※約2時間の公演となります(休憩20分あり)。
※やむを得ない理由で出演者や曲目等が変更となる場合や、公演が中止となる場合がございます。公演中止の場合をのぞき、チケット代金の払い戻しはいたしません。
ABOUT THIS CONCERT特徴
2025年9月Aプログラム 聴きどころ
フランツ・シュミットはベートーヴェンの曾(ひ)孫弟子にあたる。シュミットがピアノを師事したテオドル・レシェティツキは、カール・チェルニーの弟子であり、チェルニーはベートーヴェンの弟子のひとりであった。シュミットはまた、ウィーンの音楽アカデミー(現ウィーン国立音楽大学)の教授あるいは学長として、後身の育成に邁進(まいしん)した。今日まで受け継がれるウィーン古典派の伝統とその系譜を語るうえで欠かすことのできない2人のプログラムである。
(中村伸子)
PROGRAM曲目
ベートーヴェン/ ピアノ協奏曲 第5番 変ホ長調 作品73「皇帝」
ルートヴィヒ・ファン・ベートーヴェン(1770~1827)の《ピアノ協奏曲第5番》は、ベートーヴェンの弟子で保護者(パトロン)のルドルフ大公のために書かれた。神聖ローマ皇帝レオポルト2世の末息子で、のちにオロモウツ大司教および枢機卿となるルドルフ大公は、ベートーヴェンのもとでピアノと作曲を学び、1809年からは師がウィーンで活動し続けられるよう資金を送った。感謝のしるしとして、ベートーヴェンは《ピアノ三重奏曲「大公」》や《ミサ・ソレムニス》をはじめとする多くの作品をルドルフ大公に献呈している。
「皇帝」という通称は、1804年にフランス皇帝に即位したナポレオンへの称賛を思わせるが、これは出版者でピアニストのヨハン・バプティスト・クラーマーが広めたとされるもので、ベートーヴェン自身によるものではない。むしろ《ピアノ協奏曲第5番》が作曲された当時、ベートーヴェンはナポレオンに批判的になっていたのみならず、彼はナポレオン軍がウィーンに侵攻する最中に筆を進めていた。
《ピアノ協奏曲第5番》は、ルドルフ大公の作曲レッスンの教材でもあったことが、自筆譜への通奏低音の書き込みなどからわかっている。1811年1月にウィーンのロプコヴィツ宮殿で行われた私的演奏会で、22歳の大公の独奏により初演された。同年11月にライプツィヒ・ゲヴァントハウスで公開初演されたのち、翌1812年2月にはウィーンのケルントナートーア劇場にて、チェルニーの独奏で演奏される。ライプツィヒでは「現存する協奏曲のなかで最も独創的で、最も想像力に富み、最も効果的でありながら、最も難しい曲のひとつ」と比較的肯定的に評されたいっぽう、ウィーンでは「非常に重々しく、人工的で、まったく心地よくない」(1811年)、「長すぎる」(1812年)など、時代を先取りした大作は好意的には受け入れられなかったようだ。
荘厳なピアノ独奏とオーケストラの対峙で始まる第1楽章は、従来の協奏曲の形式を踏襲しつつ、自由に拡大されている。清らかな旋律美をたたえた3部形式の緩徐楽章(第2楽章)から切れ目なく奏される第3楽章は、ロンド・ソナタ形式をとり、快活に締めくくられる。
(中村伸子)
演奏時間:約38分
作曲年代:1809年
初演:[非公開初演]1811年1月13日、ウィーン(ロプコヴィッツ侯爵主催の私的演奏会)にて、ルドルフ大公独奏 [公開初演]1811年11月28日、ライプツィヒにて、フリードリヒ・シュナイダー独奏、フィリップ・クリスティアン・シュルツ指揮、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
フランツ・シュミット/交響曲 第4番 ハ長調
ベートーヴェンをはじめとする多くの作曲家がそうであるように、フランツ・シュミット(1874~1939)もピアノの名手であった。シュミットの弟子の回想によれば、ウィーン楽友協会で行われたあるオーケストラの演奏会で、ベートーヴェンの《ピアノ協奏曲第5番》のソリストが急に出演できなくなった際、シュミットが稽古なしで代役を務めたという。楽友協会のオンライン・アーカイブにその情報はないものの、シュミットがたびたびベートーヴェンの《合唱幻想曲》のピアノ独奏を弾いたことは同アーカイブに記録されている。
