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定期公演 2022-2023シーズンCプログラム
第1981回 定期公演 Cプログラム

NHKホール
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※休憩のない、60分~80分程度の公演となります。
※やむを得ない理由で出演者や曲目等が変更となる場合や、公演が中止となる場合がございます。公演中止の場合をのぞき、チケット代金の払い戻しはいたしません。
※ご来場の際には感染症予防対策についてのご案内を必ずお読みください。

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ABOUT THIS CONCERT特徴

パーヴォ・ヤルヴィが「最強のオールラウンド型マエストロ」であることは言うまでもない。古典から現代まで、楽曲の時代様式や性格を見事に描きわける。今回も近代フランスの比較的小さな編成のために書かれた作品で構成された、凝ったプログラム。N響の合奏力への信頼あってこその曲目だが、さらにフランス系作品に冠されがちな「エスプリ」や「洗練」といった常套句(じょうとうく)では片づけられない仕掛けがある。その鍵は「新古典主義」だ。
(矢澤孝樹)

PROGRAM曲目

ルーセル/弦楽のためのシンフォニエッタ 作品52

クラシック音楽における「新古典主義」は、ロマン派以降の作曲家が古典派以前の明解な形式と語法の音楽を範とする場合に用いられるが、それが最も意識的に「運動」の形を取ったのは、無調から十二音技法へと音楽語法が先鋭化した20世紀前半である。
そのなかでアルベール・ルーセル(1869~1937)は「生来の古典主義者」と呼べるかもしれない。印象主義に始まり、若い頃海軍中尉として赴いた東南アジアで知った音楽語法の導入など作風は変化するが、リズミックで線的な書法、対位法の冴えなどは終生の特徴である。それが古典的な形式感と結実し、《交響曲第3番》(1930年)のような傑作に至る。つけ加えるなら彼が愛し観察した昆虫たちの、幾何学的で精妙なフォルムも、その音楽の構築性に影響を与えたかもしれない─彼の代表作のひとつにはバレエ《蜘蛛(くも)の宴会》(1912年)がある。
《弦楽のためのシンフォニエッタ》は晩年、1934年の作。フランス初の女性指揮者ジャーヌ・エヴラール(1893~1984)から依頼され、1930年結成された史上初の女性オーケストラ、「パリ女性オーケストラ」のために作曲された(この楽団への作品としては、フロラン・シュミットの《ジャニアナ》も有名)。後半2楽章がまず完成し、その後第1楽章が追加された。その第1楽章は律動的でバッハ《ブランデンブルク協奏曲第3番》を思わせる。和弦的で半音階進行も顕著な深い表情の第2楽章から切れ目なく高揚し、躍動する第3楽章へ。本作がもし何らかの女性像をイメージしているなら、それは力強く意志的な眼差(まなざ)しの、自立した女性だろう。

(矢澤孝樹)

作曲年代:1934年
初演:1934年11月19日、ジャーヌ・エヴラール指揮、パリ女性オーケストラ

プーランク/シンフォニエッタ

本公演では2曲の「シンフォニエッタ」が演奏される。「小交響曲」の意味だが、この曲名が音楽史上に現れてくるのは19世紀後半以降だ。つまり、交響曲といえばベートーヴェン以降の大規模で野心的な作品が一般的になってからのち、18世紀なら通常サイズの交響曲だった規模の作品が相対的に「小交響曲(シンフォニエッタ)」と呼ばれることになった。「シンフォニエッタ」はすなわち、そもそも新古典主義的な曲目といえる(もちろん「交響曲の規格外」というべきヤナーチェク作品のような例外もある)。4曲の濃密な交響曲を書いたルーセルの《弦楽のためのシンフォニエッタ》はまさにこの図式が当てはまるが、フランシス・プーランク(1899~1963)の場合はどうか。急進的に語法が変化した時代に生涯調性を手放さなかったプーランクもまた、生来の古典主義者というべきだろうか。
ことはもう少し複雑なようだ。プーランクには諧謔(かいぎゃく)と機知に富んだ「悪童」の面と、《カルメル派修道女の対話》《悲しみの聖母(スターバト・マーテル)》などに聴かれる篤(あつ)い信仰心と深い人間洞察に富む「修道士」の面が同居しており、古典的な形式や語法は、両者をかろうじて共存させるいわば紐帯(ちゅうたい)として機能しているように感じられる。
1947年の作である《シンフォニエッタ》は、一見明快な2管編成の小交響曲の趣ながら、そのような彼の複雑な内面を垣間見せる。そもそも弦楽四重奏曲として構想されながら破棄され、BBCの依頼に応え「交響曲」として再作曲し、出版社の意向を受け現タイトルになったという経緯からも、当初から意識的に新古典主義的な作品として作曲されたとは言い難い。4つの楽章の主題はしばしばバロックから古典派風の旋律線を擬態し、快活な運動性も顕著だが、メランコリーや叙情性が影をさし、気分は頻繁に、急速に入れ替わる。プーランク自身が《人間の声》などの諸作で強く抵抗した第2次世界大戦が終結したあとの解放感のなかで、多面的な自らを定義しようとした試みと解したら、深読みのしすぎだろうか。
第1楽章は冒頭の決然とした主題と叙情的な第2主題によるソナタ形式と取れるが感情的変転が激しく、展開は予断を許さない。第2楽章は無窮動的で諧謔に富んだ主部と曇り空のような中間部(チャイコフスキー《白鳥の湖》の引用らしき楽句も一瞬聴こえる)が対比される。第3楽章では木管と弦が美しく対話するモーツァルト的主題がさらに甘美な主題を交えほのかな官能の熱をたたえるが、第4楽章のストラヴィンスキー《プルチネッラ》的疑似バロックの陽気な喧騒(けんそう)が各楽章の主題的要素を飲み込んでゆく。

