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[SPOTLIGHT]開催迫る! NHK交響楽団 第2000回定期公演に向けて

公演情報2023年12月 6日

2023年12月16日17日。N響の定期公演が、第2000回を迎えます。
この記念すべき公演の指揮台に立つのは、N響首席指揮者のファビオ・ルイージ。
演奏される楽曲はファン投票によって選ばれた、マーラー《交響曲第8番「一千人の交響曲」》です。
本特集では、これまでにルイージが語った言葉などを一挙にプレイバックします!

1 .ルイージが語る第2000回定期公演への思いと《一千人の交響曲》の魅力
2. 曲目解説
3. 公演情報
4. 放送予定




1
ファビオ・ルイージが語る
第2000回定期公演への思いと
マーラー《一千人の交響曲》の魅力


― 第1000回定期公演は、長く名誉指揮者を務めたサヴァリッシュとのメンデルスゾーン《オラトリオ「エリア」》でした。第2000回定期公演を指揮されること、また、N響の歴史につながることについてどのようにお考えでしょうか?

ルイージ: マエストロ・サヴァリッシュのことに思いがよぎります。彼はずっと私の憧れの存在でしたし、私のキャリアの初期にバイエルン国立歌劇場で彼に師事していたときには、私を支えてくれ、助けてくれました。私にとっては指揮者として、音楽家として模範とする理想像です。ですからマエストロ・サヴァリッシュが取り組んだ第1000回定期公演に連なって、今度は私が第2000回定期公演で指揮できることを、とても誇らしく思います。
(2022年5月 ルイージへのインタビューより)


ファビオ・ルイージによる聴きどころ


(第2000回定期公演 曲目ファン投票 候補曲紹介より)


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曲目解説

マーラー
交響曲 第8番 変ホ長調「一千人の交響曲」
Ⅰ 賛歌「来たれ、創造主である聖霊よ」
Ⅱ『ファウスト』の終幕の場


1897年以来、ウィーン宮廷歌劇場の音楽監督という激務に追われていたマーラーは、その作曲活動を夏の避暑地でこなすのが常だった。《交響曲第8番》は1906年、オーストリア・クラーゲンフルト近郊のヴェルター湖岸、マイヤーニヒの作曲小屋で作られている(管弦楽化は翌年)。初演は、興行師エミール・グートマンによる、「ミュンヘン博覧会1910」のメインイベントとして企画された。会場の博覧会新祝祭音楽堂には、当時としては最先端の建築様式を象徴するコンクリートとガラスが用いられている。オーケストラ170名、合唱850名、聴衆を収容できるような場所を、既存の歌劇場や演奏会場には求めるべくもない。初演には多くの音楽家や文化人が集った。聴衆の歓呼は30分続き、音楽評論家パウル・シュテファンの言葉を借りれば「マーラーは人生を極め、名声の頂点に立ったようにみえる」というほどの成功を収めた。

もともとマーラーは本作を従来の4楽章形式によって構想していた。スケッチからは、第1楽章のあとに「スケルツォ」「アダージョ・カリタス」「賛歌:エロスの誕生」という3つの楽章が続く予定であったことがわかる。「カリタス」とは神から施される「慈みの愛」。第4楽章においてもう一度賛歌を登場させ、慈愛とは対極にある「エロス」、人間の性愛を置くことで、2つの「愛」の形を対置させようとしたことが窺(うかが)える。

この構想からは、画家グスタフ・クリムトが1901~1902年に描き、《第9》の第4楽章〈歓喜の歌〉の絵画化に際し、シラーの詩とベートーヴェンの音楽を抱き合う男女の姿という性愛の範疇(はんちゅう)で解釈し直した《ベートーヴェン・フリーズ》が想起されよう。結局マーラーは、カリタスとエロスの愛を表現すべき歌詞を、シラーと並び立つ巨匠、ゲーテによる『ファウスト』の最終場面から採った。この場面を交響曲の各楽章を擬したともとれる3部構成(アダージョ、スケルツォ、フィナーレ)にすることで、3つの楽章の要素を包摂する長大な第2部が誕生する。

