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第2055回 定期公演 Cプログラム

NHKホール
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※約2時間の公演となります(休憩20分あり)。
※やむを得ない理由で出演者や曲目等が変更となる場合や、公演が中止となる場合がございます。公演中止の場合をのぞき、チケット代金の払い戻しはいたしません。

ABOUT THIS CONCERT特徴

2026年1月Cプログラム 聴きどころ

音楽史を学びはじめたころ、近代フランス音楽にロシアからの強い影響があると言われても、よく理解ができなかった。洒脱(しゃだつ)と粗野の共通点とは? しかし、徐々に分かってきたのは、響きをブロック状の「モノ」として捉え、それをカラフルに彫琢(ちょうたく)してゆく点において両者が深い地点で繫(つな)がっていること。たぶん、近代フランス音楽がドイツの影響から決定的に抜け出すためには、どうしてもこのアイデアが必要だったのだ。本日の4つの曲の連なりには、この一見すると不思議な音楽史の道筋がはっきりと示されている。

(沼野雄司)

PROGRAM曲目

ドビュッシー/牧神の午後への前奏曲

1876年に出版された相聞歌「牧神の午後」は、詩人マラルメの最初の著作。この作品を送り出すために、彼はおよそ10年という歳月を必要としたが、その努力は見事に報われたと言ってよい。もちろん、彼のサロンに出入りしていた新進作曲家、クロード・ドビュッシー(1862~1918)が、この詩を基に《牧神の午後への前奏曲》という傑作を産みだすことになったからである。
詩の大筋は次のようなものだ。気怠(だる)い夏の午後、夢と現実の境でまどろむ半獣半神の牧神が、水浴びをしている美しいニンフの姿を見つけて、追いかけはじめる。しかしまさにニンフを両手で捕らえ、エロスが成就するかと思われた瞬間に夢は覚め、気づいてみれば、辺りには前と同じく物憂い風景が拡がっている……。
曲の性格は、冒頭でフルートが奏する旋律に端的に示されていよう。(1)16分音符と3連符の組み合わせによって、拍節から自由に逃れていくリズム、(2)旋律の輪郭に潜んでいるきわめて不安点な音程(=3全音)、(3)木管楽器を主体にしたゆらめくような音色。すなわち、音楽のいずれの側面もきわめて「曖昧」なのだ。
およそ10分の長さを持つ楽曲全体は、この旋律を核にした変奏曲に近い形式を持っているから、これらが複合した「エロティックな曖昧さ」は、必然的に曲全体にいきわたることになった。結果として、19世紀末に書かれているものの、この曲は滑らかな流体のように19世紀という掌(てのひら)の指の間からさらさらとこぼれ落ちてゆく。まさに20世紀への「前奏曲」と言うに相応(ふさわ)しい記念碑的な音楽。

(沼野雄司)

演奏時間:約10分
作曲年代:1894年完成
初演:1894年12月22日、パリ、国民音楽協会、ギュスターヴ・ドレ指揮

デュティユー/チェロ協奏曲 「遥かなる遠い国へ」

戦後に書かれたチェロ協奏曲のなかでも屈指の人気を誇る作品にして、アンリ・デュティユー(1916~2013)の全作品のなかでも、おそらく最も魅力的な音楽。
タイトルは、ボードレール『悪の華』に収録された「髪」の一節から。原詩では憧れの女性の髪を讃(たた)える中で「遙(はる)けき、在らぬ、亡びたる、なべての国は」(鈴木信太郎訳)といったノスタルジックな表現が続くが、注目されるのはその少しあとに「人の精神が音楽の上を渡ってゆくように」という行が続くこと。すなわちここでボードレールは、遥かな国と音楽に、彼女への思いを託している。
全体は続けて演奏される5つの楽章からなるが、それぞれの楽章冒頭にもボードレールの詩からの引用がある(その一部を各楽章の解説にカッコに入れて記した)。もっとも、これらは標題的な意味を担っているというよりは、音楽とやわらかに響きあう、ひとつの象徴と考えるべきだろう。恵まれた家庭に生まれ、ドラクロワやコローの本物の絵が家庭にある環境で少年時代を過ごしたデュティユーにとって、こうした詩の世界はごく身近なものだった。
第1楽章〈謎(そしてこの奇妙で象徴的な自然の中で……)〉において、いきなり全曲の白眉が訪れる。チェロのレチタティーヴォにさまざまな楽器が結合されてゆくのだが、その際の多彩かつ独創的な音型分割、オーケストラとソロのテクスチュアの作り方は、ため息がでるほど精妙だ。チェロのグリッサンドの効果も抜群。
第2楽章〈まなざし(お前の眼から、お前の緑の眼から流れ出る毒……)〉は、緩徐楽章。独奏は高音を駆使しながら、長くゆるやかな弧を描いてたゆたう。まるでオンド・マルトノのように。第3楽章〈うねり(黒檀(こくたん)のような海よ……)〉は、カデンツァ風の独奏で始まったあと、海上の光の煌(きら)めきのように各楽器が反応する。
音楽が一旦静まると、マリンバの音型とともに、第2の緩徐楽章である第4楽章〈鏡(私たちの2つの心は、2つの松明のように……)〉が始まる。木管楽器をほぼ排し、金管と弦で長い和音を作るあたりが独創的。強烈なクレッシェンドのあと、第5楽章〈賛歌(夢を見つづけよ……)〉へ。無窮動的な音の群れの中から、前の楽章で用いられたさまざまな要素があらわれ、変拍子の中で乱舞する。

