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- 第2022回 定期公演 Aプログラム
※約2時間の公演となります(休憩20分あり)。
※やむを得ない理由で出演者や曲目等が変更となる場合や、公演が中止となる場合がございます。公演中止の場合をのぞき、チケット代金の払い戻しはいたしません。
ABOUT THIS CONCERT特徴
2024年11月Aプログラム 聴きどころ
来年はベルリン・フィルに客演するなど、世界の檜(ひのき)舞台での活躍が続く山田和樹。今回のプログラムは、山田の色彩ゆたかで潑溂(はつらつ)とした音楽作りが似合う、フランスの名品を軸とする。ルーセルのバレエは古代ギリシア世界を鮮やかに再現し、ラヴェルとドビュッシーの作品は、それぞれ過去への憧憬と異国への憧憬を顕わにする。バルトーク最晩年のピアノ協奏曲と併せて聴くことで、20世紀前半の練達の作曲家たちによる、新奇性と明快さにあふれたオーケストラの響きを堪能できるだろう。
(平野貴俊)
PROGRAM曲目
ルーセル/バレエ音楽「バッカスとアリアーヌ」作品43─組曲 第1番
ドビュッシー、ラヴェルと同世代のアルベール・ルーセル(1869~1937)は、25歳で海軍を辞めたあと本格的に音楽を学び、終生いかなる流派にも属することなく、生命力に満ちた音楽を創作した。《バッカスとアリアーヌ》(1930~1931年)は、円熟期のルーセルが、パリ・オペラ座のために作曲した2幕のバレエ。初演では、バッカスを踊ったセルジュ・リファールが振付、ジョルジョ・デ・キリコが衣裳と装置を担当した。現在では、第1幕を第1番、第2幕を第2番とする管弦楽組曲の形で親しまれている。華やかに終わる《第2番》にくらべて、静かに幕を閉じる《第1番》が単独で演奏される機会は稀(まれ)だが、ルーセルの音楽の魅力である躍動感はいずれにもよく表れている。
作家アベル・エルマンによる、古代ギリシア神話にもとづく台本は、テセウスがナクソス島に到着する場面で始まる。アリアドネ(「アリアーヌ」はアリアドネのフランス語名)と少年少女を怪物ミノタウロスから救ったテセウスの到着に、人びとは歓喜する。怪物の退治を再現するテセウス。バッカス(ディオニュソスの異名)が黒いマントを振りかざしながら現れ(クラリネットの独奏)、アリアドネを眠らせる。テセウスらの退却と嵐の場面を経て、バッカスはアリアドネの周りで踊り始め、彼女も夢のなかで踊りに加わる(弦楽器による伸びやかな旋律)。バッカスは彼女を岩に降ろし、姿を消す。続く第2幕では、バッカスとアリアドネの結びつきが引き続き描かれることになる。
(平野貴俊)
演奏時間:約18分
作曲年代:1930~1931年
初演:[バレエ]1931年5月22日、パリ・オペラ座、フィリップ・ゴーベール指揮 [管弦楽組曲]1933年4月2日、パリ、シャルル・ミュンシュ指揮、パリ交響楽団
バルトーク/ピアノ協奏曲 第3番
1940年、ベーラ・バルトーク(1881~1945)は妻ディッタ・パーストリとともに故国ハンガリーからアメリカに移り、生涯最後の5年間を過ごした。アメリカでは民俗音楽の研究・講義を行う一方、作曲を中断していたが、当地の音楽家による委嘱をきっかけとして創作を再開、《管弦楽のための協奏曲》(1943/1945年、委嘱セルゲイ・クーセヴィツキー)などの傑作を生みだした。しかし1942年ころ症候が現れ始めた白血病が、やがてその命を奪うこととなる。
