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- 第2009回 定期公演 Bプログラム
※約2時間の公演となります(休憩20分あり)。
※やむを得ない理由で出演者や曲目等が変更となる場合や、公演が中止となる場合がございます。公演中止の場合をのぞき、チケット代金の払い戻しはいたしません。
ABOUT THIS CONCERT特徴
2024年4月Bプログラム 聴きどころ
ロマン派をひとことで定義するなど、できないかもしれない。でも、もし「“過去”と“未来”の呼び声に引き裂かれた自意識」にその本質をみるなら、ローベルト・シューマン(1810〜1856)ほどロマン的な作曲家はいないだろう。ベートーヴェン亡きあと、尊敬するシューベルトほどのびのび筆を走らせることができず、ワーグナーほど革命的にもなれない──悩ましくもうるわしい、誰にも似ない“声”がたっぷり詰まった3作品である。
(堀 朋平)
PROGRAM曲目
シューマン/歌劇「ゲノヴェーヴァ」 序曲
シューマン最後の10年を、大がかりな劇へのチャレンジが彩っている。「朝な夕な、作曲家として願うのは、ドイツ語オペラを作ることです」(友人宛の手紙、1842年)と熱意は増すばかり。いまだフランスものに押されていた当時だから、新天地ドレスデンで健筆を振るう30代の作曲家にとって、母語によるオペラは念願だった。このときシューマンの頭にあったのと同じ題材を掘り下げたワーグナーがこのジャンルで革命をおこすのは、少しあとのことだ。
市井に人気をほこった中世の伝説『ニーベルングの歌』や『トリスタンとイゾルデ』に台本を求めようか、あるいは『ハムレット』か……悩んだあげく白羽の矢を立てたのが、フランスの聖女ジュヌヴィエーヴ(ドイツ語でゲノヴェーヴァ)の伝説にもとづくC. F. ヘッべルおよびL. ティークの戯曲だった。舞台は8世紀フランス。題名役は伯爵の若妻だが、ドラマを駆動するのはむしろ、彼女に横恋慕する若き執事ゴーロ。その心にうずまく欲望や嫉妬にシューマンも光をあてている。開始まもなくヴァイオリンが提示する下行音型と、それに続くチェロとファゴットの不気味なトリルは、劇のなかで繰り返しゴーロの心理を照らすことになるモティーフだ。全体をつらぬく音調は、ベートーヴェンが確立した「悲劇のハ短調」にほかならない。
台本が確定するかなり前にもう書き始められている点で、この序曲は異彩をはなつ。つまりオペラの成りゆきをあとで総括するというより、それ自体でも完結した内容をもち、単独でよく演奏される。
(堀 朋平)
演奏時間:約9分
作曲年代:[全曲]1847年4月〜1848年8月、1849年まで改訂
初演:[序曲]1850年2月25日、ライプツィヒ[全曲]1850年6月25日
シューマン/チェロ協奏曲 イ短調 作品129
大作《ゲノヴェーヴァ》全曲の指揮をなしとげた2か月後、1850年秋にシューマンはデュッセルドルフにやってくる。新興の商業都市にして、自由な芸術活動がわきおこる活気に満ちた場。やがて精神を崩壊させるまで芸術監督として足かけ3年半、年に10回の定期演奏会をこの地で主導することになったのだ。
その記念すべき第1回演奏会、ピアニストである妻クララが華々しいソロを弾いた日に、本作は完成した。5年前にやっと仕上がった《ピアノ協奏曲》につづく2作目のコンチェルトであり、いまだ佳作のないジャンルに投じられた大きな一石である。もちろん定期演奏会での上演をもくろんでのことだったが、しかしハイドンやドヴォルザークの作品とちがって、きまった奏者を想定することなく書かれた点で異例だ。みずから親しんできたチェロにひそむ魅力を新しく解き放ちたいという、むしろ内的な欲求から本作は生まれたのである。
「……チェロとオーケストラのじつに興味深い絡みあい(フェアウェーブング)にうっとりする。その心地よい響きと深い感情のうちに織り込まれた、あらゆる歌のパッセージ!」─試奏したクララの日記に綴(つづ)られた言葉づかいは、シューマンの想いをたっぷり伝えている。美しいメロディと伴奏という枠組みにおさまらぬ、いくえにも糸が絡みあうタペストリーのような音調は、ひとびとの期待を超えていた。2人のチェロ奏者によるアドバイスもシューマンには受け入れる余地がほとんどなく、初演のチャンスを逃しつづけることになった。
