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- 第2005回 定期公演 Cプログラム
※休憩のない、60分~80分程度の公演となります。
※やむを得ない理由で出演者や曲目等が変更となる場合や、公演が中止となる場合がございます。公演中止の場合をのぞき、チケット代金の払い戻しはいたしません。
ABOUT THIS CONCERT特徴
「英雄を必要とする国は不幸だ」。20世紀ドイツを代表する文学者ブレヒトが、自作の戯曲にしたためた言葉である。近代以降、ヒトラーをはじめとするさまざまな政治家が英雄と崇(あが)められて華々しく登場した末に、恐るべき独裁体制を築き上げた時代を体験したからこその言葉だろう。本日演奏されるのは、まさにその近代ただ中の19世紀において生まれた「英雄」をテーマにした2つの作品。そこに描かれたのは、輝けるヒーローなのか、それとも……?
(小宮正安)
PROGRAM曲目
ワーグナー/ジークフリートの牧歌
リヒャルト・ワーグナー(1813〜1883)の数々の楽劇の中でも、空前のスケールを誇る《ニーベルングの指環》。このシリーズを構成する4つの楽劇のうち、第3弾にあたるのが《楽劇「ジークフリート」》である。「ジークフリート」とは、《ニーベルングの指環》後半部分に登場する英雄であり、「勝利(ジーク)」と「平和(フリート)」をもたらす者、という意味合いだ。
この《楽劇「ジークフリート」》で奏でられる数々の動機が登場するのが、《ジークフリートの牧歌》である。そのため、楽劇の聴きどころを作曲者のワーグナー自身が管弦楽用にまとめたハイライト版のように誤解されがちだが、そうではない。むしろ《ジークフリートの牧歌》に登場する動機の幾つかが、作曲途中だった《楽劇「ジークフリート」》に用いられた。
曲そのものは、数年にわたる不倫関係の末、1870年にようやく結婚して妻となったコジマの誕生日祝いとして作られた。当時、ワーグナーとコジマとの間には既に子供が3人生まれており、とりわけ1869年に長男ジークフリートを出産してくれたことに、ワーグナーがきわめて感謝していたことが作曲の動機となっている。
このように私的な要素の強い作品ゆえ、初演もスイスのトリープシェンの自宅において、朝、眠っていたコジマを夢の中から目覚めさせるためにおこなわれた。結果、英雄的な力強い響きを得意とするワーグナーの作品にしては、異例の小編成となっている(初演の際には、合計わずか16台の楽器が用いられている)。
しかも、楽劇の中では数々の血なまぐさい行為を繰り返すジークフリートだが、この作品には平和や憧れが溢(あふ)れているのが特徴だ。「戦への勝利」の象徴であるトランペットの出番が、わずか10数小節しかないのもその表れ。逆に言えば、《楽劇「ニーベルングの指環」》の英雄的な筋書を彷彿(ほうふつ)させる行為(例えば愛する女性を目覚めさせ、息子をジークフリートと名付ける)を私生活で実現するいっぽう、その生活に平和を求めたワーグナー自身の姿が滲(にじ)み出た1曲である。
(小宮正安)
演奏時間:約18分
作曲年代:1870年
初演:1870年12月25日、スイス・トリープシェンのワーグナー宅にて
R. シュトラウス/交響詩「英雄の生涯」 作品40
このワーグナーに心酔した若き作曲家のひとりが、リヒャルト・シュトラウス(1864〜1949)である。彼は、ワーグナーの唱えた音楽の進歩進化に基づく作品を書くことで、繁栄の陰でさまざまな矛盾を露呈しつつあった19世紀市民社会に風穴をあけることを目指していた。そんなシュトラウスの姿勢が如実に現れたジャンルこそ「交響詩」、ワーグナーばりの大編成の管弦楽と斬新な音楽技法を用い、音楽を通じた情景や思想の描写が徹底して追求された。
その7作目にあたるのが、1898年に作られた《英雄の生涯》である。全体は6つの部分から構成され、楽譜に記された原題に忠実に訳すと、「英雄」「英雄の敵対者」「英雄の伴侶(はんりょ)」「英雄の戦場」「英雄の平和の業績」「英雄の隠遁(いんとん)と知の完成」となる。
なお、作品のタイトルの一部でもある「英雄」とは誰を指すのかについては、さまざまな見解が存在する。冒頭部分の〈英雄〉が変ホ長調の主調で始まるところから、同じ調性に基づくベートーヴェンの《英雄交響曲》が意識されたのは間違いない。また〈英雄の業績〉において、シュトラウス自身がそれまで書いた作品の引用が次々と出現することから、英雄とはシュトラウスその人を意味するとも言われてきた。
ただし、別の見方もできるだろう。というのも、例えばベートーヴェンの《英雄交響曲》に聴かれるような、死を賭した英雄の活躍、さらには死を通じた英雄の復活、というプロセスはここには存在しない。英雄は敵対者と戦うものの、それは彼が伴侶を得てからのこと。(しかも〈英雄の伴侶〉では、シュトラウスの妻だったパウリーネの勝気な姿を彷彿(ほうふつ)させ、独奏ヴァイオリンが英雄をきりきり舞いさせる)。〈英雄の戦い〉においても、英雄のテーマだけでなく伴侶のテーマが輝かしく登場し、英雄を勝利へと導く。またさらにこの英雄、悲劇的な死とは正反対の悠々自適な暮らしを始め、平穏に息を引き取る……。
このように考えると、同じ19世紀に書かれた「英雄」関係の音楽であっても、ベートーヴェンとシュトラウスのそれとの間には、大きな隔たりがある。英雄を戴(いただ)く新たな社会の出現への期待の中に書かれた前者と、そうした社会が破綻をきたしつつある状況を直視せざるをえなかった後者。公的な世界を突き動かす英雄を大真面目に描いたようでありながら、シュトラウスの日常をも思わせる英雄の私生活、さらには「脱英雄」をも想起させる。一筋縄でゆかない、あまりにも複雑な新時代の英雄を描いた大作に他ならない。
(小宮正安)
演奏時間:約45分
作曲年代:1898年
初演:1899年3月3日、フランクフルト
ARTISTS出演者
指揮大植英次
広島県生まれ。桐朋学園音楽大学で齋藤秀雄に師事し、1978年に小澤征爾の招きで渡米。ボストンのニューイングランド音楽院でラリー・リヴィングストンに学ぶ。またタングルウッド音楽祭に参加し、恩師レナード・バーンスタインに出会う。1985年にバーンスタインとともに広島平和コンサートに参加し、糀場富美子《広島レクイエム》を指揮した。
1986年にバッファロー・フィルハーモニー管弦楽団の準指揮者、1991年からエリー・フィルハーモニックの音楽監督、1995年にはミネソタ管弦楽団の第9代音楽監督と、北米のオーケストラのポジションを歴任。1998年にはハノーファー北ドイツ放送フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者となり、2009年には名誉指揮者の称号を与えられた。
日本では2003年から朝比奈隆の後任として大阪フィルハーモニー交響楽団の音楽監督に就任し、大阪城西ノ丸庭園での「星空コンサート」、御堂筋や中之島周辺のショールームなどで開催する「大阪クラシック」のプロデュースなど、普及にも力を入れた。現在は大阪フィルハーモニー交響楽団の桂冠指揮者。2005年夏にはバイロイト音楽祭で日本人として初めて《トリスタンとイゾルデ》を指揮。2006年から2010年までバルセロナ交響楽団の音楽監督を務めた。
NHK交響楽団とは1999年に定期公演で初共演。2021年には特別公演でも久しぶりに共演したが、定期公演への出演は25年ぶりとなる。
[片桐卓也/音楽評論家]
PRE-CONCERT CHAMBER MUSIC PERFORMANCE開演前の室内楽
開演前の室内楽
曲目:ドヴォルザーク/弦楽五重奏曲 第2番 ト長調 作品77 第1楽章
出演者

