※約2時間の公演となります(休憩20分あり)。
※やむを得ない理由で出演者や曲目等が変更となる場合や、公演が中止となる場合がございます。公演中止の場合をのぞき、チケット代金の払い戻しはいたしません。
ABOUT THIS CONCERT特徴
2026年6月Bプログラム 聴きどころ
フランス音楽の幅広いレパートリーを自家薬籠中のものとするドゥネーヴが、「夏」と「海」とのキーワードを軸に編んだ魅惑的なプログラム。ただし、この「フランス音楽」は一枚岩ではなく、ロマンティックなベルリオーズの歌曲集と半世紀後のドビュッシーの印象主義的傑作との間には、美学的にも聴覚的にも大きなコントラストがある。若きオネゲルとイベールの瑞々(みずみず)しい感性の光る2作品とともに、個性豊かな楽曲同士の響き合いの妙を味わいたい。
(神保夏子)
PROGRAM曲目
オネゲル/交響詩「夏の牧歌」
スイスにルーツをもち、主にフランスで活動したアルテュール・オネゲル(1892~1955)の初期の代表作のひとつである本作は、パリ音楽院卒業から数年を経た1920年の夏、アルプスの名峰ユングフラウの麓の村で作曲された。スコアに掲げられた「ぼくは夏の夜明けを抱いた」というエピグラフは、擬人化された「夜明け」との触れあいのなかで早朝の世界が徐々に目覚めてゆくさまを叙情的に描いたアルテュール・ランボー(1854~1891)の散文詩「夜明け」から採られている。当時28歳のオネゲルもまた、アルプスの大自然のなかで、こうした美しい夜明けを目にすることがあったのだろうか。
楽曲は大きく3部分から構成され、静かな田園風景が次第に活気を帯び、再びもとの静寂にもどっていく展開が、小編成のオーケストラで繊細に表現される。冒頭ののびやかな主題は、ホルンからオーボエ、ついで第1ヴァイオリンへと受け継がれ、最高音に達したところでにわかに息をひそめる。これと並行して、フルートとクラリネットによる鳥のさえずりが随所で聴こえてくる。溌溂(はつらつ)とした中間部では、クラリネットがベートーヴェンの《田園交響曲》を想起させる新たな主題(邦題中の「牧歌」の原語は「田園」と同じpastoraleである)を提示する。第3部ではそれまでに登場した主題やモティーフが時に折り重なりつつ再現され、フルートによる思い出のような《田園》風主題の再現とともに作品は静かに収束する。
(神保夏子)
演奏時間:約8分
作曲年代:1920年
初演:1921年2月17日、ウラディーミル・ゴルシュマン指揮、ゴルシュマン管弦楽団、パリ
ベルリオーズ/歌曲集「夏の夜」 作品7
エクトル・ベルリオーズ(1803~1869)の残した4つの歌曲集のなかでも最重要作とされる本作は、作曲家と交友関係にあったロマン派の詩人テオフィル・ゴーティエ(1811~1872)の詩集『死の喜劇』(1838)からの6篇を音楽化したものである。シェークスピアの『夏の夜の夢』に加え、同時代のドニゼッティ(1797~1848)の歌曲集《ポジリポの夏の夜》(1836)やミュッセの詩集『夜』(1835~1837)などとの関連も指摘されるタイトルは、愛や夢、幻想と結びついたロマン主義的な「夜」のイメージをも反映したものだろう。初稿はメゾ・ソプラノまたはテノールのためのピアノ伴奏つき歌曲として書かれたが、オーケストレーションの名手ベルリオーズが後年手掛けた管弦楽編曲版(第2稿)は、作品の魅力を一層高めている。
第1曲〈ヴィラネル〉は、新しい季節の訪れとともに恋人を森へ誘う、心浮き立つような田園曲。第2曲〈薔薇(ばら)の亡霊〉では、舞踏会の夜に若い娘によって手折られた薔薇が、亡霊となって彼女の夢枕に立つ。ロマンティックな優美さとほの暗さとを併せ持つこの曲は、上演を聴いた出版業者から高く評価され、曲集全体の管弦楽化の契機となった。第3曲〈入り江のほとり〉は、亡き恋人を想い、悲嘆にくれる漁師の歌。凍り付いた心を映し出したようなモノクロームの旋律は、感情の高まりとともに「ああ! 愛するひとなくして海に出るとは!」という絶望の叫びへと至る。愛する人に「戻ってきて」と呼びかける第4曲〈君なくて〉は不在がテーマではあるが、長調で書かれ、ある種のオペラ的な華やかさをも持つ。当時作曲家と愛人関係にあったメゾ・ソプラノ歌手マリー・レシオ(1814~1862)のために、他の曲に先駆けて管弦楽化されたことでも知られる。第5曲〈墓地で〉は、墓前で鳩(はと)の悲しげな鳴き声に耳を傾けながら死者に思いを馳(は)せるうちに、いつしか亡霊が現れる……というもの。途中の弦楽器のハーモニクスは、この世のものならぬ幻影の出現を予感させる。第6曲〈未知の島〉は、帆をいっぱいに広げた船で恋人を旅へと誘う、晴れやかな舟歌である。
