※約2時間の公演となります(休憩20分あり)。
※やむを得ない理由で出演者や曲目等が変更となる場合や、公演が中止となる場合がございます。公演中止の場合をのぞき、チケット代金の払い戻しはいたしません。
ABOUT THIS CONCERT特徴
2026年6月Aプログラム 聴きどころ
締切りはいつかやってくる。仕事が立て込んでいても、体調がすぐれなくても、やるべき仕事はやらねばならない。本日演奏される3曲はどれも作曲家が忙しいなか、一気呵成(かせい)に仕上げた作品ばかり。それなのに、いずれもそれぞれの代表作として、今日も好んで演奏されるのは彼らが「大作曲家」だからなのか、それとも人は一般に、忙しいときの方がよい仕事をするものなのか。作品の出来栄えを確かめながら、ゆっくり考えたい問題だ。
(太田峰夫)
PROGRAM曲目
ワーグナー/楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」 前奏曲
《タンホイザー》パリ初演の失敗、《トリスタンとイゾルデ》初演の遅れなどにより、1861年のリヒャルト・ワーグナー(1813〜1883)は経済的にも精神的にも苦しい状況にあった。円熟期唯一の喜劇《ニュルンベルクのマイスタージンガー》は、いわばそうした苦境の打開策として書かれた楽劇だ。
そもそもワーグナーがこの題材で創作を行うことを思い立ったのは《タンホイザー》を書き終えた1845年のことだが、その際彼はほかの仕事のために計画をいったん延期していた。しかし1861年11月にヴェネツィアでヴェーゼンドンク夫妻とティツィアーノの『聖母被昇天』を鑑賞したとき、あらためて彼は《マイスタージンガー》を完成させる決意を固めたのだという。16世紀イタリア美術にふれたことで、同時代のニュルンベルクへの関心が深まったのかもしれないし、あるいは恋心を寄せていたヴェーゼンドンク夫人と一緒に過ごしたことで、劇中の(若いエヴァに思いを寄せる)ハンス・ザックスの人物像を掘り下げるためのヒントをなにか得たのかもしれない。
前奏曲は楽劇全体(1867年10月完成)に先んじて、1862年春に書き上げられた。自由なソナタ形式からなっており、冒頭で「マイスタージンガーの動機」や「行進の動機」がハ長調で提示されたのち、経過部を経て「愛の主題」や「情熱の主題」がホ長調で奏でられる。その後「マイスタージンガーの動機」と「情熱の主題」が展開していき、緊張感が高まったところで主要な動機が一緒になってハ長調で戻ってくる。最後は終幕の大団円を予告するように、堂々と曲が閉じられる。
(太田峰夫)
演奏時間:約9分
作曲年代:[前奏曲]1862年2月頃〜4月頃 [楽劇]1862年2月頃〜1867年10月24日
初演:[前奏曲]1862年11月1日、作曲者自身の指揮、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス [楽劇]1868年6月21日、ハンス・フォン・ビューロー指揮、バイエルン宮廷歌劇場管弦楽団・同合唱団、ミュンヘン、バイエルン宮廷歌劇場
モーツァルト/ピアノ協奏曲 第17番 ト長調 K. 453
1784年、ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756〜1791)はピアノ奏者としてキャリアの絶頂に到達しようとしていた。当時の彼の人気者ぶりは、2月26日から4月3日までのあいだに22回も人前で演奏していることからも確認できよう。当然、新しい作品を披露する必要もあったため、3月15日に《ピアノ協奏曲第15番変ロ長調》(K. 450)、3月22日に《ピアノ協奏曲第16番ニ長調》(K. 451)、3月30日に《ピアノと管楽器のための五重奏曲変ホ長調》(K. 452)というように、彼は新作を矢継ぎ早に書いている。ピアノ協奏曲が多いのは、このジャンルが演奏会の目玉だったからにほかならない。
4月12日に完成した《ピアノ協奏曲第17番ト長調》はまさにこの時期を代表する作品だが、表向きは作曲家自身のためではなく、弟子であるバルバラ・プロイヤーのために作曲されている。モーツァルトは彼女の父フランツ・カエタン・プロイヤーと親しく、その従兄弟のゴットフリート・イグナーツ・フォン・プロイヤーは当時ウィーンでザルツブルク宮廷の駐在連絡官をしていた。お披露目の演奏会は6月13日、ウィーン郊外にあるゴットフリートの別荘で行われ、バルバラが《ト長調》のソロを担当した。モーツァルトが当代随一の人気作曲家ジョヴァンニ・パイシエルロをわざわざその場に連れて行き、聞かせていることからも、彼が本作の出来と自分の弟子の腕前にかなり自信を持っていたことがうかがえよう。
