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定期公演 2023-2024シーズンBプログラム
第1996回 定期公演 Bプログラム

サントリーホール
Googleマップ 座席表

※約2時間の公演となります(休憩20分あり)。
※やむを得ない理由で出演者や曲目等が変更となる場合や、公演が中止となる場合がございます。公演中止の場合をのぞき、チケット代金の払い戻しはいたしません。

ABOUT THIS CONCERT特徴

ジャン・シベリウス(1865~1957)はフィンランドのハメーンリンナ、イーゴリ・ストラヴィンスキー(1882~1971)はロシアのロモノソフ生まれ。両地は国境線を挟んで僅か300kmほど(東京─名古屋間くらい)の距離。2人とも新婚旅行でカレリアを訪れ、作曲家としては稀(まれ)にみる天寿を全うした。意外な共通点を持つ両者だが、激動の時代を潜(くぐ)り抜けた彼らの作風は、あまりにも違う。両巨匠の傑作を通して、20世紀前半の近過去を改めて振り返ってみたい。

(神部 智)

PROGRAM曲目

シベリウス/交響詩「タピオラ」 作品112

  それは大きく広がり立つ、北国の暗い森
  古代の神秘的で不気味な野生は夢を見る
  そこに力強い森の神が住み
  仄(ほの)暗い中、木の妖精たちが魔法の呪文を唱える夢を

1926年初頭、60歳を迎えたシベリウスはニューヨーク交響楽団の指揮者ワルター・ダムロッシュ(1862~1950)から新作交響詩の作曲依頼を受ける。同年12月26日、ダムロッシュの指揮によりニューヨークで初演されたその曲が、シベリウス最後の大作《交響詩「タピオラ」》である。

タピオラとはフィンランド語で「森の神が住むところ」という意味。出版社のブライトコプフ・ウント・ヘルテルの依頼で、シベリウスは楽譜の冒頭に自ら作成した4行詩を掲載している(本文冒頭を参照)。この詩はシベリウスのインスピレーションの在り処(か)を示唆すると共に、曲を鑑賞する上で参考になるだろう。ただし、作曲者が詩の印象を奏でたり、音楽が詩の内容を描写したりしている訳ではない。《タピオラ》はいわゆる標題音楽というよりむしろ、核となる楽想が自律的に成長、発展しながら全体を形成していく絶対音楽の論理に従っているのである。その独創的な構成と優れた筆致は、晩年のシベリウスが到達した孤高の境地を示している。

曲はティンパニの連打に誘われて力強く現れる冒頭の主題を中心に成長、発展していく。のちに登場するほとんどの楽想は、この主題から派生したものである。音楽学者エルッキ・サルメンハーラは、《タピオラ》の形式プロセスを冒頭の主題による一種の「変奏曲」と見ている。それは楽曲全体がこの主題を軸にしながら、緻密なネットワークを構築しているからである。冒頭の主題が登場したあと、太古の悠久なる時間の流れを思わせるかのように、シベリウスは何度もその主題を反復させる。やがて曲は徐々にテンポを上げ、スケルツォ的な部分、展開部、再現部、クライマックス、コーダという風に、自由で幻想的ながらも有機的に全体が組み立てられていく。最後は、永遠の静寂の中に清らかな余韻を残しながら幕を閉じる。

(神部 智)

演奏時間:約19分
作曲年代:1926年
初演:1926年12月26日、ニューヨーク、ワルター・ダムロッシュ指揮、ニューヨーク交響楽団(New York Symphony Orchestra。この楽団の前身、ニューヨーク交響楽協会は初演者ワルターの父レオポルド・ダムロッシュによって創設され、1903年、ニューヨーク交響楽団に改称。1928年、ニューヨークのもう一方の楽団、フィルハーモニー・ソサエティ・オブ・ニューヨークに吸収された。吸収・合併されたこのソサエティがニューヨーク・フィルハーモニー交響楽団に改称。のちにニューヨーク・フィルハーモニックとなって現在に到る)

ストラヴィンスキー/ヴァイオリン協奏曲 ニ調

ストラヴィンスキーが創作した唯一のヴァイオリン協奏曲。ポーランド系アメリカ人ヴァイオリニスト、サミュエル・ドゥシュキン(1891~1976)の依頼で、1931年初頭に着手された。ストラヴィンスキーは当初、独奏ヴァイオリンの演奏法にあまり自信が持てず、作曲そのものに躊躇(ちゅうちょ)したらしい。しかし、作曲家ヒンデミットの「楽器への先入観を持たないことは、かえって新しい可能性の発見につながるのではないでしょうか」という言葉に励まされ、創作に勤(いそ)しんだ。

