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- 第2041回 定期公演 Cプログラム
※約2時間の公演となります(休憩20分あり)。
※やむを得ない理由で出演者や曲目等が変更となる場合や、公演が中止となる場合がございます。公演中止の場合をのぞき、チケット代金の払い戻しはいたしません。
ABOUT THIS CONCERT特徴
2025年6月Cプログラム 聴きどころ
1906年、9歳になるかならないかのエーリヒ・ウォルフガング・コルンゴルト(1897〜1957)は父に連れられ、当時ウィーン宮廷歌劇場の音楽監督を務めていたグスタフ・マーラー(1860~1911)を訪ねた。作曲したばかりのカンタータをピアノで弾いて聴かせると、マーラーは「天才だ!」と叫んだという。マーラーの提案で、コルンゴルトはツェムリンスキーに師事することとなり、ウィーンから世界を席巻(せっけん)する作曲家へと育っていった。
(中村伸子)
PROGRAM曲目
コルンゴルト/ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品35
そのコルンゴルトが、第2次世界大戦中の亡命先ハリウッドで書いた映画音楽をもとに完成させたのが《ヴァイオリン協奏曲》である。コルンゴルトがアメリカでも交友を持ったマーラーの妻、アルマ・マーラー・ヴェルフェルに捧げられている。
オーストリア・ハンガリー帝国ブリュン(現チェコのブルノ)のユダヤ系家庭に生まれたコルンゴルトは、4歳のときに家族でウィーンに移り住む。ウィーンの音楽シーンに大きな影響力を持った音楽批評家の父ユリウスは、息子を世に出すことに慎重で、12歳のコルンゴルトのピアノ作品を有識者に送り、公開しないことを条件に意見を仰ぐ。ところが、ブダペストの批評家アウグスト・ベーアは「成熟し想像力豊かな構成、遊び心にあふれた形式、並はずれたリズムの多様性、そして最新の和声への深い理解」に驚愕(きょうがく)し、地元紙に大きな記事を載せてしまう。これをきっかけにコルンゴルトの名前はヨーロッパ中に広まることとなった。
コルンゴルトはオペラ作曲家へと成長し、23歳で完成された《歌劇「死の都」》(作品12、1920年初演)はヨーロッパのみならずアメリカでも上演される大ヒットとなった。シェイクスピアの『夏の夜の夢』の映画化の企画で、メンデルスゾーンの音楽を編曲・指揮する仕事のために1934年にはじめてハリウッドを訪れたコルンゴルトだが、3度目のハリウッド滞在中の1938年3月にナチス・ドイツがオーストリアを併合すると、ウィーンに戻ることができなくなり、亡命を決意し家族を呼び寄せる。1943年にはアメリカ市民権を獲得し、ワーナー・ブラザース社を中心に約20作の映画音楽を手がけた。
「ヒトラーの暗雲が世界にたちこめているうちは」(コルンゴルト)演奏会のための音楽を書かないと心に決めていたコルンゴルトだったが、終戦が近づくとコンサートホールへの復帰の準備に取り掛かる。そのひとつが《ヴァイオリン協奏曲》である。交友のあったヴァイオリニスト、ブロニスラフ・フーベルマンの提案で作曲が始められ、自身が音楽を担当した4つの映画のテーマが再利用された──『砂漠の朝』(1937年公開、第1楽章に利用)、『革命児フアレス』(1939年公開、第1楽章)、『風雲児アドヴァース』(1936年公開、第2楽章)、『放浪の王子』(1937年公開、第3楽章)。公開の終わった映画の音楽が再び聴かれることがほとんどなかった当時、コルンゴルトは、バレエ音楽や劇音楽のように映画音楽が単独でコンサートのレパートリーとなることを望んでいたのである。
3楽章からなる本作品は、世紀転換期ウィーンの耽美(たんび)的な音楽語法とハリウッド映画音楽の華麗さが溶け合う、高度な技巧を湛(たた)えた作品である。
(中村伸子)
演奏時間:約23分
作曲年代:1945年
初演:1947年2月15日セントルイスにて、ヤッシャ・ハイフェッツ独奏、ヴラディーミル・ゴルシュマン指揮、セントルイス交響楽団
マーラー/交響曲 第1番 ニ長調「巨人」
