- ホーム
- コンサート情報
- 定期公演 2024-2025シーズン
- Cプログラム
- 第2018回 定期公演 Cプログラム
※約2時間の公演となります(休憩20分あり)。
※やむを得ない理由で出演者や曲目等が変更となる場合や、公演が中止となる場合がございます。公演中止の場合をのぞき、チケット代金の払い戻しはいたしません。
ABOUT THIS CONCERT特徴
2024年9月Cプログラム 聴きどころ
9月のCプログラムで演奏されるのは、19世紀ロシアを代表する作曲家、ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840~1893)の代表作2作である。《ロココ風の主題による変奏曲》は、チェロと管弦楽のために書かれた、チェリストにとって重要なレパートリーのひとつ。いっぽう、《白鳥の湖》はバレエの世界を代表する古典大作である。両者は共に1870年代半ばに作曲されており、チャイコフスキーの多彩さを見出せるプログラムである。
(永井玉藻)
PROGRAM曲目
チャイコフスキー/ロココ風の主題による変奏曲 作品33(フィッツェンハーゲン版)*
西洋音楽史における19世紀は、楽器演奏の卓越した技術を誇る数々の名演奏家が活躍した時代である。独奏楽器にスポットが当たる協奏曲のジャンルも、この時代に大いに発展した。チャイコフスキーの作品では、1875年初演の《ピアノ協奏曲第1番》や、1881年初演の《ヴァイオリン協奏曲》が特に知られるが、本日演奏される《ロココ風の主題による変奏曲》も、実質的にはチェロ独奏の協奏曲と言って良い。
作曲は1876年末から始められ、翌1877年初頭に完成している。作曲の動機は、チャイコフスキーがチェロと管弦楽のレパートリーを充実させたいと考えていた、という話や、モスクワ音楽院の同僚で初演時の独奏者を務めたチェリスト、ウィルヘルム・フィッツェンハーゲンからの依頼だった、など、諸説ある。作品の献呈もフィッツェンハーゲンになされた。
初演は1877年11月30日に行われたが、この時、フィッツェンハーゲンは作品を大幅に書き変えている。元々の楽曲構成は序奏、主題提示ののちに8つの変奏があり、コーダによって締め括(くく)られる、という、主題の要素を巧みに発展させていく構造のもの。しかし、フィッツェンハーゲンは各変奏の並びを変え、主題の長さやいくつかの変奏の終結部分を変更、また8つ目の変奏は大幅に削除した。このように変更されたフィッツェンハーゲン版は、各変奏の性格の対比による演奏効果を高め、華やかなクライマックスを築くのが特徴的である。作品の書き変えを不愉快に感じながらも、初演の大成功を目の当たりにした作曲家は、「もうどうにでもすればいい」と述べ、フィッツェンハーゲン版の出版も止めなかった。以来、この版が一般的に用いられることが多い。
短い序奏の後に提示される独奏チェロの主題は、ロココの時代の舞曲を思わせるもの。弦楽器群が伴奏する第1変奏、スタッカートで駆け上がる独奏チェロが軽やかな第2変奏に続いて、第3変奏ではチャイコフスキー特有の下行形の旋律が際立つ。第4変奏では独奏チェロのカデンツァが挿入され、そのままフルートが主題を導く第5変奏へ。長めのカデンツァが聴かれたのち、短調の第6変奏、急速な第7変奏とコーダにより勢いよく終わる。
(永井玉藻)
演奏時間:約18分
作曲年代:1876年末〜1877年初頭
初演:1877年11月30日(旧ロシア暦11月18日)、モスクワ、ニコライ・ルビンシテイン指揮、ウィルヘルム・フィッツェンハーゲン独奏
チャイコフスキー/バレエ音楽「白鳥の湖」作品20(抜粋)
「“バレエ”と言われてイメージする作品は何ですか?」
毎年、筆者が大学で担当するバレエ史の講義の初回にこの質問を投げかけると、高確率で返ってくる答えのひとつが《白鳥の湖》である。チャイコフスキーが初めて完成させたバレエ曲であり、今日では世界中のバレエ・カンパニーのレパートリーに欠かすことのできない《白鳥の湖》だが、この作品は、初演時から現在のような位置付けを得ていたわけではなかった。
