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- 第1998回 定期公演 Cプログラム
※休憩のない、60分~80分程度の公演となります。
※やむを得ない理由で出演者や曲目等が変更となる場合や、公演が中止となる場合がございます。公演中止の場合をのぞき、チケット代金の払い戻しはいたしません。
ABOUT THIS CONCERT特徴
クラシック音楽の世界においては、時として「絶対音楽」の方が「標題音楽」よりも格上のように見なされることがある。そちらの方が音楽として「純粋だ」という判断なのだろう。しかし一方で、音楽が「音楽外」のものを自らのなかに取り込もうとするとき、人間の想像力を越えた不思議な次元に到達することがある。純粋でないからこその飛躍。本日演奏される2曲はまさに、いずれも「物語」を軸にすることによって、作曲家の奔放な想像力がリリースされた格好の例といってよいだろう。
(沼野雄司)
PROGRAM曲目
フンパーディンク/歌劇「ヘンゼルとグレーテル」前奏曲
かつて『本当は恐ろしいグリム童話』という書籍が流行したが、恐ろしいかどうかはともかくとしても、たしかにこの童話集は単なる子ども向きの物語ではない。第1巻が1812年、第2巻が1815年の刊行という時期からもわかるように、これはナポレオン戦争によるドイツ・ナショナリズムの高揚を背景にした書物なのである。まだ統一されておらず、文化的にも水準が低いとされていたこの国の基層を掘り起こし、ドイツ民族がひとつになる、という大きな目論見(もくろみ)が、グリム兄弟による民話の発掘を支えていたというわけだ。
エンゲルベルト・フンパーディンク(1854〜1921)が17歳のとき、ドイツは悲願の統一を遂げた。彼がワーグナーに招かれてバイロイトに赴き、《パルシファル》の上演を補佐することになったのも、音楽の好みだけではなく、ドイツという国家の尊厳を重んじるという共通点が2人にはあったからだろう。
もっとも、フンパーディンクはワーグナー流の巨大オペラにあまり関心を示さなかった。その代わりに彼は《7匹の子ヤギ》《王様の子供たち》《眠り姫》《坊やのクリスマスの夢》といったメルヘン・オペラを次々に手がけて、ワーグナーとは逆の地点からドイツという国の輪郭を描くことになったのだった。
《ヘンゼルとグレーテル》は1892年の作品。誰もが知るかわいらしい物語が、しかし重厚かつ濃厚な管弦楽法で綴られる、小規模とも大規模とも言いがたい、不思議な作品である。〈前奏曲〉は、ホルンのアンサンブルではじまり、オペラのなかで用いられる主題のいくつかが順に扱われてゆく。ただし、魔女に代表される不穏な旋律はほぼ省かれ、最終的な救済にむけての明るい雰囲気が全編を満たしている。
(沼野雄司)
演奏時間:約8分
作曲年代:1892年
初演:[オペラ]1893年12月23日、ワイマール宮廷歌劇場にて、リヒャルト・シュトラウス指揮による
ベルリオーズ/幻想交響曲 作品14
よく知られているように、エクトール・ベルリオーズ(1803〜1869)が1830年に作曲した《幻想交響曲》は、女優ハリエット・スミッソンへの叶(かな)わぬ恋を描いた作品である。まだ無名の作曲家が人気女優に相手にされなかったのは当然なのだが、なにより面白いのは、しかし失恋から生まれたこの曲によって、今度はスミッソンの気持ちが変化していったことだ。
1832年、ローマ留学から帰ってきたベルリオーズは、自分の《幻想》の再演演奏会に、人を介してスミッソンを招待した。彼の『回想録』を読むと、この演奏会でのスミッソンの心情が、「あのときの哀れな青年……でも、おそらく私を忘れているにちがいない……」と、なぜか一人称で(!?)語られている。そして圧倒的な交響曲のサウンドのなかで彼女は「これはわたしのことなのだ……あの人はずっと愛してくれていたのだ!」と感激し、結局、2人は結婚することになる。
すなわちベルリオーズは、その妄想力によって、音楽史上類をみない斬新な交響曲を完成させるとともに、やはりその妄想力によって、初志貫徹、見事にこの女優と結婚にいたったわけだ。以下、楽曲の推移について述べる。
曲は、ある若い芸術家が恋の苦しみから阿片(アヘン)自殺を図ろうとしたものの、薬の量が少なかったために奇怪な幻想を見る、というストーリーを持つ(ただし、初演時には4~5楽章のみが「夢」で1~3楽章は現実という設定だったのに対して、1855年の改訂時には、全楽章とも「夢」の産物となっている)。
