ページの本文へ

  1. ホーム
  2. コンサート情報
  3. 定期公演
  4. Aプログラム
  5. 第2051回 定期公演 Aプログラム

第2051回 定期公演 Aプログラム

NHKホール
Googleマップ 座席表

※約2時間の公演となります(休憩20分あり)。
※やむを得ない理由で出演者や曲目等が変更となる場合や、公演が中止となる場合がございます。公演中止の場合をのぞき、チケット代金の払い戻しはいたしません。

ABOUT THIS CONCERT特徴

2025年12月Aプログラム 聴きどころ

このプログラムでは、異なるふたつの「語り」が響き合う。
ショスタコーヴィチの《ヴァイオリン協奏曲》では独奏が一人称で内面を告白し、ツェムリンスキーの《交響詩「人魚姫」》では管弦楽が三人称で童話を物語る。とはいえ、語りの視点は違っても、そこに映し出されるのは作者自身の心の影にほかならない。一方ではスターリン政権の重圧下での苦悩、そしてもう一方ではアルマ・シントラーへの叶わぬ愛の痛み……。対照的なふたつの声を続けて聴けば、20世紀音楽の多彩な感情が見えてくるに違いない。

(浅井佑太)

PROGRAM曲目

ショスタコーヴィチ/ヴァイオリン協奏曲 第1番 イ短調 作品77

20世紀ロシアを代表する作曲家ドミートリ・ショスタコーヴィチ(1906~1975)は、生涯を通じて「創作の自由」と「政治的圧力」のはざまで揺れ続けた。
《ヴァイオリン協奏曲第1番》が書かれたのは1947年から1948年──さまざまなしこりがあったとはいえ、政府との関係も安定し、彼が比較的好待遇を受けていた時期である。しかし平穏な日々は長くは続かない。作品完成間際の1948年2月、スターリン政権による大規模な芸術統制(いわゆる「ジダーノフ批判」)が開始され、ショスタコーヴィチは突如「形式主義者」として糾弾されることになる。彼の音楽は過度に前衛的で、ソヴィエト人民に寄り添っていないというのだ。いまや「反人民的作曲家」の烙印(らくいん)を押された彼に作品を発表する道は閉ざされ、この協奏曲は作者の引き出しに封印されるほかなかった。
初演が実現するのは、スターリンの死後、雪解けムードが訪れた1955年10月になってからである。独奏を務めたのは献呈先でもある名手ダヴィッド・オイストラフで、指揮はエフゲーニ・ムラヴィンスキーによる。作曲から実に8年近くが経とうとしていた(なおこの間に、オイストラフとの協議の上、作品には若干の改訂が施されている)。
本作は全4楽章から成り、交響曲に匹敵するスケールと劇的性格をもつ。瞑想(めいそう)的な第1楽章(ノクターン)では、陰影に富んだ管弦楽の上で、独奏ヴァイオリンが長い旋律線をたゆたわせるように歌う。一転して、第2楽章(スケルツォ)は毒気に満ち、疾走する音楽の中にショスタコーヴィチの自伝的暗号「DSCH音型(レ・ミ♭・ド・シ)」が鋭く刻み込まれる。第3楽章(パッサカリア)は全曲の中心に据えられた荘厳な変奏曲で、重々しい低音の主題の上に独奏ヴァイオリンが激情を増していく。やがて長大なカデンツァを経て、第4楽章(ブルレスケ)へとなだれ込むと、民俗舞曲風の音楽が嵐のように駆け抜け、全曲を華やかに締めくくる。
全体としては、「内省的な」奇数楽章と「外向的な」偶数楽章を行き来しつつも、その表面下には常に苦悩と風刺が見え隠れする。個人的告白と偽りの祝祭性という両極が拮抗(きっこう)するこの作品は、政治的弾圧に抗(あらが)い続けたショスタコーヴィチの姿そのものといっても過言ではない。

(浅井佑太)

演奏時間:約38分
作曲年代:1947〜1948年
初演:1955年、10月29日、レニングラード(現サンクトペテルブルク)、指揮エフゲーニ・ムラヴィンスキー、レニングラード・フィルハーモニー交響楽団、独奏ダヴィッド・オイストラフ

