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- 第2001回 定期公演 Aプログラム
※約2時間の公演となります(休憩20分あり)。
※やむを得ない理由で出演者や曲目等が変更となる場合や、公演が中止となる場合がございます。公演中止の場合をのぞき、チケット代金の払い戻しはいたしません。
ABOUT THIS CONCERT特徴
近代フランス音楽の、「バレエ上演された」管弦楽曲の特集。まずはジョルジュ・ビゼー(1838~1875)最期の傑作《カルメン》。スペイン情緒あふれるこの歌劇は、一時期バレエを挿入して人気を得たこともあり、バレエとの相性が良い。続くモーリス・ラヴェル(1875~1937)の《マ・メール・ロワ》は、バレエが興隆した17~18世紀フランスのお伽話(とぎばなし)の世界に繫がる。最後は、同じくラヴェルによる管弦楽のための舞踊詩、《ラ・ヴァルス》。ウィーンの宮殿で繰り広げられる幻想的な「バレエの肖像画」(ディアギレフの言)である。
(田崎直美)
PROGRAM曲目
ビゼー(シチェドリン編)/バレエ音楽「カルメン組曲」
ロシアの代表的作曲家のひとりであるロディオン・シチェドリン(1932~)は、妻でボリショイ劇場首席バレリーナのマイヤ・プリセツカヤ(1925~2015)のために、ビゼーの代表作《カルメン》をバレエ版へと編曲した。弦楽と4群の打楽器から成る編曲で、彼は、歌劇中のアリアを舞曲化することでドラマを際立たせているほか、5つの音によるロマ(ジプシー)風の「運命の動機(モティーフ)」を要所に出現させて、組曲(全13曲)に統一感を与えている。
第1曲〈導入〉最初の場面は、セビリアの広場。〈ハバネラ〉の断片を奏でる鐘の響き。
第2曲〈踊り〉アラゴネーズとよばれる民族舞踊風パッセージ(第4幕)でカルメンが登場。
第3曲〈第1間奏曲〉悲劇を暗示する「運命の動機(モティーフ)」が現れる。
第4曲〈衛兵の交代〉兵舎の当番として、ホセが兵隊の歌とともに登場。
第5曲〈カルメンの登場とハバネラ〉ホセは、アリア〈ハバネラ〉(第1幕)で「恋は野の鳥」と歌うカルメンと出会う。
第6曲〈情景〉場面は変わり、カルメン一行(密輸団)が自由を謳歌(おうか)している。
第7曲〈第2間奏曲〉カルメンは挑発的にホセを誘惑、ついに彼を仲間に引き入れる。愛と自責の念に苦悩するホセ。
第8曲〈ボレロ〉ここで挿入されるのが、ビゼーの劇音楽《アルルの女》(1872)の〈ファランドール〉(南仏の民族舞踊)だ。この曲は《アルルの女》劇中で、嫉妬を暗示する。
第9曲〈闘牛士〉やがてホセの恋仇(こいがたき)エスカミーリョが、アリア〈闘牛士の歌〉(第2幕)とともに登場。
第10曲〈闘牛士とカルメン〉惹かれ合う男女の心を映し出すのは、ビゼーの歌劇《美しきパースの娘》(1866)の〈ボヘミア風舞曲〉である。
第11曲〈アダージョ〉その後、ホセのアリア〈花の歌〉(第2幕)が切々と流れる。カルメンが投げつけた花を大切に持ち続けていたホセ。2人の愛の日々の追憶は、このバレエ作品の大きな見せ場となっている。
第12曲〈占い〉しかし、ロマにとって絶対的な存在である「占い」が、カルメンに死を告げる(弔いの鐘の音)。カルメンは悲痛なアリア(第3幕)で、ホセに殺される残酷な宿命に対峙する。
第13曲〈終曲〉闘牛士の入場行進(第4幕)、そして〈情景〉の音楽で闘牛が行われる中、恋人を繫ぎとめようと懇願するホセの歌(第4幕)が響き渡る。しかし「運命の動機」に遮られ、その後応えるのは〈ハバネラ〉の断片。カルメンは身も心も、解き放たれた「野の鳥」となるのである。遠い過去の記憶とカルメンの死が、鐘の音によって静かに重ね合わされる。
※丸括弧の幕番号は、ビゼーによる原曲の歌劇(全4幕)に対応。
(田崎直美)
演奏時間:約44分
作曲年代:[原曲(歌劇)]1873~1874年 [バレエ版(シチェドリン編)]1967年初演
初演:[原曲(歌劇)]1875年3月3日、パリのオペラ・コミック座 [バレエ版(シチェドリン編)]1967年4月20日、モスクワのボリショイ劇場
ラヴェル/組曲「マ・メール・ロワ」
ラヴェルの舞踊に対する嗜好(しこう)は、懐古趣味と結びつくことが多い。特にバロック期(17~18世紀)の宮廷舞踊は、生涯を通じて彼の作曲の源泉となった。
