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定期公演 2023-2024シーズンAプログラム
第2004回 定期公演 Aプログラム

NHKホール
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※約2時間の公演となります(休憩20分あり)。
※やむを得ない理由で出演者や曲目等が変更となる場合や、公演が中止となる場合がございます。公演中止の場合をのぞき、チケット代金の払い戻しはいたしません。

ABOUT THIS CONCERT特徴

38年ぶりのN響定期登場となった2016年のオール・ショスタコーヴィチ・プログラムでの《交響曲第12番》以来、2019年の《第11番》、2022年の《第10番》と、立て続けにこの作曲家の真価を証明してきた井上とN響のショスタコーヴィチ・シリーズも、今年でいよいよラストランとなる。ショスタコーヴィチの多面性を熟知した絶妙のプログラムで、マエストロ井上の総決算となる名演を期待したい。

(千葉 潤)

PROGRAM曲目

ヨハン・シュトラウスII世/ポルカ「クラップフェンの森で」作品336

19世紀ヨーロッパ社交界の寵児(ちょうじ)となったヨハン・シュトラウスII世(1825〜1899)。そのワルツやポルカのステップは、近代化が進むブルジョワ社会の新しい娯楽として熱狂的に受け入れられたが、事情は帝政ロシアでも変わらない。1838年、首都ペテルブルクと皇帝の離宮が立つ“皇帝の村(ツァールスコエ・セロー)”を結ぶ鉄道が開通。その終着駅には西欧風な大庭園と並んで「パヴロフスク駅」と名付けられた音楽ホールが建設され、避暑に訪れた紳士淑女に贅沢(ぜいたく)な憩いを提供した。増収を狙う鉄道会社は、“ワルツ王”シュトラウスと破格の契約を結び、1856年から1865年までの毎夏5か月の間、シュトラウス一行はこのホールの座付き楽団として人々を魅了しつづけた。
《クラップフェンの森で》は、ロシアでの長い契約が終了したあと、久しぶりに当地に客演した際に作曲した《パヴロフスクの森で》(1869)を、翌年ウィーンの聴衆向けに改題したもの。比較的中庸なテンポの“フランス風ポルカ”に属し、鳥笛の愛嬌ある表情と相まって人気の高い作品である。

(千葉 潤)

演奏時間:約5分
作曲年代:1869年
初演:1869年9月6日(旧ロシア暦8月25日)、作曲者自身による指揮、ロシア・パヴロフスクにて

ショスタコーヴィチ/舞台管弦楽のための組曲 第1番 -「行進曲」「リリック・ワルツ」「小さなポルカ」「ワルツ第2番」

トム・クルーズとニコール・キッドマンが倦怠期(けんたいき)の夫婦を演じた映画『アイズ・ワイド・シャット』(1999)でこの組曲の〈ワルツ第2番〉が印象的に使われて以来、ドミートリ・ショスタコーヴィチ(1906〜1975)の軽音楽が注目を集めている。従来の悲劇的で重苦しいイメージとは対照的ながら、実はこれもソ連ならではの産物である。
1930年代のソ連では、前衛芸術や商業文化が西側の退廃文化として排除される一方、国内のスターを多数擁したソ連映画やバラエティ、ジャズ等の娯楽は国の管理下で独自に発展し、プロコフィエフやショスタコーヴィチのような作曲家が大衆音楽の創作にも積極的に取り組んだ。行進曲やワルツ等の19世紀的ジャンルに、ロシアらしい哀感漂う旋律や現代的な諧謔味(かいぎゃくみ)を交えた魅力的な小品の数々は、ソ連文化の独自性を改めて見直すきっかけを与えている。
《舞台管弦楽のための組曲》はこれまで誤って《ジャズ組曲 第2番》と混同されてきたが、後者が1938年に作曲された3楽章の作品であるのに対し、《舞台管弦楽のための組曲》は、1930〜50年代に書かれたバレエや映画音楽からの抜粋であり、サクソフォーンやアコーディオンが舞台音楽らしい興趣を添える。