第1楽章〈夢と情熱〉は、ゆるやかな序奏の後に、フルートとヴァイオリンによって、恋人を象徴する固定楽想(イデー・フィクス)が現れる。この旋律は全楽章を通して何度も顔を出し、物語の進行を示すことになる。第2楽章〈舞踏会〉は、にぎやかな舞踏会の中で、彼がふと恋人の姿を見いだすという設定。流麗なワルツを交響曲に使うという発想は、当時としてはユニークだ。第3楽章〈野の風景〉は、夏の夕べに主人公が物思いにふける様子。イングリッシュホルンとオーボエの旋律、そしてティンパニの雷鳴が聴きどころだろう。第4楽章〈断頭台への行進〉は、苦しみのあまり恋人を殺してしまった芸術家が、死刑場へと向かう異様な行進曲。楽章最後にはトゥッティの大音響によって、ギロチンの刃が落下したことが示される。そして第5楽章〈ワルプルギスの夜の夢〉は、全曲の白眉といえる壮絶な楽章。死後の世界で生(い)け贄(にえ)になる主人公の姿が描かれるが、弦楽器のコルレーニョ、管楽器のポルタメントなど、特殊奏法的な効果を縦横無尽に駆使しながら、妖(あや)しげな雰囲気を音響化していく手法は圧巻。やがて弔いの鐘が鳴り、低音楽器にグレゴリオ聖歌の〈怒りの日〉の旋律が現れると、豪快なロンドへ突入。最後には〈怒りの日〉を交えた対位法書法へと発展し、狂乱の内に幕を閉じる。
(沼野雄司)
演奏時間:約50分
作曲年代:1830年
初演:1830年12月5日、パリ音楽院にて、フランソワ・アブネック指揮による
ARTISTS出演者
指揮ファビオ・ルイージ
1959年、イタリア・ジェノヴァ出身。デンマーク国立交響楽団首席指揮者、ダラス交響楽団音楽監督を務める。N響とは2001年に初共演し、2022年9月首席指揮者に就任。就任後初めての2022–23シーズンでは、9月の就任記念公演でヴェルディ《レクイエム》を指揮。その後ベートーヴェン、ブラームス、ブルックナー、R. シュトラウスなどのドイツ・オーストリアの作品や、フランクやサン・サーンスといったフランス語圏の作品に取り組み、その歌心と情熱に溢(あふ)れた指揮は、多くの聴衆の心を掴(つか)んだ。2023年8月には首席指揮者としての任期が3年間延長され、2028年3月までとなった。
これまでにチューリヒ歌劇場音楽総監督、メトロポリタン歌劇場首席指揮者、ウィーン交響楽団首席指揮者、ドレスデン国立歌劇場管弦楽団および同歌劇場音楽総監督、MDR(中部ドイツ放送)交響楽団芸術監督、スイス・ロマンド管弦楽団音楽監督、ウィーン・トーンキュンストラー管弦楽団首席指揮者などを歴任。このほか、イタリアのマルティナ・フランカで行われるヴァッレ・ディートリア音楽祭音楽監督も務めている。また、フィラデルフィア管弦楽団、クリーヴランド管弦楽団、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団、ミラノ・スカラ座フィルハーモニー管弦楽団、ロンドン交響楽団、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団、サイトウ・キネン・オーケストラに定期的に客演し、世界の主要オペラハウスにも登場している。録音には、ヴェルディ、ベッリーニ、シューマン、ベルリオーズ、ラフマニノフ、リムスキー・コルサコフ、マルタン、そしてオーストリア人作曲家フランツ・シュミットなどがある。また、ドレスデン国立歌劇場管弦楽団とは数々のR. シュトラウスの交響詩を収録しているほか、ブルックナー《交響曲第9番》の解釈は高く評価されている。メトロポリタン歌劇場とのワーグナー《ジークフリート》《神々のたそがれ》のレコーディングではグラミー賞を受賞した。
PRE-CONCERT CHAMBER MUSIC PERFORMANCE開演前の室内楽
開演前の室内楽
曲目:ブラームス/弦楽六重奏曲 第1番 変ロ長調 作品18 第2楽章
出演者
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料金
S席 | A席 | B席 | C席 | D席 | E席 | |
---|---|---|---|---|---|---|
一般 | 7,600円 | 6,700円 | 5,300円 | 4,300円 | 3,300円 | 1,600円 |
ユースチケット | 3,500円 | 3,000円 | 2,400円 | 1,900円 | 1,400円 | 800円 |
※価格は税込です。
※定期会員の方は一般料金の10%割引となります。また、先行発売をご利用いただけます(取り扱いはWEBチケットN響・N響ガイドのみ)。
※車いす席についてはN響ガイドへお問い合わせください。
※N響ガイドでのお申し込みは、公演日の1営業日前までとなります。
※券種により1回券のご用意ができない場合があります。
※当日券販売についてはこちらをご覧ください。
※未就学児のご入場はお断りしています。
※開場前に屋内でお待ちいただくスペースはございません。ご了承ください。
ユースチケット
25歳以下の方へのお得なチケットです。
(要登録)
定期会員券
発売開始日
年間会員券
2023年7月17日(月・祝)10:00am
[定期会員先行発売日: 2023年7月9日(日)10:00am]
シーズン会員券(WINTER)
2023年10月17日(火)10:00am
[定期会員先行発売日: 2023年10月12日(木)10:00am]
BROADCAST放送予定
NHK-FMベスト オブ クラシック
「第1998回 定期公演 Cプログラム」
2023年12月 1日(金) 7:30PM~ 9:10PM
曲目:
フンパーディンク/歌劇「ヘンゼルとグレーテル」前奏曲
ベルリオーズ/幻想交響曲 作品14
指揮:ファビオ・ルイージ
収録:2023年12月1日 NHKホール