《マ・メール・ロワ》もこの系譜に連なる。もともとは友人であるゴデブスキ夫妻の子どもたちに献呈したピアノ連弾組曲だが、ほどなくそっくりバレエ化できたのは、着想の源がシャルル・ペロー(1628~1703)の『教訓付き昔話──がちょうおばさん(マ・メール・ロワ)の話』だったためであろう。17世紀フランスの宮廷では、良家の子女の道徳教育としてお伽話(とぎばなし)(妖精物語)が流行していた。ルイ14世の姪に献呈されたこのお伽話集(1697年出版)より、ラヴェルは「眠りの森の美女」をバレエの筋書の中心に据え、前奏曲や間奏曲などを新たに挿入しつつ、各曲を劇中話として再配置した。本日の管弦楽組曲は、こうしたバレエ化のプロセスにおいて生まれた作品である。ここでの曲順・構成はまだ最初に作られたピアノ連弾版と同じである。
第1曲〈眠りの森の美女のパヴァーヌ〉管弦楽版ではまず、2拍子の宮廷舞踊パヴァーヌが、厳かに物語の開始を告げる。
第2曲〈一寸法師〉続くは、道しるべに撒(ま)いたパン屑(くず)を鳥に食べられてしまい途方に暮れる男の子のお話。古い多声曲(オルガヌム)風の響きと鳥のさえずりが、遠くて暗い森の中を想起させる。
第3曲〈パゴダの女王レドロネット〉今度は、ドーノワ伯爵夫人(c.1650~1705)作『緑の蛇』の場面。入浴中の女王のそばで陶製のパゴダ(首振人形)たちが木の実の殻を鳴らして一斉に演奏するのは、5音音階の愉快なガムラン風舞曲である。
第4曲〈美女と野獣の対話〉そして、ボーモン夫人(1711~1780)作のお伽話集『子どもの雑誌』(1756)より「美女と野獣」。優雅なワルツの主題(美女)と、低音で轟くような主題(野獣)の緊迫した対話の果てに、清い心と愛の力で野獣が王子へと変身する。
第5曲〈妖精の園〉最後は、厳かな3拍子の宮廷舞踊サラバンドにのせて王子の愛で100年の眠りから目覚める王女が描かれる。バレエ版では善良な仙女ベニーニュが2人を祝福して幕を閉じる。
(田崎直美)
演奏時間:約17分
作曲年代:[ピアノ連弾版]1908~1910年 [管弦楽版]1911年 [バレエ版]1911年
初演:[ピアノ連弾]1910年4月20日、独立音楽協会(初回演奏会) [バレエ版]1912年1月28日、パリのテアトル・デ・ザール [管弦楽版]1912年8月27日、ロンドンのプロムス音楽祭
ラヴェル/バレエ音楽「ラ・ヴァルス」
ラヴェルは若い頃からコスモポリタンであった。そのため、彼がヨハン・シュトラウスII世およびウィンナ・ワルツを礼賛する曲を早い時期(1906年頃)から構想していても不思議ではない。この曲は、ロシア・バレエ団の興行主ディアギレフからバレエ曲を委嘱されたことで、1919年から翌年にかけて一気に完成した(ただし、結局バレエを上演したのはディアギレフではない。初演は、ディアギレフ一座でダンス経験のあったソニア・コルティ振付によって1926年にアントワープで実現し、パリ初演は1929年のイダ・ルビンシュテイン一座の公演を待つことになる)。
ラヴェルが想定した場面は、「1855年頃の(ウィーンの)皇帝の宮殿」。曲は伝統的な2部形式(A–A′またはA–B)ではないが、全体が大きく2つの部分に分けられる。第1部を構成するのは序奏と7つのエピソード(新しいテーマ)で、このうちラヴェルはひとつ目のエピソードに対して次のような筋書きをつけている。「うずまく雲の切れ目から、ワルツ(ヴァルス)を踊る男女たちの姿がときおり垣間見える。雲が少しずつ晴れてきて、輪を描きながら踊る人々であふれかえる広間が見える。次第に舞台は明るくなり、シャンデリアの光が燦然(さんぜん)と煌(きら)めく」。この最後の部分では、フォルティッシモで奏される、華やかなシンコペーションのリズムのワルツが印象的だ。
しかし、この第1エピソードが終わり、関連するモティーフから成る6つのエピソードが続いた後、曲は全合奏の頂点から急速に下行して、冒頭の暗さを彷彿(ほうふつ)とさせる第2部へと移行する。ここからはもう新しいエピソードは現れず、第1部で登場したモティーフの断片があたかも亡霊のように、執拗(しつよう)に、そして荒々しく変容していく。「幻想的で、破滅的な運命をもたらす旋回の印象」(ラヴェルの言)が劇的に繰り広げられるなかで、曲は終末を迎えるのである。