(千葉 潤)

演奏時間:約13分
作曲年代:[行進曲]1940年(映画「コルジンキナの冒険」) [リリック・ワルツ]不明 [小さなポルカ]不明 [ワルツ第2番]1955〜1956年(映画「第1梯団(ていだん)」)
初演:不明。イギリス初演は1988年12月1日、ムスティスラフ・ロストロポーヴィチ指揮、ロンドン交響楽団、ロンドンにて

ショスタコーヴィチ/交響曲 第13番 変ロ短調 作品113 「バビ・ヤール」*

1941年9月末、ウクライナ・キーウ郊外の渓谷バビ・ヤールでは、ナチスにより2日間で3万4千人ものユダヤ人が虐殺された。戦後もずっと隠蔽されてきたこの事件を取り上げつつ、ロシアに隠然と存在する反ユダヤ主義を告発したエフゲーニ・エフトゥシェンコ(1932~2017)の詩『バビ・ヤール』の発表(1961)は、脱スターリン化が進んだ「雪どけ」期の表現の自由を象徴する出来事となり、折に触れてユダヤに因(ちな)んだ作品を発表してきたショスタコーヴィチの心をも強く揺さぶった。
当初、彼はこの詩に基づく声楽入りの交響詩を作曲したが、さらに同詩人の4篇の詩を加え(「恐怖」はこの曲のための書下ろし)、堂々とした5楽章の交響曲として完成する。社会的・人間的正義を臆せず語る若い詩人の言葉は、スターリニズムを生き延びた作曲家の屈折した心に、改めて人間の尊厳を思い起こさせた。作曲途中だったショスタコーヴィチは友人グリークマンに宛ててこう書いている。「私はこの作品が完全に認められるとは考えていません。でもこれを書かないわけにはいかないのです」。
行き過ぎた自由化への反動が強まるなか、数々の妨害工作を乗り越えて実現した初演から数日後、当局の圧力に屈したエフトゥシェンコは歌詞の書き換えを余儀なくされる。変更後はバビ・ヤールの犠牲者としてユダヤ人のほかにロシア人とウクライナ人が加えられ、ファシズムの行く手を阻んだロシアの武勲が称えられる。この曲の将来を案じた指揮者コンドラシンに説得され、ショスタコーヴィチは改訂版の歌詞での演奏を許したが、もとの音符は一切変更しなかった(今回はオリジナルの歌詞で演奏する)。
全体は交響曲に準じた5つの楽章からなり、第3楽章から第5楽章は切れ目なく演奏されるほか、第1楽章で提示される循環主題が全体を統一する。リアリズムと風刺に徹したショスタコーヴィチの筆致は冴(さ)えわたり、ロシア語の抑揚を重んじた歌の行間をオーケストラが瞬時に注釈していく。ぜひとも事前に対訳を一読されたい。
第1楽章〈バビ・ヤール〉 アダージョ、変ロ短調、4分の4拍子。弔鐘のようなベルによって開始され、低音の主題にのって弱音器付きのトランペットがこの曲の循環主題を提示する。 これらをロンドとして古代から現代までのユダヤ人迫害のエピソードが赤裸々に描かれていく。
第2楽章〈ユーモア〉 アレグレット、ハ長調、4分の4拍子。スケルツォ楽章であり、冒頭の重厚なハ長調の和音と調子はずれのすばやい楽句の対比は、ムソルグスキーの有名な《のみの歌》を彷彿(ほうふつ)させる。中間部は作曲者自身の歌曲《処刑前のマクファーソン》(1942)の引用だが、交響曲での主人公は絞首台を前に飛び跳ねて踊りだし、最後は圧倒的なユーモア讃歌へと成長する。
第3楽章〈商店で〉 アダージョ、ホ短調、4分の4拍子。無言でロシアを支える女性たちへの讃歌であり、“優しい女神たち”を欺けば“怒りの日”が鳴り響く。この楽章とつづく第4楽章は緩徐楽章に相当し、音楽的にも統合される。
第4楽章〈恐怖〉 ラルゴ、嬰ト短調、4分の4拍子。スターリニズムの恐怖政治を描く前半が無調で表現されるのに対し、新しい時代への畏怖を描く後半では徐々に調性が輝き始める。切れ目なく第5楽章に続く。
第5楽章〈立身出世〉 アレグレット、変ロ長調、4分の3拍子。ショスタコーヴィチの《交響曲第8番》を彷彿させるパストラーレ風のフィナーレ。独唱が「呪った者は忘れられ」と歌えば、作曲者の名前を暗示する音程にのせて合唱が応える─「呪われた者は記憶される」と。循環主題に基づく大規模なフガートのあと、音楽は静けさを取り戻し、最後は第1楽章冒頭と同じベルの音が悲劇の叙事詩に幕を下ろす。

