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- 第1985回 定期公演 Bプログラム
※約2時間の公演となります(休憩20分あり)。
※やむを得ない理由で出演者や曲目等が変更となる場合や、公演が中止となる場合がございます。公演中止の場合をのぞき、チケット代金の払い戻しはいたしません。
ABOUT THIS CONCERT特徴
ハイドン、モーツァルト、ベートーヴェン……彼らは「ウィーン古典派」を代表する3人と言われる。ウィーンを舞台に、均衡美を旨とする器楽曲を次々と生んだ大作曲家たち。だが「ウィーン古典派」という概念自体、20世紀初頭に確立されたものにすぎない。本日演奏される3曲も、そこには作曲者ごとに異なるさまざまな創意工夫が刻まれている。またそれこそが、世界有数の国際都市ウィーンの名前を冠した「ウィーン古典派」の本質なのだ。
(小宮正安)
PROGRAM曲目
ハイドン/交響曲 第82番 ハ長調 Hob. I-82「くま」
1780年代、フランツ・ヨーゼフ・ハイドン(1732~1809)は転機の中にあった。彼は長年にわたり宮廷楽長として、ハンガリーの侯爵エステルハージ家に仕えていたが、その声望がヨーロッパ中に轟(とどろ)きつつあったからである。そうした状況の中で、新作交響曲を書いてほしいというパリの新設オーケストラからの依頼に応えて生まれたのが、いわゆる「パリ交響曲集」だ。当時は交響曲も含めた器楽曲を6曲セットで出版するという慣習があったため、「パリ交響曲集」も6曲から成り立っている。当作品は、その最初に位置するもの。つまりトップバッター的な役割として、刺激に慣れっこになっているパリの聴衆の心を一挙に摑(つか)むことが必要だった。
そこで、旺盛な実験精神の持ち主だったハイドンは、才気あふれる創意工夫をこの交響曲に散りばめることとなる。ハ長調という祝祭性の強い調性を基に、華やかさと勢いを具そなえた第1楽章。しかも3拍子を基本としているため、音符の少ない弱奏の部分になると、一瞬メヌエットかと錯覚してしまうような仕掛けに満ちている。第2楽章はロンド形式を基としながら、そこに変奏曲の要素が入り込む。
正真正銘のメヌエット─といっても偶数の偶数倍ではなく、偶数の奇数倍のフレーズが用いられ、聴く者を不意打ちする効果も満点だ─が繰り広げられる第3楽章を経て、いよいよ第4楽章。民俗音楽の代表格であるバグパイプのような低音の響きに導かれ、さまざまな旋律が疾走する。なお「くま」という呼称は、バクパイプに似た響きが、熊に芸をさせる熊使いの鞭(むち)の音をも連想させるところから来たもの。ハイドン自身の命名ではないものの、当時人気を博していた愉悦とスリルに満ちた曲芸が、次々と音楽が変化するこの楽章になぞらえられたのは面白い。
なお当作品で用いられる金管楽器だが、ハイドンは高い音の出るC管のもの、という指定のみをおこなっている。その情報を基に、本日はHaydn-Mozart-Presse版の楽譜が使用され、第1楽章はトランペットのみ、第2楽章はホルンのみ、そして第3・4楽章はトランペットのみが用いられる。
(小宮正安)
演奏時間:約27分
作曲年代:1786年
初演:1787年、ティュリュリー宮殿内の100人のスイス人ホール、ジョゼフ・ブローニュ・シュヴァリエ・ド・サン・ ジョルジュ指揮、コンセール・ダ・ロージュ・オランピック
モーツァルト/ホルン協奏曲 第3番 変ホ長調 K. 447
ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756~1791)は、何人もの優秀な演奏家と交友関係を結んだ。そのひとりが、ウィーンやザルツブルクで活躍したヨーゼフ・ロイトゲープ(1732~1811)。ハイドンにも才能を評価された彼は、モーツァルトと年齢の差を越えて友情をはぐくみ、またその演奏を想定してモーツァルト自身、数曲のホルン協奏曲を書いた。
なお、「第3番」という番号を与えられているこの曲だが、4曲あるホルン協奏曲中、モーツァルトが手がけた完成作品としては最後の作品となっている。作曲は1787年のこと。モーツァルトの作品が壮絶な凄みを具(そな)えるようになった時期と重なる。たしかに当協奏曲もその凝縮力からして、一連のホルン協奏曲の中でも抜きんでた存在だ。
なおこの作品、モーツァルトの作品であることは証明済みなのだが、彼がそれを自らこまめにつけていた自作の作品目録に書き込んでいない、という謎がある。またそこから、単独で先に作られていた第2楽章あるいは第3楽章に加え、ロイトゲープの演奏会に際して第1楽章を付けた、という説もある。