代々の皇帝一家が舞台芸術を好んでいたこともあり、ロシアには17世紀に始まるバレエ上演の長い伝統がある。チャイコフスキー自身は学生時代からバレエに親しみ、フランス・バレエの名作《ジゼル》を特に好んでいたという。その彼が、モスクワの帝室劇場管理部から《白鳥の湖》の作曲を注文されたのは、1875年の春のことだった。初演は1877年3月4日に行われたが、この初演をチャイコフスキーの弟のモデストが酷評していることと、1883年に作品が劇場のレパートリーから外れたことなどを理由に、初演は大失敗だった、とみなされている。作品の評価が高まったきっかけは、1893年に行われた作曲家の追悼記念ガラでの抜粋上演(第2幕)で、1895年にはサンクトペテルブルクの帝室劇場で全幕の改訂上演が行われ、今日では世界中で踊られる作品となった。
作曲にあたって、チャイコフスキーはさまざまなバレエ曲の楽譜をモスクワの帝室劇場の図書室から借りて研究し、バレエ音楽の伝統を吸収した。しかし、作曲家は《白鳥の湖》をありきたりのバレエ音楽にはせず、物語中の「善」と「悪」をシャープ系とフラット系の調性で描き分ける調性配置や巧みな管弦楽法の工夫によって、バレエ音楽に交響曲的な要素を入れ込んでいる。
今回演奏されるのは、指揮者の尾高忠明がバレエ全幕の楽曲から選び抜き、組曲版からも一部を取り入れ再構成した全15曲。〈パ・ド・ドゥ〉(いわゆる「黒鳥のパ・ド・ドゥ」の曲)や〈小さい白鳥の踊り〉、〈オデットと王子のパ・ダクシオン〉といった各幕の見どころや、第3幕の舞踏会で踊られるさまざまな国の踊りなど、《白鳥の湖》の中でも踊りのための場面の音楽を中心にしている。ロ短調の序奏で始まりロ長調の終曲で終わるのも、チャイコフスキーによる調性プランの通り。さながら、《白鳥の湖》の物語、そして音楽のポイントを凝縮したダイジェスト版である。
1895年の改訂上演以来、さまざまな振付家によって改訂演出が行われていることで、《白鳥の湖》は、振付だけでなく曲順や物語の登場人物、結末なども、プロダクションによって異なる。以下に紹介するあらすじでは、今日の演出が基礎とすることの多い、1895年のプティパ/イヴァーノフ改訂振付版でのあらすじを記し、( )内に今回演奏される楽曲を示した。
物語の舞台は古きドイツのとある王国(第1幕第1曲〈情景〉)。近々成人を迎える王子ジークフリートは、宮廷の友人たちから祝われる(第1幕第2曲〈ワルツ〉、第1幕第8曲〈コップの踊り〉)。しかし、王子は母の王妃から結婚を勧められ、浮かない気分に。気分転換のため、狩に出かけると(第2幕第10曲〈情景〉)、王子は美しい白鳥と出会う。実はこの白鳥は、悪魔の呪いにかかったオデット姫だった。王子は彼女の身の上を聞き(第2幕第13曲〈白鳥の踊り〉、〈オデットと王子のパ・ダクシオン〉)、彼女の呪いを解くため、オデットに永遠の愛を誓う。
王子の成人を祝う舞踏会が始まり(第3幕第15曲アレグロ・ジュスト)、招待客による踊りが披露される(第3幕第20曲〈ハンガリーの踊り。チャールダーシュ〉、第3幕第21曲〈スペインの踊り〉、第3幕第22曲〈ナポリの踊り〉、第3幕第23曲〈マズルカ〉)。するとそこにオデットそっくりの娘、オディールが突然現れる。王子はオディールのことをオデットと勘違いし(第1幕第5曲〈パ・ド・ドゥ〔黒鳥のパ・ド・ドゥ〕〉)、オディールとの結婚を宣言してしまうが、それは悪魔の罠だった。呪いが永遠に解けなくなり、絶望に打ちひしがれるオデットに許しを求める王子は(第4幕第28曲〈情景〉)、湖へ身を投げたオデットのあとを追い、自らを刺して、死をもって悪魔を破滅させる(第4幕第29曲〈情景・終曲〉)。
(永井玉藻)
演奏時間:約62分
作曲年代:1875年8月〜1876年4月
初演:1877年3月4日(旧ロシア暦2月20日)、モスクワ、ボリショイ劇場、ヴラディーミル・ベーギチェフおよびワシーリィ・ゲーリツェルの台本、ヴェンツェル・レイジンゲル振付、ステパン・リャボフ指揮 [1895年蘇演]1895年1月27日(旧ロシア暦1月15日)、サンクトペテルブルク、帝室マリインスキー劇場、モデスト・チャイコフスキーによる台本改訂、リッカルド・ドリゴによる楽曲改訂、マリウス・プティパおよびレフ・イヴァーノフ振付、リッカルド・ドリゴ指揮
[アンコール曲]
カタルーニャ民謡(編曲者不明)/鳥の歌
チェロ:辻󠄀本 玲(N響首席チェロ奏者)
N響チェロメンバー(藤森亮一、中実穂、西山健一、藤森洸一)
「ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー」
