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- 第2037回 定期公演 Bプログラム
※約2時間の公演となります(休憩20分あり)。
※やむを得ない理由で出演者や曲目等が変更となる場合や、公演が中止となる場合がございます。公演中止の場合をのぞき、チケット代金の払い戻しはいたしません。
ABOUT THIS CONCERT特徴
2025年5月Bプログラム 聴きどころ
これから演奏される2つの作品はどちらも、NHK交響楽団が今年5月に行う5年ぶりのヨーロッパ公演に組み込まれている。ベルクはソリストも変わらず、「プラハの春 音楽祭」、「ドレスデン音楽祭」、オーストリアのインスブルックにおいて。マーラーはアムステルダムで開催される「マーラー・フェスティバル2025」、「ドレスデン音楽祭」、ベルギーのアントワープ、ウィーンにおいて。首席指揮者に就任して3年となるルイージとともに、現在のN響の魅力をヨーロッパの聴衆に存分に伝えることができるだろう。その期待と予感を胸に、本日の演奏を楽しみたい。
(小室敬幸)
PROGRAM曲目
― N響ヨーロッパ公演2025 プログラム ―
ベルク/ヴァイオリン協奏曲
アルバン・ベルク(1885〜1935)はマーラー(1860〜1911)の音楽をこよなく愛し、その妻アルマ(1879〜1964)とも親しかった。アルマが再婚相手ワルター・グロピウスとの間に授かった娘マノンのことも可愛がっていた。ところがマノンは1935年4月22日にポリオによって18歳で早逝。こうして同年2月に依頼され、3月からスケッチを開始していた《ヴァイオリン協奏曲》は「ある天使の思い出に」捧げられることになった。
「ある天使」=マノンの肖像として、第1楽章は“無垢さ”と“気まぐれさ”を、第2楽章は“闘病”と“昇天”を描いている。だが同時に、2つの楽章は前半と後半に分けられるため実質的には、マーラー《交響曲第9番》(1909)の構成に沿った4楽章制(かつ、それぞれの楽章が自由な3部形式[A–B–A′])になっていて、のちの研究によるとマノンへの追悼であるだけでなく、ベルク自身の人生の回想であることも明らかになった。8月に完成を迎えたのちに、ベルクも12月24日に50歳で急逝したのだ。
第1楽章 前半の[A]は、ヴァイオリンの開放弦を基調にした柔らかな響きではじまる。管弦楽がゆったりと伴奏のリズムを刻みはじめると、その上で独奏ヴァイオリンが作品全体の基礎となる12音音列を提示し、変奏を進める。[B]では12音音列を用いて新たな旋律が生みだされ、対位法的に発展。独奏が重音のトレモロを奏でると[A′]となるが、主部とは反対の順番にシンメトリー構造で要素が再現される。切れ目なく、後半が少しテンポの上がったクラリネットの旋律で始まる。「戯れるように」「ウィーン風に」「素朴に」と楽譜に書かれた3種のメロディが交代する[A]のあと、メリハリがはっきりした[B]を経て、再現[A′]が続く。楽章終わりでテンポが落ちると、「ミッツィーのベッドで寝坊するところだった」という歌詞を持つオーストリア南部ケルンテン州の民謡をホルンが吹き始める。ミッツィーはケルンテンにあるベルク家の別荘に雇われていた家政婦マリー・ショイヒルのことだとされる。15歳年上の彼女との間に娘を授かったベルク(当時17歳)だったが、母娘と一緒に暮らすことは叶わなかった……。
第2楽章 前半の[A]は積みあがっていく不協和音のあと、反復される特徴的なリズムが音楽を進める。テンポが大幅に落ち、うっすらと第1楽章の要素が取り込まれていく[B]を経て、緊迫感を増した[A′]が戻ってくる。後半の[A]は穏やかな雰囲気となり、J. S. バッハ《カンタータ第60番》の第5曲コラール〈私は満ち足りて〉から旋律が引用される。この旋律は12音音列の終わり4音とも繫がり、上下逆さまの反行形となる[B]でクライマックスを迎えたあと、ケルンテン民謡が再登場。最後はコラールの旋律が再現されていき、澄みきった響きで天へと召される。
(小室敬幸)
演奏時間:約27分
作曲年代:1935年
初演:1936年4月19日、バルセロナ、カタルーニャ音楽堂、ルイス・クラスナー独奏、ヘルマン・シェルヘン指揮、パブロ・カザルス管弦楽団
マーラー/交響曲 第4番 ト長調*
グスタフ・マーラー(1860〜1911)は死が怖くてしかたがない作曲家だった。だからこそ《交響曲第2番「復活」》(1888〜1894)では、神の御許(みもと)へ羽ばたけると歌うことで死を肯定的に捉えようとしたのだろう。続く《第3番》(1895〜1896)では、1880年代に「神は死んだ」と宣言した哲学者ニーチェの言葉を第4楽章で取りあげたあと、天使と神を描いた第5〜6楽章を続け、神の救済がまだ必要だと主張する。
