※約2時間の公演となります(休憩20分あり)。
※やむを得ない理由で出演者や曲目等が変更となる場合や、公演が中止となる場合がございます。公演中止の場合をのぞき、チケット代金の払い戻しはいたしません。
ABOUT THIS CONCERT特徴
2026年2月Cプログラム 聴きどころ
「邦人作曲家シリーズ」だ。100年前からNHK交響楽団(当時は新交響楽団)を率いた近衛秀麿の登場。近衛と言えば作曲よりも編曲に「創造の歓(よろこ)び」を見いだした大音楽家。だから今回も「作曲家シリーズ」なのに編曲作品。一方、指揮者マダラシュの愛するコダーイからは、N響との所縁(ゆかり)も深い「邦人作曲家」、間宮芳生(みちお)や外山雄三の音楽のひとつのモデルがみえてこよう。ラヴェル版《展覧会の絵》なら活躍するトランペット独奏はコンチェルトでどうぞ。
(片山杜秀)
PROGRAM曲目
― N響100年特別企画「邦人作曲家シリーズ」 ―
コダーイ/ハンガリー民謡「くじゃく」による変奏曲
ハンガリーが、結ばれたばかりの日独伊三国同盟に加入したのは、1940年11月。第2次世界大戦は前年9月にはじまっている。ハンガリーは生き残りを懸けて、ナチス・ドイツの属国となる選択をしたのだ。バルトークがドイツに接近する祖国を嫌ってブダペストから米国へ旅立ったのは同盟加入前月の10月。盟友のゾルターン・コダーイ(1882~1967)は、ブダペストに居残り、ドイツ、ついでソ連の“衛星国時代”を生き抜いていくことになる。ハンガリーの民族意識を日日の糧としながら。
《ハンガリー民謡「くじゃく」による変奏曲》は1939年11月(すでに大戦中)にアムステルダムで初演された。主題はコダーイがすでに合唱曲化して同時代のハンガリーに広め直していたハンガリーの古謡。くじゃくが囚人たちを解放すべく飛んでくる、といった意の歌詞を持つ。大国への屈従を拒み、民族自立を願望する歌と言ってよい。旋律は「レ・ファ・ソ・ラ・ド」という、日本の民謡音階と同じかたちをとる5音音階に乗る。
全体は、序奏と主題の提示、16の変奏、終曲から成るが、たとえば次のように考えられないか。
静かな序奏から舞曲調で高まる第3変奏までが交響曲で言えば第1楽章。ホルンの刻みに導かれ、歌謡的に高潮し、ティンパニの3連符の繰り返しで結ぶ、第4~6変奏が、第1の緩徐部分。第7~10変奏はスケルツォ。葬送行進曲に至る第11~13変奏が、第2の緩徐部分。フルートの囀(さえず)りに導かれ、圧倒的に高揚する、第14変奏から終曲までがフィナーレ。
要するにシンメトリックな5楽章のようなかたち。バルトークが米国で1943年に完成する《管弦楽のための協奏曲》と似ていなくもない。
(片山杜秀)
演奏時間:約25分
作曲年代:1939年
初演:1939年11月23日、アムステルダム、コンセルトヘボウにて、ウィレム・メンゲルベルク指揮、アムステルダム・コンセルトヘボウ管弦楽団(現ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団)
フンメル/トランペット協奏曲 ホ長調
トランペットは古代からの歴史を持つ楽器だ。しかしその機能も役割も長いこと限定的だった。種も仕掛けもない一本の管を吹く。自然倍音列しか吹き分けられない。さまざまな音程を響かせるには、いろいろな管の長さのトランペットを組み合わせねばならない。軍隊や宮廷儀礼では役立っても、手の込んだ旋律を吹く独奏楽器としては厳しい。
ところがそこに風穴を開けた奏者が居た。アントン・ヴァイディンガーという。18世紀末からのウィーンで活躍した。なにしろ使うトランペットが斬新。管に穴をあけてキイを付け、半音階を吹き分ける。そんな彼のためにハイドンは協奏曲(1796年)を、コジェルフは協奏交響曲(1798年)を、そしてヨハン・ネポムーク・フンメル(1778~1837)はホ長調の協奏曲を作った。
フンメルは少年時代、モーツァルトにピアノを習い、さらにアルブレヒツベルガー、サリエリ、ハイドンに師事した。ウィーン古典派のしんがりと言うべき作曲家である。これら、ヴァイディンガーのための作品群はトランペット音楽の新たな曙(あけぼの)を告げはした。が、肝心のキイ付きトランペットが、遅れて出現したバルブ式にとって代わられ、普及しなかった。フンメルの《協奏曲》はホ長調なのだが、バルブ式の変ロ管トランペットで吹きやすいように変ホ長調に移調されて演奏されることも多かった。今回はホ管トランぺットにより原調で吹かれる。