ARTISTS出演者
指揮尾高忠明
1947年生まれ。父の尚忠(ひさただ)は作曲家・指揮者、母の節子(みさおこ)はピアニスト、兄の惇忠(あつただ)は作曲家という音楽一家の出身である。桐朋学園大学で齋藤秀雄に指揮を師事し、第2回民音指揮者コンクールで第2位に入賞。NHK交響楽団の指揮研究員を経て、東京フィルハーモニー交響楽団の常任指揮者(現桂冠指揮者)、読売日本交響楽団の常任指揮者(現名誉客演指揮者)、札幌交響楽団の音楽監督(現名誉音楽監督)、新国立劇場オペラ芸術監督などを歴任し、2018年から大阪フィルハーモニー交響楽団の音楽監督を務めている。また、後進の指導にも熱心に取り組んでいる。
1971年の放送用の公開収録で指揮者としてデビュー以来、N響とは半世紀以上にわたって共演を重ね、2010年には正指揮者に就任。N響から充実した響きを引き出している。今回の定期のチャイコフスキー・プロのメインは、《白鳥の湖》(抜粋)である。N響とは初披露の演目であるが、BBCウェールズ・ナショナル管弦楽団の首席指揮者(現桂冠指揮者)として、イギリスでも人気のある尾高は、同地の音楽ファンたちがこよなく愛する《白鳥の湖》でも好評を得ているだけに、その円熟味を増した音楽づくりに期待が高まる。
[満津岡信育/音楽評論家]
チェロ辻󠄀本 玲(N響首席チェロ奏者)*
愛知県出身。7歳よりチェロを始める。11歳まで米国フィラデルフィアで過ごし、東京藝術大学音楽学部器楽科を首席で卒業したあと、フィンランドのシベリウス・アカデミー、スイスのベルン芸術大学に留学。これまでに、東京交響楽団、読売日本交響楽団、ロシア国立交響楽団、ベルリン交響楽団などと共演しているほか、ソロ・リサイタルを定期的に開催。また、チェロ四重奏団「クァルテット・エクスプローチェ」や「ひばり弦楽四重奏団」などの一員として、室内楽にも多数参加している。2009年、第2回ガスパール・カサド国際チェロ・コンクールで日本人最高位の第3位に入賞、2013年には第12回齋藤秀雄メモリアル基金賞を受賞。
2020年よりNHK交響楽団首席チェロ奏者。2021年のN響5月公演ではハイドンの協奏曲で、2022年の「N響ほっとコンサート」では林光《オーケストラのための童話「セロ弾きのゴーシュ」》で独奏を務めた。今回も情感たっぷりなソロを聴かせてくれるだろう。使用楽器は宗次コレクションより1730年製作のアントニオ・ストラディヴァリウスを、弓は住野泰士コレクションよりTourteを、特別に貸与されている。
DOWNLOADダウンロード
料金
S席 | A席 | B席 | C席 | D席 | E席 | |
---|---|---|---|---|---|---|
一般 | 10,000円 | 8,500円 | 6,500円 | 5,400円 | 4,300円 | 2,200円 |
ユースチケット | 5,000円 | 4,000円 | 3,100円 | 2,550円 | 1,500円 | 1,000円 |
※価格は税込です。
※定期会員の方は一般料金の10%割引となります。また、先行発売をご利用いただけます(取り扱いはWEBチケットN響・N響ガイドのみ)。
※車いす席についてはN響ガイドへお問い合わせください。
※N響ガイドでのお申し込みは、公演日の1営業日前までとなります。
※券種により1回券のご用意ができない場合があります。
※当日券販売についてはこちらをご覧ください。
※未就学児のご入場はお断りしています。
※開場前に屋内でお待ちいただくスペースはございません。ご了承ください。
ユースチケット
29歳以下の方へのお得なチケットです。
(要登録)
定期会員券
発売開始日
年間会員券/シーズン会員券(AUTUMN)
2024年7月15日(月・祝)10:00am
[定期会員先行発売日: 2024年7月7日(日)10:00am]
BROADCAST放送予定
NHK-FMN響演奏会
「第2018回 定期公演 Cプログラム」
2024年10月 5日(土) 4:00PM~ 5:50PM
曲目:
チャイコフスキー/ロココ風の主題による変奏曲 作品33(フィッツェンハーゲン版)*
チャイコフスキー/バレエ音楽「白鳥の湖」作品20(抜粋)
指揮:尾高忠明
チェロ:辻󠄀本 玲(N響首席チェロ奏者)*
収録:2024年9月27日 NHKホール