争を経験した白髪交じりのフランス古参兵のお話がある。初演からしばらくして本作の演奏を聴いたこの古参兵は、終楽章冒頭のファンファーレが聞こえると席から立ちあがり、「皇帝万歳!」と叫んだらしい。目下の政治状況と、この音楽が内包する英雄的なイメージが結びついていたことがわかる逸話だ。
この終楽章は、当時は教会音楽やオペラの一部にかぎられていた3本のトロンボーン、ピッコロ、コントラファゴットを導入し、音域と音量を大きく拡張した。ベートーヴェンみずから「ティンパニ6台ぶんよりも大きな、そしてもっとよい響きがするだろう」と予告したとおり、ぶあつい音響が祝祭感を強めている。
第1楽章 アレグロ・コン・ブリオ、ハ短調、4分の2拍子。ソナタ形式。
第2楽章 アンダンテ・コン・モート、変イ長調、8分の3拍子。2つの主題を用いた変奏曲。
第3楽章 アレグロ、ハ短調、4分の3拍子。3部形式。
第4楽章 アレグロ、ハ長調、4分の4拍子。ソナタ形式。
(西田紘子)
演奏時間:約31分
作曲年代:1804~1808年
初演:1808年12月22日、アン・デア・ウィーン劇場
ARTISTS出演者
指揮クリストフ・エッシェンバッハ
1940年生まれのエッシェンバッハは、1960年代にドイツを代表するピアニストとして活躍、ヘルベルト・フォン・カラヤンとの共演などでも知られた。1980年代からは指揮に活動の重点を移し、パリ管弦楽団、フィラデルフィア管弦楽団、ワシントン・ナショナル交響楽団、ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団など、欧米のオーケストラの要職を歴任した。現在は生地ポーランドのヴロツワフを本拠とする、NFMヴロツワフ・フィルハーモニー管弦楽団の芸術監督を2024年からつとめている。
N響との初共演は1979年11月の定期公演で、ギュンター・ヴァントの指揮でベートーヴェンの《ピアノ協奏曲第1番》の独奏をつとめた。指揮者として定期公演に初めて登場したのは2017年10月で、ブラームスの4曲の交響曲を演奏した。その後も定期公演には2020年1月、2022年4月、2024年4月と客演を重ねている。
19世紀ドイツの交響曲をレパートリーの中核におくエッシェンバッハは、N響とはこれまでにもベートーヴェンの交響曲のうち、《第9番「合唱つき」》と《第7番》の2曲を演奏してきた。伝統や慣習に安易に染まろうとはせず、独自のアプローチと切れ味鋭い響きを特長とする指揮者だけに、今回のベートーヴェン・プログラムでも、鮮烈で個性豊かな音楽を期待したい。
[山崎浩太郎/音楽評論家]
料金
| S席 | A席 | B席 | C席 | D席 | E席 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 一般 | 11,000円 | 9,500円 | 7,600円 | 6,000円 | 5,000円 | 3,000円 |
| ユースチケット | 5,500円 | 4,500円 | 3,500円 | 2,800円 | 1,800円 | 1,400円 |
※価格は税込です。
※定期会員の方は一般料金の10%割引となります。また、先行発売をご利用いただけます(取り扱いはWEBチケットN響・N響ガイドのみ)。
※車いす席についてはN響ガイドへお問い合わせください。
※N響ガイドでのお申し込みは、公演日の1営業日前までとなります。
※券種により1回券のご用意ができない場合があります。
※当日券販売についてはこちらをご覧ください。
※未就学児のご入場はお断りしています。
※開場前に屋内でお待ちいただくスペースはございません。ご了承ください。
ユースチケット
29歳以下の方へのお得なチケットです。
(要登録)
定期会員券
発売開始日
年間会員券/シーズン会員券(AUTUMN)
2026年7月12日(日)10:00am
[定期会員先行発売日: 2026年7月5日(日)10:00am]