第1楽章 アレグロ、4/4拍子、ト長調。協奏風ソナタ形式。冒頭のリズムは行進曲を思わせるが、「ため息」の音型や意表をつく転調を多用することで、全体としては叙情的な音楽に仕上がっている。
第2楽章 アンダンテ、3/4拍子、ハ長調。協奏風ソナタ形式。冒頭の旋律がロンド主題のように何度もあらわれ、構造上の区分を印象付けている。
第3楽章 アレグレット、2/2拍子、ト長調。ブーレ風の主題と5つの変奏、フィナーレからなる。バルバラが腕の立つピアニストだったことがよくわかる華やかな音楽である。
(太田峰夫)
演奏時間:約31分
作曲年代:1784年4月(同月12日に完成)
初演:1784年6月13日、プロイヤー家のデープリングの別荘にて
バルトーク/管弦楽のための協奏曲
本作はベーラ・バルトーク(1881〜1945)が1943年の夏から秋にかけて、ニューヨーク州サラナック湖畔に滞在した折に書かれた。バルトークは1942年春に体調を崩し、1943年2月から6月まで入院生活を送った。本人が知る機会はなかったが、骨髄性白血病だった。窮状を聞きつけた友人たちの仲介でクーセヴィツキー財団が彼に管弦楽曲の作曲を依頼したのが1943年4月末、ないし5月初めのこと。依頼を受けたのち、バルトークの体調が劇的に回復し、短期間のうちに総譜が出来上がったことは一種の奇跡として語られてきた。
ただし、材料がまったくなかったわけではない。1940年10月にアメリカに移住して以来、バルトークがなかなか新作に取り組めないでいたのは事実だが、出版社ブージー・アンド・ホークスとの間では、バレエや合奏協奏曲の構想が以前から話題になっていた。本作がベートーヴェン的な交響曲の伝統(「苦悩から歓喜へ」)をふまえつつ、協奏曲の技巧的要素、バレエ音楽の華麗さ、交響詩の標題性など、さまざまな要素を含んでいるのは、蓄積されてきたアイデアを、彼が本作で出し切ろうとした結果とも言える。
第1楽章〈序章〉 アンダンテ・ノン・トロッポ、3/4拍子─アレグロ・ヴィヴァーチェ、3/8拍子。序奏付きのソナタ形式。主部はきびきびした第1主題を中心とする、ロンド風のソナタ形式。
第2楽章〈対の遊び〉 アレグレット・スケルツァンド、2/4拍子。3部形式。主部ではファゴット、オーボエ、クラリネット、フルート、トランペットが順々に二重奏を披露。短いコラールをはさんで、再現部はふたたびファゴットから。ただし、前半より楽器が増え、響きはいっそう複雑になる。
第3楽章〈悲歌〉 アンダンテ・ノン・トロッポ、3/4拍子。3部形式。主部は第1楽章序奏を素材としている。中間部のヴィオラ主題はバルトーク流の弔い歌だ。
第4楽章〈中断された間奏曲〉 アレグレット。冒頭主題はルーマニア風の旋律。第2主題はおそらく愛国的な流行歌《ハンガリーよ、お前は美しい、お前は素敵だ》を変形させたもの。冒頭部分の再現を経てショスタコーヴィチ《交響曲第7番「レニングラード」》の「侵入の主題」によく似た旋律が割って入るが、これはナチスを念頭に置いたものだろう。第2主題と冒頭主題の回想ののち、曲は静かに閉じられる。
第5楽章〈終曲〉 ペサンテ、2/4拍子─プレスト、2/4拍子。ソナタ形式。民俗音楽の語法を随所に取り込んだ無窮動のフィナーレ。終盤ではフーガ主題がアルペンホルンさながらに、高らかに鳴り響く。
(太田峰夫)
演奏時間:約40分
作曲年代:1943年8月15日に着手、1943年10月8日に完成。1945年3月改訂
初演:1944年12月1日、セルゲイ・クーセヴィツキー指揮、ボストン交響楽団、ボストン・シンフォニー・ホール
ARTISTS出演者
指揮ヤープ・ヴァン・ズヴェーデン