曲にはかなりモーツァルト趣味がある。第1楽章はホ長調のアレグロ・コン・スピリト。第2楽章はイ短調のアンダンテ。まるでオペラのアリアだ。第3楽章はホ長調の活発なロンド。
(片山杜秀)
演奏時間:約19分
作曲年代:1803年
初演:1804年1月1日、ウィーン、アントン・ヴァイディンガー独奏
ムソルグスキー(近衛秀麿編)/組曲「展覧会の絵」
モーリス・ラヴェル(1875~1937)のオーケストレーション。煌めき、輝き、爆発する。
パリで活躍していた亡命ロシア人の指揮者、セルゲイ・クーセヴィツキーは、管弦楽作家としてのラヴェルに惚(ほ)れ込んでいた。そして閃(ひらめ)いた。モデスト・ムソルグスキー(1839~1881)が、ヴィクトル・ガルトマンの一連の絵画に触発されて書いた、管弦楽の響きへの連想を誘ってやまないピアノ曲集《展覧会の絵》(1874年)を、ラヴェルに交響楽用に編曲してもらえれば成功間違いなし。ラヴェルも破格の編曲料に気を良くした。仕事は1922年に行われ、完成したラヴェル版《展覧会の絵》は、同年秋にもちろん委嘱者の指揮によって初演。好評を博し、クーセヴィツキーはこのラヴェル版をしばらく独占的に演奏した。
ラヴェル版の管弦楽総譜が出版されたのはようやく1929年。他の指揮者も演奏できるようになった。ムソルグスキーの祖国、ロシア帝国改めソビエト連邦で、このラヴェル版が初演されたのは1931年1月という。指揮者は近衛秀麿(1898~1973)。彼は当時、東京で、結成されてまだ数年の新交響楽団(現NHK交響楽団)を率いていたが、1930年から翌年にかけて単身洋行。モスクワにも行き、ペルシムファンスという名のオーケストラを振った。そのときラヴェル版《展覧会の絵》を取り上げたのだ。
本場でのラヴェル版初お目見えの評判はどうだったか。フランス趣味が勝ちすぎ、ロシアらしさが不足するという声も強かった。近衛はなるほどと思い、ラヴェル版を幾分か改めたくなった。そもそも近衛は生涯を通じて編曲魔であった。雅楽を西洋管弦楽にし、シューベルトの弦楽五重奏曲を交響曲にし、ベートーヴェンの交響曲を巨大編成にした。
しかし《展覧会の絵》についてはロシア人の意見を参考にしつつ、ラヴェル版を少しいじるだけ。近衛版と言っても最小限のアプローチだ。でもいかにも違うところもある。いちばん目立つのは最初の〈プロムナード〉だろう。トランペット独奏でない。木管と弦楽で始まる。あとはどうか。たとえば〈カタコンブ〉。ラヴェル版だと1小節目は低音金管だけだが、そこに近衛版は低音木管を重ねる。ラヴェル版だと2小節目以降にやりだすことだ。あるいは〈バーバ・ヤガーの小屋〉。魔女の家の時計が鳴る中間部で、ラヴェルがフルートやクラリネットに振る3度のトレモロの伴奏音型が、近衛だとずっとヴィオラである。他にも、低音を厚くしたり、音色を堅実にしたりする控えめな工夫がいたるところにある。それが近衛の考えるロシアらしさなのだろう。あと、ラヴェル版は、2台のハープと1台のチェレスタを用いるのだが、少なくとも1930年代の日本では難しい。そこで1つずつのハープとピアノに。そこがまただいぶん違って聞こえるだろう。
ということで、全体の構成もむろんラヴェル版と同じだが、念のため確認しよう。「 」内は1934年の近衛版初演時の近衛の言葉に基づく。〈プロムナード〉のあと「蟹股(がにまた)で不格好に歩行する小人を描いた」〈ノーム〉。再び〈プロムナード〉を挟み、「中世の吟遊詩人が歌う」〈古い城〉。3番目の〈プロムナード〉があって、「パリの公園で多くの児童と子守達が遊び争う」〈チュイルリーの庭〉。「ポーランドの悪路を牛が大きい荷車を引く」〈ブィドロ〉。4番目の〈プロムナード〉についで〈卵のからをつけたひなの踊り〉。「二人のポーランド人(一人は金持ちで一人は貧乏人)の肖像」である〈サミュエル・ゴールデンベルクとシュミイレ〉。「市場の雑踏、争う女房たち」を描く〈リモージュの市場〉。「パリの地下墓地に降り立った画家の自画像」であるところの〈カタコンブ〉。ついで実質的には5番目のプロムナード〈死せる言葉による死者への話しかけ〉を経て「ロシアの俚話(りわ)の魔法使いの婆の騎行」を描く〈バーバ・ヤガーの小屋〉。そして最後は「古代スラヴ風のヘルメット型の屋根を持つ大城門の設計図」の音化たる〈キエフの大きな門〉で結ぶ。
(片山杜秀)
演奏時間:約35分
