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- 第2003回 定期公演 Bプログラム
※約2時間の公演となります(休憩20分あり)。
※やむを得ない理由で出演者や曲目等が変更となる場合や、公演が中止となる場合がございます。公演中止の場合をのぞき、チケット代金の払い戻しはいたしません。
ABOUT THIS CONCERT特徴
変ホ長調にはふしぎな深みがある。多くの管楽器には吹きやすいいっぽうで、弦楽器はクリアに鳴らないし、とくに当時は調律上の“唸(うな)り”が生じやすいため、曇ったような切なさがあるのだ。この色彩に深い情感を与えたのがモーツァルト。小林秀雄の直観のひそみに倣うなら、そこには「青」のかなしみさえ浮かんでくるだろう(『モオツァルト』)。対するベートーヴェンは、あらゆる調のなかで変ホ長調をいちばん多用し、そのイメージを輝かしく塗りかえた。ひとつの色彩に広がる両極をお楽しみいただこう。
(堀 朋平)
PROGRAM曲目
モーツァルト/ヴァイオリンとヴィオラのための協奏交響曲 変ホ長調 K. 364
1778年の3月も終わろうという肌寒いある日、マンハイムから9日も馬車にゆられて母子がパリに降りたった。母アンナ・マリアと連れだって就職先をさがす長旅の目的地である。
「彼らはまったく粗野に近く、しかも嫌らしいほどに思いあがっています」(5月1日、父レオポルトに宛てた手紙より)。かつて「神童」を歓迎してくれた花の都は、22歳になった青年にはそっけなかったが、そんな冷遇はものともしない。名士たちに溶けこんで各都市の流行をわがものとする才覚に、ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756〜1791)の天才たるゆえんがある。
そのころパリでは、「協奏交響曲(サンフォニー・コンセルタント)」が公開演奏会を賑(にぎ)わせていた。複数のソロ楽器とオーケストラが歌いかわす華やかなジャンルである。さっそく懇意になった支配人ル・グロのすすめで、宮廷楽団奏者のために4つの管楽器のための作品を書く。これは、おそらくイタリアの人気作曲家の横やりでお蔵入りして消失してしまったものの、この新たなスタイルに惹(ひ)かれたモーツァルトは帰郷後、ザルツブルク宮廷のソロ奏者を念頭に、もうひとつ協奏交響曲を書いた。それが本作である。
このジャンルで現存する唯一のモーツァルト作品であり、テーマの豊かさと情感の深みの点で、彼の全作品にあってもきわだっている。ヴァイオリンの影に隠れがちなヴィオラに輝きを与えるため、がぜん弾きやすくクリアな音が出るニ長調で独奏ヴィオラが記譜されているのも大きな特徴だ。そのため奏者は半音高く調弦することになる。
第1楽章 モーツァルトがそれまでに書いたどの器楽よりも、テーマがつぎつぎと惜しみなく歌いつがれる。眩暈(めまい)がするほどに新鮮で、しかも複雑さを感じさせない。
第2楽章 作曲の前年にパリで母を亡くした経験は、音楽づくりに深い陰影をのこした。ハ短調の深い哀切は、ひるがえって前楽章のかなしい明澄さを深めてくれるだろう。本プログラム後半のベートーヴェンによる葬送行進曲(第2楽章)も同じ調だ。
第3楽章 冒頭楽章の晴れやかな雰囲気が、いちだんとシンプルに還ってくる。
(堀 朋平)
演奏時間:約30分
作曲年代:おそらく1779年あるいは翌年
初演:不詳
ベートーヴェン/交響曲 第3番 変ホ長調 作品55「英雄」
「これまで書いたうちで最大のものだ、とのことです。(中略)演奏されたら天地を揺るがすでしょう」(1803年10月22日、弟子リースが出版社ジムロックに宛てた一通より)。
ものごとを3つに分けるのは、人の変わらぬ習性だろうか。ルートヴィヒ・ファン・ベートーヴェン(1770〜1827)の歩みを3区分する著作は没後まもなくあらわれ、今も市民権を得ている。第1楽章だけで─ハイドン作品の全楽章とほぼ同等の─700小節におよぶ「最大の」交響曲をもって、第2期の幕が開いた。形式を流動化し、音の奔流によって世界の生成を描きとる《ピアノ・ソナタ第21番「ワルトシュタイン」》や《ラズモフスキー弦楽四重奏曲集》などの名作が、このあと続々と生みだされることになる。「英雄期」とさえよばれる革新期だ。
ところで、上の手紙を書いたリースによる後年(1838年)のやや不正確な回想によって「英雄(エロイカ)」をめぐる情報が錯綜(さくそう)しているので、整理しておこう。この語はスケッチや自筆譜には一切みられない。作曲時(1804年)に使われたのは、もっと具体的な「ボナパルト」だった。敵国フランスとはいえ世界を変革してくれるナポレオン・ボナパルトの歩みに、ベートーヴェンは惹(ひ)かれていたのである。この語はやがて姿を消し、初版(1806年10月)でようやく「シンフォニア・エロイカ─ある偉大な人物の思い出を記念して」のタイトルがあらわれる。作曲家が、その2か月前にナポレオンの侵攻によって祖国=神聖ローマ帝国の滅亡を目の当たりにしたこと、遠くギリシャ・ローマの皇帝にもあこがれていたことを考えあわせると、「ボナパルト」を超えるもっと普遍的な英雄をめぐる4つのイメージが、この交響曲から読みとられてしかるべきだろう。
第1楽章 冒頭の輝かしいテーマと、それに翳(かげ)りをもたらす“躓(つまず)き”のモティーフの絡み合いにより、たえず落ち着くことなく英雄は前進する。
第2楽章 英雄の死と哀悼。フランス革命のあとで流行した「葬送行進曲」のスタイルをベートーヴェンはよく知っていた。だがちょうど中央あたりに荘重なフーガが挿入されるなど、ここまで大規模な作例はまれである。
第3楽章 場面は一転し、ホルンが高らかに鳴り響く。狩りに出る英雄のイメージだ。
