※約2時間の公演となります(休憩20分あり)。
※やむを得ない理由で出演者や曲目等が変更となる場合や、公演が中止となる場合がございます。公演中止の場合をのぞき、チケット代金の払い戻しはいたしません。
ABOUT THIS CONCERT特徴
2026年2月Aプログラム 聴きどころ
シューマンとワーグナーは、いわば水と油。かたやピアノ曲や歌曲で、かたや長大な楽劇で有名だ。しかしフィリップ・ジョルダンは、この2人の交差点を突いてきた。ライン川である。両者がこの大河川に注目したのは、偶然ではなかろう。19世紀なかばのドイツは、いまだ政治的に統一された国ではなかった。だからこそ「自然」に、言語や文化とならんで、アイデンティティを求めたのだ。時代状況が芸術を生む。だがその芸術は多様である。
(舩木篤也)
PROGRAM曲目
シューマン/交響曲 第3番 変ホ長調 作品97「ライン」
初期ドイツ・ロマン派の代表格、ローベルト・シューマン(1810〜1856)の創作期は、大きくライプツィヒ時代、ドレスデン時代、デュッセルドルフ時代に分けられるが、東部から西のライン地方、デュッセルドルフに移住したのは、1850年9月のこと。同市の音楽監督に就任したのだ。
彼はかの地に着いてすぐに、妻でピアニストのクララとともにライン川をケルン方面に上って旅をする。本作はそこで得た印象をもとに書かれたというが、「音による風景画」として聴く必要はないだろう。「ライン」の呼称は、デュッセルドルフの楽団のコンサートマスターが言い出したものだった。完成はポスト着任後3か月が経った12月。その速筆ぶりにクララも驚いたという。なお、こんにち《第4番》とされているニ短調交響曲(1851年改訂稿)は、その初稿(1841年)が《第1番》の次に書かれているので、実際はこの「ライン」こそが、彼にとって4番目の、すなわち最後の交響曲ということになる。
1851年に同地でシューマンが指揮した初演は好評だったが、そうした反応は長くは続かなかった。幻覚症状や鬱状態に苦しめられ、指揮者業にも支障をきたすようになったのだ。1854年2月27日、シューマンはついにライン川に身を投げ、自死をはかる。その後は精神療養所に収容され、1856年7月29日に46歳で永眠した。
第1楽章。初めて聴く者は、冒頭でおおきな3拍子(2分の3拍子)を感じるに違いない。ところが、すぐにズレを覚えることになる。実際は4分の3拍子。つまり123・123の拍を12・31・23とグルーピングする形で書いているため、拍子感覚が惑わされるのだ。同様のトリックは、遊覧船に乗るような楽し気な第2楽章でも感じられよう。川の水面がゆれ続けるように「規則的な何か」に固まらないのは、この作品の原理とも言える。第3楽章のような牧歌的な音楽もあれば、ケルンの大聖堂に霊感を得たといわれる厳かな第4楽章もある。第5楽章にいたっては、シューマンが1849年にドレスデンで書いた共和主義的な《4つの行進曲》(作品76)のこだまを聴く者もあるくらい。統一国家ドイツの成立をもにらんだ、革命の機運が高まっていた時代のピアノ曲である。ライン川がドイツの「父なる存在」と言われたことも思い出そう。
(舩木篤也)
演奏時間:約32分
作曲年代:1850年12月完成
初演:1851年2月6日、作曲者自身の指揮、デュッセルドルフ
ワーグナー/楽劇「神々のたそがれ」 ─「ジークフリートのラインの旅」 「ジークフリートの葬送行進曲」 「ブリュンヒルデの自己犠牲」*
リヒャルト・ワーグナー(1813〜1883)は、シューマンと同じ世代に属し、一時期ドレスデンで交流を持ったこともあるが、対照的な「新ドイツ楽派」の筆頭格とみなされている。劇詩人でもあり、自ら台本を書き、半音階を駆使し、もっぱら音楽劇の創作に注力した。そんな彼の大作、舞台祝祭劇《ニーベルングの指環》は、中世ドイツの英雄叙事詩『ニーベルンゲンの歌』を下敷きに、北欧神話とギリシア神話の要素を混ぜて作り上げた独自の神話世界。前夜祭《ラインの黄金》、第1夜《ワルキューレ》、第2夜《ジークフリート》、第3夜《神々のたそがれ》の4部からなり、完成は1874年。最初の構想から数えると4半世紀を要したことになる。
