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- 第2007回 定期公演 Aプログラム
※約2時間の公演となります(休憩20分あり)。
※やむを得ない理由で出演者や曲目等が変更となる場合や、公演が中止となる場合がございます。公演中止の場合をのぞき、チケット代金の払い戻しはいたしません。
ABOUT THIS CONCERT特徴
2024年4月Aプログラム 聴きどころ
「ハ短調(伝統的に「究極の悲しみ」を表現する調)」「ウィーン」「青春の炎」「ロマン派」……。完成年については60年の隔たりがあるものの、フランツ・シューベルト(1797〜1828)の《交響曲第4番》とヨハネス・ブラームス(1833〜1897)の《交響曲第1番》との間には、いくつもの共通点……さらには連続性が存在する。ルートヴィヒ・ファン・ベートーヴェン(1770〜1827)が切り拓いた新たな地平を押し広げた2つの作品を通じ、あらためて「交響曲」を聴く意味が問いかけられている。
(小宮正安)
PROGRAM曲目
シューベルト/交響曲 第4番 ハ短調 D. 417「悲劇的」
1816年にこの作品を完成した19歳のシューベルトにとって、強烈な影響力のあった人物。それこそがベートーヴェンであり、またハ短調を基調とした当交響曲も、同じくハ短調で書かれたベートーヴェンの《序曲「コリオラン」》(1807)や《交響曲第5番》(1808)の存在を抜きには考えられないものとなっている。
ただし、ベートーヴェンに対するシューベルトの姿勢には、崇拝と困惑が相半ばしていた。ちょうどこの作品を作っていた頃の彼のベートーヴェン評は次のようになる。曰(いわ)く彼の曲は、「悲劇的なものと喜劇的なもの(中略)、英雄的なものと獰猛(どうもう)なもの(中略)を一緒くたにし、取り違え、区別しない奇怪さ」そのものであると……。
むしろシューベルトは、モーツァルト(1756〜1791)の作品を理想としていた節がある。まただからこそ、シューベルト自身この交響曲に対し、「悲劇的」というタイトルを与えたのだろう。つまり、モーツァルトの短調の交響曲にも通じるような古代ギリシア悲劇の基調を成す崇高な悲しみが、彼の念頭にあったと考えられる。
だが当作品には、単にそれだけにとどまらない、ロマン派につながる暗い情念も滾(たぎ)っている。衝撃的な序奏部から始まり、ソナタ形式というフォーマットだからこそ可能な焦燥感や切迫感に溢(あふ)れた第1楽章。第2楽章は緩やかなテンポに変わり、調性も長調(変イ長調)となるものの、第1楽章の悪夢が随所でフラッシュバックし、不安な世界が続く。さらに「メヌエット」と題されているものの、スケルツォのテンポで、しかも3拍子であるか否かも定かならないリズムを基本とする第3楽章。そして作品の結論ともいえる第4楽章は、第1楽章の世界をさらにどす黒く凝縮したかのような世界に他ならない。
シューベルトが生きた19世紀前半の時代は、フランス革命が泥沼に陥り、保守反動の嵐が吹き荒れていた。政治的な自由を奪われ、厳しい思想統制のもとに置かれていたシューベルトをはじめとする若者たち。その心の呻(うめ)きが、この異形ともいえる交響曲の背後にはある。
(小宮正安)
演奏時間:約30分
作曲年代:1815年頃〜1816年
初演:不明(オットー・ハトヴィヒ指揮による音楽愛好家のオーケストラによる演奏により、ウィーンで初演されたと推定される)
ブラームス/交響曲 第1番 ハ短調 作品68
ハンブルクに生まれ、現在のドイツを中心に活動を営んでいたブラームスは、30歳直前からウィーンへ本拠地を移してゆく。数多の重要な先達音楽家が活躍したウィーンは、温故知新を重んじる彼にとって憧れの都市だった。
ただしそうしたウィーンの伝統は、ブラームスにとって重圧となる。特に尊敬する先達であるベートーヴェンが新たな道を切り拓いた「交響曲」は、彼の創作意欲を搔(か)き立てると同時に、作曲の筆を滞らせる曲者(くせもの)のジャンルだった。こうしてドイツにいた頃から通算すると20年あまりの歳月をかけ、ついに1876年《交響曲第1番》は完成、初演された(しかしさらにその後も、細かな改訂作業が続けられた)。
なおこの作品は、ウィーンの音楽評論の重鎮ハンスリック(1825〜1904)などから、ベートーヴェンの流れを汲(く)む偉大な交響曲と絶賛される。たしかに苦悩に満ち満ちた第1楽章に始まり、第4楽章が輝かしい勝利の凱歌で終わるという構成は、例えばベートーヴェンの《交響曲第5番》に聞かれる「暗から明へ」の道のりを彷彿(ほうふつ)させる。しかも交響曲の結論部分ともいえる第4楽章には、ベートーヴェンの《交響曲第9番》に登場する〈歓喜の歌〉を思わせる主題さえ出現する。