いずれにせよ、クラリネットとファゴットを用いたオーケストラ(この楽器編成も、モーツァルトのホルン協奏曲の中では唯一のものである)の温かな響きは、独特のものだ。またこの響きに包まれて、独奏ホルンが儚(はかな)く美しい旋律を奏でる第2楽章は、当作品の白眉となっている。「ロマンス」と銘打たれているだけのことはあって、モーツァルトが得意とする豊かな歌心を隅々まで宿した美しい無言歌。それを、もともと狩猟楽器だったホルンが繊細に奏でるという、叙情性と実験精神が一体となった楽章だ。
そしてこの楽章を扇の要として、両端楽章が独自の光を放つ。ソナタ形式に基づき、展開部で一聴する以上に複雑な和声が用いられている第1楽章。またホルンの出自を思わせる狩のリズムを彷彿(ほうふつ)させながらも、第2楽章の冒頭の旋律が引用される第3楽章と、15分ほどの演奏時間の中に聴きどころが満載だ。
(小宮正安)
演奏時間:約16分
作曲年代:1787年
初演:1787年頃、詳細は不明
ベートーヴェン/交響曲 第6番 へ長調 作品68「田園」
日本語では「田園」と訳されるが、原題は“Pastorale”。古代ギリシアでは「牧歌劇」、キリスト教においてはイエスの「降誕劇」をも意味していた。またそこから、荒野で羊の番をしていた牧人たちが、馬小屋で生まれたばかりのイエスを拝みに来る場面で、6/8拍子に基づく温かく安らぎに満ちたPastorale(「田園曲」)も生まれるようになった。
このPastoraleと呼ばれる音楽が、Pastoraleと銘打たれた当交響曲の第5楽章に登場する。ルートヴィヒ・ファン・ベートーヴェン(1770~1827)自身によって「牧歌─嵐のあとの神への感謝に満ちた、寛大な気持ち」という標題が書き込まれ、Pastoraleの特徴である6/8拍子の穏やかな楽想が基本となっている。さらにPastoraleのもうひとつの意味、古代ギリシアの牧歌劇では、伝説の理想郷アルカディアで牧人たちが角笛を鳴らすなか、人類の失った究極の幸せが満ちているといった情景が出現する。しかもこの古代ギリシアだが、ベートーヴェンが生まれ育った時代=市民階級が勃興し近代民主制が求められた時代には、古代民主制が花開いた時代としても注目を浴びていた。
なお本作の特徴として、作曲者自身の書いたプログラム=標題を通じ、音楽が何かある情景を描いているということが挙げられる。しかもそこには、今記したように、単なる絵画的描写以上の意味合いが具(そな)わっている。第1楽章の標題「田舎に着いたときに、人々の心に生まれる心地よく朗らかな気持ち」。これは内面描写であって、「自分が何を感じるか」という問題意識がないと出てこないものだ。同じことは、第2楽章にも当てはまる。この楽章の標題が「小川のほとり」であり、楽章の最後には鳥の鳴き声が模されるといった具合に、絵画的描写の要素が目立つものの、刻々と変わる小川のせせらぎは、それを捉える作曲者自身の意識を顕著に投影したものだ。これに続いて登場するのは、トータルで15分を超えようかという第3・4・5楽章。しかもこれらの楽章は切れ目なく演奏され、暗から明へという流れが明確に現れている。いや、正確に言えば第3楽章の束の間の〈明〉=「田舎の人々の楽しいつどい」が、第4楽章の〈暗〉=「雷と嵐」によって破壊されたあと、件(くだん)の第5楽章つまりは究極の救いとしての〈明〉が訪れる、という構成だ。
アルカディアにおける究極の幸福、あるいはイエスの誕生を通じた人類救済という、ヨーロッパの精神史を色濃く宿したPastorale。それは、ベートーヴェンにおいて、虐げられた人々(=市民階級)が幸せを手に入れるという革命的理想にまで変容を遂げた。
(小宮正安)
演奏時間:約40分
作曲年代:1807~1808年
初演:1808年12月22日、アン・デア・ウィーン劇場、作曲者自身の指揮、アン・デア・ウィーン劇場の管弦 楽団
[アンコール曲]
5/24:ロッシーニ/狩りのファンファーレ
5/25:ブリテン/テノール、ホルンと弦楽のためのセレナード ― プロローグ
(ホルン:福川伸陽)
ARTISTS出演者
指揮ファビオ・ルイージ
1959年、イタリア・ジェノヴァ生まれ。デンマーク国立交響楽団首席指揮者、ダラス交響楽団音楽監督を務める。N響とは2001年に初共演し、2022年9月首席指揮者に就任。ハイドン、モーツァルトからマーラー、R. シュトラウスまでドイツ系を中心とする幅広いレパートリーで、丹念に磨き込んだ「歌」と、圧倒的な情熱で聴き手を虜にしている。
