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- 第2019回 定期公演 Bプログラム
※約2時間の公演となります(休憩20分あり)。
※やむを得ない理由で出演者や曲目等が変更となる場合や、公演が中止となる場合がございます。公演中止の場合をのぞき、チケット代金の払い戻しはいたしません。
ABOUT THIS CONCERT特徴
2024年10月Bプログラム 聴きどころ
フィンランドのジャン・シベリウス(1865~1957)、デンマークのカール・ニルセン(1865~1931)、スウェーデンのフランツ・アドルフ・ベルワルド(1796~1868)の作品による北欧プログラム。スウェーデン人指揮者ブロムシュテットが学生時代に師事したトール・マンは、ベルワルドの孫弟子で、シベリウスやニルセンを直接に知り、北欧音楽の演奏に功績を残した指揮者であった。マンの薫陶を受けたブロムシュテットは、長くこよなく敬愛する彼らの作品をどんな演奏で聴かせてくれるのか、期待が高まる。
(小林ひかり)
PROGRAM曲目
シベリウス/交響詩「4つの伝説」作品22─「トゥオネラの白鳥」
シベリウスは、フィンランドの民族叙事詩『カレワラ』から題材を取った作品をいくつか残している。その中には、7つの交響曲に先立つ大作《クレルヴォ》(1892年完成)から、《交響曲第7番》よりも後の交響詩《タピオラ》(1926年作曲)まである。彼は生涯にわたり、この祖国に古くから伝わる神話や伝説の世界に関心を抱き、独自の音楽語法を開拓したのであった。
「レンミンカイネン」とも呼ばれる《4つの伝説》もそのひとつで初期の代表作。作曲当初、シベリウスはワーグナーの影響を受けてオペラ《船の建造》(未完)の構想を練り、〈トゥオネラの白鳥〉はその序曲として1893年に書かれた。しかし、オペラの作曲を進めるうちに交響詩の方が自分に向いていると悟り、〈トゥオネラの白鳥〉を含む4曲をまとめて管弦楽組曲の形で1895年に完成させた。
〈トゥオネラの白鳥〉のもとになった『カレワラ』第14章では、美男で好色なレンミンカイネンが、トゥオネラ(フィンランドの神話における死者の国)と生者の国を分ける黒い川を泳ぐ白鳥を一矢で射るという課題を与えられるが、それを遂行する前に彼は殺される。シベリウスの音楽はその物語の進行を表すのでなく、川に浮かぶ幽玄な白鳥を想像させる。
曲を通して、イングリッシュ・ホルンの独奏が白鳥の調べを奏する。弦楽器主体のオーケストラの清冽(せいれつ)な響きがこれを支える。時折チェロ独奏の低音から上るメロディが陰影を与える。一貫して神秘的な気分の中、緊張を湛(たた)えながら曲は進む。中ほどではヴァイオリンのピチカートによる伴奏で動きが増し、さらに管楽器とハープが加わって幻想的な高揚感に包まれる。最後は冒頭の気分に戻り、消え入るように曲は閉じられる。
(小林ひかり)
演奏時間:約10分
作曲年代:1893~1895年。1897年、1900年に改訂
初演:1896年4月13日、ヘルシンキ、作曲者自身による指揮、ヘルシンキ・フィルハーモニー協会
ニルセン/クラリネット協奏曲 作品57
ニルセンは《交響曲第5番》(1920~1922年作曲)に取り組んでいた頃にコペンハーゲン管楽五重奏団のメンバーたちと親しくなり、彼らのために軽妙でユーモアに富んだ《管楽五重奏曲》(1922年完成)を作曲した。ニルセンはさらに、五重奏団のひとりひとりのために協奏曲を書くことを約束したと言われている。まず《フルート協奏曲》が完成(1926年)、次いで作曲したのが《クラリネット協奏曲》であった。これを献呈されたクラリネット奏者はオーウ・オクスンヴァズ(1884~1944)。彼はニルセンが1914年まで指揮者を務めていたデンマーク王立管弦楽団に1909年に入団していたので、その能力をニルセンはよく知っていた。「演奏家としての類まれな才能と技術だけでなく、創造力と知識も卓越している」。そして「古い芸術も新しい芸術も受け入れ理解する洗練されたセンスを持つ」、とニルセンは述べている(1921年)。
オクスンヴァズからインスピレーションを得て書かれた協奏曲は、クラリネットという楽器の可能性と奏者の可能性の極限を追求したというべき作品。そのことはオーケストラが小編成なだけにいっそう際立つ。使われる管楽器は独奏クラリネットの他にはファゴットとホルンだけ、打楽器は小太鼓のみである。「各楽器の声部の動きを自由にした」と作曲者自身が語るように、クラリネットとオーケストラが率直な語り口で、時には戯れるような、また時には闘争するようなやり取りをする。調性やリズムの扱いでは近代的な傾向を強く示すが、叙情的なメロディも現れる、独特な作品である。