不気味で怪奇な雰囲気だが、この作品構想時のラヴェルの言葉を今一度思い起こしたい。「僕が(壮大なワルツの)素晴らしいリズムに心底共感していることを知っているだろ。この舞踊の表現する生きる喜び(la joie de vivre)は(中略)ずっと奥深いよ」(1906年2月7日、ジャン・マルノルドへの手紙)。彼がワルツに見出していたのはヒューマニズム、根源的な「生きる喜び」なのである。
(田崎直美)
演奏時間:約13分
作曲年代:1919年12月~1920年4月
初演:1920年12月12日、サル・ガヴォー [バレエ初演]1926年10月2日、アントワープのフラマン王立歌劇場
ARTISTS出演者
指揮トゥガン・ソヒエフ
1977年北オセチア共和国(ロシア)のウラジカフカスに生まれ、サンクトペテルブルク音楽院で指揮を名教師イリヤ・ムーシンに師事、さらにユーリ・テミルカーノフにも学ぶ。2008年からトゥールーズ・キャピトル劇場管弦楽団音楽監督として同団の発展に寄与した一方、2012年から2016年まではベルリン・ドイツ交響楽団の首席指揮者を兼任、さらに2014年からはモスクワのボリショイ劇場の音楽監督を務めたほか、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団をはじめとする名門オーケストラや歌劇場への客演など、コンサートとオペラの両面で国際的に幅広く活動を展開してきた。2022年には愛する母国がウクライナに侵攻したことに心を痛めて、ボリショイ劇場とトゥールーズ・キャピトル劇場管弦楽団の両方のポストを辞任したが、以後も世界中から引く手あまたで、ロシア作品で示すダイナミックなスケール感、フランス作品での洗練されたセンス、ドイツ作品での正統的なアプローチの中での充実した表現など、的確な様式感とパレットの豊かさが高く評価されている。N響にもほぼ毎年客演して名演を聴かせており、今回もフランス、ドイツ、ロシアの3つのプログラムを通して、そうした彼の多様な表現力が発揮されるに違いない。
[寺西基之/音楽評論家]
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2024年1月N響定期公演について
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料金
S席 | A席 | B席 | C席 | D席 | E席 | |
---|---|---|---|---|---|---|
一般 | 9,100円 | 7,600円 | 5,900円 | 4,800円 | 3,800円 | 2,000円 |
ユースチケット | 4,000円 | 3,500円 | 2,800円 | 2,100円 | 1,500円 | 1,000円 |
※価格は税込です。
※定期会員の方は一般料金の10%割引となります。また、先行発売をご利用いただけます(取り扱いはWEBチケットN響・N響ガイドのみ)。
※車いす席についてはN響ガイドへお問い合わせください。
※N響ガイドでのお申し込みは、公演日の1営業日前までとなります。
※券種により1回券のご用意ができない場合があります。
※当日券販売についてはこちらをご覧ください。
※未就学児のご入場はお断りしています。
※開場前に屋内でお待ちいただくスペースはございません。ご了承ください。
ユースチケット
25歳以下の方へのお得なチケットです。
(要登録)
定期会員券
発売開始日
年間会員券
2023年7月17日(月・祝)10:00am
[定期会員先行発売日: 2023年7月9日(日)10:00am]
シーズン会員券(WINTER)
2023年10月17日(火)10:00am
[定期会員先行発売日: 2023年10月12日(木)10:00am]
BROADCAST放送予定
NHK-FMベスト オブ クラシック
「第2001回 定期公演 Aプログラム」
2024年1月18日(木) 7:30PM~ 9:10PM
曲目:
ビゼー(シチェドリン編)/バレエ音楽「カルメン組曲」
ラヴェル/組曲「マ・メール・ロワ」
ラヴェル/バレエ音楽「ラ・ヴァルス」
指揮:トゥガン・ソヒエフ
収録:2024年1月13日 NHKホール