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- 第2020回 定期公演 Aプログラム
※約2時間の公演となります(休憩20分あり)。
※やむを得ない理由で出演者や曲目等が変更となる場合や、公演が中止となる場合がございます。公演中止の場合をのぞき、チケット代金の払い戻しはいたしません。
ABOUT THIS CONCERT特徴
2024年10月Aプログラム 聴きどころ
後期ロマン派の巨匠ブラームスとスイス゠フランスの前衛オネゲル。一見やや意外な取り合わせとも思える2人の作曲家には、J. S. バッハへの深い敬愛、そして時代の潮流に抗うかのような古典的なジャンルの愛好という共通項がある。彼らの円熟期の作品である2つの交響曲はまた、人類の苦難と神による救済という共通の主題によっても遠く繫(つな)がっている。災禍の時代に寄せてブロムシュテットが祈りを込めて紡ぐ音楽に、我々はいま何を読み取るのか。
(神保夏子)
PROGRAM曲目
オネゲル/交響曲 第3番「典礼風」
アルテュール・オネゲル(1892~1955)は、1920年代に若手音楽家集団「六人組」の一員として活動したことで知られる、フランス生まれのスイス系音楽家である。もっとも、第2次世界大戦末期から終戦直後の時期にかけて作曲されたこの交響曲は、軽妙洒脱(しゃだつ)で楽天的な「六人組」の作風とは正反対のきわめてシリアスな性格をもっている。オネゲルはこの作品のなかで「近年我々を囲み続ける蛮行、愚行、苦難、機械化、官僚制の風潮への近代人の反応」を描こうとしたと述べているが、そうした「蛮行」には当然、ナチスによる占領という壮絶なトラウマをフランスの人々に経験させた直近の戦争も含まれているだろう。
3つの楽章のそれぞれにローマ・カトリックの典礼に由来するタイトルを冠した(ただし、それらに対応する単旋聖歌の旋律が引用されるわけではない)この交響曲は、その名の通り宗教的なメッセージ性をもつ標題音楽であり、そこにみられる物語性や劇的な対比の効果は、作曲者がオペラ゠オラトリオと呼ばれるジャンルでも成功を収めた人物であったことを思い起こさせる。第1楽章〈怒りの日〉で描かれるのは「神の怒りに直面した人類のおののき」であり、おぞましいほどに不穏な楽想が次々と現れるなか、神の裁きを暗示するファンファーレが不吉に鳴り響く。一方、第2楽章〈深い淵から〉はメロディストとしてのこの作曲家の真骨頂であり、さまざまな楽器によって歌い継がれてゆく祈りのような旋律の美しさは特筆に値する。楽章を締めくくるフルートの高らかな主題は平和を象徴する鳥の歌である。第3楽章〈われらに安らぎを与えたまえ〉では、軍隊を想起させる行進曲風のリズムの上で、人類の愚行がグロテスクに表現される。クライマックスで不協和音による絶望の叫びが連続的に奏されたのち、一瞬の沈黙を経て、待ちわびた平和の到来を思わせる穏やかな音楽がはじまる。終盤ではピッコロによる鳥の歌が回帰し、嬰ハ長調の天国的な響きのなかで作品は静かに終息する。
(神保夏子)
演奏時間:約30分
作曲年代:1945~1946年
初演:1946年8月17日、シャルル・ミュンシュ指揮、トナール劇場管弦楽団、チューリヒ
ブラームス/交響曲 第4番 ホ短調 作品98
1884年夏、ウィーンの西南に位置する田舎町ミュルツツーシュラークで、ヨハネス・ブラームス(1833~1897)は彼の最後の交響曲に取り掛かっていた。休暇を終えてウィーンに戻るころには最初の2楽章をほぼ書き上げていたが、周囲から新作の詳細を尋ねられても彼は固く口を閉ざしていた。翌年の夏、ブラームスは交響曲を完成させるために再びミュルツツーシュラークに赴くが、作品の断片を添えて同地から送られた友人あての手紙には「このあたりでは桜桃は甘くならず、食べられません」と意味深長なコメントを記している。要するに彼は、自らがこの地で生み出しつつあった「甘く」はない果実─本人の言葉を借りるなら「嘆きや悲劇的なもの」に満ちたこの交響曲─が当時の聴衆に受け入れられるものか、大いに危惧していたのである(もっとも、同年秋に行われた初演はすこぶる好評で、作曲者の心配は杞憂〔きゆう〕に終わったわけだが)。
