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- 第2032回 定期公演 Bプログラム
※約2時間の公演となります(休憩20分あり)。
※やむを得ない理由で出演者や曲目等が変更となる場合や、公演が中止となる場合がございます。公演中止の場合をのぞき、チケット代金の払い戻しはいたしません。
ABOUT THIS CONCERT特徴
2025年2月Bプログラム 聴きどころ
現在の演奏会では、後半のメインに交響曲を据えるのが一般的だが、これは19世紀前半に徐々に定まった方式である。それ以前、18世紀後半の演奏会では、アリアや協奏曲など、ソリストが活躍する多彩な演目が並ぶなか、交響曲はプログラムの最初や中ほどに組み込まれていた。そのような、それぞれの時代の演奏会の様子も思い浮かべながらウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756~1791)とローベルト・シューマン(1810~1856)の音楽を味わうことができる、というのが、このBプログラムである。
(松田 聡)
PROGRAM曲目
モーツァルト/アリア「私は行く、だがどこへ」K. 583*
1789年11月、ウィーンの宮廷劇場(ブルク劇場)で、2年前に上演が終了したマルティン・イ・ソレル(1754~1806)のオペラ《お人好しの気難し屋》(1786年)が再び舞台にかけられることとなった。ヒロインのルチッラ夫人の役は、ウィーンの舞台にデビューして約4か月のソプラノ歌手、ルイーズ・ヴィルヌーヴ(生没年不詳)に割り当てられ、モーツァルトは、おそらく彼女からの求めに応じて、ルチッラ夫人の2曲のアリアを作曲しなおした。そのうちの1曲が、このアリア(K. 583)である。
ルチッラ夫人の夫ジョコンドは、5年間の結婚生活の間に財産を浪費しつくしてしまった。オペラの後半、第2幕にあるこのアリアでは、事実を知った夫人がショックを受けつつも夫への愛を失わない心境を歌う。モーツァルトは、第1連にアレグロの音楽を当てた後、アンダンテ・ソステヌートへとテンポを落とし、管楽器の美しい響きを背景に第2連をしっとりと歌わせ、ルチッラ夫人の深い内面を浮かび上がらせている。
(松田 聡)
演奏時間:約4分
作曲年代:1789年10月完成
初演:1789年11月9日、ウィーンのブルク劇場
モーツァルト/アリア「大いなる魂と高貴な心は」K. 578*
1789年9月、《お人好しの気難し屋》が再演される約2か月前に、ブルク劇場ではチマローザ(1749~1801)のオペラ《ロッカ・アッズッラの2人の男爵》(1783年)が新たな演目として上演された。ヴィルヌーヴは、こちらでは貴婦人ラウラの役を演じており、モーツァルトはそのときにも、新たにアリア(K. 578)を作曲したのだった。ちなみにヴィルヌーヴは、翌年1月の《コシ・ファン・トゥッテ》(K. 588)の初演の舞台で、主役のひとり、ドラベッラの役を演じた歌手でもある。
ラウラは、ロッカ・アッズッラの2人の男爵のうちのひとり、トタロ男爵との結婚が決まっていたが、彼女の友人が策略を弄して、自分の妹サンドラを男爵の婚約者に仕立ててしまう。第1幕で男爵に初めて会った際にそのことを知ったラウラが、サンドラに怒りをぶつけて歌うのが、このアリアである。彼女の感情が高ぶっていく様子を、モーツァルトは第2連の途中からアレグロ・アッサイにテンポを速めて生き生きと描いている。
(松田 聡)
演奏時間:約4分
作曲年代:1789年8月完成
初演:1789年9月6日、ウィーンのブルク劇場
モーツァルト/交響曲 第25番 ト短調 K. 183
モーツァルトの全部で50曲ほどある交響曲(新発見の番号なしの作品も含む)のなかで、短調の作品は、この《第25番》と、有名な《第40番ト短調》(1788年)の2曲を数えるだけである。作曲家の生きた18世紀後半、短調はおもに悲しみや激情など特別な感情を表すために、限定的にしか用いられなかった。その分、他のジャンルも含めて、モーツァルトの短調作品は、いずれも印象深い傑作となっているのである。
とはいえ、《第25番》は、単に短調であることだけが注目される作品ではない。この曲は、1773年に17歳のモーツァルトが作曲した6曲目の交響曲にあたる。もしかしたら、6曲で1セットという意識もあったのかもしれないが、それまでの5曲がいずれも比較的軽い性格の3楽章構成の作品であったのに対して、《第25番》は、まるで全体のバランスをとるかのように、それらとは対極にある作品となっている。真摯で重厚な表現に加え、規模の大きい4楽章構成であることや、メヌエットの第3楽章以外はすべてソナタ形式という緊密な構成など、後世の規範に照らして、まさしく本格的な交響曲としての特徴を備えている点に、この曲の大きな特質が認められるのである。
