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- 第2008回 定期公演 Cプログラム
※休憩のない、60分~80分程度の公演となります。
※本公演は1曲のみの演奏のため、開演後はお席にお着きいただけませんのでどうぞご了承ください。
※やむを得ない理由で出演者や曲目等が変更となる場合や、公演が中止となる場合がございます。公演中止の場合をのぞき、チケット代金の払い戻しはいたしません。
ABOUT THIS CONCERT特徴
2024年4月Cプログラム 聴きどころ
アントン・ブルックナー(1824~1896)は、自身の《交響曲第5番》を生前に聴くことがかなわなかった。複雑極まる作品は、当時のオーケストラのみならず、ほとんどの聴き手にとって時代を先取りしすぎていたのだろう。この《第5番》から《第7番》へと至る過程をたどれば、多くのひとに受け容れられる「言葉」をついに手に入れた作曲家の歓(よろこ)びがより伝わるのではないか。今回はこの歓びを、クリストフ・エッシェンバッハとN響メンバーが十全に表現してくれるだろう。
(広瀬大介)
PROGRAM曲目
ブルックナー/交響曲 第7番 ホ長調
1878年に完成した《交響曲第5番》の最大の特徴でもある構造の複雑さこそは、ブルックナー作品が人口に膾炙(かいしゃ)しない最大の問題であった。第4楽章で二重フーガを駆使し、前人未踏の大伽藍(だいがらん)を築き上げたにもかかわらず、それがまったく演奏されず、誰にも省みられないとなれば、わざわざそんな労力を払うのは無駄であろう。《第5番》完成の翌年、1879年から作曲された《第6番》では、複雑な対位法的作曲法はほとんど放棄され、わかりやすい旋律が強調された。
すなわち、《第5番》では形式的要素が、《第6番》では歌謡的要素が強調された、ともいえようか。続く《第7番》において、ブルックナーはこの両者をほどよく調和させようと試みたように思われる。《第7番》が大成功を収めた要因のひとつには、こうした両極端な音楽の性質をバランスよく共存させたうえで、それを効果的に聴衆へと伝える術(すべ)をブルックナーがついに会得し、それによって圧倒的な個性が花開いたため、とは言えないだろうか。
1881年9月、《交響曲第6番》の作曲が終わったあと、勤勉なブルックナーは休む間もなく《第7番》の作曲に取りかかった。1882年には第3楽章、第1楽章の順に作曲が進められ、1883年1月に第2楽章のスケッチが完了した。2月13日、リヒャルト・ワーグナーがヴェネツィアで客死。この報(しら)せを受け取ったとき、ブルックナーは第2楽章の仕上げを施していたという。圧倒的な盛り上がりののち、静かに終わっていくその終結部(練習番号X以降)について、ブルックナーは「巨匠のために心からの葬送音楽を書いた」と述懐している。だが、これだけ緊密な構造を有する作品において、すでに揺るぎない全体像があったに違いなく、ワーグナーの追悼を感じさせる要素をあとから追加した、というこのエピソードは、はたしてどこまで真実を伝えているのだろうか。
1883年9月には全体の作曲が完了。ブルックナーは、当時ライプツィヒ歌劇場で活躍していた指揮者アルトゥール・ニキシュに初演を直談判し、1884年12月には同地での初演が実現した。翌1885年3月にはミュンヘンでも演奏が続く。これらの成功をきっかけとして、これまでブルックナー作品をほぼ黙殺し続けていたウィーンにおいても、1886年3月には演奏が実現。この交響曲の成功に自信を得たブルックナーは、各楽章の規模をより膨らませた形で、次の《交響曲第8番》に取り組むこととなる。
かすかな弦楽器のトレモロとともにホルンとチェロによって第1主題が始まる第1楽章の冒頭も、そして3つの主題を順番に登場させる独自のソナタ形式も、自身のこれまでの様式を踏襲しているが、各部分はより自然につながるように工夫されている。
この作品においては、初版(1885年)、ハース版(1944年)、ノヴァーク版(1954年)ともに、その違いは大きくないが(本日はノヴァーク版を使用する)、第2楽章のクライマックス(練習番号W)における打楽器の扱いは常に議論の対象となる。ティンパニ、トライアングル、シンバルのパートは、あとから総譜に紙が貼られて付け足されたものの、その右上に「無効」と書き入れられている。ノヴァークは、これをブルックナーの筆跡ではないと判断して打楽器を採り入れたが、現在ではやはり作曲家の筆跡では、という説もあり、その判断は指揮者に委ねられている。この楽章最後で活躍するワーグナー・テューバは、《ニーベルングの指環》の陰鬱な地底の雰囲気を描写するためにワーグナーが作らせた楽器。独特の荘重な、それでいてもの哀しい雰囲気を生み出している。