「その才能がまだ開花していない、才能ある音楽家による有望な若手作品」とは、マーラーの《交響曲第1番》が《交響詩》という作品名で披露された1889年11月のブダペストでの初演の評である。その筆者は、21年後にコルンゴルトの才能を世に知らせることとなるブダペストの批評家アウグスト・ベーアであった。
オーストリア・ハンガリー帝国の小さな村カリシュト(現チェコのカリシチェ)に生まれたマーラーは、ウィーンで学ぶ。保養地や小都市の指揮者を経てカッセル宮廷歌劇場の常任指揮者を務めていた1884年に、のちに《交響曲第1番》となる音楽の作曲が始められた(近年の研究では、《交響曲第1番》のルーツを1880年まで遡れる可能性も指摘されている)。6月には劇音楽の一部として〈花の章〉が書かれ、同年末からは、《交響曲第1番》の第1楽章と第3楽章で引用される《さすらう若者の歌》が作曲された。この時点から、1888年春に「6週間ほとんどずっと机に向かって」(マーラー)完成させるまでの詳しい創作過程は明らかになっていない。1889年11月、当時ハンガリー王立歌劇場の監督であったマーラー自身の指揮で、のちに削除される〈花の章〉を含む5つの楽章からなる《交響詩》として初演された。
マーラーはその後、彼が最後にこの作品を自ら指揮した1909年12月のニューヨーク公演の前後に至るまで、再演のたびに大小の変更を施した。とりわけ、「高い技術ゆえに派手な色づかいや誇張した表現に陥りやすい」というベーアの手厳しい指摘に応えるかのように、「見通しよく美しく、完全に」(マーラー)聴こえるようオーケストレーションに改良を重ねた。
また、1893年10月のハンブルク公演の際には、マーラーの愛読書であったとされるジャン・パウルの同名の小説に由来する「巨人」という新たな標題とともに、第1楽章「春そして終わりなし」、第3楽章(現第2楽章)「帆をいっぱいに張って」、第4楽章(現第3楽章)「座礁!」、第5楽章(現第4楽章)「地獄から」といった各楽章の副題と説明書きが加えられた。
ところが、1896年3月のベルリン公演のための改訂では、標題の「巨人」と副題、説明書きが取り除かれ、新ドイツ楽派の系譜を印象づけていた《交響詩》から《交響曲ニ長調》へと楽曲名が変更された。同時に第2楽章〈花の章〉が削除され、4楽章形式となる。マーラーは、この作品と文学などの他の芸術領域との関わりはまるでなかったことのように扱い、純粋芸術としての伝統的な交響曲のあり方に傾倒していったようである。後年にマーラー自身が「いわゆる『巨人』」と言い表すことはあったものの、1898/99年にマーラーの監督のもとで《交響曲第1番》として初めて印刷・出版された際に標題は付けられていない。
第1楽章 ゆっくりと、引きずるように、自然音のように。ニ長調。4分の4拍子。牧歌的な主題が展開される、生命の躍動感に満ちたソナタ形式の楽章。
第2楽章 力強い動きをもって、しかし速すぎずに。イ長調。4分の3拍子。レントラー舞曲を中心とし、素朴さとユーモアが交錯する3部形式のスケルツォ。
第3楽章 厳粛に悠然と、引きずらずに。ニ短調。4分の4拍子。童謡《フレール・ジャック》(オーストリアでは《ブルーダー・ヤーコプ》または《ブルーダー・マーティン》として知られる)を短調で引用した、皮肉に満ちた葬送行進曲。
第4楽章 嵐のように速く。ヘ短調。2分の2拍子。シンバルの爆発するような一撃にはじまり、苦悩から勝利へと向かう英雄的な終楽章。
(中村伸子)
演奏時間:約55分
作曲年代:[交響詩版]1888年 [交響曲版]1896年
初演:[交響詩版]1889年11月20日、ブダペストにて、作曲者自身による指揮、ブダペスト・フィルハーモニー管弦楽団 [交響曲版]1896年3月16日、ベルリンにて、作曲者自身による指揮、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
ARTISTS出演者
指揮タルモ・ペルトコスキ
