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2026年9月定期公演のプログラムについて ~公演企画担当者から
公演情報2026年7月31日
伝道師・ルイージが放つ、大作《7つの封印の書》の圧倒と感動
[Aプログラム]は、フランツ・シュミット《7つの封印の書》。ご記憶の方も多いと思うが、これは2023年にファン投票で選曲した「第2000回定期」の候補の一つだった。この時に選ばれたのは、マーラー《一千人の交響曲》だが、《7つの封印の書》もいつか必ず、という思いを首席指揮者のファビオ・ルイージは持っており、創立100年のシーズン開幕は、それに最もふさわしいタイミングと考えた。フランツ・シュミットは近年、世界的に注目を浴びつつあるが、知られざる作曲家だったシュミットの再評価に、ルイージは大きく貢献してきた。今回の公演は間違いなく、在任中のハイライトの一つとなるだろう。
《7つの封印の書》は、ウィーンの伝統を継承する作曲家シュミットが、キャリアの集大成として、死の2年前、1937年に完成させた作品で、新約聖書の「ヨハネの黙示録」に基づいている。
バッハから新ウィーン楽派まで、幅広い時代の様式を取り入れた作風は、かつて折衷主義と批判されることもあったが、黙示録の出来事を音楽で表現するために、古今のあらゆる技法を駆使することは、シュミットにとって必然の営みだっただろう。彼は「普通の人間がわかる」作品を目指したというが、実際に曲を聴けば、それがどのようなシーンなのか、聴き手はたちどころに理解できる作りになっている。
殺戮や飢餓、疫病、自然災害といった、この世のあらゆる災厄が描かれるが、昨今の情勢を顧みれば、これらが絵空事とはとても思えない。曲の終盤では、第7のラッパによって、神の勝利が告げられる。四重フーガからハレルヤ・コーラスにいたる、この部分の音楽の流れは、圧倒的かつ感動的だ。
“ヨハネ”を歌うミヒャエル・ラウレンツは、元トランペット奏者というだけあって、滑らかなレガートを持ち味とする。“神の声”は《一千人の交響曲》でも共演したダーヴィト・シュテフェンス。どちらもフレーズの作り方が自然で、ルイージは厚い信頼を寄せている。
重要な役割を担う合唱パートは新国立劇場合唱団。オーディションで決めた国内歌手の顔ぶれにも、もちろんルイージの好みが反映されている。
ところで、めったに演奏されない《7つの封印の書》を、2つの在京オーケストラが同じ月に演奏することになった。惑星直列並みの珍事だが、見方を変えれば、「今の時代にこの曲が求められている」という双方の直感が重なったのかも知れない。
優劣を比べるのではなく、それぞれの良さを味わう聴き方をすれば、音楽体験はより一層豊かなものになるだろう。筆者自身も、新しい音楽監督を迎えた東京交響楽団さんの熱演を楽しみにしている。


指揮 : ファビオ・ルイージ
ヨハネ(テノール) : ミヒャエル・ラウレンツ
神の声(バス) : ダーヴィト・シュテフェンス
ソプラノ : 迫田美帆
メゾ・ソプラノ : 藤井麻美
テノール : 伊藤達人
バス : 加藤宏隆
オルガン : 新山恵理
合唱 : 新国立劇場合唱団
合唱指揮 : 冨平恭平
― N響100年特別企画 ―
フランツ・シュミット/オラトリオ「7つの封印の書」(日本語字幕付き)
現代最高峰のハーデリヒで聴く、ブラームス《ヴァイオリン協奏曲》
ドイツ・ロマン派の名曲を集めた[Bプログラム]は、今年没後200年を迎えたウェーバーの序曲でスタートする。死の直前に初演された《オベロン》は、彼の実質的な最後のオペラである。冒頭のホルンの響きを聴くだけで、私たちはたちまち妖精物語の世界に引き込まれるが、コンサートのオープニングとしても、期待感を高める効果は絶大だ。以前に比べると、ウェーバーの序曲はあまり演奏されなくなった気もするが、ルイージは一貫して好んでいる。短いながらも劇的要素の詰まった佳品で、オペラ指揮者としての個性が垣間見えるだろう。
協奏曲のソリスト、アウグスティン・ハーデリヒは、2024年2月以来の登場となる。プロコフィエフの《第2番》を弾いた前回の終演後、ヴァイオリン奏者たちから、口々に「また呼んで欲しい」と声を掛けられた。いちばん厳しいはずの同業者が手放しで絶賛するのは、そう滅多にあることではない。
それもそのはずで、音色の美しさや滑らかなフレージング、全体構成の巧みさなど、どこを取っても間然するところがなく、現代最高峰のヴァイオリニストの一人であることは疑いなかろう。
幸いにも、あまり間を空けずに共演が実現することになった。ブラームス《ヴァイオリン協奏曲》は、彼が希望した曲である。
後半の《交響曲第4番》は1841年、シューマンの2番目の交響曲として書かれたが、10年後に大幅な改訂が施され、《第4番》と呼ばれるようになった。
管楽器を補強したり、フィナーレの序奏部を拡大したりした結果、より濃厚な曲に生まれ変わったが、ブラームスはシンプルで透明感のある初稿の方を評価していたと伝わる。
今日、一般的なのは改訂版で、ルイージもこちらの版を用いるが、かつてのウィーン交響楽団との録音では、まさに改訂によって拡張された箇所のドラマ性を強調していて、こちらの版を使う理由が明確に現れているように感じた。
ちなみにルイージが敬愛するサヴァリッシュは、この曲でN響定期へのデビューを果たしている。それほど頻繁に演奏されるわけではないが、N響にとっては戦前の新響時代から、比較的なじみの深い曲である。