(神保夏子)
演奏時間:約31分
作曲年代:[ピアノ伴奏版]1840~1841年 [管弦楽版]1843年(第4曲)、1855~1856年(第2曲)、1856年(第1・3・5・6曲)
初演:[管弦楽版]1843年2月23日、マリー・レシオのメゾ・ソプラノ独唱、ライプツィヒ(第4曲)、1856年2月6日、アンナ・ボックホルツ・ファルコーニのメゾ・ソプラノ独唱、ゴータ(第2曲)、第1・3・5・6曲および全曲初演については不詳
イベール/寄港地
さまざまな土地の印象を色彩感豊かに描きだす楽曲は、近代フランス音楽におけるひとつの重要な類型でありつづけてきた。ジャック・イベール(1890~1962)の《寄港地》もまた、この系譜に連なる魅惑的な管弦楽曲の一例であり、地中海沿岸の諸都市をめぐる想像上の船旅に聴き手の心をいざなう。
第1次世界大戦への従軍を経て、1919年にフランスの作曲家の登竜門ローマ賞に挑戦したイベールは、初回で首尾よく大賞を獲得し、褒賞としてローマに留学することとなった。本作はこのローマ賞受賞者に課される提出作品の一部として、滞在先のローマで作曲されたものである。「旅をしていると、蛇つかいからごみごみした街並みまで、あらゆるものに興味が湧く」とはイベール自身の言。作品中で描き出される異国の街のイメージは、彼の海軍での経験やローマ賞受賞後の新婚旅行などから得たものであろう。
第1曲はイタリアのローマからパレルモへの旅。地中海の爽やかな風や波のうねりを思わせる音楽の合間に、南方の陽気なタランテラのリズムが聞こえてくる。第2曲はうってかわって北アフリカ・チュニジアのチュニスとネフタが舞台。弦とティンパニの伴奏に乗せて、オーボエ独奏がアラビア風のエキゾティックな旋律を奏でる。第3曲はスペイン南東部のバレンシア。躍動的な舞曲のリズム、タンブリンとカスタネットの響き─。音楽は終盤いっそう活気を増し、興奮の渦のなかでエネルギッシュに締めくくられる。
(神保夏子)
演奏時間:約14分
作曲年代:1922年
初演:1924年1月6日、ポール・パレー指揮、ラムルー管弦楽団、パリ
ドビュッシー/交響詩「海」
「海、これほど音楽的なものはない」──晩年のクロード・ドビュッシー(1862~1918)は、眼前の海の音に耳を傾けながらこう語ったという。少年時代には船乗りになるつもりだったという作曲家は、生涯にわたって海という計り知れぬ存在に大きな愛着を持ち続けていた。そうした彼が1903年の夏、現実の海から遠く離れたブルゴーニュ地方の村で「無数の思い出」と「想像力」を頼りに書き始めたのが、「3つの交響的素描」との副題を持つ本作である。創作時期は作曲家の私生活上の大きな動乱期とも一部重なっていたが、作曲自体は比較的順調に進み、約1年半後の1905年3月に全曲が完成した。
今日ではドビュッシー最大の傑作のひとつとみなされる本作だが、その斬新な表現は初演時には多くの批評家を戸惑わせた。この作品に「海」を感じられないと評したある批評家に対し、ドビュッシーは自身の海への情熱を改めて表明しつつ、相手が固執しているものは自分にとっては時代遅れの古い伝統だと批判している。一定の型にとらわれることなく、刻々と変化し続ける海の姿は、ドビュッシーが芸術家として追い求めつづけた「自由」という理想にも相通ずるところがあっただろう。
第1曲〈海の夜明けから真昼まで〉では、どこからともなく聞こえてくる低音のざわめきのなかから、作品全体を支配する長2度進行のゆらめくようなモティーフが立ち現れる。移ろいゆく多彩な海の表情は、テクスチュアの変化とともに次々と自然発生的に生み出されてゆく数々の主題やモティーフで表現され、最後は金管楽器による「真昼」の輝きで大団円を迎える。波頭のきらめきを思わせるグロッケンシュピールの響きが印象深い第2曲〈波の戯れ〉は、同じく海の千変万化を映し出しているが、伝統的な交響曲の構成になぞらえて「スケルツォ楽章」と評されることもある。嵐の到来を予感させる不穏な動きで始まる第3曲〈風と海との対話〉では、荒れ狂う波のうねりと束の間の凪(なぎ)とが対照的に描かれる。
(神保夏子)
演奏時間:約25分
作曲年代:1903~1905年
初演:1905年10月15日、カミーユ・シュヴィヤール指揮、ラムルー管弦楽団、パリ