出版にむけた細部の手直しも、強い幻聴に悩まされる1854年2月17日までつづいている。ふたたびクララの日記を開こう─「数時間のあいだローベルトはベッドでじっと耐えていたけれど、やがて立ちあがってチェロ協奏曲の直しを進めた。そうして声の永遠なる響きによっていくらか楽になった、そう彼は言った」。3つの楽章を切れ目なくつづける構成も、そんな永遠性に大きく寄与している。
(堀 朋平)
演奏時間:約25分
作曲年代:1850年10月24日完成、1854年2月まで改訂
初演:おそらく1867年12月10日、ダーフィト・ポッパー独奏、ヴロツワフ [ピアノ伴奏版]1860年6月9日、ライプツィヒ
シューマン/交響曲 第2番 ハ長調 作品61
《チェロ協奏曲》をシューマンは「徹底して晴朗な(ハイター)」音楽とよんだ(出版社宛の手紙、1853年11月3日)。当時にあってこの語はたんなる爽やかさではなく、もう取り戻せない高貴なシンプルさといった意味をもつ。ベートーヴェンの出現によって「できること」と「やりたいこと」の摩擦にたえず苦しんでいた作曲家にとって、「晴朗さ」はあこがれてやまぬ理想であった。
さて、《チェロ協奏曲》からさかのぼること6年前の冬、シューマンはドレスデンにいた。こまめにつけていた家計簿に「交響曲の楽想」の文字が書きつけられたのは、この美しき古都に移り住んでまもなく、シューベルトの《交響曲第8番「ザ・グレート」》を聴いた3日後のことである。5年前に遺族から譲り受けて世に出し、熱烈に愛した作品であった。「昔いたことがあるとはどうしても思い出せないような、ある国につれていってくれる」と(1840年3月10日の評論)。
シューベルトと同じ曇りないハ長調の交響曲は、しかしたいへん長い時間を要した。かつての《第1交響曲》のように「霊感のままに信じられぬ速さで書いた」頃とちがって「すべてを頭のなかで練りあげるというまったく別の作曲法」にいたったと、のちに回顧している(1846年4月の日記)。そうした新フェイズを画する交響曲は、葛藤をのりこえて「普遍的なものにいたる力強さ」ゆえ、ベートーヴェンの《第9交響曲》に匹敵するとさえ、初演後にいくども評された。幻聴に悩まされていた時期に「なかば病人のように書きはじめ(中略)仕上げた後ようやく回復しました」(1849年4月2日)とみずから述懐するように、長いプロセスのすえに歌いあげられた勝利は、作者の人生にも深くつうじるものだった。
第1楽章 「頭のなかで数日来トランペットが鳴っています」(着手の6日後)という言葉どおりの序奏は、ハイドン最後のシンフォニー(《第104番》)をなぞるような晴朗さで幕を開けるが、その背後には、メランコリックな耳鳴りのごとき半音階パッセージが旋回している。
第2楽章 躁(そう)的な渦巻きがつづくスケルツォ。ベートーヴェンの伝統をふまえて、2つの中間部をはさむ5部形式がとられている。
第3楽章 バッハ時代に「感きわまった叫び」と呼ばれた跳躍モティーフで幕を開け、十字架を切る音型で深い内面に沈んでゆく。楽章なかばで、管楽器に高音のヴァイオリンが熱烈に寄り添うところはチャイコフスキーに感銘を与えた。
第4楽章 シューベルトが《大ハ長調交響曲》でベートーヴェンの〈歓喜の歌〉をなぞったように、シューマンもこの偉人の歌曲《はるかな恋人に》のテーマ〈いつもの歌をお別れに〉を変形させて登場させる(開始4分ほど)。そうしておいて最後にこれをオリジナルの形で引用し、晴れやかな勝利を告げるのだ。
(堀 朋平)
演奏時間:約38分
作曲年代:1845年12月12日「交響曲の楽想」を得る。12月28日スケッチ完了。翌年2~5月まで体調不良のため筆が進まず、10月に完成。出版のため1847年10月まで細部を修正
初演:1846年11月5日、メンデルスゾーン指揮、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団
ARTISTS出演者
指揮クリストフ・エッシェンバッハ
エッシェンバッハが指揮台に立つと、場の空気がぴりっと引き締まる。深く歌い作品を雄大かつ爽快に描き出すが、そこには常にぴんと張った糸のような緊張感が漂い、彼の音楽に独特なオーラを纏(まと)わせる。
