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定期公演 2024-2025シーズンCプログラム
第2023回 定期公演 Cプログラム

NHKホール
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※約2時間の公演となります(休憩20分あり)。
※やむを得ない理由で出演者や曲目等が変更となる場合や、公演が中止となる場合がございます。公演中止の場合をのぞき、チケット代金の払い戻しはいたしません。

ABOUT THIS CONCERT特徴

2024年11月Cプログラム 聴きどころ

体制に不都合な芸術家は迫害される。ドレスデン革命でお尋ね者となってチューリヒに亡命したワーグナー、ナチスを避けて亡命したソ連でも投獄されたヴァインベルク然りだ。ショスタコーヴィチにも粛清の危機は迫ったが、彼の場合は体制に都合よく振る舞うよう強制されたにもかかわらず、反体制派から罵詈(ばり)雑言を投げられ続けた二重の責め苦を負っていた。そんな逆境を乗り越えて……と安易に美談とするべきではないが、諦めずに葛藤し続けた作曲家の音楽はやはり魅力的だ。

(小室敬幸)

PROGRAM曲目

ワーグナー/歌劇「タンホイザー」序曲

1840年、パリのオペラ座に《さまよえるオランダ人》の草案を提示するも、結局は物語のあらすじしか買い取ってもらえなかったリヒャルト・ワーグナー(1813〜1883)。経済的にも困窮した2年半のパリ生活に終止符を打ち、1842年春にドレスデンへと向かう。その道中で目にしたアイゼナハのヴァルトブルク城を舞台にしたのが、2つの伝説をミックスした歌劇《タンホイザー》(《タンホイザーとヴァルトブルクの歌合戦》)である。舞台は13世紀、愛欲の世界を捨てて故郷に戻ってきたミンネゼンガー(いわゆる吟遊詩人)のタンホイザーが、城での歌合戦においてキリスト教では赦されぬ官能を讃(たた)えてしまう。そんな彼をエリーザベトが精神的な愛で救済する……という物語だ。幕が上がる前に演奏される序曲は3部形式(主部―中間部―主部)。主部は、劇中では巡礼者たちが合唱する「救済の動機」と、快楽に溺れたタンホイザーが罪の意識に苛まれる「悔恨の動機」で構成される。一方、中間部には軽やかな「快楽の動機」、力強く官能を讃える「ヴェーヌス讃歌」、タンホイザーを愛欲の世界に引き留めようとする静かな「愛の呪縛の動機」が登場。宗教的な荘厳さと、世俗的な愛欲が劇的なコントラストを生み出してゆく。

(小室敬幸)

演奏時間:約15分
作曲年代:1843〜1845年
初演:1845年10月19日、ドレスデン、作曲者自身の指揮

ヴァインベルク/トランペット協奏曲 変ロ長調 作品94

2010年に初の本格的な伝記が出版されるなど、21世紀になってから再評価が進むミェチスワフ・ヴァインベルク(1919〜1996)。ソ連の作曲家というイメージが強いかもしれないが、父はモルドヴァのキシナウ(当時はロシア帝国・キシニョフ)、母はウクライナのオデーサ(当時はロシア帝国・オデッサ)出身で、彼自身の生まれはポーランドだった。6つ年上のヴィトルト・ルトスワフスキと同時期にワルシャワ音楽院でも学んでいる。
ユダヤ系だったため、1939年にナチス・ドイツから逃れてソ連へ(両親と妹は強制収容所で没)。ミンスク(現ベラルーシ)の音楽院でリムスキー・コルサコフ門下だったゾロタレフに師事した。この頃、ショスタコーヴィチの《交響曲第5番》の演奏(楽器がなかったハープやチェレスタのパートもピアノで弾いたという)に関わり、感銘を受けたことで作風を転換。1942年の《交響曲第1番》がショスタコーヴィチ当人から高く評価されたことで、モスクワに招かれて移住。2人は互いの新作を共有しあう親しい間柄になった(ショスタコーヴィチ作品におけるユダヤ要素はヴァインベルクからの影響も大きい)。1953年に不条理な理由で投獄されるなど、たびたび政治体制に翻弄されたが、ヴァインベルクは最晩年まで充実した創作を続けてゆく。
しかしながら1960年代終わりから、チェリストのムスティスラフ・ロストロポーヴィチや指揮者のキリル・コンドラシンと作品を巡って仲違(たが)い。また1970年代以降、ショスタコーヴィチ以後のソ連の作曲家を世界へと発信したヴァイオリニストのギドン・クレーメルが、ヴァインベルクを古い時代の作曲家とみなして無視。より若くて先鋭的な音楽を書いていたアルフレート・シュニトケ(1934〜1998)やソフィア・グバイドゥーリナ(1931〜)らを積極的に取り上げていく。こうした事情が重なり、しばらくヴァインベルクは日陰の存在となっていた。
そうした作品評価の分岐点を迎える直前の1966〜1967年、ボリショイ劇場の首席トランペット奏者だったティモフェイ・ドクシツェル(1921〜2005)のために作曲されたのがこの協奏曲だ。第1楽章〈エチューズ〉はその名の通り、技巧性が際立つ。冒頭から繰り返される半音階的な第1主題と、3度の音程が肝になる第2主題による古典的なソナタ形式(ただし第2主題が先に再現される)。第2楽章〈エピソーズ〉は緩徐楽章で、異なる性格のエピソードが対比される。鐘の音が鳴ると切れ目なくはじまる第3楽章〈ファンファーレズ〉は、メンデルスゾーン、リムスキー・コルサコフ、ストラヴィンスキー、ビゼーらの作品からファンファーレ風のトランペット・パートを引用した、ショスタコーヴィチの《交響曲第15番》(1972年初演)を先取りしたかのような音楽だ。そこに第1楽章の主題も絡んでいく。