ARTISTS出演者
指揮ステファヌ・ドゥネーヴ
ステファヌ・ドゥネーヴはフランス音楽の伝統を鮮やかに、かつ繊細に継承している指揮者のひとりだ。若き日にショルティやプレートル、小澤征爾といった巨匠たちの美学を間近で吸収した。ロイヤル・スコットランド・ナショナル管弦楽団音楽監督(2005〜2012年)、シュトゥットガルト放送交響楽団首席指揮者(2011〜2016年)、ブリュッセル・フィルハーモニー管弦楽団首席指揮者(2015〜2022年)といった名だたるオーケストラの要職を歴任。現在はアメリカの名門セントルイス交響楽団の音楽監督やオランダ放送フィルハーモニー管弦楽団の首席客演指揮者を務めるなど、世界中のオーケストラが絶大な信頼を寄せる。
ドゥネーヴの魅力は、ひとつひとつの音を磨き上げ、豊かなグラデーションを引き出す手腕にある。洒脱(しゃだつ)でエレガントな語り口でスコアに潜む詩情を浮かび上がらせる。日本愛好家としても知られ、セイジ・オザワ 松本フェスティバル(旧サイトウ・キネン・フェスティバル松本)をはじめ日本の楽壇との絆(きずな)も強い。
N響とは2015年の初共演以来、フランス物を中心に10年以上にわたり極上のサウンドを紡いできた。今回のプログラムはオネゲルの爽やかな《夏の牧歌》に始まり、ベルリオーズのロマンティックな《夏の夜》、異国情緒あふれるイベールの《寄港地》を経て、ドビュッシーの《海》の壮大な波しぶきに至る。涼やかなフランスの風がホールを吹き抜けるだろう。
[江藤光紀/音楽評論家]
メゾ・ソプラノガエル・アルケーズ
世界のオペラシーンで急速に存在感を示しているフランスのリリック・メゾ・ソプラノ。確かな技術に支えられた安定感、凛(りん)とした佇(たたず)まいと官能性が同居する艶やかな美声、翳(かげ)りやニュアンスに富むフランス語のディクションの美しさ、心理やドラマを的確に伝える表現力を武器に、オペラ、コンサートの両方で活躍する。エキゾティックな美貌と合わせ、舞台上での存在感も抜群だ。
サント生まれ。故郷近くのポアティエとパリの音楽院で音楽学と声楽を学ぶ。2011年、「ヴィクトワール・ド・ラ・ムジーク」で最優秀新人歌手に選ばれる。2012年、パリ・オペラ座に《ドン・ジョヴァンニ》のツェルリーナ役でデビューして注目を集め、以来世界各地の歌劇場に招かれている。昨年はモンテカルロ歌劇場で山田和樹の指揮のもと《スペインの時》のヒロインを歌い、大成功を収めた。
ベルリオーズの《夏の夜》は、オーケストラ付きフランス語歌曲の精髄と言うべき作品。ベルリオーズならではの流麗な旋律とゆらめくリズム、ニュアンスに富むフランス語の美しさは、アルケーズのような表現力のある歌い手を得てこそ生かされる。
[加藤浩子/音楽評論家]
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料金
| S席 | A席 | B席 | C席 | D席 | |
|---|---|---|---|---|---|
| 一般 | 12,000円 | 10,000円 | 8,000円 | 6,500円 | 5,500円 |
| ユースチケット | 6,000円 | 5,000円 | 4,000円 | 3,250円 | 2,750円 |
※価格は税込です。
※定期会員の方は一般料金の10%割引となります。また、先行発売をご利用いただけます(取り扱いはWEBチケットN響・N響ガイドのみ)。
※この公演のお取り扱いは、WEBチケットN響およびN響ガイドのみです。
※車いす席についてはN響ガイドへお問い合わせください。
※券種により1回券のご用意ができない場合があります。
※当日券販売についてはこちらをご覧ください。
※未就学児のご入場はお断りしています。
ユースチケット
29歳以下の方へのお得なチケットです。
(要登録)
定期会員券
発売開始日
年間会員券
2025年7月13日(日)10:00am
[定期会員先行発売日: 2025年7月6日(日)10:00am]
BROADCAST放送予定
NHK-FMベスト オブ クラシック
「第2066回 定期公演 Bプログラム」
2026年6月25日(木) 7:35PM~ 9:15PM
曲目:
オネゲル/交響詩「夏の牧歌」
ベルリオーズ/歌曲集「夏の夜」 作品7
イベール/寄港地
ドビュッシー/交響詩「海」
指揮:ステファヌ・ドゥネーヴ
メゾ・ソプラノ:ガエル・アルケーズ
収録:2026年6月4日 サントリーホール