ピアノだけでなく作曲とチェロの専門教育も受けたシュミットは、ウィーン音楽院を首席で卒業すると同時にウィーン宮廷歌劇場(現ウィーン国立歌劇場)管弦楽団およびウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のチェロ奏者に採用される。ハンス・リヒターやグスタフ・マーラーといった巨匠たちの指揮のもと、1896年から1914年まで(ウィーン・フィルでは1911年まで)数々のオーケストラ作品やオペラの演奏・上演に携わった。のちに、ピアノ作品をあまり書かない理由を尋ねられた際、「心のなかでは大編成の交響音楽しか聞こえないから」と答えたと伝えられるように、オーケストラ団員としての経験がオーケストラ作曲家としてのシュミットの土台を形作ったことは想像に難くない。ウィーン・フィル在団中の1899年に完成した《交響曲第1番》は、ウィーン楽友協会主催のベートーヴェン賞を受賞している。
シュミットはその後、約15年おきに交響曲を《第3番》まで世に送った。《第3番》まではブラームスの系譜に倣ったいわゆる「絶対音楽」であったが、その5年後に完成された《第4番》は打って変わって標題的、そして個人的な音楽である。というのも、この作品は1932年春に急死した一人娘エマのためのレクイエムとして書かれたからである。
《交響曲第4番》では4つのセクション(部)が切れ目なく奏され、作品全体が第2部の中間部の葬送行進曲を中心に置いたシンメトリー構造になっている。冒頭のトランペット独奏(第1部 第1主題)は特定の調性を持たずさまよい、その空虚な4度音程は孤独や痛みを連想させる。ハープに彩られたヴァイオリンによる第2主題が続き、2つの主題が展開していく。アダージョ(第2部)の慈愛に満ちた主題はチェロで奏され、中間部の葬送行進曲へと続く。なお、葬送行進曲を交響曲に取り入れた初期の例に、ベートーヴェンの《交響曲第3番「英雄」》があることを付記しておきたい。スケルツォ(第3部)では、アダージョの主題を変容した旋律と第1部の2つの主題が姿を変えて折り重なり、緊張感を増していく。銅鑼(どら)の一撃で崩れ落ちると、冒頭のトランペットの主題が今度はホルンのアンサンブルで奏される(第4部)。2つの主題が繰り返されたのち、トランペットの独奏で静かに幕を閉じる。
一度聴いたら頭から離れないこのトランペット独奏の旋律について、シュミットは「いわば、その音楽の庇護のもとに生まれ、人生を過ごしたのちに、あの世へ持っていく最後の音楽」といいあらわしたという。作曲前から心臓病を患っていたシュミットにとって、《第4番》は最後の交響曲となった。
(中村伸子)
演奏時間:約42分
作曲年代:1932~1933年
初演:1934年1月10日、ウィーンにて、オスヴァルト・カバスタ指揮、ウィーン交響楽団による
ARTISTS出演者
指揮ファビオ・ルイージ
イタリア・ジェノヴァ出身。2001年にN響と初めて共演し、2022年9月首席指揮者に就任。就任記念公演でヴェルディ《レクイエム》を、2023年12月のN響第2000回定期公演でマーラー《一千人の交響曲》を指揮した。2024年には台湾公演を率い、翌2025年5月にはアムステルダム・コンセルトヘボウでの「マーラー・フェスティバル」、「プラハの春音楽祭」、「ドレスデン音楽祭」への参加を含むヨーロッパ公演を成功に導いた。なおN響は「マーラー・フェスティバル」に参加したアジア最初のオーケストラとなり、《交響曲第3番》《同第4番》の演奏は評論家から称賛を集めた。