第3楽章のトランペットによる冒頭主題では、雄鶏(おんどり)の朝の鳴き声からヒントを得たというエピソードが有名だろう。それに続く7度の下降モティーフを自然につなぎ合わせる巧みさに、作曲家の進境が感じられる。
ソナタ形式の第4楽章でも3つの主題が用いられるのは定例通り。全楽器で演奏される第3主題(第1主題の変形)の荒々しさと素朴さにこそ、シンプルさと複雑さを同居させるこの作曲家の良さが最大限に発揮されている。再現部では、普通は1、2、3の順番に演奏される主題が、逆に3、2、1の順で登場し、その輝かしい雰囲気のままに終結部へと至る工夫が新しい。
(広瀬大介)
演奏時間:約64分
作曲年代:1881年9月23日~1883年9月5日
初演:1884年12月30日、ライプツィヒ、アルトゥール・ニキシュ指揮、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
ARTISTS出演者
指揮クリストフ・エッシェンバッハ
エッシェンバッハが指揮台に立つと、場の空気がぴりっと引き締まる。深く歌い作品を雄大かつ爽快に描き出すが、そこには常にぴんと張った糸のような緊張感が漂い、彼の音楽に独特なオーラを纏(まと)わせる。
1960年代前半にミュンヘンのADR国際音楽コンクールやクララ・ハスキル国際コンクールを制覇しピアニストとしてキャリアを華々しくスタートさせたが、1970年代からは徐々に指揮に重心を移した。これまでに北ドイツ放送交響楽団(現NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団)、フィラデルフィア管弦楽団、パリ管弦楽団、ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団といった世界の数多くの一流オケで要職を担い、2024年9月からはNFMヴロツワフ・フィルハーモニー管弦楽団の芸術監督に就任予定。
N響との初共演は1979年で、ピアニストとしてギュンター・ヴァントの指揮でベートーヴェンの協奏曲を弾いた。30年ぶりとなった2017年の共演では世界最高峰の指揮者のひとりとしてブラームスの交響曲などを聴かせ、その後、2020年、2022年にも密度の濃い演奏を繰り広げている。今回もシューマン、ブルックナーといった得意どころを、鮮やかに鳴らしてくれるはずだ。
1940年ドイツのブレスラウ(現ポーランド・ヴロツワフ)に生まれたが、戦争で父を亡くし母の従姉妹に育てられた。戦争を肌で感じ音楽で自己形成した巨匠も今年84歳。世界が再びきな臭くなってきた今、彼は音楽で何を語るのだろうか?
[江藤光紀/音楽評論家]
PRE-CONCERT CHAMBER MUSIC PERFORMANCE開演前の室内楽
開演前の室内楽
曲目:ベートーヴェン/2本のオーボエとイングリッシュ・ホルンのための三重奏曲 ハ長調 作品87―第1楽章
出演者
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料金
S席 | A席 | B席 | C席 | D席 | E席 | |
---|---|---|---|---|---|---|
一般 | 7,600円 | 6,700円 | 5,300円 | 4,300円 | 3,300円 | 1,600円 |
ユースチケット | 3,500円 | 3,000円 | 2,400円 | 1,900円 | 1,400円 | 800円 |
※価格は税込です。
※定期会員の方は一般料金の10%割引となります。また、先行発売をご利用いただけます(取り扱いはWEBチケットN響・N響ガイドのみ)。
※車いす席についてはN響ガイドへお問い合わせください。
※N響ガイドでのお申し込みは、公演日の1営業日前までとなります。
※券種により1回券のご用意ができない場合があります。
※当日券販売についてはこちらをご覧ください。
※未就学児のご入場はお断りしています。
※開場前に屋内でお待ちいただくスペースはございません。ご了承ください。
ユースチケット
25歳以下の方へのお得なチケットです。
(要登録)
定期会員券
発売開始日
年間会員券
2023年7月17日(月・祝)10:00am
[定期会員先行発売日: 2023年7月9日(日)10:00am]
シーズン会員券(SPRING)
2024年2月16日(金)10:00am
[定期会員先行発売日: 2024年2月7日(水)10:00am]
BROADCAST放送予定
NHK-FMベスト オブ クラシック
「第2008回 定期公演 Cプログラム」
2024年4月19日(金) 7:30PM~ 9:10PM
曲目: ブルックナー/交響曲 第7番 ホ長調
指揮:クリストフ・エッシェンバッハ
収録:2024年4月19日 NHKホール