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- 第2017回 定期公演 Bプログラム
※約2時間の公演となります(休憩20分あり)。
※やむを得ない理由で出演者や曲目等が変更となる場合や、公演が中止となる場合がございます。公演中止の場合をのぞき、チケット代金の払い戻しはいたしません。
ABOUT THIS CONCERT特徴
2024年9月Bプログラム 聴きどころ
「ハ長調」から同じ調号で示される平行調の「イ短調」、さらにその同主調である「イ長調」へと続く、調性的に近しい関係を持つ3曲で構成されたプログラム。作品の成立時期に計33年のへだたりしかないことにも注目だ。最後に演奏されるベートーヴェンの《交響曲第7番》が初演された1813年に、シューベルトは16歳、シューマンは3歳だった。古典派のベートーヴェン、初期ロマン派のシューベルトとシューマンと区切りをつけたくなるが、彼らが生きた時代が意外に近接したものだったことは再確認しておきたい。
(小味渕彦之)
PROGRAM曲目
シューベルト/イタリア風序曲 第2番 ハ長調 D. 591
約600曲のリート(歌曲)を残し、「歌曲王」として知られるフランツ・シューベルト(1797〜1828)は、ウィーン郊外のリヒテンタールで生まれてウィーンで活躍した作曲家。存命時の名声はベートーヴェンやシューマンには到底及ばなかった。繊細な陰影の描き分けで表現されたかけがえのない音楽が、ようやく仲間内の枠を超えて、外の世界に広がり始めた時に、31年10か月という短い生涯を閉じた。
本作における洒落(しゃれ)た装飾のついた弦楽器の響きと軽やかに歌う木管楽器のメロディに、別の作曲家の顔が思い浮かぶ。喜劇的オペラの名手として名を成したイタリアのジョアッキーノ・ロッシーニ(1792〜1868)だ。あれほどまでの洗練された面持ちとはならないのが、これまたシューベルトらしさ。まさに「イタリア風」の名で友人たちが呼んだ「序曲」は1817年(20歳)に2曲(この作品と《第1番 ニ長調 D. 590》)残された。シューベルトがこれだけ影響を受けて音楽を書いたということは、ウィーンの街でロッシーニの音楽が大流行したという証だ。全盛期の人気は凄まじいもので、ロッシーニのオペラに夢中になるウィーンの聴衆に愛想を尽かしたのは、他ならぬベートーヴェンだった。
全体の3分の1ほどを占める長い序奏に続くのは軽快なアレグロだが、すぐに息の長いロッシーニ・クレッシェンドの模倣が聴こえてくるのも微笑ましい。1818年3月1日にウィーンにあるホテル「ローマ皇帝」のホールで開かれた公開演奏会で、この《D. 591》もしくは《D. 590》が取り上げられたとされる。これはシューベルトの作品が教会で奏でられたミサ曲を除いて、公の場で音になった初めての機会だった。
(小味渕彦之)
演奏時間:約7分
作曲年代:1817年
初演:1818年3月1日にホテル「ローマ皇帝」のホールで開かれた公開演奏会にて初演されたといわれる
シューマン/ピアノ協奏曲 イ短調 作品54
ローベルト・シューマン(1810〜1856)にとって協奏曲を書くことは相当な難題だったようだ。若い頃から珠玉のピアノ独奏曲は生み出してきたが、「ピアノ協奏曲」を手がけはしても、なかなか書き上げるところまでは至らなかった。1841年5月にライプツィヒで書いた《ピアノと管弦楽のための幻想曲》は試演のあとも手直しが続いていたが、これを第1楽章として「ピアノ協奏曲」を完成させる決意をする。これには妻クララの強い後押しがあった。ドレスデンで1845年(35歳)6月と7月に第3楽章に取りかかり、第2楽章へと筆をすすめる。最後に手がけたのは、切れ目なしにつながる第2楽章から第3楽章への移行部分で、7月末には念願の完成に至った。この年の12月4日に試演されて、翌1846年1月1日にゲヴァントハウスの演奏会で公開初演。どちらもクララがピアノを弾いた。従来の名人芸タイプの協奏曲の枠組みを抜け出した作品で、独奏とオーケストラが時に一体となって響きが構築されている。地道な対位法研究の成果も反映されており、シューマンのオーケストラ作品の中でも群を抜いて、まとまりのある構築だと言える。