オーケストラの扱いも特筆すべきであり、当時、出せる音に制約のあったホルンは、2種類の楽器を2本ずつ使って短調に対応させ、両端楽章や第3楽章の主部で、きわめて効果的に用いられている。また、長調の第2楽章や第3楽章の中間部で、ファゴットが独立的に扱われているのも、当時としては目立つ用法である。
(松田 聡)
演奏時間:約24分
作曲年代:1773年10月5日完成
初演:不明
モーツァルト/レチタティーヴォとアリア「私のうるわしい恋人よ、さようなら ─とどまって下さい、ああいとしい人よ」K. 528*
《ドン・ジョヴァンニ》(K. 527)の世界を凝縮したかのような、濃い情念の表現が印象的なこの演奏会用アリアは、オペラがプラハで初演された5日後に、当地に住むソプラノ歌手、ヨーゼファ・ドゥシェク(1754~1824)のために作曲された。旧知の彼女が、モーツァルトを別荘の客間に閉じ込めて楽譜を書かせ、作曲家がそのお返しに、初見で間違わずに歌うことを、アリアを与える条件とした、という逸話が後世、語られている。
歌詞は、サルコーネ(生没年不詳)執筆のオペラ《なだめられたチェーレレ》(1772年)の台本から採られている。イベリアの王ティターノは、シシリアの女王チェーレレの娘プロセルピナと駆け落ちをするが、結婚を許さない母親に阻止され、死を命じられる。そのティターノが別れの場面で歌う歌詞に曲付けされた本作(K. 528)では、レチタティーヴォと緩急2部分からなるアリアを通じて、彼の、つらいなかでも恋人を想う気持ちが、真に迫って描かれている(なお、18世紀には高位の男性を男性ソプラノ歌手が演じる慣習があり、その歌詞を女性歌手が歌うこともまれではなかった)。
(松田 聡)
演奏時間:約10分
作曲年代:1787年11月3日完成
初演:不明
シューマン/交響曲 第1番 変ロ長調 作品38「春」
シューマンは、この曲のスケッチを1841年1月23日から26日にかけて4日間で書き上げた。総譜の完成は1か月後の2月20日のことである。彼の最初の交響曲は、まさに一気呵成(かせい)に作曲されたのだが、そこにいたるまでには、長い道のりもあった。
10代の終わりに、ライプツィヒでのベートーヴェン(1770~1827)の交響曲連続演奏会に深く感銘を受けたシューマンは、もっぱらピアノ曲を世に出し続けた20代(1830~1839年)にも、交響曲への志を忘れなかった。1832~1833年にはト短調の交響曲を手がけたが、これは未完に終わらせている。その後、新たな刺激となったのが、1839年1月1日、ウィーンでシューベルト(1797~1828)の《交響曲第8番》の楽譜を「再発見」したことである。金管楽器による「モットー動機」の提示に始まるという具体的な共通点もさることながら、全体として生気に満ち溢(あふ)れた曲調に、この曲からのシューマンの《第1番》への影響をうかがうことができよう。
翌1840年、クララ(1819~1896)と念願の結婚を果たした年に、シューマンはピアノ曲から離れ、歌曲に集中的に取り組んだ。そして、年が明けて、交響曲へと、さらに創作の幅を広げたのであった。作曲の直接の機縁となったのは、ベットガー(1815~1870)の詩『汝(なんじ)、雲の霊よ』に接したことである。冬のどんよりした光景を描く詩だが、作曲家は、春の到来を告げる最後の2行にインスピレーションを受け、曲の冒頭の動機へと反映させた、と考えられている。なお、自筆譜では、「春の交響曲」というタイトルのもと、各楽章にも標題が添えられているが、楽譜出版の際には、聴き手のイメージを限定するのを避けようとしたためか、それらは削除された。
第1楽章は序奏付きのソナタ形式によっており、冒頭の動機が楽章全体で活用される。3部形式の第2楽章は、ドイツ・ロマン派ならではの深い情緒をたたえた緩徐楽章。続けて、2つの中間部を持つスケルツォの第3楽章となる。ソナタ形式の第4楽章で第1楽章の活気が戻ってきて、最後はテンポを上げて盛大な終結にいたる。
(松田 聡)
演奏時間:約30分
作曲年代:1841年1月から2月にかけて(本文参照)。初演後も改訂が行われた
初演:1841年3月31日、ライプツィヒ、メンデルスゾーン指揮、ゲヴァントハウス管弦楽団
ARTISTS出演者
指揮ペトル・ポペルカ
現在、ヨーロッパとアメリカで旋風を巻き起こしているチェコ人指揮者だ。指揮者として活動を始めて5年ほどのあいだに、3つのオーケストラの首席指揮者を歴任。その実力から、さらなるステップアップも確実とされている。