協奏曲の冒頭、独奏ヴァイオリンが重音で提示する短い不協和音は、ストラヴィンスキーによると「協奏曲へのパスポート」だという。各楽章の最初に現われ、曲の導入を担うこの強烈な和音は、ある日ストラヴィンスキーがドゥシュキンとパリのレストランでランチを楽しんでいた時、ふと思いついたものである。3つの音からなるその和音は音程が非常に幅広く、ヴァイオリンでは演奏不可能に見えた。ところがその後、ドゥシュキンが帰宅してためしに和音を弾いてみたところ、技術的に問題なく奏することができた。その知らせを受けたストラヴィンスキーは、協奏曲への創作意欲を一気にかき立てられたといわれる。

ストラヴィンスキーが唱えた「バッハに帰れ」というスローガンは、20世紀前半の音楽潮流を先導していく重要な理念のひとつになった。この《ヴァイオリン協奏曲》も、各楽章にバロック音楽風の副題が付されている。だがその内実は、紛れもなくストラヴィンスキー独自の感性に貫かれた「20世紀の協奏曲」なのである。輝かしいニ長調を基調とする〈トッカータ〉は、ユーモアに満ちたエネルギッシュな楽章。ニ短調の〈アリアⅠ〉は、幅広い跳躍を含む独奏ヴァイオリンのうねるような旋律が印象的。嬰ヘ短調の〈アリアⅡ〉は、重々しいサラバンド風の雰囲気。華やかなニ長調に回帰する〈カプリッチョ〉は、一転してジャズ風の軽快な曲調。

(神部 智)

演奏時間:約22分
作曲年代:1931年
初演:1931年10月23日、ドゥシュキンの独奏、作曲家自身の指揮、ベルリン放送交響楽団

シベリウス/交響曲 第1番 ホ短調 作品39

1899年に初演された《交響曲第1番》は、シンフォニックな絶対音楽の領域で独自の表現世界を切り開こうとしたシベリウスの出発点となった作品である。この交響曲はチャイコフスキーやボロディンの影響が指摘されることもあるが、幻想的でラプソディックな構成の内に堅固な論理の糸を張り巡らせるなど、すでにシベリウスの個性は十分に発揮されている。ちなみにシベリウス最晩年の言葉によると、「柔軟で感傷的なチャイコフスキーの音楽に対して、自分の交響曲は『硬質』である」という。

《第1番》の初演は大成功を収めたものの、その後シベリウスは曲に修正の手を加えることにした。理由のひとつとして、1900年夏に挙行されたヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団のパリ万博遠征公演を指摘する者もいる。同公演のメイン・プログラムに《第1番》が選ばれたため、急いで手直しされたのではないか、という見方である。しかし、シベリウスが曲の改訂について同公演と関連付けて語ったことは一度もない。

残念ながら初稿のスコアが紛失してしまったため、《第1番》の改訂の詳細については不明だが、修正によって第1楽章が拡大された一方、第2と第3楽章は逆に短縮されたことが分かっている。またオーケストレーションも見直され、初稿では控え目だったハープの積極的使用が注目される。さらにタンブリンとカスタネットが取り除かれた代わりに大太鼓が加わったことで、全体的に響きが力強く引き締まったとみてよいだろう。かくして1900年夏、《第1番》の改訂稿(現行版)は《交響詩「フィンランディア」》とともにスウェーデンやドイツ、オランダ、フランスなどヨーロッパ各地で演奏され、シベリウスの国際的評価の確立に大きく寄与することになった。

第1楽章は、アンダンテ、マ・ノン・トロッポの序奏部とアレグロ・エネルジコの主部からなるソナタ形式。序奏部で静かに登場するクラリネット・ソロの寂寞(せきばく)とした旋律の内に、交響曲全体の基本楽想が織り込まれている。第2楽章は叙情的な緩徐楽章。曲の後半における素材の巧妙な展開処理、劇的なクライマックスの構築がシベリウスらしい設計。第3楽章は、ソナタ形式の発想が取り入れられたスケルツォ。「幻想曲風に」という曲想記号が付された第4楽章では、まず序奏部で第1楽章冒頭の旋律が力強く回帰したあと、あわただしい動きを伴う楽想と長大な旋律が交互に現れる。やがて曲は終盤に向けて大きなうねりを形成し、焦燥感と悲壮感を漂わせながら劇的に高揚していく。最後は第1楽章と同様、孤独な世界へと消え入るように、2つのピチカートで静かに幕を閉じる。

(神部 智)

