※約2時間の公演となります(休憩20分あり)。
※やむを得ない理由で出演者や曲目等が変更となる場合や、公演が中止となる場合がございます。公演中止の場合をのぞき、チケット代金の払い戻しはいたしません。
ABOUT THIS CONCERT特徴
異界に導く神秘の響き 夢に誘う音の階 (きざはし )
今年のMusic Tomorrowでは、恒例である尾高賞受賞作品の演奏に続き、「N響100年」を記念する委嘱作品の世界初演、イタリアの巨匠ビローネによる大作の日本初演が行われる。
今回尾高賞を受賞したのは、我妻英の管弦楽のための《祀(まつる)》。前年の武満徹作曲賞第1位と併せてダブル受賞となる。26歳での受賞は、第3回(1955年)の三善晃の22歳、第4回(1956年)の林光の24歳に次ぐ若さであり、尾高賞の長い歴史を画する快挙となった。柳田國男の『遠野物語』に想を得て、現実と非現実、生と死の境を描く《祀》は、我妻が敬愛した師、西村朗が賛辞を送った一作。奏者の叫び、囃子の喧騒を交えた、鮮烈かつ神秘的な響きが聴き手を異界へ導く。
杉山洋一はこれまで指揮者としてMusic Tomorrowに出演してきたが、今回は作曲家としての顔も見せ、自作自演を行う。N響創立100年に際して委嘱された作品のタイトルは《夢へのきざはし》。社会問題、世界情勢をしばしば創作の源としてきた杉山の、次世代に向けた真摯な祈りに耳を澄ませたい。
杉山が拠点とするイタリアの作曲家ピエルルイジ・ビローネは、我妻と同じく、ソフトを用いず楽譜を手書きする。声とトロンボーン・ソロのための《ボッカ・コスモイ》では、ビローネが好んで用いる、宇宙(コスモイ)の深淵にも似た中低音のうなりが、我妻作品に通じる呪術性・儀式性を喚起する。ドイツ語圏で数々の新作初演に携わってきた気鋭のソプラノ、藤田果玲とN響首席奏者を約20年務めてきたベテラン、新田幹男の共演にも注目である。
平野貴俊(音楽学・音楽評論)
PROGRAM曲目
我妻 英/管弦楽のための《祀》(2024) [第73回「尾高賞」受賞作品]
本作品は、民俗学者の柳田國男(1875~1962)が岩手県遠野地方の民話や伝承を聞き記した、日本民俗学の嚆矢(こうし)となった著作『遠野物語』(1910)に発想を得た内容を持つ。
遠野の地では、現世の有限の生命と永遠の時空を漂う霊魂とが交感しつつ共生している。そこには現実と非現実という二元論は存在しない。生と死とが互いの境界を越えて複雑に交錯している。そのような『遠野物語』の世界に、私は精神の究極的な理想郷を見出した。作品の中で奏者たちが様々な神々の名前と併せて叫ぶのは、いずれも『遠野物語』に登場する実在した人々の名前であり、これは彼等の霊魂を彼岸から呼び戻し生と死との目眩(めくるめ)く坩堝(るつぼ)を描くという意図に因る。
本作品において、2台のハープと2台のピアノ、および打楽器4名からなる一群にはとりわけ重要な役割が与えられている。この一群は、楽器編成の上では管楽と弦楽とを中継する機関であり、音楽内容の上では各方向への展開の起点にしてそれらを繋(つな)ぐ接点であり、作曲者の内的発想の上では現実世界と幻想世界とを切り結ぶ音響空間である。この一群は、冒頭をはじめ作品の要となる場面でたびたび存在感を放ち主張するが、それらは異界から発せられる声の音響化された象徴という意味をも併せ持つ。
最後は、遠野の笛吹峠に伝わる物語(峠の四方から火を放たれ焼き殺された継子(ままこ)が笛を吹きつつ死んだという)に由来するフルート独奏が異界へと消えてゆき、閉じられる。
(我妻 英)
杉山洋一/夢へのきざはし ― オーケストラのための (2026) [N響100年記念委嘱作品・世界初演]