(千葉 潤)

演奏時間:約59分
作曲年代:1962年(第1楽章総譜完成は4月21日、第5楽章総譜完成は7月20日)
初演:1962年12月18日、キリル・コンドラシン指揮、モスクワ・フィルハーモニー交響楽団、ヴィタリイ・グロマツキイのバス独唱、ロシア共和国合唱団、国立グネーシン音楽教育大学合唱団の男声合唱、モスクワにて

ARTISTS出演者

井上道義さんの画像 指揮井上道義

2024年12月末で「引退する」と宣言した1946年生まれの名指揮者、井上道義。2016年11月、38年ぶりにNHK交響楽団の定期公演へ招かれて披露したのはオール・ショスタコーヴィチ・プログラムだった。そしてグラスとショスタコーヴィチでセンセーションを巻き起こしたのは2019年10月のこと。コロナ禍での2020年12月公演ではショスタコーヴィチ《交響曲第1番》を指揮し、2022年11月定期公演も同作曲家の《交響曲第10番》で成功を収め、今回、2024年2月の定期では《舞台管弦楽のための組曲第1番》と《交響曲第13番「バビ・ヤール」》に挑む。井上は世界が東西冷戦に支配された第2次世界大戦後に生まれ育ち、日米両国にルーツを持つ。社会主義体制の旧ソ連を生き抜いた芸術家ショスタコーヴィチの苦悩に自身を重ね、「ショスタコーヴィチは僕だ」と公言してはばからない傾倒がN響の楽員1人1人に浸透、極めて共感度の高い演奏を生んできた。冒頭に置かれたワルツ王ヨハン・シュトラウスII世の《ポルカ「クラップフェンの森で」》が異彩を放つが、ロシア帝国に招かれパヴロフスク滞在中に作曲し、元は《パヴロフスクの森で》という題名だった事実や、ショスタコーヴィチの組曲の3曲目が《小さなポルカ》である関連をふまえた選曲だろう。若い頃ダンサーを目指した片鱗をうかがわせる井上の華麗な指揮ぶりも注目だ。

[池田卓夫/音楽ジャーナリスト]

アレクセイ・ティホミーロフ* ※さんの画像 バスアレクセイ・ティホミーロフ* ※

ロシアのタタールスタン共和国の首都カザン出身のアレクセイ・ティホミーロフは、2005年にモスクワのヘリコン・オペラのソリストとなり、以後ボリショイ劇場、ベルリン国立歌劇場、ハンブルク国立歌劇場などヨーロッパの主要な歌劇場に出演を重ねてきたバス歌手。《ボリス・ゴドノフ》タイトルロールや《ムツェンスクのマクベス夫人》ボリスなどのロシアものはもちろんのこと、《ラインの黄金》ファゾルトや《セビリアの理髪師》バジーリオなど、多彩なレパートリーを持つ。日本には、2019年10月に新国立劇場で上演された歌劇《エフゲーニ・オネーギン》のグレーミン公爵で登場し、深く柔らかみのある歌声で大きな存在感を示した。
ショスタコーヴィチ《交響曲第13番「バビ・ヤール」》は2018年9月にムーティ指揮シカゴ交響楽団と演奏。さらに2023年9月にはクルレンツィス指揮ムジカエテルナおよび南西ドイツ放送交響楽団とも共演して絶賛を博している。初共演となるN響とはどんな世界を描き出すのか、期待が高まる。