《ピアノ協奏曲第3番》は1945年、かつてピアノの弟子だった妻への誕生日プレゼントとして、密(ひそ)かに作曲が進められた。同年夏、アメリカ作曲家作詞家出版者協会(ASCAP)が提供した保養地サラナク・レイクの別荘でその大半を作曲したバルトークはしかし、9月21日にニューヨーク市の自宅で机に楽譜を残したまま病院に搬送され、26日にこの世を去る。未完となった最後の17小節のオーケストレーションは、21日にバルトークに面会していた友人ティボル・シェルイによって行われた。《第3番》のピアノ協奏曲には、野性味あふれる前2作とは対照的に、曇りのない澄んだ響きすら現れる。新鮮な驚きを与える音楽をつねに創作しえた、バルトークの創造力の最後の飛翔が刻みこまれた本作は、3作のなかでもとりわけ高い人気を誇る。
第1楽章 アレグレット、ソナタ形式。冒頭でピアノが奏する旋律と、その後のリズミカルな音型が対照的に扱われる。展開部は、ピアノによる変イ長調の分散和音で始まる。
第2楽章 アダージョ・レリジョーソ、3部形式(ABA)。Aのコラールは、ベートーヴェンの《弦楽四重奏曲第15番》第3楽章「聖なる感謝の歌」に触発されて書かれたという。Bはバルトークがたびたび創作した「夜の音楽」のひとつ。自然を愛したバルトークがアメリカで採譜した鳥の歌が用いられている。
第3楽章 アレグロ・ヴィヴァーチェ、ロンド形式(ABACA)。ピアノの華やかな走句で始まり、バロック音楽風のBとCではフーガが用いられる。
(平野貴俊)
演奏時間:約25分
作曲年代:1945年
初演:1946年2月8日、フィラデルフィア、ユージン・オーマンディ指揮、ジェルジ・シャーンドル独奏、フィラデルフィア管弦楽団
ラヴェル/優雅で感傷的なワルツ
パリの楽壇で地歩を築きつつあった気鋭の作曲家、モーリス・ラヴェル(1875~1937)は1909年、新しい音楽を普及する場として、保守的な傾向の強い国民音楽協会に対抗して、独立音楽協会を設立した。2年後の1911年、同協会の演奏会のために彼が作曲したピアノ曲が《優雅で感傷的なワルツ》である。7つのワルツとエピローグからなる本作品は翌1912年、ラヴェル自身が台本を書いたバレエ《アデライード、または花言葉》の音楽として転用されることとなり、それに合わせて管弦楽化された。シューベルトのワルツを参考としつつも(シューベルトには《優雅なワルツ》〔D969〕、《感傷的なワルツ》〔D779〕というピアノ曲がある)、ロマン派と古典派の美質を巧みに撚(よ)り合わせ、引き締まった響きからしなだれかかるような音の動きまで、メリハリの利いた仕方で多彩な要素を繋(つな)げてゆくラヴェルの手腕は見事である。
華やかな第1曲は、威勢のよい3音の強奏で幕を開ける。憂いと気だるさ、ほのかな官能性を漂わせる第2曲に続き、侘(わび)しげなオーボエの旋律で始まる第3曲は、やや寛(くつろ)いだ表情をみせる。速めのテンポで淀(よど)みなく音楽が進む第4曲と、夢と現(うつつ)のあいだをさまよう半睡状態を思わせる第5曲が対比される。第6曲の軽やかな足取りも第5曲とは対照的。息の長い旋律が特徴的な第7曲は、ロマンティックで劇的ですらある。エピローグではこれまでのワルツが回想され、音楽はしだいに沈滞へ向かう。
(平野貴俊)
演奏時間:約17分
作曲年代:[原曲(ピアノ版)]1911年 [管弦楽版]1912年
初演:[原曲(ピアノ版)]1911年5月9日、パリ、サル・ガヴォー、ルイ・オベールのピアノ [バレエ(《アデライード、または花言葉》の一部として)]1912年4月22日、パリ、シャトレ劇場、ナターシャ・トゥルハノヴァ一座 [管弦楽版]1913年9月25日、ロンドン、クイーンズ・ホール、ヘンリー・ウッド指揮、ニュー・クイーンズホール管弦楽団
ドビュッシー/管弦楽のための「映像」─「イベリア」
