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- 第1983回 定期公演 Aプログラム
※約2時間の公演となります(休憩20分あり)。
※やむを得ない理由で出演者や曲目等が変更となる場合や、公演が中止となる場合がございます。公演中止の場合をのぞき、チケット代金の払い戻しはいたしません。
ABOUT THIS CONCERT特徴
ロシアに生まれるも、革命とともにアメリカに渡り、生涯、祖国には帰らなかったラフマニノフ(1873~1943)。旧ソ連内のタタール共和国に生まれ、モスクワで学んだのち、ソ連崩壊とともにハンブルクに移住したグバイドゥーリナ(1931~)。オーストリア帝国内に生まれ、イギリスやアメリカでも活躍したのちに、チェコ独立を夢見ながらプラハで没したドヴォルザーク(1841~1904)。3人の生涯を辿(たど)ってみると、時代の違いはあれ、「移動」の人生であったことがわかる。彼らの音楽が時に見せる、どこか寂しげな望郷の表情は、そんな移動が生み出したものかもしれない。
(沼野雄司)
PROGRAM曲目
ラフマニノフ/歌曲集 作品34 ―「ラザロのよみがえり」(下野竜也編)、「ヴォカリーズ」
セルゲイ・ラフマニノフといえば、誰もが華麗なピアノ作品の数々を思い浮かべるはず。しかし同時に、彼は生涯に80曲以上の歌曲を残した「歌曲作曲家」でもあった。いや、数々の合唱曲やオペラの存在を鑑みるならば、むしろ彼の本質は「歌」にあり、この歌がピアノや管弦楽に投影されて、あのうねるような響きの作品群が書かれたのだともいえよう。
14曲からなる《歌曲集 作品34》のうち、本日はここから2曲がオーケストラ編曲で奏される。まず、歌曲集の第6曲〈ラザロのよみがえり〉。原曲はごく素朴な旋律だが(ピアノも簡単な和音を淡々と鳴らすのみ)、その民謡のような手触りが、ラザロの復活という奇跡を目の当たりにした民衆の思いを伝える。指揮者の下野竜也によるオーケストラ編曲版は、管楽器を生かした荘厳な雰囲気が特徴。原曲はヘ短調だが、次曲にあわせホ短調に変えられている。一方、花形歌手ネジダノワのために書かれた、終曲〈ヴォカリーズ〉は、誰もが知る人気曲。母音唱法が旋律そのものの美しさを際立たせる音楽であるから、オーケストラでも美点はまったく減じないだろう。こちらは作曲者ラフマニノフ自身のオーケストラ編曲版である。
(沼野雄司)
演奏時間:約9分
作曲年代:[ラザロのよみがえり]1912年 [ヴォカリーズ]1912年、1915年改訂(1915年作曲の説もある)
初演:[ラザロのよみがえり(下野竜也管弦楽編曲版)]2023年5月13日、下野竜也指揮、NHK交響楽団 [ヴォカリーズ(セルゲイ・ラフマニノフ管弦楽編曲版)]不明
グバイドゥーリナ/オッフェルトリウム*
音楽史は、しばしば「作曲家の歴史」になりがちだ。しかし、ひとりの演奏家が歴史を動かすこともある。ギドン・クレーメルが1980年代に果たした役割は、まさにそうしたものだった。
ソ連を代表するヴァイオリニストとして活躍していたクレーメルは、1980年に西ドイツに居を移す。面白いのは、その後の彼が同時代のソ連作曲家たちを次々に紹介していったことだ。自由を得たからこそ、祖国の音楽を「西側」に紹介せねばならないという義務感を感じていたにちがいない。
折しも前衛音楽がひとつの曲がり角を迎え、疲弊していたなか、クレーメルが紹介する「新しいソ連音楽」は、一挙に注目を集めることになった。1931年生まれのソフィア・グバイドゥーリナも、こうしてわれわれの前に姿をあらわした作曲家である。
ソ連内のタタール共和国で育った彼女は、当時支配的だった社会主義リアリズムの理念にはどうしても馴染(なじ)めなかったという。「私たちはアイヴスやケージを、こっそりと勉強していました」と述べる彼女は、必然として体制側と多くの軋轢(あつれき)を生むことになった。
しかし、1981年にクレーメルによってウィーンで初演された《オッフェルトリウム》によって、彼女の名は一気に世界に知られることになる。時として支離滅裂といいたくなるほど奔放であるにもかかわらず、前衛のさまざまな技法とはまるで異なった「言語」に貫かれた音楽に、誰もが驚愕(きょうがく)したのだった。