(小室敬幸)

演奏時間:約22分
作曲年代:1966〜1967年
初演:1968年1月6日、モスクワ音楽院大ホール、ティモフェイ・ドクシツェル独奏、キリル・コンドラシン指揮、モスクワ・フィルハーモニー交響楽団

ショスタコーヴィチ/交響曲 第5番 ニ短調 作品47

ヴァインベルクの音楽と人生を一変させたこの交響曲は、ドミートリ・ショスタコーヴィチ(1906〜1975)自身の人生を語るうえでも欠かせない作品であると広く知られている。
極めて刺激が強い、女性たちが性的暴行を受ける場面を含む《歌劇「ムツェンスクのマクベス夫人」》(1934年1月初演)は成功を収め、20代後半のショスタコーヴィチは経済的にも豊かになっていた。ところが初演から2年後にこのオペラを観たソ連の最高指導者スターリンは途中退席。その2日後には共産党の機関誌に大々的な批判が掲載され、ショスタコーヴィチは社会的地位が危うくなるだけでなく粛清の危機にさらされる(実際、翌1937年の1年間だけで35万人以上が銃殺される時代だったのだ)。
1936年12月に初演を予定していた先鋭的な《交響曲第4番》で汚名返上を狙っていたが、初演前に作品を取り下げた。義理の兄夫妻や義母が実際に逮捕されていくなか、あらためて自らの名誉を取り戻すために作曲されたのがこの《交響曲第5番》である。初演からおよそ2か月かけて慎重に検討され、社会主義に相応しい楽曲と判断されたことでショスタコーヴィチは危うい立場を抜け出ることができた。建前かもしれないが、当時作曲者はこの曲について「人間の苦悩」を「楽天主義」で克服するのだと説明している。
ベートーヴェン的なドラマツルギーをもった第1楽章は、再現部冒頭が頂点となるソナタ形式。さまざまな旋律が対位法的に絡み合う第1主題はまさに「人間の苦悩」だ。弦楽が繰り返すリズムの上で第1ヴァイオリンが奏でる第2主題は、ビゼーの〈ハバネラ〉でカルメンが「愛(アモール)」と歌う旋律を引用したものだとされる。ピアノの低音がリズムを先導しはじめると、苦悩と闘う展開部となる。
諧謔(かいぎゃく)的なスケルツォである第2楽章は、3部形式。主部ではワルツ風、中間部では田舎のレントラー風に転じることもあるので、社会で踊らされる人間の姿を想起させる。
緩徐楽章である第3楽章は、3つの主題が入り乱れながら変奏されてゆく自由な形式。再び苦悩し、今度は自分の内面で葛藤する。
最もドラマティックな第4楽章も、自由な形式。最初はトロンボーンが提示する勇ましい主題が、「楽天主義」へと辿(たど)り着くまでを描く。

(小室敬幸)

演奏時間:約45分
作曲年代:1937年
初演:1937年11月21日、レニングラード(現サンクトペテルブルク)、エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮、レニングラード・フィルハーモニー管弦楽団

[アンコール曲]
日本古謡(ラインホルト・フリードリヒ編)/さくら さくら
トランペット:ラインホルト・フリードリヒ

 