この曲は大きな雲の形をしています。湯浅譲二先生が《オーケストラのための「軌跡」》のスケッチブックに書きつけた、“dream”と書き添えられた雲のような絵が、アイデアの出発点だからです。あの絵を目にして以来、夢がどんな形をしていて、何から出来ているのか、自問し続けてきました。おそらく「夢」には、さまざまな希望がひしめいていて、希望はそれぞれ違う方向を向いているかもしれないけれど、ひとりひとりが心の底から喜びを語るなかで、優劣つけることなど意味を成さず、審判する存在もいなければ、誰かを貶(おとし)めるひともいないでしょう。こどもであれ、大人であれ、裕福であってもそうでなくとも、政治家でも、農民でも、教師でも、宗教家でも、生まれがどこでも、たとえ身体が不自由であっても、喜びに向かって「夢」を描いて、笑顔でその夢を話すことは、とても大切ではないかしら、と思うようになりました。
わたしたちは今、社会、歴史の岐路に立っていて、それにはおそらく正解などないでしょう。それぞれが信じる正義の名の下に諍(いさか)いが起こったり、社会には綻びが生まれたりして、簡単には解(ほど)けない固い結びこぶをあちこちにこしらえて、人々の顔つきを険しくしてゆきます。こんなことを思うのは、思いもかけず30年以上も日本の外でマイノリティとして暮らしてきた経験と、あるいは関係あるのかもしれません。わたしたちの未来を造るのはわたしたちではなく、こどもたちです。そのこどもたちのためにこそ、どんな時であっても夢を語りつづける責任が、わたしたち大人には課されているのではないでしょうか。結びこぶを少しでもゆるめたい、という思いでこの曲を書きました。
この曲を936人の赤ん坊の名前を7進法の数字に読み替えて作曲したのは、われわれ大人の所為(せい)ですでに土に返ってしまったこどもたちが、2022年10月から2025年5月のあいだ、ガザに暮らしていたことをどこかに書きつけておきたかったからです。きっと彼らも、この夢がぎっしりつまった雲のなかにいると信じながら。
(杉山洋一)
休憩
スペシャルトーク(ビローネ・自作を語る)
ビローネ/ボッカ・コスモイ ― 声、トロンボーンとオーケストラのための (2007) [日本初演]
異界からの声が響く儀式空間。演奏時間30分におよぶビローネの《ボッカ・コスモイ》を聴いた最初の印象である。太古からの声のようでもあり、宇宙の彼方(かなた)から届いた音群のようでもある。
1960年生まれのイタリア人でウィーン在住のピエルルイジ・ビローネは、音の響きそのものにこだわった2人の作曲の師、サルヴァトーレ・シャリーノとヘルムート・ラッヘンマンに導かれて、未知の音を追求する道を歩んでいる。彼の音楽的な基盤は自らのギターと室内楽の演奏体験に始まり、1960年代のフリー・ジャズとその後の展開、1970年代に自らも参加したロック、さらに実験的な音楽など幅広いジャンルにわたっている。ビローネは自ら演奏し、歌うことによって、音の状態や動き、その変化を虚心坦懐(きょしんたんかい)に模索する。楽器であれ、声であれ、無垢(むく)な状態で音に向き合い、最初の力点、構築への第一歩となる可能性をもったつながりを見出す。ビローネは「こうして“瞬間”を結びつける“生成”があり、それらは“駅”のようなもので関係性を現し、秩序と空間的な階層を示している。これは現実のものであり、私たち全員が知っている“一歩”や“歩行”の経験に基づいているため、聴く側も何の困難もなく理解できる」のだと述べている。こうした感性を、彼はアンドレイ・タルコフスキーの映画から学んだ。