これまでにメトロポリタン歌劇場首席指揮者、チューリヒ歌劇場音楽総監督、ウィーン交響楽団首席指揮者、ドレスデン国立歌劇場管弦楽団および同歌劇場音楽総監督、MDR(中部ドイツ放送)交響楽団芸術監督、スイス・ロマンド管弦楽団音楽監督などを歴任。このほか、イタリアのマルティナ・フランカで行われるヴァッレ・ディートリア音楽祭音楽監督も務めている。また、フィラデルフィア管弦楽団、クリーヴランド管弦楽団、ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団、ミラノ・スカラ座フィルハーモニー管弦楽団、ロンドン交響楽団、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団、サイトウ・キネン・オーケストラに定期的に客演し、世界の主要オペラハウスにも登場している。録音には、ヴェルディ、ベッリーニ、シューマン、ベルリオーズ、ラフマニノフ、リムスキー・コルサコフ、マルタン、そしてオーストリア人作曲家フランツ・シュミットなどがある。また、ドレスデン国立歌劇場管弦楽団とは数々のR. シュトラウスの交響詩を収録しているほか、ブルックナー《交響曲第9番》の解釈は高く評価されている。メトロポリタン歌劇場とのワーグナー《ジークフリート》《神々のたそがれ》のレコーディングではグラミー賞を受賞した。
ホルン福川伸陽
今をときめくホルン奏者で、ソロ、多彩な室内楽、オーケストラとの共演、内外の音楽祭で活躍。リッカルド・ムーティやパーヴォ・ヤルヴィも賛辞を惜しまない管楽器のトップアーティストのひとりである。モーツァルトのホルン協奏曲はもちろん十八番(おはこ)で、2021年2月に鈴木優人指揮で全曲録音を行なった。武蔵野音楽大学で学び、在学中から日本フィルハーモニー交響楽団で演奏、その後入団。首席奏者に就任後、2006年イギリスに留学。当時ロンドン交響楽団の首席奏者だったデーヴィッド・パイアットに師事したほか、ロンドン交響楽団に客演した。2008年、第77回日本音楽コンクール〈ホルン部門〉で第1位に輝く。2013年、NHK交響楽団に入団。その後首席奏者に就任し、2021年3月まで重責を担った。2019年1月には、ロンドンの名門ウィグモア・ホールでリサイタルを開催している。
ナチュラルホルン/バロックホルンの名手でもあり、バッハ・コレギウム・ジャパンなどに出演。また久石譲、藤倉大ほか、多くの作曲家が福川に曲を献呈している。木管楽器とピアノによる「東京六人組」のメンバー。国際ホルン協会評議員、東京音楽大学准教授。
[奥田佳道/音楽評論家]
MOVIEムービー
【マエストロ・メッセージ】ファビオ・ルイージ/5月N響定期公演Bプログラム
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料金
S席 | A席 | B席 | C席 | D席 | |
---|---|---|---|---|---|
一般 | 9,800円 | 8,400円 | 6,700円 | 5,400円 | 4,400円 |
ユースチケット | 4,500円 | 4,000円 | 3,300円 | 2,500円 | 1,800円 |
※ユースチケットのご案内(要登録/取り扱いはN響ガイドのみ)
※定期会員の方は一般料金の10%割引となります。また、先行発売をご利用いただけます(取り扱いはWEBチケットN響・N響ガイドのみ)。
※この公演のお取り扱いは、WEBチケットN響およびN響ガイドのみです。
※車いす席についてはN響ガイドへお問い合わせください。
※券種により1回券のご用意ができない場合があります。
※当日券販売についてはこちらをご覧ください。
※未就学児のご入場はお断りしています。
※発熱等の体調不良時にはご来場をお控えください。
※適切な手指の消毒、咳エチケットにご協力ください。
※「ブラボー」等のお声掛けをされる際は、マスクの着用にご協力をお願いいたします。
定期会員券
発売開始日
年間会員券 7月18日(月・祝)11:00am
[定期会員先行発売日: 7月14日(木)11:00am]
ユースチケット
25歳以下の方へのお得なチケットです。
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