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- 第2028回 定期公演 Aプログラム
※本公演は1曲のみの演奏のため休憩がございません。開演後はお席にお着きいただけませんのでどうぞご了承ください。
※やむを得ない理由で出演者や曲目等が変更となる場合や、公演が中止となる場合がございます。公演中止の場合をのぞき、チケット代金の払い戻しはいたしません。
ABOUT THIS CONCERT特徴
2025年1月Aプログラム 聴きどころ
ウクライナ侵攻の直後に起きたロシア音楽(家)の排斥運動に抗議して、ロシアとフランスでの要職を辞したトゥガン・ソヒエフ。当時彼が発した感動的な声明文の一部を紹介しておきたい。「私たち音楽家は、偉大な作曲家の音楽を演奏し解釈することによって、人類がお互いに思いやりと尊敬の念を持ち続けるための特別な機会と使命を与えられているのです。私たち音楽家は、ショスタコーヴィチの音楽を通して戦争の悲惨さを人々に思い起させるために存在しているのです」。
まさに今日、《第7番》の壮大な響きのなかに、時代と国境を越えて人類に向けられた普遍的なメッセージを聴いていただきたい。
(千葉 潤)
PROGRAM曲目
― ショスタコーヴィチ没後50年 ―
ショスタコーヴィチ/交響曲 第7番 ハ長調 作品60「レニングラード」
第2次世界大戦の独ソ戦の中で、旧レニングラード攻防戦は最大の激戦といわれる。1941年6月、ソ連への軍事進攻を開始したナチス・ドイツは、9月にはレニングラードを完全に包囲した。約900日後の1944年1月に解放されるまでに、全市で64万人の餓死者を含む80万人の犠牲者が出たといわれる。
当時30代半ばのドミートリ・ショスタコーヴィチ(1906~1975)は、ドイツ軍の空爆から音楽院を守る消防任務をこなしながら、7月に新しい交響曲に着手し、爆撃が激化した9月末には第3楽章のスコア清書を終えた。戦況は悪化し10月初めには家族と共に空路モスクワに疎開するも、さらにヨーロッパ・ロシアの南東部のクイビシェフ(現サマーラ)への避難を余儀なくされる。肝心のフィナーレを前に作曲の筆は滞ったが、ようやく12月27日に完成され、生まれ故郷であるレニングラードに捧(ささ)げられた。
異常な状況下で作曲・初演された交響曲に相応しく、その演奏史も特別である。1942年8月9日、封鎖下のレニングラードでの演奏は、極限状態に置かれた市民に生きる勇気と尊厳を思い起こさせた。スコアのマイクロフィルムは中近東と南米を経由してニューヨークへ空輸され、アメリカ初演を巡る争奪戦を制したトスカニーニとNBC交響楽団により1942年7月19日にラジオ中継された。当時のタイム誌は、“消防士ショスタコーヴィチ─レニングラード爆撃の最中に勝利の和音を聞く”のキャプションと共に、防災ヘルメットを付けた彼の肖像画を表紙に掲げた。この交響曲とその作曲者は、いまや全世界的な反ファシズム闘争の象徴になっていた。
とはいえ、この作品が皆に歓迎されたわけではない。ストラヴィンスキーやバルトーク等の前衛音楽家にとって、戦争と勝利を描く表現手法はあまりにも大言壮語であり、既存の音楽の“二番煎じ”に聞こえた(バルトークが《管弦楽のための協奏曲》で本作を揶揄〔やゆ〕したことは有名)。案の定、前衛主義が隆盛した冷戦時代にこの作品の評価は急落したが、それでも人々の心には戦争や暴力に対する英雄的な闘いの象徴として記憶されつづけ、近年の世界情勢を受けてその真価が見直されている。
この曲の完成直後、ショスタコーヴィチはある友人にこう語っていた。「(《第7番》の意味は)もちろん、ファシズムさ。でも真の音楽は、決してある主題に文字通りに結び付けられることは出来ない。国家社会主義は唯一のファシズムの形態ではない。この音楽はあらゆる形のテロル、隷属、精神の束縛について語っているんだ」。その言葉通り、今や《第7番》は私たち自身の時代を映し出している。その強烈なメッセージは、当時も今も芸術音楽の枠を超えて人々の心を揺さぶる力を持っている。
第1楽章 アレグレット、ハ長調、4分の4拍子。変則的なソナタ形式であり、展開部の代わりに、いわゆる“侵略の主題”をグロテスクに変奏する中間部が置かれる(これがラヴェルの《ボレロ》を連想させることは作曲者も自覚の上だった)。その巨大なクレッシェンドが導き出すのは、壮絶なレクイエムとしての再現部である。