だがブラームスは、ベートーヴェン作品のコピーをしたわけではない。たとえば3部構成からなる緩徐楽章の第2楽章は、最初はオーボエの、最後はホルンやオーボエの響きに彩られたヴァイオリンの独奏による、憧れや感傷に満ちたメロディを基本とし、いわばこれだけでロマンティックな管弦楽のための小品といった趣である。あるいは第3楽章は、ベートーヴェンをはじめとする古典派の交響曲のように何らかのスタイルの舞曲を基本とせず、むしろ若き日のブラームスが私淑したシューマン(1810〜1856)の作品のごとく、幻想的な間奏曲といった性格を帯びている。
さらに第4楽章の序奏部の後半、ホルンによって朗々と奏でられる旋律は、亡き恩人シューマンの妻であり、一時期ブラームス自身が恋心を抱いていたクララ・シューマン(1819〜1896)に宛てた、私的な手紙の中にも登場したもの。それを踏まえると当交響曲自体、その堂々たる構えとは裏腹に、何らかの理念を声高に発信するベートーヴェン型の作品とは異なって、ロマン派の特徴である私小説的要素を具(そな)えているとも考えられる。
ブラームスが移り住んだ当時のウィーンは、中世以来の古い市壁が取り壊され、世界でも有数の近代都市へ変貌を遂げつつあった。そして彼自身、ベートーヴェンを敬愛しつつ、その先をゆく交響曲の可能性をこの作品によって切り拓き、音楽史に新たな1ページを加えていったのである。
(小宮正安)
演奏時間:約45分
作曲年代:1855年頃〜1876年
初演:1876年11月4日、カールスルーエ、フェリックス・オットー・デッソフ指揮、カールスルーエ宮廷管弦楽団
ARTISTS出演者
指揮マレク・ヤノフスキ
歳を重ね、ますます円熟味を増しているドイツ音楽のオーソリティ。2016年、77歳にしてバイロイト音楽祭にデビューし、ワーグナーの《ニーベルングの指環》4部作を指揮。2017年に23年ぶりにベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の演奏会に登場すると、以後、毎年のように同楽団に客演している。まさに大器晩成の巨匠である。
1939年、ワルシャワ生まれ。ドイツで育ち、ケルン音楽大学でウォルフガング・サヴァリッシュに師事。フライブルクやドルトムントの歌劇場、フランス放送フィルハーモニー管弦楽団、スイス・ロマンド管弦楽団、ベルリン放送交響楽団、ドレスデン・フィルハーモニー管弦楽団などのオーケストラのシェフを歴任。1980年代前半にはドレスデン国立歌劇場管弦楽団と《指環》全曲を録音した。
NHK交響楽団との初共演は1985年。東京・春・音楽祭において、2014年からN響と《指環》4部作に1年1作取り組み、好評を博す。その後も《ニュルンベルクのマイスタージンガー》などワーグナー作品を共演。定期公演では2017年のベートーヴェン《交響曲第3番「英雄」》や2022年のシューベルト《交響曲第8番「ザ・グレート」》で見事な成果をあげる。今回、厳格な音楽作りで知られるヤノフスキがN響とともにどんなブラームスの《交響曲第1番》を繰り広げるのか非常に楽しみである。
[山田治生/音楽評論家]
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料金
S席 | A席 | B席 | C席 | D席 | E席 | |
---|---|---|---|---|---|---|
一般 | 9,100円 | 7,600円 | 5,900円 | 4,800円 | 3,800円 | 2,000円 |
ユースチケット | 4,000円 | 3,500円 | 2,800円 | 2,100円 | 1,500円 | 1,000円 |
※価格は税込です。
※定期会員の方は一般料金の10%割引となります。また、先行発売をご利用いただけます(取り扱いはWEBチケットN響・N響ガイドのみ)。
※車いす席についてはN響ガイドへお問い合わせください。
※N響ガイドでのお申し込みは、公演日の1営業日前までとなります。
※券種により1回券のご用意ができない場合があります。
※当日券販売についてはこちらをご覧ください。
※未就学児のご入場はお断りしています。
※開場前に屋内でお待ちいただくスペースはございません。ご了承ください。
ユースチケット
25歳以下の方へのお得なチケットです。
(要登録)
定期会員券
発売開始日
年間会員券
2023年7月17日(月・祝)10:00am
[定期会員先行発売日: 2023年7月9日(日)10:00am]
シーズン会員券(SPRING)
2024年2月16日(金)10:00am
[定期会員先行発売日: 2024年2月7日(水)10:00am]
BROADCAST放送予定
NHK-FMベスト オブ クラシック
「第2007回 定期公演 Aプログラム」
2024年4月18日(木) 7:30PM~ 9:10PM
曲目:
シューベルト/交響曲 第4番 ハ短調 D. 417「悲劇的」
ブラームス/交響曲 第1番 ハ短調 作品68
指揮:マレク・ヤノフスキ
収録:2024年4月13日 NHKホール