まず、最初に響いてくるのは、バッハ《音楽のささげもの》の主題。この主題は全曲を統一する原理として提示されているが、そこから次々に異なった音の風景があらわれる。やがて音楽はゴツゴツとした突起を残しながら進んでゆき、戦後の音楽を輪郭づけていた抽象性に、いたるところで反発する。なにより印象的なのは、最後の8分、突如として音楽が調性的に響きだし、独奏ヴァイオリンが祈りの音調を奏で始める部分。この敬虔(けいけん)で無垢(むく)な響きは、それまでの現代音楽ではけっして聴くことのできなかったものだ。
(沼野雄司)
演奏時間:約38分
作曲年代:1979~1980年作曲、1982年、1986年改訂
初演:1981年5月30日、ウィーン、レイフ・セーゲルスタム指揮、オーストリア放送交響楽団、ギドン・クレーメ ル独奏による
ドヴォルザーク/交響曲 第7番 ニ短調 作品70
アントニーン・ドヴォルザークの後期交響曲のうち、《第9番》には「新世界から」というタイトルがつけられており、《第8番》には(内容とは全然関係ないのだが)「イギリス」というあだ名がある。では、もしもこの《第7番》に愛称をつけるとしたら?
筆者の頭に浮かぶのは「ブラームス」という語。もちろん、曲には濃厚なチェコの香りがあるし、時にワーグナー風の部分も散見される。それでもこの楽曲の堅固な構成感は、なによりブラームスを思わせるのだ。
考えてみればドヴォルザークの創作は、ブラームスとワーグナー、そしてスメタナという3人の巨人を眼前にして紡がれたものではなかったか。19世紀のドイツ音楽はワーグナーとブラームスの両端で揺れていたが、ドヴォルザークは若い頃からどちらにも惹かれており、結果としてその音楽には標題音楽・絶対音楽という枠組みを越えた柔軟性がもたらされることになった。ここにスメタナ仕込みの民族色が加わったときに、「ドヴォルザーク」という稀
有(けう)な多面体が完成したといってよい。
《第7番》の作曲時期は1884年から翌年にかけて。重要なのは、彼が前年の1883年にブラームス《交響曲第3番》の初演を聴いていることだ。実際、この2曲はさまざまな共通点がある。例えばブラームス作品ではヘ長調とヘ短調の間を旋律がさまようが、ドヴォルザーク作品も、ニ短調にはじまり、最後にはニ長調へと到達して幕を閉じるのである。
第1楽章(アレグロ・マエストーソ)は、ヴィオラとチェロが低音部でうごめく冒頭部、一瞬で変ホ長調へと移る鮮やかな転調、ホルンとオーボエが乱舞する経過句、さらには半音階を経て到達する第2主題部……どこをとっても手が込んでおり、作曲者の意欲が 漲(みなぎ)っている。
第2楽章(ポーコ・アダージョ)も、のどかな緩徐楽章のようでいて、複雑な響きと構成を持つ。半音階を駆使した、意外なほどに深刻な陰影が特徴。
第3楽章(ヴィヴァーチェ)は、スケルツォ。4分の6拍子という拍子の特質を生かしながら、さまざまなリズムが戯れ、乱舞する。突如としてト長調に転じる中間部の色彩も魅力的。
第4楽章(アレグロ)では、冒頭に奏される主要主題が曖昧な輪郭を持っているのに対して、一区切りついてから弦楽器のザクザクした響きで示される経過句が真の主題のようにふるまうのが面白い。そして曲尾、のぼりつめた旋律が突如として長調の響きにかわり、驚きのなかで全曲が閉じられる。
(沼野雄司)
演奏時間:約37分
作曲年代:1884~1885年
初演:1885年4月22日、ロンドン、作曲者自身による指揮、ロンドン・フィルハーモニー協会による
ARTISTS出演者
指揮下野竜也
下野竜也は1969年生まれ、桐朋学園大学音楽学部附属指揮教室に学び、シエナのキジアーナ音楽院で指揮のディプロマを取得、さらにウィーン国立演劇音楽大学に留学して研鑽(けんさん)を重ねた。2000年の東京国際音楽コンクール、翌年のフランスのブザンソン国際指揮者コンクールにともに優勝して注目を浴び、以後内外の楽団を指揮。これまで読
売日本交響楽団正指揮者および首席客演指揮者、広島ウインドオーケストラ音楽監督、京都市交響楽団常任客演指揮者および常任首席客演指揮者などを歴任、2017年からは広島交響楽団の音楽総監督としてこの楽団の発展に大きく貢献している。N響とは2005年の初共演以来、これまで定期公演を含めて数多く共演を重ねてきた。