倉冨亮太

宮川奈々

飛澤浩人

小畠幸法

矢内陽子
MOVIEムービー
2月N響定期公演Cプログラムについて
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料金
S席 | A席 | B席 | C席 | D席 | E席 | |
---|---|---|---|---|---|---|
一般 | 7,600円 | 6,700円 | 5,300円 | 4,300円 | 3,300円 | 1,600円 |
ユースチケット | 3,500円 | 3,000円 | 2,400円 | 1,900円 | 1,400円 | 800円 |
※価格は税込です。
※定期会員の方は一般料金の10%割引となります。また、先行発売をご利用いただけます(取り扱いはWEBチケットN響・N響ガイドのみ)。
※車いす席についてはN響ガイドへお問い合わせください。
※N響ガイドでのお申し込みは、公演日の1営業日前までとなります。
※券種により1回券のご用意ができない場合があります。
※当日券販売についてはこちらをご覧ください。
※未就学児のご入場はお断りしています。
※開場前に屋内でお待ちいただくスペースはございません。ご了承ください。
ユースチケット
25歳以下の方へのお得なチケットです。
(要登録)
定期会員券
発売開始日
年間会員券
2023年7月17日(月・祝)10:00am
[定期会員先行発売日: 2023年7月9日(日)10:00am]
シーズン会員券(WINTER)
2023年10月17日(火)10:00am
[定期会員先行発売日: 2023年10月12日(木)10:00am]
BROADCAST放送予定
NHK-FMベスト オブ クラシック
「第2005回 定期公演 Cプログラム」
2024年2月 9日(金) 7:30PM~ 9:10PM
曲目:
ワーグナー/ジークフリートの牧歌
R. シュトラウス/交響詩「英雄の生涯」 作品40
指揮:大植英次
収録:2024年2月9日 NHKホール