ワーグナーには、歌中心のオペラとは異なる、管弦楽と言葉と身ぶりに重きをおいた「ドラマ」を成す夢があった。日本語で通常「楽劇」と呼ばれているものは、この「ドラマ」を指すと考えてよいだろう。《ニーベルングの指環》は、そんな夢を最大規模に実現したもので、テーマの上では、近代資本主義社会への批判が核心にある。それを神話という外皮で包んだのだ。ワーグナーは、誰もが欲しがる指環を「有価証券のようなものだ」と言っている。
神々の長、ウォータンは、この世の中心「世界樹」から槍(やり)を作り、そこに「契約」の文字を刻んで世界を統(す)べようとした。いっぽう、地底族ニーベルングのかしらアルベリヒは、ライン川に棲(す)む妖精の娘たちから黄金を強奪、そこから世界制覇の指環をこねあげた。この指環はしかし、その後ウォータンが奪い、次いで巨人族の手に渡る。そのようにして遠大な指環争奪戦がくり広げられるのだが──。
《神々のたそがれ》は、上記のとおり4部作最後の楽劇で、指環はいま、ウォータンの孫ジークフリートと娘にあたるブリュンヒルデのもとにある。ウォータンは指環を、いまや夫婦となったこの2人から難なく取り返せそうなものだが、何も知らない勇者ジークフリートによって、主神の力の象徴である槍はへし折られている。娘ブリュンヒルデにいたっては、すでに勘当を言い渡した相手だ。ただもう神々の没落を予感するほかない。
本日はまず序幕から〈ジークフリートのラインの旅〉を聴く。ある日の夜明け。ジークフリートが武勇をおさめるべく、ブリュンヒルデと暮らす岩屋から旅立とうとしている。2人が高らかに別れの言葉を交わすと(本日は歌われない)、いざ出発、そうしてライン川への旅が始まる。
さて、指環を狙う人物に、地底族アルベリヒの息子にあたるハーゲンがいた。指環を持つジークフリートは、彼の仕組んだ陰謀に巻き込まれ、第3幕で突き殺されてしまう。その直後に演奏されるのが間奏曲〈ジークフリートの葬送行進曲〉だ。この英雄にまつわる数々の示導動機(ライトモティーフ)が去来する。そこには、彼を生んですぐに世を去った母、ジークリンデの、悲哀に満ちた動機もある。
〈ブリュンヒルデの自己犠牲〉は第3幕の終わり、4部作のフィナーレにあたる。ブリュンヒルデが歌うのは、まず死んだ夫への苦々しい追慕。彼女自身も陰謀に巻き込まれ、第2幕で一度は夫を恨み、彼の急所をハーゲンに教えてしまったのだった。だが、告発されるべきは、すべての結果を招いた主神ウォータンである。「もうやめるのです、憩え、神よ!」。
ブリュンヒルデは夫の亡(な)き骸(がら)から指環を取り、自らも死におもむく。夫とともに火葬されるべく彼女が投じた炎は、2人ばかりか、神々の居城ワルハル(ワルハラ)をも焼きつくすだろう。ライン川が氾濫し、ラインの娘たちが指環を取り戻す。〈愛による救済の動機〉が高らかに鳴りわたり、幕となる。
(舩木篤也)
演奏時間:約36分
作曲年代:1874年完成
初演:[《ニーベルングの指環》全4作として]1876年8月13日《ラインの黄金》、14日《ワルキューレ》、16日《ジークフリート》、17日《神々のたそがれ》
ARTISTS出演者
指揮フィリップ・ジョルダン
フィリップ・ジョルダンは現在では数少ない劇場叩(たた)き上げの指揮者だ。世界的名指揮者アルミン・ジョルダンのもと、スイスのチューリヒに生まれ、ウルム市立歌劇場とベルリン国立歌劇場のカペルマイスターを出発点に、グラーツ歌劇場およびグラーツ・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者、パリ・オペラ座音楽監督、ウィーン交響楽団首席指揮者、ウィーン国立歌劇場音楽監督を歴任。ベルリンではダニエル・バレンボイムのアシスタントを務め、多くを学んだという。2025年のウィーン国立歌劇場日本公演では《ばらの騎士》を指揮して好評を博した。