形式的には古典のとおりでなく、ひと続きの楽章にまとめられているが、急─緩─急─急(アレグレット・ウン・ポーコ、ポーコ・アダージョ、アレグロ・ノン・トロッポ、アレグロ・ヴィヴァーチェ)の4部分から成り、高度な技巧が要求されるカデンツァは第1部と第3部で登場する。
ニルセンは1920年代の半ばから徐々に体調が悪化しており、オーケストラを用いた大規模な作品としてはこれが最後となった。
(小林ひかり)
演奏時間:約24分
作曲年代:1928年4月~8月15日
初演:[非公開初演]1928年9月14日、デンマーク、ホムレベクのカール・ヨハン・ミケールスン宅、エミール・テルマーニー(ニルセンの娘婿)指揮、オーウ・オクスンヴァズ独奏、デンマーク王立管弦楽団からのメンバーによるオーケストラ [公開初演]1928年10月11日、コペンハーゲン、オッド・フェロー館大ホール、エミール・テルマーニー指揮、オーウ・オクスンヴァズ独奏、デンマーク王立管弦楽団からのメンバーによるオーケストラ
ベルワルド/交響曲 第4番 変ホ長調「ナイーヴ」
ベルワルドは19世紀のスウェーデンを代表する作曲家である。生年はシューベルトに近く、メンデルスゾーンやシューマンとも同じ時代を生きた。
ベルワルドは音楽家の家系に生まれ、父親からヴァイオリンの手ほどきを受けた。宮廷オーケストラ(スウェーデン王立歌劇場管弦楽団)の奏者を務めながら創作活動を行い、ベルリンへ留学もするが、音楽家として生計を立てるのが難しかったため、整形外科を開業すると、これが大成功。それでもやはり音楽家の夢を求めて、1841年にウィーンへ移住する。この年にベルワルドは結婚し、代表作となる4つの交響曲は1845年までの間に書かれるなど(彼はこの時に初めて交響曲を書いたのでなく、1820年に完成した交響曲は断片が残っている)、多作な時期となったが、それでも安定した音楽家の職は得られず、1850年にガラス工場の経営を始める。ストックホルム音楽院教授に就任できたのは、亡くなる前年のことであった。
ベルワルドの交響曲は、ベートーヴェンの影響を受け、その古典的な形式に基づいているが、より明るく軽快な曲調でメンデルスゾーンを思わせるところがある。4つの交響曲のうち、生前に演奏されたのは《第1番》のみで、《第4番》はパリでの演奏の計画が試みられたが上手くいかず、初演が実現したのは作曲家の没後10年のことだった。なお、「ナイーヴ」というタイトルは自筆譜には記されていない。ベルワルドは「天真爛漫(らんまん)」というつもりでこう呼んでいた時もあったが、否定的な意味を含みうる語であるだけに誤解を避けるためであろうか、最終的にはこのように呼ぶのをやめた。
第1楽章 変ホ長調、4分の3拍子。大きな弧を描くような第1主題と、なだらかなヘ長調の第2主題を持つソナタ形式で書かれている。反復音型をふんだんに用い、湧き出る泉のように曲が進行する。
第2楽章 ニ長調、4分の3拍子。歌うような主題が印象的なこの楽章は、4手オルガンのための《田舎の結婚披露宴》(1844年作曲)がもとになっている。アタッカで(切れ目なく)第3楽章に入る。
第3楽章 変ロ長調、4分の3拍子。軽快に駆け抜けるスケルツォ。いくぶん色彩の変わる中間部を持つ。
第4楽章 変ホ長調、4分の2拍子。さまざまな楽想を登場させながら、思いがけない方向へと突き進んでいく。ベルワルドらしい大胆さが際立つ、活気に満ちた楽章である。
ベルワルドの独特な音楽は生前には十分に評価されなかったが、《第4番》の初演で指揮を務めたルードヴィグ・ヌールマンの尽力もあって徐々に認められるようになり、20世紀初頭にようやくステンハンマルらスウェーデンの若い世代の作曲家たちからも重要視されるようになった。
(小林ひかり)
演奏時間:約30分
作曲年代:1845年
初演:1878年4月9日、ストックホルム、スウェーデン王立音楽アカデミー、コンサートホール、ルードヴィグ・ヌールマン指揮、スウェーデン王立歌劇場管弦楽団
[アンコール曲]
ニルセン/木管五重奏曲 作品43 ― 第2楽章「メヌエット」(抜粋)
(フルート、オーボエなし)
クラリネット:伊藤 圭
ファゴット:水谷上総
ホルン:今井仁志
「フランツ・アドルフ・ベルワルド」
ARTISTS出演者
指揮ヘルベルト・ブロムシュテット