ツェムリンスキー/交響詩「人魚姫」

輝かしい未来を嘱望されながらも、歴史の隅に追いやられた作曲家──アレクサンダー・フォン・ツェムリンスキー(1871~1942)ほど過小評価されてきた存在もそうはいまい。
世紀転換期のウィーンにおいて、彼は次世代を担うべき新星だった。早くも音楽院の学生時代にブラームスに才能を認められ、卒業後は28歳にして、マーラーの指揮でオペラ《昔あるとき》が初演されるなど、めきめきと頭角を現しはじめる。しかし、ある意味で最大の転機となるのは、1895年に3歳年下のシェーンベルクと出会ったことだろう。ツェムリンスキーは当時まだアマチュア作曲家であったシェーンベルクの唯一の師/親友として大きな影響を与えるも、自らは後期ロマン派の枠組みにとどまり続けたこともあり、次第にかつての弟子の影に隠れていくことになる。
《交響詩「人魚姫」》は両者が深い関係にあった1902年から1903年の作品であると同時に、ツェムリンスキーの最良の成果のひとつといって間違いない。陶酔と苦悩の濃密なドラマ、名人芸の域にあるオーケストレーション、それでいて揺るぎない構成感──ここには管弦楽の魅力と技術の粋が余すところなく詰め込まれているのだ。
本作はアンデルセンの童話『人魚姫』を下敷きにした「幻想曲」であり、全3部を通じて物語の心理的ドラマが描き出される。深い海底、荒れ狂う嵐、そして人魚姫による海に投げ出された王子の救出(第1部)、人間界の王子に恋した人魚姫は、魔女との取引によって、声を犠牲にして足を得るも(第2部)、その想いは報われず、最後は泡となって消え、天上へと昇華する(第3部)──そして、その筋書きには、ツェムリンスキー自身の失恋体験(アルマ・シントラー、のちのマーラー夫人との破局)が重ねられてもいる。実際に、届かぬ愛への憧れ、声を失うという自己喪失、肉体の滅びを経て魂が救われるという構図は、この時期の彼の精神状況を表すものだろう。
《人魚姫》は1905年にウィーンで初演されおおむね好評を博し、ベルリンとプラハにおける再演時の評判も上々だった。しかしながら、奇妙にもツェムリンスキー自身はこの作品が気に入らなかったようで、出版を試みることもなかった。その理由は定かではないが、同じ演奏会で初演されたシェーンベルクの《交響詩「ペレアスとメリザンド」》(1902~1903年作曲)が巻き起こした激しい賛否を前に本作が霞(かす)んでしまったことが一因にはあっただろう。
以後、《人魚姫》は長らく忘れられていたが、1976年に自筆譜が発見され、いまではツェムリンスキーの最も人気のある作品のひとつに数えられる。なお本日演奏されるのは2013年に出版された初稿版で、ここには初演前に削除された第2部中盤の「海の魔女」のエピソードが復元/収録されている。約85小節、演奏時間にして5分ほど。カットの理由の一端は、ウィーンの聴衆の保守的嗜好(しこう)を考慮したことにあったと思われる。事実、このエピソードは曲全体で最も大胆かつ不協和な書法が用いられている部分でもあり、本日はツェムリンスキーの進歩的な一面を堪能できることだろう。
あと10年、いや5年早く世に出ていれば、記念碑的傑作として歴史に名を刻んでいたのではないか──そう思わずにはいられない珠玉の管弦楽作品である。

(浅井佑太)

演奏時間:約40分
作曲年代:1902〜1903年
初演:1905年1月25日、ウィーン、楽友協会大ホールにて、作曲者自身の指揮、ウィーン演奏協会管弦楽団

11/29:J.S.バッハ/無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第2番 ニ短調 BWV1004 ― 「サラバンド」
11/30:J.S.バッハ/無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第1番 ロ短調 BWV1002 ― 「サラバンド」
ヴァイオリン:レオニダス・カヴァコス

 

