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2027年2月主催公演のプログラムについて ~公演企画担当者から
公演情報2026年10月 9日
マナコルダが得意のプログラムを携えN響初登場。ウィーン音楽文化の系譜をたどる《未完成》ほか

"Arnold Schönberg" ©Man Ray / CC by - SA 2.0
[Aプログラム]には、イタリア生まれの指揮者アントネッロ・マナコルダが初登場。名指揮者クラウディオ・アバドが立ち上げたマーラー室内管弦楽団の創設期をコンサートマスターとして支えながら、時代様式に即した奏法の研究にも勤しんだ。
2010年にカンマーアカデミー・ポツダムの首席指揮者兼芸術監督に就任すると、ピリオド的要素を取り入れたベートーヴェンやメンデルスゾーンが評判を呼ぶ。2027年からは、歴史的楽器を用いた演奏で知られるフランスの「レ・シエクル」でも、音楽・芸術監督を務める予定だ。
マナコルダは2022年5月にベルリン・フィル定期へのデビューを飾ったが、今回のプログラムは、その時のヴァリエーションである。新ウィーン楽派とシューベルト《未完成交響曲》を組み合わせることで、ウィーンの音楽文化の重層性に迫る試みだ。同時に、小編成のオーケストラで経験を積んだマナコルダの本領が発揮できる内容にもなっている。
シェーンベルク《室内交響曲第2番》では、ベルリン・フィルとの演奏がそうだったように、全体のテクスチュアを浮き彫りにしながら、ソロ楽器の扱いに最大限の注意が払われるだろうし、バッハの対位法の妙を音色の変化で鮮やかに示したウェーベルン編曲《6声のリチェルカール》でも、それは同様だろう。マナコルダが室内オーケストラとともに追求してきた機動力、細部へのこだわりが、N響との演奏にどう生かされるのか、注目したい。
マーラー《リュッケルトによる5つの歌》が初演されたのは20世紀初頭のウィーン。繊細に歌を包み込むオーケストレーションは、同時代に胎動を始めた新ウィーン楽派を大いに刺激したに違いない。
ザルツブルク音楽祭などで活躍するバリトンのアンドレ・シュエンは2018年、フォーレ《レクイエム》のソリストだったが、リハーサル後に体調を崩し、残念ながら本番のステージに立てなかった。あの時の心底悔しそうな表情が忘れられない。捲土重来を期待したい。

Aプログラム(NHKホール)
2027年2月6日(土)6:00pm
2027年2月7日(日) 2:00pm
指揮:アントネッロ・マナコルダ
バリトン:アンドレ・シュエン
バッハ(ウェーベルン編)/「音楽のささげもの」BWV1079 ― 6声のリチェルカール
マーラー/リュッケルトによる5つの歌
シェーンベルク/室内交響曲 第2番 作品38
シューベルト/交響曲 第7番 ロ短調 D. 759「未完成」

モダン・オーケストラから出発したマナコルダが、キャリアの過程でピリオド奏法への関心を高めていったのと対照的に、[2月特別公演]に出演するトン・コープマンは、古楽のスペシャリストとして名声を確立した後、モダン・オーケストラにも度々客演するようになった。N響とは10年前の2017年以来、定期的に共演している。
自分のスタイルを押し付けるのではなく、楽団の個性を尊重しながら、どこまでも自然体の音楽を生み出していくところに、コープマンの真骨頂がある。
リハーサルでは笑顔を絶やさず、重要なポイントだけを簡潔に指摘する。奏者たちをポジティブなオーラに巻き込み、一緒に良い音楽を奏でたいという気持ちにさせるのだ。
過去4回の共演では、モーツァルトばかりを取り上げてきたが、今回は西洋音楽の金字塔、バッハの《マタイ受難曲》である。この曲が1727年にライプツィヒ・聖トーマス教会で初演されてから、ちょうど300年。それを記念しての企画である。
優れた古楽オーケストラが各地で活躍する昨今、バッハの時代様式とは異なる楽器で《マタイ》を演奏することに、否定的な見方も少なくなかろう。だが人類史に残るこの作品を、本来のスタイルではないという理由で、永久に遠ざけてしまうのはあまりにも勿体ない。コープマンなら、モダン・オーケストラに最も適したやり方で、バッハの音楽のエッセンスを伝えてくれるに違いない。
彼自身が設立したアムステルダム・バロック合唱団との共演にも期待が高まる。マエストロは以前から、同合唱団とN響のコラボレーションに強い意欲を示していた。
イエスが捕縛され、裁判を経て十字架にかけられ、その墓が封印されるまでを描いた聖書の物語。ストーリーテラーである福音史家は、テノールのティルマン・リヒディが務める。2025年、ブロムシュテットが指揮したメンデルスゾーン《交響曲第2番》での名演が記憶に新しい。他にも森麻季、マールテン・エンヘチェス、クラウス・メルテンスといった、この曲にふさわしいソリストたちが出演する。
2027年2月6日(土)6:00pm
2027年2月7日(日) 2:00pm
指揮:アントネッロ・マナコルダ
バリトン:アンドレ・シュエン
バッハ(ウェーベルン編)/「音楽のささげもの」BWV1079 ― 6声のリチェルカール
マーラー/リュッケルトによる5つの歌
シェーンベルク/室内交響曲 第2番 作品38
シューベルト/交響曲 第7番 ロ短調 D. 759「未完成」
古楽の巨匠トン・コープマンが、手兵のアムステルダム・バロック合唱団を率いて贈るバッハ不朽の名作《マタイ受難曲》

