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定期公演 2023-2024シーズンBプログラム
第2006回 定期公演 Bプログラム

サントリーホール
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※約2時間の公演となります(休憩20分あり)。
※やむを得ない理由で出演者や曲目等が変更となる場合や、公演が中止となる場合がございます。公演中止の場合をのぞき、チケット代金の払い戻しはいたしません。

ABOUT THIS CONCERT特徴

スペインのグラナダ出身である指揮者パブロ・エラス・カサドによるスペイン・プログラムだ。この国を代表する作曲家ファリャの代表作、そしてタイトルに国名を含むラヴェル……。それらに比べるとプロコフィエフとスペインの関係は少し分かりづらいが、この協奏曲の第3楽章ではスペインを想起させるメロディとカスタネットが活躍する。しかしながらエラス・カサドは民俗性を強調しない。彼自身の言葉を引けば「民俗色に重きを置く新ロマン主義的な態度と袂(たもと)を分かちながら、作品の真髄、作品の本来の姿、ファリャの真の意図に迫る」(カサド指揮のCD『ファリャ:三角帽子、恋は魔術師』ライナーノーツより。西久美子訳)のだという。古楽や現代音楽を演奏するかの如く、楽譜の指示を精緻に音へと反映させるのだ。

(小室敬幸)

PROGRAM曲目

ラヴェル/スペイン狂詩曲

フランスのモーリス・ラヴェル(1875〜1937)がその生涯に、スペインを題材にした音楽を多く手掛けたのは、彼がこよなく愛した実母マリーがバスク地方出身でスペイン語を流暢(りゅうちょう)に話していたからなのだろう。母の歌う民謡と故郷の思い出話を聴いて育ったラヴェルにとって、スペイン文化は理想化された憧れだった。
現存するラヴェル作品のなかで、最初にスペインの要素を大々的に取り入れたのは2台ピアノのための《ハバネラ》(1895)である。この曲とあまりに似ている《グラナダの夕暮れ》(1903)をドビュッシーが発表したため、実際にドビュッシーが《ハバネラ》を参照したのか真偽は不明だが、ラヴェルはドビュッシーに苛立っていたそうだ。見返すためもあったのだろう、1907年に作曲が始められた《スペイン狂詩曲》のなかに、「1895年」と作曲年を付した上でこの《ハバネラ》も組み込まれた。
第1曲〈夜への前奏曲〉は、続けて演奏される次曲の前触れ。冒頭から執拗(しつよう)に繰り返される「ファ・ミ・レ・ド♯」が静寂(しじま)を感じさせるが、夜の雰囲気は一様ではなく、時間の流れとともに空気感を変えてゆく。
第2曲〈マラゲーニャ〉は、マラガ地方発祥のフラメンコの一種をモデルにしている。実際のマラゲーニャに用いられるカスタネットを取り入れ、弦楽器のピチカートがギターを模倣する。踊りが落ち着くと、前曲の夜の静寂が戻ってくる。
第3曲〈ハバネラ〉は、特徴的なリズムを繰り返すハバナ風コントルダンスのことなので、(スペインの植民地だった)キューバ発祥。だが《歌劇「カルメン」》の例もあるように、スペインと頻繁に結び付けられてきた。原曲の2台ピアノ版では「耳で聴く風景」という曲集だったことからも分かるように、ハバネラによってスペインの風景を描いている。
第4曲〈祭り〉は、スペイン北東部の踊りホタをモデルにしている。だが舞曲名をタイトルにしていないのは、踊りそのものではなく祭りの熱狂を描写しているからなのだろう。夕暮れを想起させる官能的な中間部を経て、夜の静寂が戻ってきたあと再び、狂乱へと導かれていく。

(小室敬幸)

演奏時間:約15分
作曲年代:1907〜1908年2月(〈ハバネラ〉の原曲は1895年)
初演:1908年3月15日、エドゥアール・コロンヌ指揮、コロンヌ管弦楽団、パリ