はじめてのクラシック
「アレクサンダー・フォン・ツェムリンスキー」


ARTISTS出演者

ファビオ・ルイージさんの画像 指揮ファビオ・ルイージ

イタリア・ジェノヴァ出身。2001年にN響と初めて共演し、2022年9月首席指揮者に就任。就任記念公演でヴェルディ《レクイエム》を、2023年12月のN響第2000回定期公演でマーラー《一千人の交響曲》を指揮した。2024年には台湾公演を率い、翌2025年5月にはアムステルダム・コンセルトヘボウでの「マーラー・フェスティバル」、「プラハの春音楽祭」、「ドレスデン音楽祭」への参加を含むヨーロッパ公演を成功に導いた。なおN響は「マーラー・フェスティバル」に参加したアジア最初のオーケストラとなり、《交響曲第3番》《同第4番》の演奏は評論家から称賛を集めた。
現在、デンマーク国立交響楽団首席指揮者およびダラス交響楽団音楽監督。またチューリヒ歌劇場音楽総監督、メトロポリタン歌劇場首席指揮者、ウィーン交響楽団首席指揮者、ドレスデン国立歌劇場管弦楽団および同歌劇場音楽総監督、MDR(中部ドイツ放送)交響楽団プリンシパル・コンダクターおよびチーフ・コンダクター、スイス・ロマンド管弦楽団芸術監督、ウィーン・トーンキュンストラー管弦楽団首席指揮者、グラーツ交響楽団首席指揮者などを歴任。このほか、イタリアのプーリア州マルティナ・フランカで行われるヴァッレ・ディートリア音楽祭音楽監督、トリノを本拠とするRAI国立交響楽団の名誉指揮者も務めている。また、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団、サイトウ・キネン・オーケストラなど最高峰のオーケストラ、歌劇場、音楽祭に定期的に客演している。
録音ではデンマーク国立交響楽団との『ニルセン交響曲全集』が2023年にオーストラリアのライムライト賞とイタリアのアッビアーティ賞を受賞し、その第1集は『グラモフォン』誌の年間最優秀録音賞に選ばれた。またメトロポリタン歌劇場とのワーグナー《ジークフリート》《神々のたそがれ》のDVDはグラミー賞を受賞した。NHK交響楽団との初CD『ブルックナー/交響曲第8番(初稿)』は、2025年5月にリリースされた。
彼は優れた作曲家、調香師でもある。

レオニダス・カヴァコスさんの画像 ヴァイオリンレオニダス・カヴァコス

ショスタコーヴィチ没後50年の2025年、現代最高峰のヴァイオリニスト、レオニダス・カヴァコスが名作の誉れ高い《ヴァイオリン協奏曲第1番》を弾く。音楽の深淵を見つめたかのようなノクターン、パッサカリア、壮大なカデンツァ、音楽が乱舞するブルレスケと呼応、交歓するカヴァコスへの期待はまさに限りない。
ギリシャ、アテネの音楽一家の出身。地元のアカデミーで学んだ後、米インディアナ大学で名伯楽ジョゼフ・ギンゴールドのもとで技と音楽に磨(みが)きをかけた。ヘルシンキのシベリウス、インディアナポリス、ニューヨークのナウムバーグ、伊ジェノヴァのパガニーニ各国際コンクールに優勝または入賞。いっぽう指揮者としても活躍し、カメラータ・ザルツブルクの首席指揮者も務めた。2025–2026年シーズンもソリストとしてロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団、ニューヨーク・フィルハーモニックほかと共演。近年はバッハ、ベートーヴェンを軸とした多彩なプロジェクト、録音も進行中だ。NHK交響楽団との初共演は2000年12月、シャルル・デュトワ指揮のチャイコフスキー。前回の出演は2021年10月、ブロムシュテット指揮のブラームスでいずれも賞賛を博している。

[奥田佳道/音楽評論家]

MOVIEムービー

ファビオ・ルイージ/ツェムリンスキー《交響詩「人魚姫」》の魅力を語る

DOWNLOADダウンロード

TICKETチケット

定期公演
Aプログラム

第2051回 定期公演
Aプログラム

NHKホール
Googleマップ
座席表

1回券発売開始日

定期会員先行発売日:2025年10月22日(水)10:00am
定期会員について

一般発売日:2025年10月26日(日)10:00am

チケット購入

料金

S席 A席 B席 C席 D席 E席
一般 11,000円 9,500円 7,600円 6,000円 5,000円 3,000円
ユースチケット 5,500円 4,500円 3,500円 2,800円 1,800円 1,400円

※価格は税込です。
※定期会員の方は一般料金の10%割引となります。また、先行発売をご利用いただけます(取り扱いはWEBチケットN響・N響ガイドのみ)。
※車いす席についてはN響ガイドへお問い合わせください。
N響ガイドでのお申し込みは、公演日の1営業日前までとなります。
※券種により1回券のご用意ができない場合があります。
※当日券販売についてはこちらをご覧ください。
※未就学児のご入場はお断りしています。
※開場前に屋内でお待ちいただくスペースはございません。ご了承ください。

ユースチケット

29歳以下の方へのお得なチケットです。
(要登録)

定期会員券
発売開始日

年間会員券
2025年7月13日(日)10:00am
[定期会員先行発売日: 2025年7月6日(日)10:00am
シーズン会員券(WINTER)
2025年10月17日(金)10:00am
[定期会員先行発売日: 2025年10月14日(火)10:00am

お問い合わせ・
お申し込み

主催:NHK / NHK交響楽団

閉じる
公演カレンダーを閉じる