しかし神の愛を表現した第6楽章があまりに長くなってしまったため(他の説もある)、全7楽章という当初のプランは断念する。第7楽章になる予定だった『こどもの不思議な角笛』に基づく歌曲《天上の生活》(1892)を終楽章に据えた交響曲として、あらためて構想されたのが本作《第4番》(1899〜1900)なのだ。
第1楽章 ト長調、4分の4拍子。冒頭で鳴り響く鈴は、道化師の帽子の先についている鈴を表している。ソナタ形式の提示部(および再現部)は、こどもとじゃれ合っているかのような、道化師の純朴な姿を想起させるが、展開部では“悲しみ”や“狂気”といった別の顔も垣間みせ、どんちゃん騒ぎを引き起こす。
第2楽章 ハ短調、8分の3拍子。コンサートマスターが長2度高く調弦したヴァイオリンに持ち替え、「死の舞踏」の死神が奏でるフィドルを表現。この間に挟まれる2つの中間部では平穏な天上が描かれ、まるで死神が「怖くないよ」と死へと誘っているかのようである。死の前では貴族や高名な聖職者であろうと身分の違いは意味をなさない。人類みな平等であるのだ、と。
第3楽章 ト長調、4分の4拍子。神の愛を描いた《交響曲第3番》の第6楽章を、あらためて短く書き直したような緩徐楽章。穏やかな心境で死を迎えんとする第1主題(楽譜には「安らぎに満ちて」と書かれている)と、もの悲しい第2主題が交互に変奏されていく。
第4楽章 ト長調─ホ長調、4分の4拍子。死を迎えたことで《天上の生活》に到達。詩の第1節では天上のすばらしさが歌われるが、第2節の前に鈴の音が鳴り響いてからは道化師のブラックユーモアが前面に押し出されていく。マーラーは天使、神だけでなく天国の存在をも信じているのだが、そこでの生活が何の問題もないものだとは思っていなかったようだ。人間の欲望が死後も際限ないことを、ソプラノ(こどものように歌うが実は道化と捉えられる)が純粋無垢に歌いあげる。
例えば第2節で「ヨハネは子羊を放してしまい、肉屋のヘロデがそれを待ち受ける!(……)汚れを知らない寛容なかわいい子羊を死に導くのだ!」と歌われるが、この子羊というのがイエス・キリストのことなのだ(そして三位一体の考えから「神とイエスと精霊」は同一の存在である)。続いて「天上ではワインもパンも食べ放題」といった内容が歌われるが、もちろんこのワインはイエスの血であり、パンはイエスの体のことである。マーラーは神のことを信じていても、人間に対して徹底的に懐疑的なのである。
(小室敬幸)
演奏時間:約56分
作曲年代:1892年(第4楽章の原曲)、1899〜1900年
初演:1901年11月25日、ミュンヘン、カイム・ザール、作曲者自身の指揮、カイム管弦楽団(現・ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団)、マルガレーテ・ミハレク独唱
ARTISTS出演者
指揮ファビオ・ルイージ
1959年、イタリア・ジェノヴァ出身。デンマーク国立交響楽団首席指揮者、ダラス交響楽団音楽監督を務める。N響とは2001年に初共演し、2022年9月首席指揮者に就任。就任記念公演でヴェルディ《レクイエム》を、2023年12月のN響第2000回定期公演ではマーラー《一千人の交響曲》を指揮し、この2つの記念碑的公演で共に大きな成功を収めた。またベートーヴェン、ブラームス、ブルックナー、R. シュトラウスなどのドイツ・オーストリアの作品や、フランクやサン・サーンスといったフランス語圏の作品に取り組み、その歌心と情熱に溢(あふ)れた指揮は、多くの聴衆の心を摑(つか)んでいる。2024年8月にはN響台湾ツアーを率い、2025年5月には「マーラー・フェスティバル」(アムステルダム・コンセルトヘボウ)、「プラハの春 音楽祭」、「ドレスデン音楽祭」への招待に合わせて行われるヨーロッパツアーで指揮を務める。