プロコフィエフ/ヴァイオリン協奏曲 第2番 ト短調 作品63

セルゲイ・プロコフィエフ(1891〜1953)の作品としては珍しく、この曲の第3楽章はスペイン風である。本作に影響を与えたわけではないだろうが、彼が1923年に結婚したカロリナ・コディナ(愛称リーナ)はスペイン系の父とロシア系の母のもと、マドリードで生まれた声楽家であった。
その妻と子ども2人を連れて、ソビエト連邦となった祖国にプロコフィエフが完全帰国したのは1936年のこと。その前年に、《バレエ音楽「ロメオとジュリエット」》と並行して書かれたのが本作である。彼がピアニストとして共演を重ねていたフランス人ヴァイオリニストのロベール・ソエタンのために作曲された。
1917年に完成した《ヴァイオリン協奏曲第1番》が緩─急─緩という3楽章制だったのに対し、本作は急─緩─急という一見したところ伝統的な構成だ。ところが細かく形式をみていくと、随所で定型を壊しにかかっている。また旋律は叙情的でありながらも、毛嫌いしていたグラズノフのような甘いロマンティシズムには傾かない、実に新古典主義的な音楽なのだ。
第1楽章はソナタ形式。無伴奏で提示される暗い第1主題と、明るく優しげな第2主題はどちらも対位法的に管弦楽と絡みあいながら、プロコフィエフらしい遠隔調へとゆらめいて、落ち着くことなく色調を変えてゆく。速いテンポで最初のピークを迎えたあと、落ち着いたところから展開部に突入する。のちに控える再現部とコーダ(結尾)は短めで簡潔だ。
第2楽章は、変則的な複合3部形式。まるでバレエのパ・ド・ドゥを思わせる美麗な主部(A–B–A′)に対し、ヴァイオリン独奏が細かい分散和音を繰り返すところからが中間部だ。ここに挟み込まれる叙情的なメロディは、第1楽章の第2主題を変形させたもの。最終的には主部が戻ってくるのだが、今度は美麗な音楽のあいだに中間部の分散和音が挿入される。
スペイン風の第3楽章は、自由な形式。ソナタ形式の提示部と再現部の最後にもう一度、第1主題が登場するのでロンド風ともみなせる。中間部で提示される新たな主題が再現部とコーダにも加わり、新たな展開をもたらす。

(小室敬幸)

演奏時間:約26分
作曲年代:1935年
初演:1935年12月1日、エンリケ・アルボス指揮、ロベール・ソエタン独奏、マドリード交響楽団、マドリード

ファリャ/バレエ音楽「三角帽子」(全曲)*

スペインのマヌエル・デ・ファリャ(1876〜1946)は、1917年に書いたエッセイのなかで「純粋に厳密に愛国的な音楽を作曲したいと願うすべての人に私は助言したい。(私の住んでいる地域でいえばギター、カスタネット、タンブリンで構成されている)庶民のオーケストラとでも呼べるものを聴くべきなのだ」と語っている。作曲の師ペドレルの影響で祖国の伝統音楽に興味をもったファリャは、フラメンコに目をつけた。《歌劇「はかない人生」》(1904〜1905)においては、フラメンコ専門の歌手カンタオールとギターをそのまま編成に加えている。その後、1907〜1914年にかけてパリに滞在。ラヴェルやドビュッシーと交流するなかで、繊細にうつろうハーモニーを取り入れてゆく。
こうした作風の変化を経て、ファリャはスペイン帰国後に2つの舞台作品を完成させる。それがフラメンコ歌手のメロディを器楽にも取り入れた音楽劇《ヒタネリア》(1914〜1915)と、フラメンコギターのサウンドを管弦楽に移し替えようとしたパントマイム《代官と粉屋の女房》(1916〜1917)だ。改訂されることで前者は《恋は魔術師》(1919〜1925)に、後者はこの《三角帽子》(1916〜1919)となった。スペインのアンダルシア地方のある村を舞台にした、序奏付きの2部構成である。
序奏 権力者を象徴する軍楽隊風の響きと、民衆を象徴するフラメンコ風のサウンドが交差する短い導入部分。女声は、悪魔が目を覚ますかもしれないから家の鍵を閉めなさいと人妻たちに呼びかける。
第1部 ある日の〈昼下がり〉、クロウタドリにからかわれた粉屋をみて、ブドウを収穫していた妻は笑い、夫婦でじゃれ合う。足音を模したティンパニが聞こえてくると(権力の象徴たる)三角帽子を被った代官が登場。粉屋の妻に魅了されると、夫婦は嫉妬しあう。〈粉ひき女の踊り〉でファンダンゴを踊る妻は代官をからかうが、代官は本気にしてしまい、〈ぶどう〉で煽(あお)られる。だが夫婦の企みに気づくと、顔を赤らめて激怒し退散する。
第2部 〈近所の人たちの踊り〉は同じ日の夜、聖ヨハネ祭での情景だ。妻に請われて粉屋がファルーカを舞う〈粉屋の踊り〉のあと、ドアがノックされる(ベートーヴェンの《運命》を引用して表現)と、代官の策略で粉屋は逮捕される。〈代官の踊り〉で、ひとりになった粉屋の妻のもとに代官がやってくるが水に落ち、粉屋の妻にも拒絶される。その上、乾かしていた衣服を逃げてきた粉屋にとられる。祭りが最高潮を迎えてホタが踊られている〈終幕の踊り〉のなか、仕方なく粉屋の服を着て出てきた代官は勘違いされ、散々な目にあってしまう。

(小室敬幸)

演奏時間:約38分
作曲年代:1916〜1919年
初演:[バレエ全曲]1919年7月22日、エルネスト・アンセルメ指揮、ロシア・バレエ団

[アンコール曲]
カルロス・ガルデル(アウグスティン・ハーデリヒ編曲)/「ポル・ウナ・カベーサ」(首の差で)
ヴァイオリン:アウグスティン・ハーデリヒ

 