演奏時間:約38分
作曲年代:1898年春から1899年初頭 [現行版]1900年2月、または3月から6月にかけて
初演:[初稿]1899年4月26日、作曲家自身の指揮、ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団 [現行版]1900年7月1日、ロベルト・カヤヌス指揮、ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団

[アンコール曲]
11/15:フィンランド民謡/「コプシン・ヨーナス」
11/16:イロ・ハールラ(ペッカ・クーシスト編)/舟歌(バルカローレ)
(ヴァイオリン:ペッカ・クーシスト)

 

はじめてのクラシック
「イーゴリ・ストラヴィンスキー」

ARTISTS出演者

ユッカ・ペッカ・サラステさんの画像 指揮ユッカ・ペッカ・サラステ

サラステはフィンランドのヘイノラ生まれ、まずヴァイオリニストとして活動したあと、ヘルシンキのシベリウス・アカデミーでヨルマ・パヌラに師事して指揮に転向、現在は世界的に活躍している。後期ロマン派や同時代の音楽を得意としており、リームやチェルハ、デュサパンらの作品を初演しているほか、1983年にはサロネンらとともに現代音楽を専門とする「アヴァンティ!」室内管弦楽団を立ち上げた。サラステはこれまで、スコットランド室内管弦楽団、フィンランド放送交響楽団、トロント交響楽団、オスロ・フィルハーモニー管弦楽団、そしてケルンWDR交響楽団の首席指揮者や音楽監督などを歴任した。2023年夏にはヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団の首席指揮者兼芸術監督への就任が予定されている。また、フィンランド室内管弦楽団および同団を中心とするタンミサーリ音楽祭の創設者でもある。近年は、彼が創設者のひとりである若い音楽家のための教育プログラム、「LEAD! ジ・オーケストラ・プロジェクト」の活動にも力を入れている。なお今回の来演では、サラステが2020年6月にNHK交響楽団定期公演Cプログラムで指揮するはずだった曲目のうち、クーシストとのストラヴィンスキー《ヴァイオリン協奏曲》、それにシベリウス《交響曲第1番》があらためて演奏されることになっており、期待が高まる。

[増田良介/音楽評論家]

ペッカ・クーシストさんの画像 ヴァイオリンペッカ・クーシスト

バッハから現代作品、さらにジャズ、民俗音楽まで、驚異的なレパートリーを誇る。しかもそれらを表情豊かに弾く。
近年もシカゴ交響楽団やスウェーデン放送交響楽団、東京都交響楽団と共演。フィルハーモニア管弦楽団の「フィーチャード・アーティスト」にも迎えられた。ソロやリーダーを兼ねた指揮活動にも情熱を注ぎ、2023/24年のシーズンからヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団の首席客演指揮者兼芸術共同監督に就任する。
祖父も父も作曲家という音楽一家の出身。2022年に48歳で亡くなった兄ヤーッコも優れたヴァイオリニストだった。1976年生まれのペッカ・クーシストは、ヘルシンキのシベリウス音楽院および米インディアナ大学で学び、1995年、フィンランド人として初めてシベリウス国際ヴァイオリン・コンクールに優勝した。凛とした響きも舞うストラヴィンスキーの協奏曲は十八番(おはこ)で、サントゥ・マティアス・ロウヴァリ指揮のフィルハーモニア管弦楽団の演奏会でも披露した。NHK交響楽団とは初共演。

[奥田佳道/音楽評論家]

TICKETチケット

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Bプログラム

第1996回 定期公演
Bプログラム

サントリーホール
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1回券発売開始日

定期会員先行発売日:2023年7月27日(木)10:00am
定期会員について

一般発売日:2023年7月30日(日)10:00am

チケット購入

料金

S席 A席 B席 C席 D席
一般 9,800円 8,400円 6,700円 5,400円 4,400円
ユースチケット 4,500円 4,000円 3,300円 2,500円 1,800円

※価格は税込です。
※定期会員の方は一般料金の10%割引となります。また、先行発売をご利用いただけます(取り扱いはWEBチケットN響・N響ガイドのみ)。
※この公演のお取り扱いは、WEBチケットN響およびN響ガイドのみです。
※車いす席についてはN響ガイドへお問い合わせください。
※券種により1回券のご用意ができない場合があります。
※当日券販売についてはこちらをご覧ください。
※未就学児のご入場はお断りしています。

ユースチケット

25歳以下の方へのお得なチケットです。
(要登録)

定期会員券
発売開始日

年間会員券
2023年7月17日(月・祝)10:00am
[定期会員先行発売日: 2023年7月9日(日)10:00am]

お問い合わせ・
お申し込み

主催:NHK / NHK交響楽団

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