はじめてのクラシック
「ミェチスワフ・ヴァインベルク」


ARTISTS出演者

アンドレス・オロスコ・エストラーダさんの画像 指揮アンドレス・オロスコ・エストラーダ

1977年、コロンビア出身。ヴァイオリンと指揮を学び、1997年よりウィーンにわたり、ウィーン国立音楽大学でハンス・スワロフスキーの弟子ウロシュ・ラヨヴィッチに師事した。現在もウィーンを拠点に国際的な活動を展開する。2019年にはウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の来日公演で指揮を務め、ストラヴィンスキー《春の祭典》ほかのプログラムで鮮烈な印象を残した。ウィーン・フィルとはBBCプロムスやルツェルン音楽祭でも共演している。
これまでにオーストリアのトーンキュンストラー管弦楽団首席指揮者、hr交響楽団音楽監督、ヒューストン交響楽団音楽監督、ウィーン交響楽団首席指揮者の要職を歴任。現在RAI国立交響楽団の首席指揮者を務めており、2025年からはケルン・ギュルツェニヒ管弦楽団およびケルン歌劇場の音楽総監督に就任することが発表されている。ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団やロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団などトップレベルのオーケストラへの客演も多い。レコーディングにも積極的で、フランクフルト放送交響楽団とのリヒャルト・シュトラウス・シリーズほかで注目を集める。
N響とは今回が初共演となる。ショスタコーヴィチの《交響曲第5番》はベルリン・フィルへのデビューでもとりあげたレパートリー。オーケストラから明快なサウンドを引き出して、生命力あふれる音楽を生み出してくれることだろう。

[飯尾洋一/音楽ジャーナリスト]

ラインホルト・フリードリヒさんの画像 トランペットラインホルト・フリードリヒ

1958年ドイツのヴァインガルテン生まれ。7歳からトランペットを始め、エドワード・タール、ピエール・ティボーに師事した。1982年、ベルリン芸術週間でベリオの《セクエンツァX》を演奏してデビュー。1983年から1999年までフランクフルト放送交響楽団(現hr交響楽団)の首席奏者を務め、2003年ルツェルン祝祭管弦楽団の創立時には、指揮者クラウディオ・アバドから首席奏者に任命された。1986年のARDミュンヘン国際コンクールで第2位(1位なし)を獲得して以来、ソリストとしても活躍。ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団、ウィーン交響楽団など、多くのオーケストラと共演している。また、古楽器に精通すると同時に現代作品の紹介にも尽力。CDも多数リリースしている。現在はカールスルーエ音楽大学の教授を務め、数多くの後進を指導している。
肉厚の輝かしい音色で絶大なインパクトを与える名手だけに、今回のN響との初共演への期待は十分。パロディ的なフレーズを交えたヴァインベルクの多彩な協奏曲を、いかに聴かせてくれるか? 大いに注目される。

[柴田克彦/音楽評論家]

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TICKETチケット

定期公演 2024-2025シーズン
Cプログラム

第2023回 定期公演 Cプログラム

NHKホール
Googleマップ
座席表

1回券発売開始日

定期会員先行発売日:2024年7月31日(水)10:00am
定期会員について

一般発売日:2024年8月4日(日)10:00am

チケット購入

料金

S席 A席 B席 C席 D席 E席
一般 10,000円 8,500円 6,500円 5,400円 4,300円 2,200円
ユースチケット 5,000円 4,000円 3,100円 2,550円 1,500円 1,000円

※価格は税込です。
※定期会員の方は一般料金の10%割引となります。また、先行発売をご利用いただけます(取り扱いはWEBチケットN響・N響ガイドのみ)。
※車いす席についてはN響ガイドへお問い合わせください。
N響ガイドでのお申し込みは、公演日の1営業日前までとなります。
※券種により1回券のご用意ができない場合があります。
※当日券販売についてはこちらをご覧ください。
※未就学児のご入場はお断りしています。
※開場前に屋内でお待ちいただくスペースはございません。ご了承ください。

ユースチケット

29歳以下の方へのお得なチケットです。
(要登録)

定期会員券
発売開始日

年間会員券/シーズン会員券(AUTUMN)
2024年7月15日(月・祝)10:00am
[定期会員先行発売日: 2024年7月7日(日)10:00am]

お問い合わせ・
お申し込み

BROADCAST放送予定

NHK-FMNHK-FMベスト オブ クラシック
「第2023回 定期公演 Cプログラム」

2024年11月29日(金) 7:30PM~ 9:10PM

曲目: ワーグナー/歌劇「タンホイザー」序曲
ヴァインベルク/トランペット協奏曲 変ロ長調 作品94
ショスタコーヴィチ/交響曲 第5番 ニ短調 作品47

指揮:アンドレス・オロスコ・エストラーダ

トランペット:ラインホルト・フリードリヒ

収録:2024年11月15日 NHKホール

主催:NHK / NHK交響楽団

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