第4楽章 プロメテウスをめぐる《エロイカ変奏曲》(作品35、1802年)に基づいている。神に反逆してひとびとに火をもたらすギリシア神話の英雄だ。これこそが前3楽章に先立つ“核”であったことを、残されたスケッチは伝えている。
(堀 朋平)
演奏時間:約50分
作曲年代:1802年秋~1804年
初演:1805年4月7日、ウィーン、作曲者自身の指揮
[アンコール曲]
1/24:モーツァルト/ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲 第2番 変ロ長調 K.424 ― 第3楽章「主題と変奏」
1/25:モーツァルト/ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲 第2番 変ロ長調 K.424 ― 第2楽章「アンダンテ・カンタービレ」
ヴァイオリン:郷古廉、ヴィオラ:村上淳一郎
「ルードヴィヒ・ファン・ベートーヴェン」
ARTISTS出演者
指揮トゥガン・ソヒエフ
1977年北オセチア共和国(ロシア)のウラジカフカスに生まれ、サンクトペテルブルク音楽院で指揮を名教師イリヤ・ムーシンに師事、さらにユーリ・テミルカーノフにも学ぶ。2008年からトゥールーズ・キャピトル劇場管弦楽団音楽監督として同団の発展に寄与した一方、2012年から2016年まではベルリン・ドイツ交響楽団の首席指揮者を兼任、さらに2014年からはモスクワのボリショイ劇場の音楽監督を務めたほか、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団をはじめとする名門オーケストラや歌劇場への客演など、コンサートとオペラの両面で国際的に幅広く活動を展開してきた。2022年には愛する母国がウクライナに侵攻したことに心を痛めて、ボリショイ劇場とトゥールーズ・キャピトル劇場管弦楽団の両方のポストを辞任したが、以後も世界中から引く手あまたで、ロシア作品で示すダイナミックなスケール感、フランス作品での洗練されたセンス、ドイツ作品での正統的なアプローチの中での充実した表現など、的確な様式感とパレットの豊かさが高く評価されている。N響にもほぼ毎年客演して名演を聴かせており、今回もフランス、ドイツ、ロシアの3つのプログラムを通して、そうした彼の多様な表現力が発揮されるに違いない。
[寺西基之/音楽評論家]
ヴァイオリン郷古 廉(N響ゲスト・コンサートマスター)※
1993年生まれ。現在最も注目されている若手ヴァイオリニストのひとり。2006年、第11回ユーディ・メニューイン青少年国際ヴァイオリンコンクールジュニア部門第1位(史上最年少優勝)。2007年12月のデビュー以来、読売日本交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団、大阪フィルハーモニー交響楽団などのオーケストラや、ゲルハルト・ボッセ、秋山和慶、井上道義などの指揮者と共演しているほか、サイトウ・キネン・フェスティバル松本(現セイジ・オザワ・松本フェスティバル)、東京・春・音楽祭などの音楽祭にも定期的に招かれている。2013年にはティボール・ヴァルガ・シオン国際ヴァイオリン・コンクール優勝ならびに聴衆賞・現代曲賞を受賞。
N響ゲスト・アシスタント・コンサートマスターを経て、2023年4月よりゲスト・コンサートマスターを務めている。使用楽器は1682年製アントニオ・ストラディヴァリ「Banat」。
ヴィオラ村上淳一郎(N響首席ヴィオラ奏者)
桐朋学園大学卒業後、文化庁新進芸術家海外派遣員としてイタリア、フィレンツェに留学。トリエステ国際コンクール(イタリア・トリエステ)第1位を受賞し、当時のイタリア大統領チャンピ氏より金メダルを授与されるほか、イタリア全土、ヨーロッパ各地で約50回のコンサートを提供される。ヴィットリオ・グイ国際音楽コンクール(イタリア・フィレンツェ)第1位。
イタリアからドイツに移りケルンWDR交響楽団ソロ・ヴィオリストに就任、またライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団、バイエルン放送交響楽団、バンベルク交響楽団等で客演首席奏者として出演のほか、ヨーロッパ各地の音楽祭で独奏者や室内楽奏者として出演。2021年10月よりNHK交響楽団首席ヴィオラ奏者。
※当初発表の出演者から変更となりました。
MOVIEムービー
2024年1月N響定期公演について
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料金
S席 | A席 | B席 | C席 | D席 | |
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一般 | 9,800円 | 8,400円 | 6,700円 | 5,400円 | 4,400円 |
ユースチケット | 4,500円 | 4,000円 | 3,300円 | 2,500円 | 1,800円 |
※価格は税込です。
※定期会員の方は一般料金の10%割引となります。また、先行発売をご利用いただけます(取り扱いはWEBチケットN響・N響ガイドのみ)。
※この公演のお取り扱いは、WEBチケットN響およびN響ガイドのみです。
※車いす席についてはN響ガイドへお問い合わせください。
※券種により1回券のご用意ができない場合があります。
※当日券販売についてはこちらをご覧ください。
※未就学児のご入場はお断りしています。
ユースチケット
25歳以下の方へのお得なチケットです。
(要登録)
定期会員券
発売開始日
年間会員券
2023年7月17日(月・祝)10:00am
[定期会員先行発売日: 2023年7月9日(日)10:00am]