[室田尚子/音楽評論家]

オルフェイ・ドレンガル男声合唱団*さんの画像 男声合唱オルフェイ・ドレンガル男声合唱団*

「オルフェウスのしもべたち」という名前を持つオルフェイ・ドレンガル男声合唱団は、1853年、スウェーデンの首都ストックホルムの北方70キロメートルに位置するウプサラで設立された。疫病によって孤立状態に陥ったウプサラの町を勇気づけるために、北欧最古の大学であるウプサラ大学の学生たちが合唱曲を歌ったのが始まりとされている。スウェーデンを代表する作曲家アルヴェーンや、「合唱の王様」と称されたエリック・エリクソンが指揮者を務め、特にエリクソンとの関係は1951年から1991年まで40年間に及び、この間に団の実力は飛躍的に向上し、世界最高峰のア・カペラ合唱団といわれるようになった。2008年からはセシリア・リュディンゲルが指揮をとっている。
90人ほどの男声による研ぎ澄まされたハーモニーは圧倒的な感動をもたらす。ルネサンスのポリフォニーから現代音楽まで幅広いレパートリーを持つ彼らだからこそ、今回のショスタコーヴィチ作品でも合唱の底力を感じさせてくれるにちがいない。

[室田尚子/音楽評論家]

※当初出演予定のエフゲーニ・スタヴィンスキー(バス)から変更いたします。

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TICKETチケット

定期公演 2023-2024シーズン
Aプログラム

第2004回 定期公演
Aプログラム

NHKホール
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1回券発売開始日

定期会員先行発売日:2023年10月26日(木)10:00am
定期会員について

一般発売日:2023年10月29日(日)10:00am

チケット購入

料金

S席 A席 B席 C席 D席 E席
一般 9,800円 8,400円 6,700円 5,400円 4,400円 2,800円
ユースチケット 4,500円 4,000円 3,300円 2,500円 1,800円 1,400円

※価格は税込です。
※定期会員の方は一般料金の10%割引となります。また、先行発売をご利用いただけます(取り扱いはWEBチケットN響・N響ガイドのみ)。
※車いす席についてはN響ガイドへお問い合わせください。
N響ガイドでのお申し込みは、公演日の1営業日前までとなります。
※券種により1回券のご用意ができない場合があります。
※当日券販売についてはこちらをご覧ください。
※未就学児のご入場はお断りしています。
※開場前に屋内でお待ちいただくスペースはございません。ご了承ください。

ユースチケット

25歳以下の方へのお得なチケットです。
(要登録)

定期会員券
発売開始日

年間会員券
2023年7月17日(月・祝)10:00am
[定期会員先行発売日: 2023年7月9日(日)10:00am]


シーズン会員券(WINTER)
2023年10月17日(火)10:00am
[定期会員先行発売日: 2023年10月12日(木)10:00am]

お問い合わせ・
お申し込み

BROADCAST放送予定

NHK-FMNHK-FMベスト オブ クラシック
「第2004回 定期公演 Aプログラム」

2024年2月 8日(木) 7:30PM~ 9:10PM

曲目: ヨハン・シュトラウスII世/ポルカ「クラップフェンの森で」作品336
ショスタコーヴィチ/舞台管弦楽のための組曲 第1番 -「行進曲」「リリック・ワルツ」「小さなポルカ」「ワルツ第2番」
ショスタコーヴィチ/交響曲 第13番 変ロ短調 作品113 「バビ・ヤール」*

指揮:井上道義

バス:アレクセイ・ティホミーロフ* ※

男声合唱:オルフェイ・ドレンガル男声合唱団*

収録:2024年2月3日 NHKホール

主催:NHK / NHK交響楽団

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