メトロポリタン歌劇場、コヴェント・ガーデン王立歌劇場、ミラノ・スカラ座など世界の主要歌劇場に客演するほか、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団など、コンサートでもトップレベルの楽団から招かれている。2027年からはフランス国立管弦楽団音楽監督に就任する。
ドイツ音楽はジョルダンのレパートリーの中核をなす。とりわけワーグナーを得意としており、《楽劇「ニーベルングの指環」》をこれまでにパリ・オペラ座、ウィーン国立歌劇場、メトロポリタン歌劇場で指揮している。作品の隅々まで知り尽くしたマエストロが、初共演のN響と、この大作の最終章である《楽劇「神々のたそがれ」》のエッセンスに迫る。
[飯尾洋一/音楽ジャーナリスト]
ソプラノタマラ・ウィルソン*
当代にあって貴重なリリック・ドラマティック・ソプラノの逸材。強靭(きょうじん)さとしなやかさを兼ね備えたドラマティックな美声はクリアでありながら熱気もはらみ、フレージングは雄大で、テキストの感情を伝える才にも恵まれる。消え入るように繊細な弱音から高音域でのブリリアントな爆発まで、声のポテンシャルは絶大だ。
アメリカ、アリゾナ生まれ。2004年、メトロポリタン・オペラの全米オーディションのファイナリストに選ばれ、ヒューストン・グランド・オペラのヤング・アーティスト・プログラムに参加。2007年、同オペラでヴェルディの《仮面舞踏会》アメーリア役でオペラ・デビューを果たして絶賛され、以来国際的にキャリアを重ねている。ヴェルディ歌手として名声を確立したが、近年はワーグナーのレパートリーにも積極的に取り組んでおり、2025年の夏にはサンタフェ・オペラの《ワルキューレ》でブリュンヒルデ役にデビュー、「サンタフェ・オペラのワーグナー史に新たな章を刻んだ」と絶賛された。ワーグナー・オペラで評価が高いフィリップ・ジョルダンとの共演は、上り坂の2人による旬のワーグナーになるに違いない。
[加藤浩子/音楽評論家]
DOWNLOADダウンロード
料金
| S席 | A席 | B席 | C席 | D席 | E席 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 一般 | 10,000円 | 8,500円 | 6,500円 | 5,400円 | 4,300円 | 2,200円 |
| ユースチケット | 5,000円 | 4,000円 | 3,100円 | 2,550円 | 1,500円 | 1,000円 |
※価格は税込です。
※定期会員の方は一般料金の10%割引となります。また、先行発売をご利用いただけます(取り扱いはWEBチケットN響・N響ガイドのみ)。
※車いす席についてはN響ガイドへお問い合わせください。
※N響ガイドでのお申し込みは、公演日の1営業日前までとなります。
※券種により1回券のご用意ができない場合があります。
※当日券販売についてはこちらをご覧ください。
※未就学児のご入場はお断りしています。
※開場前に屋内でお待ちいただくスペースはございません。ご了承ください。
ユースチケット
29歳以下の方へのお得なチケットです。
(要登録)
定期会員券
発売開始日
年間会員券
2025年7月13日(日)10:00am
[定期会員先行発売日: 2025年7月6日(日)10:00am]
シーズン会員券(WINTER)
2025年10月17日(金)10:00am
[定期会員先行発売日: 2025年10月14日(火)10:00am]