1986年、プラハ生まれ。コントラバス奏者として、2010年から9年間、ドレスデン国立歌劇場管弦楽団の副首席を務めた。指揮活動を本格的に開始したのは2019年。以降、多くの著名オーケストラの指揮台に立ち、目覚ましい活躍を遂げた。2020年から2023年にはノルウェー放送管弦楽団の首席指揮者を務め、2022年からはプラハ放送交響楽団の首席指揮者兼芸術監督に就いている。今季からはウィーン交響楽団の首席指揮者も務める。
2022年、東京交響楽団へ客演して日本デビュー。短期間でオーケストラをひとつにまとめ、繊細にサウンドを作りつつも、スケール感もあふれる演奏が大きな評判を呼んだ。2024年にもプラハ放送交響楽団を率いて来日公演を行っている。
今回、2つの定期公演でNHK交響楽団との初共演を果たす。ツェムリンスキーとヤナーチェクによる《シンフォニエッタ》を軸にしたAプログラムでは、それぞれの作品のスタイルを明瞭に描き出してくれよう。モーツァルトとシューマンによるBプログラムでは、しっかりと組み立てられたバランスと、流れのよさから生まれる完成度の高い演奏が期待できるはずだ。
[鈴木淳史/音楽評論家]
メゾ・ソプラノエマ・ニコロフスカ*
エマ・ニコロフスカは北マケドニア出身。カナダのトロントで育ち、グレン・グールド・スクールでヴァイオリンを学んだ後、声楽に転向。ロンドンのギルドホール音楽演劇学校で声楽の修士号を取得。若手発掘のプロジェクトとして知られるBBCのニュー・ジェネレーション・アーティスト2019–2022に選ばれる。2022–23シーズンには、自身がオペラ・スタジオのメンバーでもあったベルリン国立歌劇場で、《ばらの騎士》オクタヴィアン役で役名デビュー。2023年10月にはコヴェント・ガーデンのリンブリー・スタジオで上演されたジョージ・ベンジャミンの《Picture a Day Like This》で主役の女性役を演じ高い評価を得ている。また、2024年には《ロメオとジュリエット》ステファノ役でベルリン国立歌劇場に出演。オペラ以外でもアンドラーシュ・シフ、マルタ・アルゲリッチとも共演するなど、コンサートでも活躍している。
今回N響と共演するのは、モーツァルトが他の作曲家の作品に挿入するために書いたアリアや、演奏会用のいわゆる「コンサート・アリア」と呼ばれている作品。いずれも特定の歌手のために書かれており、歌手の力量を知るにはうってつけの作品だ。今回の公演が日本デビューとなる期待の新星がどんな歌声を披露してくれるのか、大いに注目される。
[室田尚子/音楽評論家]
MOVIEムービー
2025年2月定期公演 Bプログラムについて
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料金
S席 | A席 | B席 | C席 | D席 | |
---|---|---|---|---|---|
一般 | 12,000円 | 10,000円 | 8,000円 | 6,500円 | 5,500円 |
ユースチケット | 6,000円 | 5,000円 | 4,000円 | 3,250円 | 2,750円 |
※価格は税込です。
※定期会員の方は一般料金の10%割引となります。また、先行発売をご利用いただけます(取り扱いはWEBチケットN響・N響ガイドのみ)。
※この公演のお取り扱いは、WEBチケットN響およびN響ガイドのみです。
※車いす席についてはN響ガイドへお問い合わせください。
※券種により1回券のご用意ができない場合があります。
※当日券販売についてはこちらをご覧ください。
※未就学児のご入場はお断りしています。
ユースチケット
29歳以下の方へのお得なチケットです。
(要登録)
定期会員券
発売開始日
年間会員券
2024年7月15日(月・祝)10:00am
[定期会員先行発売日: 2024年7月7日(日)10:00am]
BROADCAST放送予定
NHK-FMベスト オブ クラシック
「第2032回 定期公演 Bプログラム」
2025年2月28日(金) 7:30PM~ 9:10PM
曲目:
モーツァルト/アリア「私は行く、だがどこへ」K. 583*
モーツァルト/アリア「大いなる魂と高貴な心は」K. 578*
モーツァルト/交響曲 第25番 ト短調 K. 183
モーツァルト/レチタティーヴォとアリア「私のうるわしい恋人よ、さようなら ─とどまって下さい、ああいとしい人よ」K. 528*
シューマン/交響曲 第1番 変ロ長調 作品38「春」
指揮:ペトル・ポペルカ
メゾ・ソプラノ:エマ・ニコロフスカ*
収録:2025年2月13日 サントリーホール