「2000年生まれの指揮者」という存在を想像できるだろうか。しかも各地の楽団でいくつもポストを持つ若い指揮者だ。フィンランド出身のタルモ・ペルトコスキは、14歳でヨルマ・パヌラに学び、シベリウス音楽院でサカリ・オラモに師事。ハンヌ・リントゥ、ユッカ・ペッカ・サラステ、エサ・ペッカ・サロネンらの指導も受ける。2022年1月、ドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団の首席客演指揮者に抜擢(ばってき)されて脚光を浴びると、同年5月にラトヴィア国立交響楽団の音楽監督兼芸術監督、9月にロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団の首席客演指揮者、12月にトゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団の音楽監督への就任が発表された。これほどの短期間で国際的なキャリアを築いた指揮者は前代未聞だろう。さらに2026–27シーズンからは香港フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督に就任する。エウラヨキ・ベルカント音楽祭でワーグナーの楽劇《ニーベルングの指環》全作を指揮するなど、オペラの経験も積む。
名門レーベルからはドイツ・カンマーフィルを指揮したモーツァルトの交響曲集をリリース済み。大胆かつ斬新な解釈に加え、配信では曲間に自らのピアノによる即興演奏をはさんで話題を呼んだ。
ペルトコスキはマーラーにも積極的に取り組んでいる。N響からどんなサウンドを引き出してくれるのか、大いに注目したい。
[飯尾洋一/音楽ジャーナリスト]
ヴァイオリンダニエル・ロザコヴィッチ
2001年ストックホルム生まれのダニエル・ロザコヴィッチは6歳からヴァイオリンを習い始め、早くも、その2年後にはウラディーミル・スピヴァコフ指揮モスクワ・ヴィルトゥオーゾ室内管弦楽団との共演で協奏曲デビューを果たした。彼の演奏会はフランスのフィガロ紙で「完璧な技巧。たぐいまれな才能」と絶賛されるなど、常に高い評価を獲得している。巨匠イヴリー・ギトリスもその才能に感銘を受けて、テルアヴィヴの音楽祭に招き、バッハの《2つのヴァイオリンのための協奏曲》を共演したほどである。
ロザコヴィッチはウィーン国立音楽大学でドラ・シュヴァルツベルク教授に、カールスルーエ音楽大学ではヨーゼフ・リシン教授に学んだ。すでに世界各地の主要なオーケストラと共演を重ねており、2016年にドイツの老舗レーベルと専属契約を結び、同社の最年少専属契約アーティストとなった。NHK交響楽団とは初共演となるが、アメリカで活躍した天才作曲家コルンゴルトの傑作《ヴァイオリン協奏曲》で、その美音と素晴らしいテクニックを披露してくれるに違いない。
[片桐卓也/音楽評論家]
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料金
S席 | A席 | B席 | C席 | D席 | E席 | |
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一般 | 10,000円 | 8,500円 | 6,500円 | 5,400円 | 4,300円 | 2,200円 |
ユースチケット | 5,000円 | 4,000円 | 3,100円 | 2,550円 | 1,500円 | 1,000円 |
※価格は税込です。
※定期会員の方は一般料金の10%割引となります。また、先行発売をご利用いただけます(取り扱いはWEBチケットN響・N響ガイドのみ)。
※車いす席についてはN響ガイドへお問い合わせください。
※N響ガイドでのお申し込みは、公演日の1営業日前までとなります。
※券種により1回券のご用意ができない場合があります。
※当日券販売についてはこちらをご覧ください。
※未就学児のご入場はお断りしています。
※開場前に屋内でお待ちいただくスペースはございません。ご了承ください。
ユースチケット
29歳以下の方へのお得なチケットです。
(要登録)
定期会員券
発売開始日
年間会員券
2024年7月15日(月・祝)10:00am
[定期会員先行発売日: 2024年7月7日(日)10:00am]
シーズン会員券(SPRING)
2025年2月19日(水)10:00am
[定期会員先行発売日: 2025年2月13日(木)10:00am]