2024年7月に97歳の誕生日を迎えたヘルベルト・ブロムシュテットは、世界最高齢の現役指揮者である。1927年にアメリカで生まれ、両親の祖国スウェーデンに移住。ストックホルム王立音楽院などで学んだ。1954年、ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団を指揮してデビュー。スウェーデン放送交響楽団をはじめ北欧のオーケストラでキャリアを積み、ドレスデン国立歌劇場管弦楽団首席指揮者、サンフランシスコ交響楽団音楽監督、北ドイツ放送交響楽団(現NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団)音楽監督、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団カペルマイスターなどを歴任。また、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団など、世界の名門オーケストラにも客演している。
NHK交響楽団とは1981年から共演を重ね、1986年に名誉指揮者に就任。2013年からは2020年と2023年を除いて、継続的にN響の指揮台に立ち、2016年に桂冠名誉指揮者の称号が贈られた。
今回は、自身の指揮者人生を総括するような3つのプログラムを披露する。Aプロのオネゲルとブラームスの交響曲は、牧師の息子として生まれ、深い信仰をもつマエストロと静かに響き合う。Bプロは自身のルーツである北欧の作品、Cプロはその内奥へと迫るシューベルトの2大交響曲。彼が導く叙情的で思索的な音楽は聴き手の心に長く深く刻まれるだろう。
[柴辻純子/音楽評論家]
クラリネット伊藤 圭(N響首席クラリネット奏者)
宮城県出身。東京藝術大学卒業。これまでに千石進、日比野裕幸、野田祐介、山本正治、三界秀実、村井祐児に師事。2004年に第6回日本クラリネットコンクールで第1位を受賞、2006年には第74回日本音楽コンクール入選。2014年に東京藝大「創造の杜」においてユン・イサン《クラリネット協奏曲》のソリスト、2019年には「天皇陛下御即位30年奉祝感謝の集い」での特別奉祝演奏としてモーツァルト《クラリネット協奏曲》のソリストを務めた。デビューアルバム『Rêveusement レヴーズマン 近代フランス作品集』のほか、数多くのCDをリリース。東京音楽大学特任准教授、東京藝術大学、国立音楽大学講師として後進の指導にもあたる。
藝大フィルハーモニア、東京都交響楽団を経て、2011年よりNHK交響楽団首席奏者。2022年8月のN響室内楽コンサートにも出演し、ヒンデミット《管楽器のための七重奏曲》などを披露した。今回演奏される《クラリネット協奏曲》はニルセン最晩年の作品で、技巧を要する難曲。流麗ながらもインパクトのある響きに期待したい。
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料金
S席 | A席 | B席 | C席 | D席 | |
---|---|---|---|---|---|
一般 | 12,000円 | 10,000円 | 8,000円 | 6,500円 | 5,500円 |
ユースチケット | 6,000円 | 5,000円 | 4,000円 | 3,250円 | 2,750円 |
※価格は税込です。
※定期会員の方は一般料金の10%割引となります。また、先行発売をご利用いただけます(取り扱いはWEBチケットN響・N響ガイドのみ)。
※この公演のお取り扱いは、WEBチケットN響およびN響ガイドのみです。
※車いす席についてはN響ガイドへお問い合わせください。
※券種により1回券のご用意ができない場合があります。
※当日券販売についてはこちらをご覧ください。
※未就学児のご入場はお断りしています。
ユースチケット
29歳以下の方へのお得なチケットです。
(要登録)
定期会員券
発売開始日
年間会員券
2024年7月15日(月・祝)10:00am
[定期会員先行発売日: 2024年7月7日(日)10:00am]
BROADCAST放送予定
NHK-FMベスト オブ クラシック
「第2019回 定期公演 Bプログラム」
2024年10月31日(木) 7:30PM~ 9:10PM
曲目:
シベリウス/交響詩「4つの伝説」作品22─「トゥオネラの白鳥」
ニルセン/クラリネット協奏曲 作品57
ベルワルド/交響曲 第4番 変ホ長調「ナイーヴ」
指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット
クラリネット:伊藤 圭(N響首席クラリネット奏者)
収録:2024年10月10日 サントリーホール