ブラームスの全4作の交響曲のなかで唯一短調に始まり短調に終わる本作の性格は、美しくも憂愁に満ちた第1楽章の第1主題にすでに表れている。ため息のような音型を特徴とするこの主題は、同楽章全体の構造的な核となる3度音程の連なり(シ─ソ─ミ─ド─ラ─♯ファ─♯レ─シ)から構成されており、再現部においてはややカムフラージュされた拡大形で現れる。つづく第2楽章はホ長調ではあるが、ホルンと木管による序奏は古風なフリギア旋法によっており、これを受け継いだ第1主題もまた同種の寂寥(せきりょう)感を漂わせる。アレグロ・ジョコーソ(快速に、楽しげに)の指示をもつ第3楽章は、他の楽章とコントラストをなす開放的な性格をもち、初演時には聴衆からアンコールを求められたという。終楽章は一種のオスティナート変奏曲であり、冒頭に提示される8小節の厳粛なバス主題はバッハの教会カンタータ第150番終曲のシャコンヌ(固執低音〔オスティナート・バス〕にもとづく変奏曲形式の舞曲)からの引用であることが知られている。古楽の研究に熱心であったブラームスは、1874年に知り合いの音楽学者を通じて当時未出版であったこのカンタータの楽譜を入手しており、本作に着手する2年も前からこのシャコンヌのバス主題による楽章を書きたいという構想を語っていた。引用元の原曲の合唱は、オネゲル作品の標題にも通じる「苦しみにある私の日々を/神は喜びへと終わらせてくれる」というテキストをもっており、ブラームスによるその変奏の「悲劇的」なありかたは、単なるバロック趣味を超えた重層的な意味合いをもうかがわせる。
(神保夏子)
演奏時間:約42分
作曲年代:1884~1885年
初演:1885年10月25日、作曲者自身の指揮、マイニンゲン宮廷管弦楽団
ARTISTS出演者
指揮ヘルベルト・ブロムシュテット
2024年7月に97歳の誕生日を迎えたヘルベルト・ブロムシュテットは、世界最高齢の現役指揮者である。1927年にアメリカで生まれ、両親の祖国スウェーデンに移住。ストックホルム王立音楽院などで学んだ。1954年、ストックホルム・フィルハーモニー管弦楽団を指揮してデビュー。スウェーデン放送交響楽団をはじめ北欧のオーケストラでキャリアを積み、ドレスデン国立歌劇場管弦楽団首席指揮者、サンフランシスコ交響楽団音楽監督、北ドイツ放送交響楽団(現NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団)音楽監督、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団カペルマイスターなどを歴任。また、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団など、世界の名門オーケストラにも客演している。
NHK交響楽団とは1981年から共演を重ね、1986年に名誉指揮者に就任。2013年からは2020年と2023年を除いて、継続的にN響の指揮台に立ち、2016年に桂冠名誉指揮者の称号が贈られた。
今回は、自身の指揮者人生を総括するような3つのプログラムを披露する。Aプロのオネゲルとブラームスの交響曲は、牧師の息子として生まれ、深い信仰をもつマエストロと静かに響き合う。Bプロは自身のルーツである北欧の作品、Cプロはその内奥へと迫るシューベルトの2大交響曲。彼が導く叙情的で思索的な音楽は聴き手の心に長く深く刻まれるだろう。
[柴辻純子/音楽評論家]
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料金
S席 | A席 | B席 | C席 | D席 | E席 | |
---|---|---|---|---|---|---|
一般 | 11,000円 | 9,500円 | 7,600円 | 6,000円 | 5,000円 | 3,000円 |
ユースチケット | 5,500円 | 4,500円 | 3,500円 | 2,800円 | 1,800円 | 1,400円 |
※価格は税込です。
※定期会員の方は一般料金の10%割引となります。また、先行発売をご利用いただけます(取り扱いはWEBチケットN響・N響ガイドのみ)。
※車いす席についてはN響ガイドへお問い合わせください。
※N響ガイドでのお申し込みは、公演日の1営業日前までとなります。
※券種により1回券のご用意ができない場合があります。
※当日券販売についてはこちらをご覧ください。
※未就学児のご入場はお断りしています。
※開場前に屋内でお待ちいただくスペースはございません。ご了承ください。
ユースチケット
29歳以下の方へのお得なチケットです。
(要登録)
定期会員券
発売開始日
年間会員券/シーズン会員券(AUTUMN)
2024年7月15日(月・祝)10:00am
[定期会員先行発売日: 2024年7月7日(日)10:00am]
BROADCAST放送予定
NHK-FMベスト オブ クラシック
「第2020回 定期公演 Aプログラム」
2024年11月 1日(金) 7:30PM~ 9:10PM
曲目:
オネゲル/交響曲 第3番「典礼風」
ブラームス/交響曲 第4番 ホ短調 作品98
指揮:ヘルベルト・ブロムシュテット
収録:2024年10月19日 NHKホール