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[特集]フランツ・シュミット《オラトリオ「7つの封印の書」》を読み解く!
公演情報2026年6月 1日
9月12、13日よりN響2026–27シーズンがいよいよ開幕。幕開けを飾るのは、フランツ・シュミットの声楽つき大作《オラトリオ「7つの封印の書」》。ファビオ・ルイージの指揮で、N響の舞台で初めて演奏されます。フランツ・シュミットはどんな作曲家なのか、《オラトリオ「7つの封印の書」》の魅力とは──本特集でたっぷりとご紹介します。

アルブレヒト・デューラー『黙示録の四騎士』(木版画)
フランツ・シュミット《オラトリオ「7つの封印の書」》は聖書『ヨハネの黙示録』を題材としている。この木版画は、『ヨハネの黙示録』の場面のうち、第1から第4の封印が解かれたときに現れる騎士を描いている(1498年制作/初版刊行)
フランツ・シュミット《オラトリオ「7つの封印の書」》は聖書『ヨハネの黙示録』を題材としている。この木版画は、『ヨハネの黙示録』の場面のうち、第1から第4の封印が解かれたときに現れる騎士を描いている(1498年制作/初版刊行)
シュミットの音楽家人生の集大成、静謐かつ豪奢な音楽をルイージの想いとともに愉しむ
広瀬大介(音楽学者)
近年のN響の演奏に親しんでいるファンの皆さまであれば、オーストリアの作曲家、フランツ・シュミット(1874〜1939)の作品を耳にされたことがおありかもしれません。2021年11月に沼尻竜典が《交響曲第2番》を、そして2025年9月にファビオ・ルイージが《交響曲第4番》を指揮しています。ただ、これらを除けば、N響での演奏機会は3曲・計7回に留まりますし、けっして「馴染(なじ)みのある」作曲家、作品とはいえないのもまた事実。
それでも、シュミットの作品はいずれも、静謐(せいひつ)な音楽のただなかにも、たしかにみなぎるパワーを感じさせる名曲ぞろいです。ウィーン・フィルのチェロ奏者として、そして作曲家としてその才能を遺憾(いかん)なく発揮したこの音楽家が、その最晩年に作り上げた傑作が、《オラトリオ「7つの封印の書」》(1938年初演)でした。ヨハン・セバスティアン・バッハの《マタイ受難曲》のように、聖書の内容、『ヨハネの黙示録』に基づいています。けれども、有名な「最後の審判」のみならず、神の秩序の成就(じょうじゅ)・救いをも感じさせる独自の世界観に従って再構成されており、来るべき第2次世界大戦の惨禍(さんか)をまさに「預言(よげん)」したものという側面も持ち合わせています。
全3部から成るこの大作においては、シンプルなモティーフの繰り返しから全曲が有機的に構成されています。シュミットが得意としたオルガンが前奏曲風に扱われており、作曲家の強い個性を感じさせます。また、マーラーやリヒャルト・シュトラウスの作品と指揮にふれてきたシュミットならではの豪奢(ごうしゃ)なオーケストラ・サウンドも同時に愉(たの)しむことができます。まさに、自身がたどった人生の集大成ともいうべき作品に仕上がっているのです。
2025年に《交響曲第4番》を採り上げたことからも、そして第2000回記念の演奏曲ファン投票の際にこの作品が候補に入っていたことからも、いま首席指揮者の任にあるルイージが、シュミット、そしてこの作品に対して特別の想い入れを持っていることはあきらかでしょう。ルイージ自身、混迷の度を深める現代においても、『黙示録』的な破壊のあとには新しい時代がやってくる、という本作のメッセージ性を身近に感じ、N響との演奏に大きな期待を寄せているとのこと。N響の歴史にとっても記念碑的な演奏になることは間違いありません。
それでも、シュミットの作品はいずれも、静謐(せいひつ)な音楽のただなかにも、たしかにみなぎるパワーを感じさせる名曲ぞろいです。ウィーン・フィルのチェロ奏者として、そして作曲家としてその才能を遺憾(いかん)なく発揮したこの音楽家が、その最晩年に作り上げた傑作が、《オラトリオ「7つの封印の書」》(1938年初演)でした。ヨハン・セバスティアン・バッハの《マタイ受難曲》のように、聖書の内容、『ヨハネの黙示録』に基づいています。けれども、有名な「最後の審判」のみならず、神の秩序の成就(じょうじゅ)・救いをも感じさせる独自の世界観に従って再構成されており、来るべき第2次世界大戦の惨禍(さんか)をまさに「預言(よげん)」したものという側面も持ち合わせています。
全3部から成るこの大作においては、シンプルなモティーフの繰り返しから全曲が有機的に構成されています。シュミットが得意としたオルガンが前奏曲風に扱われており、作曲家の強い個性を感じさせます。また、マーラーやリヒャルト・シュトラウスの作品と指揮にふれてきたシュミットならではの豪奢(ごうしゃ)なオーケストラ・サウンドも同時に愉(たの)しむことができます。まさに、自身がたどった人生の集大成ともいうべき作品に仕上がっているのです。
2025年に《交響曲第4番》を採り上げたことからも、そして第2000回記念の演奏曲ファン投票の際にこの作品が候補に入っていたことからも、いま首席指揮者の任にあるルイージが、シュミット、そしてこの作品に対して特別の想い入れを持っていることはあきらかでしょう。ルイージ自身、混迷の度を深める現代においても、『黙示録』的な破壊のあとには新しい時代がやってくる、という本作のメッセージ性を身近に感じ、N響との演奏に大きな期待を寄せているとのこと。N響の歴史にとっても記念碑的な演奏になることは間違いありません。