3楽章で構成。第1楽章冒頭は閃光(せんこう)がほとばしるようなオーケストラの一撃が打ち込まれる。これに導き出された独奏ピアノの下行する和音のパッセージに続く「ドーシーララー」という主題はドイツ語の音名表記では“C–H–A–A”となり、「キアリーナ Chiarina」の綴(つづ)りを音に置き換えたものだ。キアリーナはシューマンが妄想した架空の団体「ダヴィッド同盟」の構成員のひとりで妻クララのことを示す。夢見るような展開は、まさに「幻想曲(ファンタジー)」そのもの。第2楽章は「インテルメッツォ(間奏曲)」と記されて、甘くロマンティックな音楽が綴られた。独創的な第3楽章への移行部では第1楽章の主題が回想される。第3楽章は独奏ピアノとオーケストラの各パートが休みなく動いて絡み合い、しなやかなフィナーレが生まれる。
(小味渕彦之)
演奏時間:約31分
作曲年代:1841年、1845年
初演:1846年1月1日にライプツィヒのゲヴァントハウスにおける演奏会で公開初演
ベートーヴェン/交響曲 第7番 イ長調 作品92
ルートヴィヒ・ファン・ベートーヴェン(1770〜1827)がハイドンやモーツァルトが培った従来の交響曲というフォーマットに込めたひとつの総決算ともいえる曲。プラハの北西にあるテプリッツ(現在はチェコのテプリツェ)での保養からウィーンに戻った1811年9月後半(遅くとも11月)になって本格的に取り組んだ。《第8番》のスケッチも同時進行で進められ、《第7番》は1812年(42歳)5月には完成。その後ベートーヴェンは《第8番》の作曲にのぞんだ。
1813年4月20日にルドルフ大公邸で試演ののち、同年12月8日にウィーン大学の講堂で行われた慈善演奏会で公開初演。このコンサートには戦争で負傷した兵士のための救援資金を募る目的があった。フランス革命後の混乱期以降、ヨーロッパの各地へのナポレオンによる侵攻は長く続き、1805年11月と1809年5月の2度にわたってウィーンの街をナポレオンは占領。社会不安は市民の生活に直接の影響が出るほどに高まっていたのだ。同時に初演されたのが《ウェリントンの勝利》で、これは初代ウェリントン侯爵アーサー・ウェルズリーが率いるイギリス軍が、フランス軍、つまりナポレオンに勝利した戦いを描写したもの。12月12日にも同内容の演奏会が開かれ、翌1814年2月27日には《第7番》と《ウェリントンの勝利》を再び取り上げて、さらに《第8番》が初演されている。こうして《交響曲第7番》はウィーンの聴衆に受け入れられ、同時に多大な収入をベートーヴェンにもたらしたのだ。
4楽章で構成。第1楽章は交響曲では《第4番》以来となる序奏が堂々としたオーケストラの一撃で始まる。ここは閃光(せんこう)ではなく、重量感たっぷりの響きがどっしりとあらわれ、その中からオーボエが吹く下行音型が顔を出す。作品全体で表現された音楽的なエッセンスは「大胆なリズムと歌心に満ちたメロディ」の2点に集約され、そこに自在な変化をもたらすのは3度上と3度下という遠隔調への転調だ。序奏からそのことが顕著にあらわれる。6/8拍子の主部に入ると「タータタン」という付点8分音符、16分音符、8分音符が連なるリズムが続く。徹底的なリズムの積み重ねが、軽やかさを兼ね備えたダイナミックな音楽を創る。第2楽章を支配するのは「タータタターター」という4分音符と8分音符が組み合わされたリズム。葬送行進曲風の歩みではあるが、極端な悲劇性はない。緩徐楽章ではなく、あくまでもその代用だ。第3楽章は従来のスケルツォ楽章の役割を果たしつつも、ロンドの要素を持ち込んだ独自の構成。「タタンタタンタ」というユーモラスなリズムが続く。第4楽章は冒頭で2度にわたって叩(たた)きつけられる「タンタタタン」の8分音符と16分音符の組み合わされたリズムの繰り返しが、凄まじいトランス状態になった。まさにベートーヴェンの新境地は極まっている。
(小味渕彦之)
演奏時間:約43分
作曲年代:1811年から1812年
初演:1813年12月8日にウィーン大学の講堂で行われた慈善演奏会で公開初演
ARTISTS出演者
指揮ファビオ・ルイージ
1959年、イタリア・ジェノヴァ出身。デンマーク国立交響楽団首席指揮者、ダラス交響楽団音楽監督を務める。N響とは2001年に初共演し、2022年9月首席指揮者に就任。就任記念公演でヴェルディ《レクイエム》を、2023年12月のN響第2000回定期公演ではマーラー《一千人の交響曲》を指揮し、この2つの記念碑的公演で共に大きな成功を収めた。またベートーヴェン、ブラームス、ブルックナー、R. シュトラウスなどのドイツ・オーストリアの作品や、フランクやサン・サーンスといったフランス語圏の作品に取り組み、その歌心と情熱に溢(あふ)れた指揮は、多くの聴衆の心を摑(つか)んでいる。2024年8月にはN響台湾ツアーを率い、2025年5月には「マーラー・フェスティバル」(アムステルダム・コンセルトヘボウ)への招待に合わせて行われるヨーロッパツアーで指揮を務める。