作曲年代:原作のピアノ組曲は1874年、ラヴェルによるオーケストラ編曲版は1922年、近衛秀麿によるオーケストラ編曲版は1934年
初演:1934年5月23日、東京、日比谷公会堂にて、近衛秀麿指揮、新交響楽団
ARTISTS出演者
指揮ゲルゲイ・マダラシュ
ゲルゲイ・マダラシュは、1984年、ブダペスト生まれ。フルート、ヴァイオリン、作曲を学び、リスト音楽院のフルート科、ウィーン国立音楽大学の指揮科を卒業。クラシック音楽に親しむ以前、5歳より、正統的な楽師たち(ロマ民族や農民音楽家)からハンガリーの民俗音楽を学んだ経歴の持ち主でもある。
ディジョン・ブルゴーニュ管弦楽団の音楽監督やハンガリーのサヴァリア交響楽団の首席指揮者を歴任し、ヨーロッパ各地の著名オーケストラに客演。2019年から2025年まで、ベルギー王立リエージュ・フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督を務め、同地生まれのセザール・フランクの《交響詩「しょく罪」》(第1版)、《オラトリオ「八つの幸い」》、《歌劇「フルダ」》の貴重なレコーディングが、各国の音楽雑誌や音楽サイトで高く評価された。古典派から同時代の音楽まで、幅広いレパートリーを備え、楽曲の版にも独自のこだわりを備えているマエストロだ。
2023年11月に初めてN響定期を指揮した際は、十八番のハンガリー・プロであったが、今回もコダーイの傑作を披露。N響首席トランペット奏者の菊本和昭と共演するフンメルの名作を経て、ラストはN響100年の記念年にちなんで近衛秀麿(ひでまろ)が管弦楽編曲したムソルグスキーの組曲《展覧会の絵》という凝った演目が組まれている。マダラシュとN響のコラボレーションに期待したい。
[満津岡信育/音楽評論家]
トランペット菊本和昭(N響首席トランペット奏者)
1980年兵庫県生まれ。京都市立芸術大学首席卒業、同大学院首席修了。フライブルク音楽大学、カールスルーエ音楽大学にて学ぶ。賞歴は第19回日本管打楽器コンクール第1位。第72回日本音楽コンクール第1位および増沢賞。エルスワース・スミス国際トランペット・ソロ・コンペティション第2位など。
京都市交響楽団を経て、2012年よりNHK交響楽団首席奏者。2016年11月公演ではショスタコーヴィチ《ピアノ協奏曲第1番》でトランペット独奏を務めた。
トランペットを早坂宏明、有馬純昭、A. プログ、R. フリードリッヒ、E. H. タールに、室内楽を呉信一に師事。大阪音楽大学客員教授。京都市立芸術大学非常勤講師。
フンメルの協奏曲は、息の長い伸びやかな独奏から、細かな連符が続く素早いパッセージまで、トランペットのさまざまな表情を楽しむことができる作品。オーケストラと息の合った演奏を披露してくれることだろう。
MOVIEムービー
ゲルゲイ・マダラシュ/2026年2月定期公演 Cプログラムについて― N響100年特別企画「邦人作曲家シリーズ」 ―
料金
| S席 | A席 | B席 | C席 | D席 | E席 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 一般 | 10,000円 | 8,500円 | 6,500円 | 5,400円 | 4,300円 | 2,200円 |
| ユースチケット | 5,000円 | 4,000円 | 3,100円 | 2,550円 | 1,500円 | 1,000円 |
※価格は税込です。
※定期会員の方は一般料金の10%割引となります。また、先行発売をご利用いただけます(取り扱いはWEBチケットN響・N響ガイドのみ)。
※車いす席についてはN響ガイドへお問い合わせください。
※N響ガイドでのお申し込みは、公演日の1営業日前までとなります。
※券種により1回券のご用意ができない場合があります。
※当日券販売についてはこちらをご覧ください。
※未就学児のご入場はお断りしています。
※開場前に屋内でお待ちいただくスペースはございません。ご了承ください。
ユースチケット
29歳以下の方へのお得なチケットです。
(要登録)
定期会員券
発売開始日
年間会員券
2025年7月13日(日)10:00am
[定期会員先行発売日: 2025年7月6日(日)10:00am]
シーズン会員券(WINTER)
2025年10月17日(金)10:00am
[定期会員先行発売日: 2025年10月14日(火)10:00am]