フランツ・シュミット(Franz Schmidt)は1874年オーストリア・ハンガリー帝国プレスベルク(現在はスロバキア・ブラチスラバ)生まれの作曲家
ファビオ・ルイージが語る《オラトリオ「7つの封印の書」》
聞き手│広瀬大介
──フランツ・シュミット《オラトリオ「7つの封印の書」》は、2023年12月の第2000回定期公演曲目をファン投票で選んだときの候補曲のひとつでした。今、このオラトリオをN響とともに演奏したいと思われたのはどのような理由からでしょうか。ファビオ・ルイージ(以下FL)◎ このオラトリオは20世紀で最も重要な作品といえるでしょう。フランツ・シュミットの個性が反映されている音楽ですし、何より強いドラマ性を持っています。『ヨハネの黙示録』をテーマにした、とても宗教的な作品で、旧約聖書的な世界、新約聖書的な世界の両方を含んでいます。演奏するべき価値のある第一級の作品だということは疑いようもありません。N響にとっても、その傑出した技術を発揮できるきわめて魅力的な作品になるでしょうし、世界でも演奏機会の少ない作品ですから新しい挑戦にもなると思いました。
──この作品の、ここを聴いてほしいというところを教えてもらえますか。
FL◎ 一番重要な要素は合唱だと考えています。『ヨハネの黙示録』の物語を力強く鮮烈に語るという大事な役割を合唱が担っています。フランツ・シュミットは合唱パートを作曲する際にもその技量を発揮して、四重フーガという複雑な技法を完璧な形式で提示していて、ここに彼の非凡さがあらわれています。
──その合唱を伴う巨大な編成の音楽を指揮するときに、何を一番重視していますか?
FL◎ 大勢の人たちが複雑にかかわりながら演奏する作品です。オーケストラ、合唱団、そしてソリストたちが合わさり、多層的な演奏となるでしょう。音量もおのずと大きくなりがちなので、全体が混沌(こんとん)とした無秩序なものになってしまわないよう、響きに透明性を持たせることが一番重要です。すべてが聴き取れるように、特に小さな音を大切にコントロールすることが肝要だと思っています。
──合唱のほかには、聴きどころはありますか?
FL◎ ええ、あります。もうひとつの重要な要素はオルガンです。第1部と第2部には、オルガン・ソロによる前奏が置かれています。オラトリオの前奏曲にあたる部分がオルガンの独奏で演奏されるということは類例がありません。フランツ・シュミット自身が優れたオルガニストで、多くのオルガン曲も書いているので、そういう特別な役割をオルガンに与えたのだと思います。
この作品でのオルガンの役割は、例えばバッハやメンデルスゾーンのオラトリオにおけるオルガンの役割とは、明らかに違います。フランツ・シュミットが2つの前奏でオルガンに表現させているのは、『黙示録』で示されるできごとに対して、畏敬の念を抱く人間の反応であり、人間性の発露だと思います。ですから、オルガンのこの2つの部分は、作曲者自身にとっても重要であると同時に、きわめて美しく、非常に強いインパクトのある部分なのです。

──この作品は『ヨハネの黙示録』のテキストに沿って進みますが、世界が崩壊する終末を、破局の形ではなくて、神の秩序が成就したという形で描いています。不思議な解釈に思えるのですが、シュミットは音楽的にどのように表現しようと考えていたのでしょうか。
FL◎ 『ヨハネの黙示録』は、災い、悪、滅亡などの要素がとても強烈です。私たちの世界の終わりの瞬間を強い表現で描いています。しかし、それをフランツ・シュミットは、すべての完全なる終焉(しゅうえん)ではなく、神の秩序の成就として、次の存在の形に行くんだと言っているのです。この世の終わりのあとにはより良い世界が待っているんだよということを示しています。シュミットは、この『黙示録』のあとには、新しい時代がやってくるということを音楽で書いていると思います。
──このオラトリオが書かれたのは、ドイツがナチス政権下にあった、第2次世界大戦が始まろうとする前夜です。今、まさに世界情勢が混沌とするこの21世紀に、この作品はどのように響くのか、聴衆にどのように受け取られるでしょうか。
FL◎ 1938年当時の人々と同じような悩みを私たちも今、感じています。私たちは、シュミットとは別の時代を生きていますが、時代を超えても意味を持って響く作品が傑作であり、偉大なる音楽だと思います。卓越した作品には、聴く者にとっての新しい力が宿るのです。例えば、約300年前に書かれたバッハの《マタイ受難曲》が持っている精神的な力などは、まさにそれだと思います。フランツ・シュミットのこの作品もまた、100年前に書かれた時と同じ衝撃を持って現代に響くと確信しています。
N響100年特別企画│2026年9月定期公演Aプログラム
フランツ・シュミット《オラトリオ「7つの封印の書」》
9月12日(土)6:00pm、13日(日)2:00pmNHKホール
指揮:ファビオ・ルイージ
ヨハネ(テノール):ミヒャエル・ラウレンツ
神の声(バス):ダーヴィト・シュテフェンス
ソプラノ:迫田美帆
メゾ・ソプラノ:藤井麻美
テノール:伊藤達人
バス:加藤宏隆
オルガン:新山恵理
合唱:新国立劇場合唱団
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