第1部は、通常の交響曲の冒頭楽章に用いられるソナタ形式として解釈することが可能であり、パロディ的要素は背後に退いている。中世のマインツ大司教、ラバヌス・マウルス(776?〜856)によるラテン語の賛歌《来たれ、創造主である聖霊よ》(主にペンテコステ〔聖霊降臨祭〕の際に歌われる)が冒頭楽章のテクストとして用いられた。冒頭、オルガンによる変ホ長調の主和音が荘重に鳴り響くと、歌詞は1小節ごとに目まぐるしく変わる拍子に乗せて歌われる(第1主題)。第2主題は、第1ソプラノ独唱によって歌われる変ニ長調の「天上の御恵みで満たしたまえ」。展開部は、オーケストラだけによる間奏曲風の楽想が続くことでそれと示し、第1主題の最初と最後を結合して作られたホルンの旋律が現れる(その後の曲を形作る重要な動機)。大規模な二重フーガが展開され、第1主題が完全な形で確保されることによって再現部となる。対位法的な技法は、結尾に向かってそのクライマックスを迎える。

この第1部・展開部で用いられたモティーフが、続く第2部において2つの部を音楽的に結びつける。冒頭のポーコ・アダージョでは、自然、そしてそれを創造した神の偉大さが独唱バリトン〈法悦の教父〉、独唱バス〈瞑想(めいそう)の教父〉によって歌われる。オーケストラの間奏を経てスケルツァンドに移行すると、児童合唱が天使たちの歌を歌い、テノール〈マリア崇拝の博士〉が新しいホ長調の旋律によって聖母を讃(たた)え、変奏曲風の楽想が続く。アダージッシモでは独唱女声3人によるカノンとなり、第2ソプラノ独唱〈贖罪(しょくざい)の女〉(ファウストの永遠の恋人・グレートヒェンを指す)が聖母マリアへの懺悔(ざんげ)を歌う。マリアによる救いの場面では、これまでの主題がさまざまな形で再登場し、世界がより豊かに満たされるさまを描く。リストが《ファウスト交響曲》で導入した「永遠に女性的なるもの」の歌詞が最後に用いられ、カリタスとエロスを融合したこの巨大な作品は、マーラーが長年追い求めてきた新しいオーケストラ作品の在り方を提示する集大成となった。

広瀬大介


左:グスタフ・マーラー(1860-1911) 右:1910年9月、初演に向けてのリハーサル風景(ミュンヘン、新音楽祝祭堂にて)



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公演情報

第2000回 定期公演 Aプログラム
2023年12月16日(土) 開演 6:00pm
2023年12月17日 (日) 開演 2:00pm
NHKホール

曲目:マーラー/交響曲 第8番 変ホ長調 「一千人の交響曲」(ファン投票選出曲)

指揮 : ファビオ・ルイージ
ソプラノ : ジャクリン・ワーグナー※、ヴァレンティーナ・ファルカシュ、三宅理恵
アルト : オレシア・ペトロヴァ、カトリオーナ・モリソン
テノール : ミヒャエル・シャーデ
バリトン : ルーク・ストリフ
バス : ダーヴィッド・シュテフェンス
合唱 : 新国立劇場合唱団
児童合唱 : NHK東京児童合唱団
※当初出演予定のエレーナ・スティッキーナ(ソプラノ)から変更いたします。


4
放送予定


12/23(土)4:00pm~
NHK-FM「N響演奏会」
ホームページ: https://www.nhk.jp/p/nhkconcert/rs/GXG88X8LJQ/
収録:2023年12月16日 NHKホール

※Eテレ「クラシック音楽館」でも放送予定です。(放送日未定)



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