(沼野雄司)

演奏時間:約30分
作曲年代:1970年完成
初演:1970年7月25日、エクサン・プロヴァンス音楽祭、ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ独奏、セルジュ・ボド指揮、パリ管弦楽団

リムスキー・コルサコフ/組曲「サルタン皇帝の物語」 作品57

ロシア文化史におけるプーシキン(1799~1837)という存在の大きさは、あまりにも破格だ。おそらく他の国にはこれほど圧倒的な国民的詩人は存在しないだろう。オペラの世界を見渡してみても、《ボリス・ゴドノフ》(ムソルグスキー)、《エフゲーニ・オネーギン》(チャイコフスキー)をはじめとして、プーシキンの詩を基にした作品ばかりなのである。そしてまたニコライ・リムスキー・コルサコフ(1844~1908)も、プーシキン生誕100年にあたる1899年、彼の詩を基にした新しいオペラに着手した。
翌1900年に完成したのが、彼の10作目のオペラ《サルタン皇帝の物語》である。サルタン王に一度は見捨てられた王子が、苦難の末に伴侶を得るという典型的なおとぎ話。彼はオペラを発表したあと、この中から3つの前奏曲を選んで組曲とした。音楽はいずれも明快で、この作曲家の魅力をシンプルに示すものだ。
第1曲〈王の戦場への旅立ちと別れ〉は、王妃が戦場へと向かう王を見送る場面の音楽。軽快な行進曲の中に、メロディ・メーカーとしての才能がきらりと光る。第2曲〈海原を漂う王妃と王子〉は、悪辣な姉の助言を信じてしまった王が、王妃と息子を海に流してしまう場面の音楽。同じ作曲家の《シェエラザード》を彷彿(ほうふつ)とさせる、寂しい海の描写だ。第3曲〈3つの奇蹟〉は、苦難の末に奇蹟が起こり、王子が白鳥から変身した美しい女性と結ばれる場面。カラフルな音響が次々に入れ替わりながら、幸福な結末を祝福する。

(沼野雄司)

演奏時間:約19分
作曲年代:[オペラ]1900年完成 [組曲]1901年頃と推定される
初演:[オペラ]1900年11月3日(ロシア旧暦10月21日)、モスクワ、ソロドヴニコフ劇場、ミハイル・イッポリトフ・イワーノフ指揮

ストラヴィンスキー/バレエ組曲「火の鳥」(1919年版)

1909年、ロシアバレエ団の総帥ディアギレフは、無名の若手作曲家イーゴリ・ストラヴィンスキー(1882~1971)に、翌年初演される予定のバレエ《火の鳥》の付随音楽を依頼した。何人かの候補とうまく調整が合わず、急遽(きゅうきょ)、彼が代役として抜擢(ばってき)されたのである。
この頃、ディアギレフのまわりには既に、ニジンスキーやフォーキンを始めとする才能豊かな踊り手たちが続々と集まってきていた。言ってみれば、欠けていたのは新しい音楽だけであり、若きストラヴィンスキーの発掘によって、ついに20世紀初頭の芸術史を書き換えることになるチームが完成したのだった。
物語は、魔王カッチェイによって囚(とら)われの身になっている乙女たちを、若い王子が火の鳥の力を借りて助けだすという、ある意味ではたわいないもの。バレエ初演の際に初めてパリを訪れたというストラヴィンスキーは、この作品によって一躍時の人となるが、彼はその後、生涯において3つの演奏会用組曲を作成した。2管編成、6曲からなる「1919年版」はその中でも最も人気が高い。全曲は続けて演奏される。
魔法の国の妖しげな雰囲気を描いた第1曲〈序奏〉は、最弱音のコントラバスと大太鼓による開始部に、弦のハーモニクスによる軋(きし)んだ響きが続く。第2曲〈火の鳥とその踊り〉は、火の鳥の登場を示す、ごく短い部分。ピアノの巧みな用法は、当時としては先駆的だろう。第3曲〈王女たちの踊り〉は、魔王に捕らえられている乙女たちの踊り。木管楽器が柔らかくソロを重ねる端正な音楽。
第4曲〈カッチェイ王の魔の踊り〉は、魔王と手下による凶悪な踊り。全曲の中心をなすダイナミックな音楽で、主題の強烈なシンコペーションを初めとして随所にリズムの仕掛けがある。第5曲〈こもり歌〉は、ファゴットを中心に奏されるロシアの子守歌。火の鳥が歌うこの旋律を聴いて、魔王と手下たちは寝入ってしまう。第6曲〈終曲〉では、魔法が解けた乙女たちが踊り、王子は彼女たちの中のひとりと結婚する。コラール風の主題が環のように拡がってゆき、7拍子のエンディングに突入。この部分では、主題の旋律一音ずつに7の和音(その多くは長七、いわゆるメジャー7の和音)が付されて、華やかな響きを作りだす。