「水や鏡に映る影」、「心に描くイメージ」といった意味をもつフランス語imageの複数形images(イマージュ[映像])をタイトルとする作品群に、クロード・ドビュッシー(1862~1918)は約20年にわたって取り組んだ。1903年、彼は出版社のデュランと、ピアノ独奏のための6作品と、2台ピアノもしくは管弦楽のための6作品を「映像」のタイトルで出版する契約を交わす。前者は《映像》第1集・第2集として完成されたが、後者の創作は難航した。まず、編成は2台ピアノではなく管弦楽となり、後半3曲の計画は白紙のままとなった。前半の曲名にもわずかな修正が施された。最初に完成したのは、それ自体3つの楽章を含む〈イベリア〉。次いで、それぞれ単一楽章の〈春の踊り〉、〈ジーグ〉が作曲された。《映像》全体が完成したのは、作曲開始から7年後の1912年だった。
第2曲〈イベリア〉は、その名の通り、スペインに想を得てドビュッシーが作曲した作品のひとつ。第1曲〈ジーグ〉はスコットランド、第3曲〈春の踊り〉はフランスというように、《管弦楽のための「映像」》全体が3つの国々のポートレートとなっている。フランスを代表する作曲家となりつつあった大家、ドビュッシーの円熟した筆さばきがいずれの曲でも際だっているが、本日演奏される〈イベリア〉はスペインの音楽と空気を雰囲気ゆたかに喚起し、3曲のなかでもとりわけポピュラーである。
Ⅰ〈町の道と田舎の道〉 セビリャーナス(スペイン南部アンダルシアを起源とするフラメンコ風の踊り)のリズムで幕を開ける。ホルンとトランペットの高らかなフレーズに続いて、明るく寛(くつろ)いだ表情の音楽が展開される。
Ⅱ〈夜のかおり〉 管楽器と、緻密なテクスチュアを織りなす弦楽器が、更けゆく夜のしじまと香気を伝える。次第に空が明るむかのように、〈祭りの朝〉へ切れ目なく移行する。
Ⅲ〈祭りの朝〉 カスタネットなどの打楽器が活躍する賑(にぎ)やかな音楽。次々と楽想が交替するなかで、3音のモチーフの変形と頻出が統一感を与えている。
(平野貴俊)
演奏時間:約20分
作曲年代:《映像》全曲は1905~1912年、〈イベリア〉は1906~1909年
初演:1910年2月20日、パリ、シャトレ座、ガブリエル・ピエルネ指揮、コロンヌ管弦楽団
[アンコール曲]
11/9:バッハ(ケンプ編)/「目を覚ませと呼ぶ声が聞こえ」 BWV645
11/10:シューベルト/即興曲 変ト長調 作品90-3
ピアノ:フランチェスコ・ピエモンテージ
「ベーラ・バルトーク」
ARTISTS出演者
指揮山田和樹
山田和樹は2024年3月末で読売日本交響楽団首席客演指揮者を退任。国内メジャー楽団の固定ポストをすべて返上し、欧米でのさらなる飛躍に向けて退路を断った形だ。5月には米シカゴ交響楽団と定期演奏会で初共演、芸術監督と音楽監督を兼ねるモンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団の日本ツアーを成功させ、英バーミンガム市交響楽団では首席指揮者兼アーティスティック・アドバイザーから音楽監督に昇任した。前後して東京芸術劇場の芸術監督(音楽部門)に就く人事(2026年4月)、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団へのデビュー(2025年6月)も発表された。当面は欧米各地のオーケストラを中心に指揮しつつ、世界一線の舞台で得たアイデアを日本国内の企画に還元し、新たなコンサートのあり方や聴衆拡大を目指す構えだ。今回のN響との共演では、ルーセル、ラヴェル、ドビュッシーとスイス・ロマンド管弦楽団首席客演指揮者時代(2012〜2018年)やモンテカルロ・フィルで磨きをかけたフランス近代音楽の名曲を並べ、作曲年代を共有するバルトークの協奏曲をスイス出身のピアニスト、フランチェスコ・ピエモンテージと共演する。最近の山田は欧米での充実した指揮活動を背景に、作品の核心への踏み込みを一段と深める一方、誰にでもわかりやすいアプローチの幅も広げている。2009年のブザンソン国際指揮者コンクール優勝から2012年のスイス・ロマンド管弦楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、仙台フィルハーモニー管弦楽団と3楽団同時のポスト獲得にかけての「第1の旬」をさらに上回る、「第2の旬」といえる。