Bプログラム(サントリーホール)
2026年9月17日(木)7:00pm
2026年9月18日(金)7:00pm
指揮 : ファビオ・ルイージ
ヴァイオリン : アウグスティン・ハーデリヒ
ウェーバー/歌劇「オベロン」序曲
ブラームス/ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77
シューマン/交響曲 第4番 ニ短調 作品120(改訂版)
没後200年にあたる2027年には、世界中のオーケストラが一斉に取り上げるはずなので、それより一足早く、という意図もある。
ゆかりの深い名指揮者たちと奏でるベートーヴェンは、100年の節目にあたる今しか聴けない、特別なものになるだろう。
「名曲はいつ演奏してもよいのであって、記念イヤーだからと言って、特別にクローズアップしなくても」というのが、ルイージの基本的な考えだが、このような機会にベートーヴェンに改めて向き合うのも、それなりに意義深いことではなかろうか。
シリーズを始めるにあたり、彼が選んだのは、9曲の中でいちばん思い入れがあるという《交響曲第3番「英雄」》である。第1楽章はショッキングな和音の連打で始まり、異常な長さの展開部とコーダを持つ。続く楽章に葬送行進曲や変奏曲を導入したのも、前例のない試みだ。
エネルギッシュなルイージの指揮で、ベートーヴェンが追い求めた自由・平等の精神に思いを巡らせたい。
《第3番》の型破りの新しさは、わずか3年ほど前に書かれた《交響曲第1番》の古典的な装いと比べることで、よりはっきりするだろう。
だが、ハイドンやモーツァルトのスタイルを踏襲しているように見える《第1番》にも、ベートーヴェンのユニークなアイデアがちりばめられている。“下属調の属7”という、意表をついた和音で始まる導入部、メヌエットと言いながら実質的にはスケルツォの、疾走感あふれる第3楽章、等々。
クラシカルな均整の中に秘められた遊び心や愉悦を表現するのも、ルイージが得意とするところだ。

2026年9月17日(木)7:00pm
2026年9月18日(金)7:00pm
指揮 : ファビオ・ルイージ
ヴァイオリン : アウグスティン・ハーデリヒ
ウェーバー/歌劇「オベロン」序曲
ブラームス/ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品77
シューマン/交響曲 第4番 ニ短調 作品120(改訂版)
ルイージが際立たせるベートーヴェンの革新性――《第1番》《第3番「英雄」》
[Cプログラム]では、9月から12月にかけて、ベートーヴェンの交響曲を集中的に演奏する。言うまでもなく、N響が創立以来、いちばん多く関わってきたであろう作曲家だ。没後200年にあたる2027年には、世界中のオーケストラが一斉に取り上げるはずなので、それより一足早く、という意図もある。
ゆかりの深い名指揮者たちと奏でるベートーヴェンは、100年の節目にあたる今しか聴けない、特別なものになるだろう。
「名曲はいつ演奏してもよいのであって、記念イヤーだからと言って、特別にクローズアップしなくても」というのが、ルイージの基本的な考えだが、このような機会にベートーヴェンに改めて向き合うのも、それなりに意義深いことではなかろうか。
シリーズを始めるにあたり、彼が選んだのは、9曲の中でいちばん思い入れがあるという《交響曲第3番「英雄」》である。第1楽章はショッキングな和音の連打で始まり、異常な長さの展開部とコーダを持つ。続く楽章に葬送行進曲や変奏曲を導入したのも、前例のない試みだ。
エネルギッシュなルイージの指揮で、ベートーヴェンが追い求めた自由・平等の精神に思いを巡らせたい。
《第3番》の型破りの新しさは、わずか3年ほど前に書かれた《交響曲第1番》の古典的な装いと比べることで、よりはっきりするだろう。
だが、ハイドンやモーツァルトのスタイルを踏襲しているように見える《第1番》にも、ベートーヴェンのユニークなアイデアがちりばめられている。“下属調の属7”という、意表をついた和音で始まる導入部、メヌエットと言いながら実質的にはスケルツォの、疾走感あふれる第3楽章、等々。
クラシカルな均整の中に秘められた遊び心や愉悦を表現するのも、ルイージが得意とするところだ。

Cプログラム(NHKホール)
2026年9月25日(金)7:00pm
2026年9月26日(土)2:00pm
指揮 : ファビオ・ルイージ
― N響100年特別企画 ベートーヴェン交響曲全曲演奏1 ―
ベートーヴェン/交響曲 第1番 ハ長調 作品21
ベートーヴェン/交響曲 第3番 変ホ長調 作品55「英雄」
[西川彰一/NHK交響楽団 芸術主幹]
2026年9月25日(金)7:00pm
2026年9月26日(土)2:00pm
指揮 : ファビオ・ルイージ
― N響100年特別企画 ベートーヴェン交響曲全曲演奏1 ―
ベートーヴェン/交響曲 第1番 ハ長調 作品21
ベートーヴェン/交響曲 第3番 変ホ長調 作品55「英雄」
[西川彰一/NHK交響楽団 芸術主幹]