1960年代前半にミュンヘンのADR国際音楽コンクールやクララ・ハスキル国際コンクールを制覇しピアニストとしてキャリアを華々しくスタートさせたが、1970年代からは徐々に指揮に重心を移した。これまでに北ドイツ放送交響楽団(現NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団)、フィラデルフィア管弦楽団、パリ管弦楽団、ベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団といった世界の数多くの一流オケで要職を担い、2024年9月からはNFMヴロツワフ・フィルハーモニー管弦楽団の芸術監督に就任予定。
N響との初共演は1979年で、ピアニストとしてギュンター・ヴァントの指揮でベートーヴェンの協奏曲を弾いた。30年ぶりとなった2017年の共演では世界最高峰の指揮者のひとりとしてブラームスの交響曲などを聴かせ、その後、2020年、2022年にも密度の濃い演奏を繰り広げている。今回もシューマン、ブルックナーといった得意どころを、鮮やかに鳴らしてくれるはずだ。
1940年ドイツのブレスラウ(現ポーランド・ヴロツワフ)に生まれたが、戦争で父を亡くし母の従姉妹に育てられた。戦争を肌で感じ音楽で自己形成した巨匠も今年84歳。世界が再びきな臭くなってきた今、彼は音楽で何を語るのだろうか?
[江藤光紀/音楽評論家]
チェロキアン・ソルターニ
キアン・ソルターニは、ペルシア人の音楽一家のもと、オーストリアのブレゲンツに生まれた。スイスのバーゼル音楽院でイヴァン・モニゲッティに師事。ドイツのクロンベルク・アカデミーやリヒテンシュタイン国際音楽アカデミーでも学ぶ。また、ダニエル・バレンボム率いるウェスト・イースタン・ディヴァン管弦楽団で首席チェロ奏者を務めた。2017年、クレディ・スイス・ヤング・アーティスト賞および、シュレスヴィヒ・ホルシュタイン音楽祭でバーンスタイン賞を受賞。バレンボイムとは彼の息子マイケル・バレンボイムも交えてベートーヴェンのピアノ三重奏曲集を録音。2020年にはバレンボイム指揮ベルリン国立歌劇場管弦楽団とドヴォルザークの《チェロ協奏曲》を録音した。2023–24シーズンは、チューリヒ・トーンハレ管弦楽団、ウィーン交響楽団、NDRエルプフィルハーモニー管弦楽団と共演。デビュー・アルバムで、歌心に満ちたシューマンの《幻想小曲集》や《アダージョとアレグロ》の演奏を披露していただけに、今回のシューマンの《チェロ協奏曲》も期待しないではいられない。N響とは初共演。使用楽器はアントニオ・ストラディヴァリ「The London, ex Boccherini」(Beares International Violin Society貸与)。
[山田治生/音楽評論家]
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料金
S席 | A席 | B席 | C席 | D席 | |
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一般 | 9,800円 | 8,400円 | 6,700円 | 5,400円 | 4,400円 |
ユースチケット | 4,500円 | 4,000円 | 3,300円 | 2,500円 | 1,800円 |
※価格は税込です。
※定期会員の方は一般料金の10%割引となります。また、先行発売をご利用いただけます(取り扱いはWEBチケットN響・N響ガイドのみ)。
※この公演のお取り扱いは、WEBチケットN響およびN響ガイドのみです。
※車いす席についてはN響ガイドへお問い合わせください。
※券種により1回券のご用意ができない場合があります。
※当日券販売についてはこちらをご覧ください。
※未就学児のご入場はお断りしています。
ユースチケット
25歳以下の方へのお得なチケットです。
(要登録)
定期会員券
発売開始日
年間会員券
2023年7月17日(月・祝)10:00am
[定期会員先行発売日: 2023年7月9日(日)10:00am]