今回がN響と初共演となるヤープ・ヴァン・ズヴェーデンは、アムステルダム生まれ。ジュリアード音楽院でヴァイオリンを学び、1979年、19歳の年に、現在のロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団の楽団史上、最も若いコンサートマスターに任命される。バーンスタインが指揮したマーラーの《交響曲第4番》のディスク(1987年録音)にもコンサートマスターとして参加してヴァイオリン・ソロを聴かせた。他にソリストとしても数々のレコーディングを残している。1996年に指揮者として歩み始め、オランダ放送フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者、ダラス交響楽団や名門ニューヨーク・フィルハーモニックの音楽監督を歴任。2026年秋にはフランス放送フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督に就任する予定である。香港フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督を10年以上務め、現在はソウル・フィルハーモニー管弦楽団の音楽監督、台湾の長栄交響楽団のアーティスト・イン・レジデンスを務めるなど、アジアのオーケストラともすばらしい成果を収めている。
名門オーケストラのコンサートマスター出身ということもあり、弦の精緻なコントロールに定評があり、各セクションを巧みに統御した明晰(めいせき)な音楽づくりが高く評価されている。今回の演目は、ズヴェーデンがさまざま楽団と取り上げてきたワーグナーとバルトークの名作である。名匠とN響との出会いが生み出す、鮮やかなサウンドに注目したい。
[満津岡信育/音楽評論家]
ピアノコンラッド・タオ
コンラッド・タオは革新的なコンポーザー・ピアニストである。1994年、米イリノイ州生まれ。生後18か月で姉のピアノを聴いて自らも弾き始め、4歳で初リサイタル、8歳で協奏曲デビューを果たすという神童ぶりを発揮した。ジュリアード音楽院、コロンビア大学などで学んだ彼の音楽観は、既存のレパートリーに留まらない。自作の管弦楽作品がニューヨーク・フィルハーモニックで初演され、ソロ活動では社会的な「怒り」をテーマにしたアルバム『American Rage』を世に問うなど、その姿勢は常に先鋭的かつ批評的だ。シカゴ・トリビューン紙が「創造的な超新星」と評したタオの才能は、鮮烈な印象を聴衆に与え続けている。ニューヨーク・フィルハーモニックやシカゴ交響楽団、ボストン交響楽団などと共演するほか、各地のリサイタルでも高い表現力を示す。満を持してN響に初登場する。8歳での協奏曲デビューもモーツァルトであり、ヴァン・ズヴェーデンとも取り上げてきた作曲家だ。タオの緻密かつ自由闊達(かったつ)な演奏は、この名曲を新たな光で照らし出すことだろう。
[飯田有抄/クラシック音楽ファシリテーター]
DOWNLOADダウンロード
料金
| S席 | A席 | B席 | C席 | D席 | E席 | |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 一般 | 11,000円 | 9,500円 | 7,600円 | 6,000円 | 5,000円 | 3,000円 |
| ユースチケット | 5,500円 | 4,500円 | 3,500円 | 2,800円 | 1,800円 | 1,400円 |
※価格は税込です。
※定期会員の方は一般料金の10%割引となります。また、先行発売をご利用いただけます(取り扱いはWEBチケットN響・N響ガイドのみ)。
※車いす席についてはN響ガイドへお問い合わせください。
※N響ガイドでのお申し込みは、公演日の1営業日前までとなります。
※券種により1回券のご用意ができない場合があります。
※当日券販売についてはこちらをご覧ください。
※未就学児のご入場はお断りしています。
※開場前に屋内でお待ちいただくスペースはございません。ご了承ください。
ユースチケット
29歳以下の方へのお得なチケットです。
(要登録)
定期会員券
発売開始日
年間会員券
2025年7月13日(日)10:00am
[定期会員先行発売日: 2025年7月6日(日)10:00am]
シーズン会員券(SPRING)
2026年2月14日(土)10:00am
[定期会員先行発売日: 2026年2月10日(火)10:00am]
BROADCAST放送予定
NHK-FMベスト オブ クラシック
「第2067回 定期公演 Aプログラム」
2026年6月26日(金) 7:35PM~ 9:15PM
曲目:
ワーグナー/楽劇「ニュルンベルクのマイスタージンガー」 前奏曲
モーツァルト/ピアノ協奏曲 第17番 ト長調 K. 453
バルトーク/管弦楽のための協奏曲
指揮:ヤープ・ヴァン・ズヴェーデン
ピアノ:コンラッド・タオ
収録:2026年6月13日 NHKホール