[池田卓夫/音楽ジャーナリスト]
ピアノフランチェスコ・ピエモンテージ
1983年、スイスのイタリア語圏にあるロカルノで生まれた。アリエ・ヴァルディ、アルフレッド・ブレンデル、セシル・ウーセに師事。2007年、エリーザベト王妃国際音楽コンクールで第3位に入賞。以後、国際的に活躍し、世界のトップ・オーケストラに招かれている。2014年にNHK交響楽団(指揮はロジャー・ノリントン)と初共演し、ベートーヴェンの《ピアノ協奏曲第1番》を弾き、2020年にはベルリン・フィルハーモニー管弦楽団(指揮はラハフ・シャニ)にデビューし、モーツァルトの《ピアノ協奏曲第27番》を演奏した。また、スイスのイタリア語圏、マッジョーレ湖畔で開催されている音楽祭「アスコナ音楽週間」の芸術監督を務めている。
モーツァルト、ベートーヴェン、シューベルト、シューマン、リストなど、古典派からロマン派にかけての演奏で名高いが、近年は、ジョナサン・ノット&スイス・ロマンド管弦楽団と、ラヴェル、メシアン、シェーンベルクのピアノと管弦楽のための作品を録音するなど、近現代作品にも取り組んでいる。今回のバルトークの《ピアノ協奏曲第3番》がおおいに注目される。
[山田治生/音楽評論家]
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料金
S席 | A席 | B席 | C席 | D席 | E席 | |
---|---|---|---|---|---|---|
一般 | 10,000円 | 8,500円 | 6,500円 | 5,400円 | 4,300円 | 2,200円 |
ユースチケット | 5,000円 | 4,000円 | 3,100円 | 2,550円 | 1,500円 | 1,000円 |
※価格は税込です。
※定期会員の方は一般料金の10%割引となります。また、先行発売をご利用いただけます(取り扱いはWEBチケットN響・N響ガイドのみ)。
※車いす席についてはN響ガイドへお問い合わせください。
※N響ガイドでのお申し込みは、公演日の1営業日前までとなります。
※券種により1回券のご用意ができない場合があります。
※当日券販売についてはこちらをご覧ください。
※未就学児のご入場はお断りしています。
※開場前に屋内でお待ちいただくスペースはございません。ご了承ください。
ユースチケット
29歳以下の方へのお得なチケットです。
(要登録)
定期会員券
発売開始日
年間会員券/シーズン会員券(AUTUMN)
2024年7月15日(月・祝)10:00am
[定期会員先行発売日: 2024年7月7日(日)10:00am]
BROADCAST放送予定
NHK-FMベスト オブ クラシック
「第2022回 定期公演 Aプログラム」
2024年11月28日(木) 7:30PM~ 9:10PM
曲目:
ルーセル/バレエ音楽「バッカスとアリアーヌ」作品43─組曲 第1番
バルトーク/ピアノ協奏曲 第3番
ラヴェル/優雅で感傷的なワルツ
ドビュッシー/管弦楽のための「映像」─「イベリア」
指揮:山田和樹
ピアノ:フランチェスコ・ピエモンテージ
収録:2024年11月9日 NHKホール