モダン・オーケストラから出発したマナコルダが、キャリアの過程でピリオド奏法への関心を高めていったのと対照的に、[2月特別公演]に出演するトン・コープマンは、古楽のスペシャリストとして名声を確立した後、モダン・オーケストラにも度々客演するようになった。N響とは10年前の2017年以来、定期的に共演している。
自分のスタイルを押し付けるのではなく、楽団の個性を尊重しながら、どこまでも自然体の音楽を生み出していくところに、コープマンの真骨頂がある。
リハーサルでは笑顔を絶やさず、重要なポイントだけを簡潔に指摘する。奏者たちをポジティブなオーラに巻き込み、一緒に良い音楽を奏でたいという気持ちにさせるのだ。
過去4回の共演では、モーツァルトばかりを取り上げてきたが、今回は西洋音楽の金字塔、バッハの《マタイ受難曲》である。この曲が1727年にライプツィヒ・聖トーマス教会で初演されてから、ちょうど300年。それを記念しての企画である。
優れた古楽オーケストラが各地で活躍する昨今、バッハの時代様式とは異なる楽器で《マタイ》を演奏することに、否定的な見方も少なくなかろう。だが人類史に残るこの作品を、本来のスタイルではないという理由で、永久に遠ざけてしまうのはあまりにも勿体ない。コープマンなら、モダン・オーケストラに最も適したやり方で、バッハの音楽のエッセンスを伝えてくれるに違いない。
彼自身が設立したアムステルダム・バロック合唱団との共演にも期待が高まる。マエストロは以前から、同合唱団とN響のコラボレーションに強い意欲を示していた。
イエスが捕縛され、裁判を経て十字架にかけられ、その墓が封印されるまでを描いた聖書の物語。ストーリーテラーである福音史家は、テノールのティルマン・リヒディが務める。2025年、ブロムシュテットが指揮したメンデルスゾーン《交響曲第2番》での名演が記憶に新しい。他にも森麻季、マールテン・エンヘチェス、クラウス・メルテンスといった、この曲にふさわしいソリストたちが出演する。
初演300年記念 《マタイ受難曲》指揮 トン・コープマン
2027年2月20日(土)3:00pm
2027年2月21日(日) 2:00pm
福音史家(テノールソロ兼):ティルマン・リヒディ
イエス(バス・バリトン):クラウス・メルテンス
ソプラノ:森 麻季
カウンターテナー:マールテン・エンヘルチェス
バス:ヤスパー・スフェッペ
ピラト(バリトン):ハンス・ウェイエルス
合唱:アムステルダム・バロック合唱団
児童合唱:東京少年少女合唱隊
バッハ/マタイ受難曲 BWV 244(日本語字幕付き)

[Cプログラム]には、2022年のヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで史上最年少の優勝を果たした注目の韓国人ピアニスト、イム・ユンチャンが登場する。
コンクール本選のラフマニノフ《ピアノ協奏曲第3番》は、驚異的な動画再生数を記録した。同じ本選では、ベートーヴェンの《第3番》も弾いているが、艶やかな音色、自在なテンポの伸縮は、小手先の工夫などとは隔たった、湧き上がる生命力の発露そのものに感じられる。楽譜を忠実に再現するにとどまらず、イマジネーションによって音楽を再発見するという姿勢が、彼の演奏スタイルの根幹にあるようだ。多くの聴衆が本能的にその魅力を察知し、熱狂するのも不思議とは思えない。
若いベートーヴェンの自由な発想、遊び心がみなぎる《ピアノ協奏曲第2番》は、今のイム・ユンチャンの魅力を伝える上で、最適の作品の一つと言えよう。定期公演翌月の韓国ツアーでも、この曲を披露する。
後半は、尾高忠明の父で、N響の前身、日本交響楽団の専任指揮者を務めた尾高尚忠の作品。《交響詩「蘆屋乙女」》はウィーン留学中の1938年にブダペストで世界初演され、数年後の日本初演は新響が受け持った。
題材となったのは「万葉集」にも歌われた古い伝説で、自身をめぐる2人の若者の争いを嘆いた乙女が海に身を投げ、若者たちもその後を追う、という悲劇を描いている。作曲者は、日本的な要素を西洋のオーケストラで表現することに主眼を置いたというが、その目標は見事に達成されたというべきだろう。
ポーランドの作曲家パヌフニクは、留学先のウィーンで尾高尚忠と交友関係を結んだ。自国の伝統を作品に生かそうという姿勢は、尾高にも通じるところがある。
《交響曲第2番「悲歌」》は、ワルシャワでの苛烈な戦争体験を経たパヌフニクが「全ての犠牲者に捧げる深い苦悩の表現」だという。“嘆き”のテーマが嵐のような中間部を縁取る構成は《蘆屋乙女》にも似て、暴力のあとの静かな歌が深い余韻を残す。今という時代にじっくり耳を傾けるべき佳品だと思う。
1曲目は、シューマンの《歌劇「ゲノヴェーヴァ」序曲》。貞淑な主人公と、戦地に旅立つその夫、主人公に恋心を抱き、拒絶されたのちに彼女を陥れようとする家臣。三角関係をめぐるドラマが《蘆屋乙女》と類似性を持つことから、同じドイツの作品であるベートーヴェンへの橋渡しとして、この曲を冒頭に置くことにした。