《ボッカ・コスモイ》はウィーン放送交響楽団の委嘱で2007年に作曲された。タイトルは「宇宙の口」という意味。オーケストラの楽器は通常とは異なるグルーピングがなされている。弦楽器はほぼ同じ楽器の組み合わせで3つのグループとなり、管楽器はグループに分けられるか、他の楽器と組み合わされて、音響のユニットを形成する。4人の打楽器奏者は周りからオーケストラを囲み、声とトロンボーンのソリストはその真っただ中で独自の発声法と技法で演奏する。形式的な法則に従うことのない多様な音群からエネルギーが生まれ、幻想的な音像を作りながら複層的に展開される。
(白石美雪)
※6:30pmより尾高賞授賞式・プレトークがございます(司会:白石美雪)
我妻 英│作曲

ピエルルイジ・ビローネ│作曲

ARTISTS出演者
指揮・作曲杉山洋一
1969年東京都出身。桐朋学園大学作曲科卒業。指揮を岡部守弘、エミリオ・ポマリコに、作曲を三善晃、フランコ・ドナトーニ、サンドロ・ゴルリに師事。国内外の著名なオーケストラ、アンサンブルと共演し、同時代作品の指揮、公演の企画・組織で評価を確立。作曲家としてはサントリーホール、オーケストラ・アンサンブル金沢などからの委嘱を受ける。ミラノを拠点とし、現在同市のクラウディオ・アバド音楽院で教鞭を執る。第22回(2023年度)齋藤秀雄メモリアル基金賞、2024年芸術選奨文部科学大臣賞受賞。
ソプラノ藤田果玲
愛知県立芸術大学音楽学部声楽専攻卒業、シュトゥットガルト音楽演劇大学修士課程現代音楽科およびリート科を修了。現在、愛知県立芸術大学大学院音楽研究科博士後期課程に在籍中。ドイツを拠点とし、ゲルハルト・シュテープラー《ジモン》のドイツ初演にてミア役を務めデビュー。aspekte SALZBURGなどの現代音楽フェスティバルに多数出演。これまでに江塚由佳子、森川栄子、アンゲリカ・ルッツ、コーネリス・ヴィトヘフトらに師事。
トロンボーン新田幹男(N響首席トロンボーン奏者)
大阪音楽大学卒業。トロンボーンを呉信一、ニツァン・ハロズ、室内楽をダニエル・ドワイヨンに師事。仙台フィルハーモニー管弦楽団、読売日本交響楽団を経て、現在NHK交響楽団首席トロンボーン奏者。ソリストとしての活動も行うほか、ラデク・バボラーク、セルゲイ・ナカリャコフをはじめ、世界的な奏者との共演も多い。
料金
| S席 | A席 | B席 | |
|---|---|---|---|
| 一般 | 4,000円 | 3,000円 | 2,000円 |
| ユースチケット | 2,000円 | 1,500円 | 1,000円 |
※価格は税込みです。
※定期会員の方は一般料金の10%割引となります。また、先行発売をご利用いただけます(取り扱いはWEBチケットN響・N響ガイドのみ)。
※東京オペラシティArts友の会先行発売(3月10日[火]10:00am)の取り扱いは東京オペラシティ チケットセンターのみとなります。
※車いす席についてはN響ガイドへお問い合わせください。
※N響ガイドでのお申し込みは、公演日の1営業日前までとなります。
※当日券販売についてはこちらをご覧ください。
※未就学児のご入場はお断りしています。
ユースチケット
29歳以下の方へのお得なチケットです。
※要登録
その他の前売所
- 東京オペラシティ チケットセンター TEL:03-5353-9999
- チケットぴあ
- イープラス
- ローソンチケット
主催:NHK / NHK交響楽団
共催:公益財団法人 東京オペラシティ文化財団
助成:芸術文化振興基金
公益財団法人三菱UFJ信託芸術文化財団
公益財団法人 ローム ミュージック ファンデーション