はじめてのクラシック
「モーリス・ラヴェル」

ARTISTS出演者

パブロ・エラス・カサドさんの画像 指揮パブロ・エラス・カサド

1977年、スペイン生まれ。2009年にサントリー・サマーフェスティバルで3群のオーケストラのための《グルッペン》(シュトゥックハウゼン作曲)の指揮者のひとりとして来日(N響との初共演)、また2011年には細川俊夫の《オペラ「松風」》をモネ劇場で世界初演したこともあって、日本では当初、現代物を得意とする指揮者として受け止められたように思う。だが、カサドはそのキャリアにおいてロマン派から大管弦楽曲、オペラまで幅広いレパートリーを開拓し続けてきた。ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団を含む世界各地のオケに客演するほか、フライブルク・バロック・オーケストラなど古楽団体との共演も多く、このジャンルにも深い造詣を持つ。首席客演指揮者を務めるマドリード・レアル劇場をはじめ、スカラ座、ウィーン国立歌劇場といった各地の名門歌劇場にもたびたび登場、2023年夏には《パルシファル》を振ってバイロイト音楽祭にもデビューし、世界の指揮者シーンにおいて頭ひとつ抜けた存在感を示しつつある。
細部にまで目配りを怠らない緻密な音作りながら、音楽は生気を帯びてよく弾み、オケをクリアかつフレッシュに鳴らす。近年はN響への登壇機会も増え、多彩な選曲でその広範な知見と解釈を披露している。今回の来日ではいよいよ母国の作曲家ファリャの大作をメインに、ラヴェルの《スペイン狂詩曲》などを加えた本領発揮のプログラムを聴かせてくれる。

[江藤光紀/音楽評論家]

アウグスティン・ハーデリヒさんの画像 ヴァイオリンアウグスティン・ハーデリヒ

1984年、ドイツ人の両親のもとイタリアで生まれ、マスカーニ音楽院とジュリアード音楽院で学ぶ。1999年、全身の60%にも及ぶ大やけどを負う不幸な事件に遭遇しながらも、20回を越える手術とリハビリを強靭(きょうじん)な精神力で克服した。
そして2006年インディアナポリス国際ヴァイオリン・コンクールで優勝。さらには2008年のカーネギー・ホール・デビューで称賛され、以来、アンドリス・ネルソンス、ヘルベルト・ブロムシュテット、ネヴィル・マリナーなどの名指揮者や、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団、バイエルン放送交響楽団、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団、ボストン交響楽団、クリーヴランド管弦楽団、シカゴ交響楽団などの著名楽団と共演を重ねている。BBCプロムスほか音楽祭にも多数出演。CD録音も多く、2016年にはグラミー賞“最優秀クラシック・インストゥルメンタル・ソロ賞”を受賞している。
N響定期公演への出演は今回が初めて。演目のプロコフィエフ《ヴァイオリン協奏曲第2番》は、2021年録音のCDで繊細かつ華麗な演奏を展開しているだけに、期待は大きい。

[柴田克彦/音楽評論家]

吉田珠代*さんの画像 ソプラノ吉田珠代*

愛知県立芸術大学、同大学院で学び、新国立劇場オペラ研修所を修了。2006年文化庁新進芸術家留学生としてボローニャ、2008~2010年(公財)ロームミュージックファンデーション特別研究生としてミュンヘン及びウィーンに留学した。
2010年オーストリア・シュタイヤー音楽祭の《ドン・ジョヴァンニ》ドンナ・アンナ役でヨーロッパ・デビュー。2012年小澤征爾音楽塾《蝶々夫人》では、急遽タイトルロールを歌って絶賛された。以後、世界的指揮者と共演を重ね、2016年ズービン・メータ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団とのサントリーホール30周年記念コンサートでの《第9》、2017年ウィーン楽友協会における《第9》でソリストを務めたほか、セイジ・オザワ松本フェスティバル、新国立劇場、日生劇場、PMF札幌などで活躍している。第6回静岡国際オペラコンクール最高位及び三浦環賞、第12回岩城宏之音楽賞を受賞。二期会会員。
深い音色と豊かな音楽性を兼ね備えたその歌声は各地で称賛を博しており、N響との初共演となる今回は、《三角帽子》におけるフラメンコ風の歌唱に注目が集まる。

[柴田克彦/音楽評論家]

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TICKETチケット

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第2006回 定期公演
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1回券発売開始日

定期会員先行発売日:2023年10月26日(木)10:00am
定期会員について

一般発売日:2023年10月29日(日)10:00am

チケット購入

料金

S席 A席 B席 C席 D席
一般 9,800円 8,400円 6,700円 5,400円 4,400円
ユースチケット 4,500円 4,000円 3,300円 2,500円 1,800円

※価格は税込です。
※定期会員の方は一般料金の10%割引となります。また、先行発売をご利用いただけます(取り扱いはWEBチケットN響・N響ガイドのみ)。
※この公演のお取り扱いは、WEBチケットN響およびN響ガイドのみです。
※車いす席についてはN響ガイドへお問い合わせください。
※券種により1回券のご用意ができない場合があります。
※当日券販売についてはこちらをご覧ください。
※未就学児のご入場はお断りしています。

ユースチケット

25歳以下の方へのお得なチケットです。
(要登録)

定期会員券
発売開始日

年間会員券
2023年7月17日(月・祝)10:00am
[定期会員先行発売日: 2023年7月9日(日)10:00am]

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お申し込み

主催:NHK / NHK交響楽団

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