正面から作品に向かい合い、優れたバトン技術と表現力でもってその真価を伝える下野の音楽作りは高い評価を得ており、レパートリーも古典から現代曲まで幅広い。これまで日の目を見なかった秘曲の発掘にも積極的で、プログラムも時に一見奇抜なようでいながら、そこに何らかのメッセージが込められている。今回も前半はともに宗教的な内容を持つラフマニノフの歌曲編曲とグバイドゥーリナの協奏作品を通して、今の混迷の時代における下野の切実な訴えが窺(うかが)える。
後半は彼の十八番(おはこ)のドヴォルザーク。下野は読響時代にドヴォルザークの交響曲全曲を指揮しているほどにこの作曲家に愛着を持っており、今回も名演が期待できよう。
(寺西基之/音楽評論家)
ヴァイオリンバイバ・スクリデ*
ラトヴィアの音楽一家の生まれ。リガの音楽学校とロストックの音楽院で学ぶ。2001年のエリーザベト王妃国際音楽コンクールで第1位を獲得。ソリストとして、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団、ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団、ボストン交響楽団、シカゴ交響楽団などのオーケストラと共演。2019年のライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の来日公演でのショスタコーヴィチ《ヴァイオリン協奏曲第1番》の情感豊かな演奏が記憶に新しい。また、モーツァルト、シューマン、ブラームス、チャイコフスキー、ストラヴィンスキー、ヤナーチェク、シマノフスキ、シベリウス、ニールセン、バルトーク、コルンゴルトなど、数多くの協奏曲の録音を残す。近年はグバイドゥーリナの作品に取り組み、2021年9月、ゲヴァントハウス管弦楽団のシーズン開幕演奏会で《三重協奏曲》の独奏を務め、同年11月、グバイドゥーリナの90歳を祝して同団と《オッフェルトリウム》を共演。同年12月にはhr交響楽団とヴァイオリン協奏曲《対話:私とあなた》を演奏している。NHK交響楽団とは2012年、2018年に共演。定期公演へは今回が初登場となる。
(山田治生/音楽評論家)
MOVIEムービー
【マエストロ・メッセージ】下野竜也/5月N響定期公演Aプログラム
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料金
S席 | A席 | B席 | C席 | D席 | E席 | |
---|---|---|---|---|---|---|
一般 | 8,900円 | 7,400円 | 5,800円 | 4,700円 | 3,700円 | 2,000円 |
ユースチケット | 4,000円 | 3,500円 | 2,800円 | 2,100円 | 1,500円 | 1,000円 |
※価格は税込です。
※ユースチケットのご案内(要登録/取り扱いはN響ガイドのみ)
※定期会員の方は一般料金の10%割引となります。また、先行発売をご利用いただけます(取り扱いはWEBチケットN響・N響ガイドのみ)。
※車いす席についてはN響ガイドへお問い合わせください。
※券種により1回券のご用意ができない場合があります。
※当日券販売についてはこちらをご覧ください。
※未就学児のご入場はお断りしています。
※開場前に屋内でお待ちいただくスペースはございません。ご了承ください。
※発熱等の体調不良時にはご来場をお控えください。
※適切な手指の消毒、咳エチケットにご協力ください。
※「ブラボー」等のお声掛けをされる際は、マスクの着用にご協力をお願いいたします。
定期会員券
発売開始日
年間会員券 7月18日(月・祝)11:00am
[定期会員先行発売日: 7月14日(木)11:00am]
シーズン会員券 2023年2月17日(金)11:00am
[定期会員先行発売日:2023年2月14日(火)11:00am]
ユースチケット
25歳以下の方へのお得なチケットです。
(要登録)
主催:NHK / NHK交響楽団
※AプログラムはNHKホール改修工事の終了にともない、今シーズンより会場をNHKホールに戻して開催します
※A-2の開演時刻は2:00pmとさせていただきます