2027年2月20日(土)3:00pm
2027年2月21日(日) 2:00pm
福音史家(テノールソロ兼):ティルマン・リヒディ
イエス(バス・バリトン):クラウス・メルテンス
ソプラノ:森 麻季
カウンターテナー:マールテン・エンヘルチェス
バス:ヤスパー・スフェッペ
ピラト(バリトン):ハンス・ウェイエルス
合唱:アムステルダム・バロック合唱団
児童合唱:東京少年少女合唱隊
バッハ/マタイ受難曲 BWV 244(日本語字幕付き)
ヴァン・クライバーンの熱狂がよみがえる―イム・ユンチャンのベートーヴェン《ピアノ協奏曲第2番》

[Cプログラム]には、2022年のヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールで史上最年少の優勝を果たした注目の韓国人ピアニスト、イム・ユンチャンが登場する。
コンクール本選のラフマニノフ《ピアノ協奏曲第3番》は、驚異的な動画再生数を記録した。同じ本選では、ベートーヴェンの《第3番》も弾いているが、艶やかな音色、自在なテンポの伸縮は、小手先の工夫などとは隔たった、湧き上がる生命力の発露そのものに感じられる。楽譜を忠実に再現するにとどまらず、イマジネーションによって音楽を再発見するという姿勢が、彼の演奏スタイルの根幹にあるようだ。多くの聴衆が本能的にその魅力を察知し、熱狂するのも不思議とは思えない。
若いベートーヴェンの自由な発想、遊び心がみなぎる《ピアノ協奏曲第2番》は、今のイム・ユンチャンの魅力を伝える上で、最適の作品の一つと言えよう。定期公演翌月の韓国ツアーでも、この曲を披露する。
後半は、尾高忠明の父で、N響の前身、日本交響楽団の専任指揮者を務めた尾高尚忠の作品。《交響詩「蘆屋乙女」》はウィーン留学中の1938年にブダペストで世界初演され、数年後の日本初演は新響が受け持った。
題材となったのは「万葉集」にも歌われた古い伝説で、自身をめぐる2人の若者の争いを嘆いた乙女が海に身を投げ、若者たちもその後を追う、という悲劇を描いている。作曲者は、日本的な要素を西洋のオーケストラで表現することに主眼を置いたというが、その目標は見事に達成されたというべきだろう。
ポーランドの作曲家パヌフニクは、留学先のウィーンで尾高尚忠と交友関係を結んだ。自国の伝統を作品に生かそうという姿勢は、尾高にも通じるところがある。
《交響曲第2番「悲歌」》は、ワルシャワでの苛烈な戦争体験を経たパヌフニクが「全ての犠牲者に捧げる深い苦悩の表現」だという。“嘆き”のテーマが嵐のような中間部を縁取る構成は《蘆屋乙女》にも似て、暴力のあとの静かな歌が深い余韻を残す。今という時代にじっくり耳を傾けるべき佳品だと思う。
1曲目は、シューマンの《歌劇「ゲノヴェーヴァ」序曲》。貞淑な主人公と、戦地に旅立つその夫、主人公に恋心を抱き、拒絶されたのちに彼女を陥れようとする家臣。三角関係をめぐるドラマが《蘆屋乙女》と類似性を持つことから、同じドイツの作品であるベートーヴェンへの橋渡しとして、この曲を冒頭に置くことにした。

Cプログラム(NHKホール)
2027年2月12日(金)7:00pm
2027年2月13日(土)2:00pm
指揮:尾高忠明
ピアノ:イム・ユンチャン
― ベートーヴェン没後200年 ピアノ協奏曲全曲演奏2 ―
シューマン/歌劇「ゲノヴェーヴァ」序曲
ベートーヴェン/ピアノ協奏曲 第2番 変ロ長調 作品19
尾高尚忠/交響詩「蘆屋乙女」作品9
パヌフニク/交響曲 第2番「悲歌」
[西川彰一/NHK交響楽団 芸術主幹]
2027年2月12日(金)7:00pm
2027年2月13日(土)2:00pm
指揮:尾高忠明
ピアノ:イム・ユンチャン
― ベートーヴェン没後200年 ピアノ協奏曲全曲演奏2 ―
シューマン/歌劇「ゲノヴェーヴァ」序曲
ベートーヴェン/ピアノ協奏曲 第2番 変ロ長調 作品19
尾高尚忠/交響詩「蘆屋乙女」作品9
パヌフニク/交響曲 第2番「悲歌」
[西川彰一/NHK交響楽団 芸術主幹]