これまでにチューリヒ歌劇場音楽総監督、メトロポリタン歌劇場首席指揮者、ウィーン交響楽団首席指揮者、ドレスデン国立歌劇場管弦楽団および同歌劇場音楽総監督、MDR(中部ドイツ放送)交響楽団芸術監督、スイス・ロマンド管弦楽団音楽監督、ウィーン・トーンキュンストラー管弦楽団首席指揮者などを歴任。このほか、イタリアのマルティナ・フランカで行われるヴァッレ・ディートリア音楽祭音楽監督も務めている。また、フィラデルフィア管弦楽団、クリーヴランド管弦楽団、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団、ミラノ・スカラ座フィルハーモニー管弦楽団、ロンドン交響楽団、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団、サイトウ・キネン・オーケストラに定期的に客演し、世界の主要オペラハウスにも登場している。録音には、ヴェルディ、ベッリーニ、シューマン、ベルリオーズ、ラフマニノフ、リムスキー・コルサコフ、マルタン、そしてオーストリア人作曲家フランツ・シュミットなどがある。また、ドレスデン国立歌劇場管弦楽団とは数々のR. シュトラウスの交響詩を収録しているほか、ブルックナー《交響曲第9番》の解釈は高く評価されている。メトロポリタン歌劇場とのワーグナー《ジークフリート》《神々のたそがれ》のレコーディングではグラミー賞を受賞した。2025年5月、N響との初めてのCD、ブルックナー《交響曲第8番》(初稿)をリリース予定。
ヴァイオリン諏訪内晶子
1990年に史上最年少でチャイコフスキー国際コンクールに優勝して以来、国際的な活躍を続けるヴァイオリン奏者。江藤俊哉などに師事し、桐朋学園大学ソリスト・ディプロマコース、ジュリアード音楽院およびコロンビア大学、国立ベルリン芸術大学に学んだ。演奏活動に加えて2012年に「国際音楽祭NIPPON」を創設、芸術監督として東京や東北各地や愛知などで演奏会やマスタークラスも行なっている。
NHK交響楽団の定期公演への初登場は1991年11月で、尾高忠明の指揮でブルッフの《ヴァイオリン協奏曲第1番》を演奏した。最近では、2022年2月の「国際音楽祭 NIPPON2022」で、尾高忠明指揮でデュティユーの《ヴァイオリンと管弦楽のための夜想曲「同じ和音の上で」》とブラームスの《ヴァイオリン協奏曲》を共演し、好評を得た。
ベルクの《ヴァイオリン協奏曲》は、続くヨーロッパ公演でも3都市で演奏が予定されている。艶やかさと力強さを併せ持つ諏訪内の愛器、1732年製作のグァルネリ・デル・ジェズ「チャールズ・リード」(Dr. Ryuji Uenoより長期貸与されている)が、儚(はかな)くも耽美(たんび)な響きをもたらすことだろう。
[山崎浩太郎/音楽評論家]
ソプラノ森 麻季*
高く澄んだ歌声と、コロラトゥーラ歌唱の技術をそなえたソプラノ。東京藝術大学と同大学院、ミラノとミュンヘンなどで学び、プラシド・ドミンゴ世界オペラコンクール「オペラリア」ほか、国内外のコンクールに上位入賞している。
1998年に日本人として初めてアメリカのワシントン・ナショナル・オペラの《後宮からの誘拐(ゆうかい)》に出演、その後も欧米各地の歌劇場に出演した。国内では《椿姫》のヴィオレッタなどさまざまなオペラ公演のほか、リサイタルやコンサートを各地で行なっている。NHKスペシャルドラマ『坂の上の雲』メインテーマの歌唱でも名高い。
NHK交響楽団の定期公演への初登場は2000年5月で、デーヴィッド・ロバートソンの指揮でモーツァルトのモテット《踊れ、喜べ、幸いな魂よ》の独唱をつとめた。以後もモーツァルトの《レクイエム》や、ベートーヴェンの《交響曲第9番「合唱つき」》の公演に出演している。
マーラーの《交響曲第4番》終楽章のソプラノは、天国での幸福な生活を軽やかに、また可憐(かれん)に歌うものだけに、森にとって適役となるだろう。
[山崎浩太郎/音楽評論家]
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料金
S席 | A席 | B席 | C席 | D席 | |
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一般 | 12,000円 | 10,000円 | 8,000円 | 6,500円 | 5,500円 |
ユースチケット | 6,000円 | 5,000円 | 4,000円 | 3,250円 | 2,750円 |
※価格は税込です。
※定期会員の方は一般料金の10%割引となります。また、先行発売をご利用いただけます(取り扱いはWEBチケットN響・N響ガイドのみ)。
※この公演のお取り扱いは、WEBチケットN響およびN響ガイドのみです。
※車いす席についてはN響ガイドへお問い合わせください。
※券種により1回券のご用意ができない場合があります。
※当日券販売についてはこちらをご覧ください。
※未就学児のご入場はお断りしています。
ユースチケット
29歳以下の方へのお得なチケットです。
(要登録)
定期会員券
発売開始日
年間会員券
2024年7月15日(月・祝)10:00am
[定期会員先行発売日: 2024年7月7日(日)10:00am]