現在、デンマーク国立交響楽団首席指揮者およびダラス交響楽団音楽監督。またチューリヒ歌劇場音楽総監督、メトロポリタン歌劇場首席指揮者、ウィーン交響楽団首席指揮者、ドレスデン国立歌劇場管弦楽団および同歌劇場音楽総監督、MDR(中部ドイツ放送)交響楽団プリンシパル・コンダクターおよびチーフ・コンダクター、スイス・ロマンド管弦楽団芸術監督、ウィーン・トーンキュンストラー管弦楽団首席指揮者、グラーツ交響楽団首席指揮者などを歴任。このほか、イタリアのプーリア州マルティナ・フランカで行われるヴァッレ・ディートリア音楽祭音楽監督、トリノを本拠とするRAI国立交響楽団の名誉指揮者も務めている。また、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団、サイトウ・キネン・オーケストラなど最高峰のオーケストラ、歌劇場、音楽祭に定期的に客演している。
録音ではデンマーク国立交響楽団との『ニルセン交響曲全集』が2023年にオーストラリアのライムライト賞とイタリアのアッビアーティ賞を受賞し、その第1集は『グラモフォン』誌の年間最優秀録音賞に選ばれた。またメトロポリタン歌劇場とのワーグナー《ジークフリート》《神々のたそがれ》のDVDはグラミー賞を受賞した。NHK交響楽団との初CD『ブルックナー/交響曲第8番(初稿)』は、2025年5月にリリースされた。
彼は優れた作曲家、調香師でもある。
ピアノイェフィム・ブロンフマン
イェフィム・ブロンフマンが、じつに24年ぶりにN響定期公演に登場する。2001年にデュトワの指揮でプロコフィエフの《第1番》を共演して以来のことだ。ロシア音楽で聴かせる迫真の剛腕にかぎらず、古典派やロマン派の作品でもすぐれた構成と綿密な表現を聴かせる名手の成熟は頼もしく、現代きっての大家と称えるべき存在感をもつ。
直近の来日では、2023年秋にほかならぬルイージの指揮でリストの《協奏曲第2番》、2024年秋にはネルソンス指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とベートーヴェンの《第3番》で、余裕と風格をもって両曲の内実を実直に体現した。今回はルイージの指揮でベートーヴェンの大作《第5番》が組まれている。重量級の響きと逞(たくま)しい構築性はもちろん、冴(さ)え冴えとした弱音での表現も含めて、作品の美観を顕(あきら)かにする名演が期待される。
1958年、ソヴィエト連邦下のタシケントの生まれ。15歳で家族と共にイスラエルに移住、アリエ・ヴァルディに師事したあと、アメリカに渡り、フィルクシュニー、フライシャー、ルドルフ・ゼルキンに師事。世界の名だたる指揮者や主要オーケストラと充実の共演を重ねている。
[青澤隆明/音楽評論家]
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料金
S席 | A席 | B席 | C席 | D席 | E席 | |
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一般 | 11,000円 | 9,500円 | 7,600円 | 6,000円 | 5,000円 | 3,000円 |
ユースチケット | 5,500円 | 4,500円 | 3,500円 | 2,800円 | 1,800円 | 1,400円 |
※価格は税込です。
※定期会員の方は一般料金の10%割引となります。また、先行発売をご利用いただけます(取り扱いはWEBチケットN響・N響ガイドのみ)。
※車いす席についてはN響ガイドへお問い合わせください。
※N響ガイドでのお申し込みは、公演日の1営業日前までとなります。
※券種により1回券のご用意ができない場合があります。
※当日券販売についてはこちらをご覧ください。
※未就学児のご入場はお断りしています。
※開場前に屋内でお待ちいただくスペースはございません。ご了承ください。
ユースチケット
29歳以下の方へのお得なチケットです。
(要登録)
定期会員券
発売開始日
年間会員券/シーズン会員券(AUTUMN)
2025年7月13日(日)10:00am
[定期会員先行発売日: 2025年7月6日(日)10:00am]