これまでにチューリヒ歌劇場音楽総監督、メトロポリタン歌劇場首席指揮者、ウィーン交響楽団首席指揮者、ドレスデン国立歌劇場管弦楽団および同歌劇場音楽総監督、MDR(中部ドイツ放送)交響楽団芸術監督、スイス・ロマンド管弦楽団音楽監督、ウィーン・トーンキュンストラー管弦楽団首席指揮者などを歴任。このほか、イタリアのマルティナ・フランカで行われるヴァッレ・ディートリア音楽祭音楽監督も務めている。また、フィラデルフィア管弦楽団、クリーヴランド管弦楽団、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団、ミラノ・スカラ座フィルハーモニー管弦楽団、ロンドン交響楽団、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団、サイトウ・キネン・オーケストラに定期的に客演し、世界の主要オペラハウスにも登場している。録音には、ヴェルディ、ベッリーニ、シューマン、ベルリオーズ、ラフマニノフ、リムスキー・コルサコフ、マルタン、そしてオーストリア人作曲家フランツ・シュミットなどがある。また、ドレスデン国立歌劇場管弦楽団とは数々のR. シュトラウスの交響詩を収録しているほか、ブルックナー《交響曲第9番》の解釈は高く評価されている。メトロポリタン歌劇場とのワーグナー《ジークフリート》《神々のたそがれ》のレコーディングではグラミー賞を受賞した。
ピアノアレッサンドロ・タヴェルナ※
1983年、イタリアのヴェネチア生まれ。2009年リーズ国際ピアノ・コンクールで第3位に入賞して一躍注目を集めた。そのほか、ロンドン国際ピアノ・コンクール、ブゾーニ国際ピアノ・コンクールなどで入賞。若き日には、イモラ国際ピアノ・アカデミーでレオニード・マルガリウスやボリス・ペトルシャンスキーらに、その後、ローマ聖チェチーリア国立アカデミーでセルジョ・ペルティカローリ、ハノーファー音楽大学などでアリエ・ヴァルディのもと学んだ。ミラノ・スカラ座フィルハーモニー管弦楽団、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団、ロイヤル・フィルハーモニー管弦楽団などのオーケストラ、ロリン・マゼール、リッカルド・シャイー、ファビオ・ルイージ、ダニエル・ハーディングらの著名指揮者と共演している。その国際的なキャリアが評価され、2012年にイタリア共和国大統領賞を受賞した。イギリスの音楽評論家から「ミケランジェリの後継者」で、「その音楽づくりはヴェネチアを訪れた時のように感覚を刺激する」と評された。華やかさと繊細さ、豊かな個性を持ち合わせたピアニスト。2021年11月、N響定期公演に初めて登場し、リスト《ピアノ協奏曲第2番》でオーケストラと渾然一体となってスケールの大きな演奏を繰り広げた。
[高坂はる香]
※当初出演予定のエレーヌ・グリモー(ピアノ)から変更いたします。
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料金
S席 | A席 | B席 | C席 | D席 | |
---|---|---|---|---|---|
一般 | 12,000円 | 10,000円 | 8,000円 | 6,500円 | 5,500円 |
ユースチケット | 6,000円 | 5,000円 | 4,000円 | 3,250円 | 2,750円 |
※価格は税込です。
※定期会員の方は一般料金の10%割引となります。また、先行発売をご利用いただけます(取り扱いはWEBチケットN響・N響ガイドのみ)。
※この公演のお取り扱いは、WEBチケットN響およびN響ガイドのみです。
※車いす席についてはN響ガイドへお問い合わせください。
※券種により1回券のご用意ができない場合があります。
※当日券販売についてはこちらをご覧ください。
※未就学児のご入場はお断りしています。
ユースチケット
29歳以下の方へのお得なチケットです。
(要登録)
定期会員券
発売開始日
年間会員券
2024年7月15日(月・祝)10:00am
[定期会員先行発売日: 2024年7月7日(日)10:00am]
BROADCAST放送予定
NHK-FMベスト オブ クラシック
「第2017回 定期公演 Bプログラム」
2024年10月 4日(金) 7:30PM~ 9:10PM
曲目:
シューベルト/イタリア風序曲 第2番 ハ長調 D. 591
シューマン/ピアノ協奏曲 イ短調 作品54
ベートーヴェン/交響曲 第7番 イ長調 作品92
指揮:ファビオ・ルイージ
ピアノ:アレッサンドロ・タヴェルナ※
収録:2024年9月19日 サントリーホール