第2楽章 モデラート(ポーコ・アレグレット)、ロ短調、4分の4拍子、複合3部形式。作曲者が“回想”と名付けたスケルツォ楽章であり、中間部では甲高い木管による8分の3拍子の辛辣な旋律と金管による行進曲が気まぐれに交替する。
第3楽章 アダージョ、ニ長調、4分の3拍子。全曲の白眉というべき緩徐楽章であり、主部はストラヴィンスキー《詩篇交響曲》第3楽章に似たコラールとバッハ《無伴奏ヴァイオリン・ソナタ》を様式化した主題が、素朴な“歌”と交替する。唐突に始まる中間部は、鞭(むち)打たれながら行進するような激しい音楽で、戦争の痛みを今一度喚起する。アタッカで途切れずに次の楽章に続く。
第4楽章 アレグロ・ノン・トロッポ、ハ長調、2分の2拍子。冒頭で奏される2つの主題が、途中にサラバンド風のエピソードを挟みながら多彩に展開され、最後はバンダも加わって壮大な第1楽章第1主題の循環を導き出す。
(千葉 潤)
演奏時間:約73分
作曲年代:1941年7月19日から12月27日
初演:1942年3月5日、サムイル・サモスード指揮、ボリショイ劇場管弦楽団、クイビシェフにて
ARTISTS出演者
指揮トゥガン・ソヒエフ
2025年もトゥガン・ソヒエフとともに、N響の新しい年が始まる。2008年を皮切りに客演を重ね、近年は格段に緊密な信頼関係のもと多彩な音楽冒険をくり広げている。2022年春にボリショイ劇場とトゥールーズ・キャピトル管弦楽団の音楽監督をともに辞任した彼が、N響の指揮台に3年ぶりに立ったのが2023年1月。翌年1月にもフランス、ロシア、ドイツの3様のプログラムを鮮明に実らせた。
ソヒエフはいま40代、コンサートにオペラに精力的な活躍を続けている。1977年にソヴィエト連邦下のウラジカフカスに生まれ、サンクトペテルブルク音楽院でイリヤ・ムーシン、ユーリ・テミルカーノフに指揮を学んだ。ロシア音楽でのパッションやダイナミズム、フランス音楽に顕著な洗練や色彩だけでなく、2010年代にベルリン・ドイツ交響楽団の首席指揮者も務めたように、独墺音楽の綿密な構築にも腕を揮(ふる)う。2023年11月にはウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、2024年11月にはミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団とも来日した。
今シーズンもひき続き3つのプログラムを指揮。これまでN響と練り上げてきた作曲家を主として、ムソルグスキーとストラヴィンスキーでは初共演。ロシアや東欧出身の作曲家に重点を置くとともに、コロナ禍で叶(かな)わなかったブラームスの《交響曲第1番》にいよいよ臨む。熱く雄渾(ゆうこん)な年明けが期待される。
[青澤隆明/音楽評論家]
MOVIEムービー
2025年1月定期公演 Aプログラムについて
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料金
S席 | A席 | B席 | C席 | D席 | E席 | |
---|---|---|---|---|---|---|
一般 | 11,000円 | 9,500円 | 7,600円 | 6,000円 | 5,000円 | 3,000円 |
ユースチケット | 5,500円 | 4,500円 | 3,500円 | 2,800円 | 1,800円 | 1,400円 |
※価格は税込です。
※定期会員の方は一般料金の10%割引となります。また、先行発売をご利用いただけます(取り扱いはWEBチケットN響・N響ガイドのみ)。
※車いす席についてはN響ガイドへお問い合わせください。
※N響ガイドでのお申し込みは、公演日の1営業日前までとなります。
※券種により1回券のご用意ができない場合があります。
※当日券販売についてはこちらをご覧ください。
※未就学児のご入場はお断りしています。
※開場前に屋内でお待ちいただくスペースはございません。ご了承ください。
ユースチケット
29歳以下の方へのお得なチケットです。
(要登録)
定期会員券
発売開始日
年間会員券
2024年7月15日(月・祝)10:00am
[定期会員先行発売日: 2024年7月7日(日)10:00am]
シーズン会員券(WINTER)
2024年10月15日(火)10:00am
[定期会員先行発売日: 2024年10月10日(木)10:00am]