(沼野雄司)

演奏時間:約22分
作曲年代:[バレエ全曲版]1910年
初演:[バレエ全曲版]1910年6月25日、パリ、ガブリエル・ピエルネ指揮

ARTISTS出演者

トゥガン・ソヒエフさんの画像 指揮トゥガン・ソヒエフ

現在、どこの楽団のシェフでもないフリーランスの立場ながら、世界最高峰のオーケストラや歌劇場との共演が続いている。2025年は、1月にベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会に登場し、3月にはウィーン国立歌劇場で新演出のチャイコフスキー《イオランタ》を指揮した。6月にはウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の初夏恒例のシェーンブルン宮殿での「サマー・ナイト・コンサート」を任され、9月にはウィーン・フィルの定期演奏会に出演。
1977年、旧ソビエト連邦・北オセチアのウラジカフカスに生まれた。サンクトペテルブルク音楽院でイリヤ・ムーシンに師事し、ユーリ・テミルカーノフにも学ぶ。これまでに、トゥールーズ・キャピトル国立管弦楽団、ベルリン・ドイツ交響楽団、ボリショイ劇場などの首席指揮者や音楽監督を歴任。
NHK交響楽団には、2008年の初共演以来、2013年、2016年(1月と10月)、2017年、2019年(1月と10月)、2023年、2024年、2025年1月というように、近年は、コロナ禍の時期を除いて、ほぼ毎シーズン客演している。今回は、サンクトペテルブルク音楽院で学んだ彼の最も得意とする、ショスタコーヴィチ、プロコフィエフ、リムスキー・コルサコフ、ストラヴィンスキーらのロシア音楽が披露される。また、N響では初めてマーラーを取り上げ、《交響曲第6番》を指揮するのも注目である。

[山田治生/音楽評論家]

上野通明さんの画像 チェロ上野通明

ヨハネス・ブラームス国際コンクールやヴィトルト・ルトスワフスキ国際チェロコンクールなどで華々しい成績を収め、2021年にはジュネーヴ国際音楽コンクールのチェロ部門で日本人初優勝を成し遂げた上野通明は、次世代を担うチェリストのひとりとして大きな期待を寄せられている。
パラグアイに生まれ、スペインで幼少期を過ごした上野は、日本に帰国後、桐朋学園大学で毛利伯郎に師事。2015年には再び渡欧し、ローベルト・シューマン大学デュッセルドルフでピーター・ウィスペルウェイに、エリーザベト王妃音楽院ではゲーリー・ホフマンに学んだ。
NHK交響楽団とは、2024年6月の静岡、幸田公演にてドヴォルザークの《チェロ協奏曲 ロ短調》で初共演。今回満を持して定期公演デビューを果たす。ルトスワフスキ・コンクールに続いて、ジュネーヴ・コンクールのファイナルでもルトスワフスキの《チェロ協奏曲》で圧巻の演奏を披露した上野は、戦後のレパートリーの説得力に満ちた解釈に定評のあるチェリストである。20世紀の古典ともいえるデュティユーの《遥かなる遠い国へ》では、上野の多彩な音色と緻密な音楽作りが存分に味わえるだろう。

[八木宏之/音楽評論家]

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トゥガン・ソヒエフ/“師弟コンビ”の作曲家が織り成すフランス、ロシア音楽の魅力

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定期公演
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1回券発売開始日

定期会員先行発売日:2025年10月22日(水)10:00am
定期会員について

一般発売日:2025年10月26日(日)10:00am

チケット購入

料金

S席 A席 B席 C席 D席 E席
一般 11,000円 9,500円 7,600円 6,000円 5,000円 3,000円
ユースチケット 5,500円 4,500円 3,500円 2,800円 1,800円 1,400円

※価格は税込です。
※定期会員の方は一般料金の10%割引となります。また、先行発売をご利用いただけます(取り扱いはWEBチケットN響・N響ガイドのみ)。
※車いす席についてはN響ガイドへお問い合わせください。
N響ガイドでのお申し込みは、公演日の1営業日前までとなります。
※券種により1回券のご用意ができない場合があります。
※当日券販売についてはこちらをご覧ください。
※未就学児のご入場はお断りしています。
※開場前に屋内でお待ちいただくスペースはございません。ご了承ください。

ユースチケット

29歳以下の方へのお得なチケットです。
(要登録)

定期会員券
発売開始日

年間会員券
2025年7月13日(日)10:00am
[定期会員先行発売日: 2025年7月6日(日)10:00am
シーズン会員券(WINTER)
2025年10月17日(金)10:00am
[定期会員先行発売日: 2025年10月14日(火)10:00am

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主催:NHK / NHK交響楽団

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