(矢澤孝樹)

作曲年代:1947年
初演:1948年10月24日、ロジェ・デゾルミエール指揮、フィルハーモニア管弦楽団

イベール/室内管弦楽のためのディヴェルティスマン

公演の最後にパーヴォ・ヤルヴィはジャック・イベール(1890~1962)の《室内管弦楽のためのディヴェルティスマン》を置いた。これは意表をついた趣向だ。編成、規模共に3曲のなかで最大のプーランクの《シンフォニエッタ》ではなく、管楽器1本ずつの室内管弦楽編成、短い6つの楽章を連ねて約15分で終わるこの作品が最後を務める。
まず作曲者と作品について。イベールはプーランク同様、やはり生涯において終生調性音楽の作曲家であることを貫いた。その意味では新古典主義者ともいえるが、調性はルーセルのような語法と気質の相克や、プーランクのような複雑な内面の反映とは異なり、彼自身の豊かな音楽的ヴィジョンや旋律性を受け止める「器」として最適だったというべきだろう。古典的な形式感に基づく作品以上に《交響組曲「寄港地」》から晩年の《架空の愛へのトロピズム》に至るイメージ豊かな管弦楽作品、劇音楽、映画音楽などにイベールの翼は存分に羽ばたく。
そのなかでこの《ディヴェルティスマン》は「ディヴェルティメント(嬉遊曲)」という、18世紀に多く書かれた娯楽的性格の多楽章作品の形態をとるが、これも新古典主義的意識で書かれたわけではなく、もとは劇音楽だった。1929年にウジェーヌ・ラビッシュの喜劇『イタリアの麦藁(むぎわら)帽子』のために書いた付随音楽から抜粋した組曲である。〈序奏〉〈行列〉〈夜想曲〉〈ワルツ〉〈パレード〉〈終曲〉の6曲からなるが、主人公の青年が結婚式の日に麦藁帽子を取り戻そうとして騒動に巻き込まれる喜劇の内容を彷彿(ほうふつ)とさせる、コミカルな情景の連続だ(〈行列〉でのメンデルスゾーン《結婚行進曲》のパロディ、〈ワルツ〉に闖入(ちんにゅう)する軍楽隊など)。一方、〈夜想曲〉にはイベールならではのロマンティシズムが香る。〈終曲〉は警察署の情景にふさわしくホイッスルが鳴り、ダダイズム的な大騒ぎだ。
3曲を通じて感じられるのは、フランスの作曲家たちと新古典主義との相性の良さだ。「運動」として意識する前に、明晰(めいせき)な知性と精神のありようが自然と古典的な秩序を選択する趣である。そこに「交響曲」の事大主義は希薄で、イベールに至っては交響曲に駆逐されたジャンルがパロディ精神満載で逆襲してくる。物々しいスローガンや歪(ゆが)んだ正義の主張が世界を不安に陥れている現在、フランスの作曲家たちの軽やかな精神の運動(ムーヴマン)に解放の鍵を見つけよう、というのがマエストロの託したメッセージかもしれない。

(矢澤孝樹)

作曲年代:1930年
初演:1930年11月30日、ウラディーミル・ゴルシュマン指揮、パリ交響楽団

ARTISTS出演者

パーヴォ・ヤルヴィさんの画像 指揮パーヴォ・ヤルヴィ

指揮者ネーメ・ヤルヴィを父に持ち、弟のクリスティアンも指揮者という名門一家の出。シンシナティ交響楽団、hr交響楽団(フランクフルト放送交響楽団)、パリ管弦楽団、チューリヒ・トーンハレ管弦楽団といった各地のオーケストラで要職を歴任しており、N響では2015年から昨シーズンまで首席指揮者を務め、2022年9月には名誉指揮者に就任した。また母国エストニアの音楽の発展にも大きく寄与している。
パーヴォの名前を広く世界に知らしめたのは、2004年より芸術監督の任にあるドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団とのベートーヴェンの交響曲演奏だったろう。アーティキュレーションをぴしっと揃え、パンチを効かせて颯爽(さっそう)と駆け抜けるスタイルには、21世紀の幕開けを思わせる斬新さがあった。とはいえ、パーヴォは作品に柔軟にアプローチすることで、膨大なレパートリーを築いてきた指揮者でもある。明晰(めいせき)なサウンドを導き、全体のプロポーションを過不足なく描き出す姿勢には、グローバルな時代のひとつの方向性が示されているように思う。そうしたコスモポリタンとも言うべき音楽性はN響とも共鳴し、後期ロマン派から近現代、エストニアの知られざる作品、さらには武満まで、両者は精緻なアンサンブル、きりっと硬質、クリアな音像で作品の持ち味をスリリングに開示し続けている。今回の来日でも、2020年5月から延期されていたR. シュトラウス・プロをはじめ、北欧・ロシア、フレンチと魅力的な選曲の3つのプログラムを振る。

[江藤光紀/音楽評論家]

PRE-CONCERT CHAMBER MUSIC PERFORMANCE開演前の室内楽

開演前の室内楽

曲目:ラヴェル/弦楽四重奏曲 ヘ長調─第1楽章

出演者

出演者の画像
ヴァイオリン
青木 調
出演者の画像
ヴァイオリン
齋藤麻衣子
出演者の画像
ヴィオラ
小畠茂隆
出演者の画像
チェロ
西山健一

MOVIEムービー

【マエストロ・メッセージ】パーヴォ・ヤルヴィ/4月N響定期公演Cプログラム

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TICKETチケット

定期公演 2022-2023シーズン
Cプログラム

第1981回 定期公演
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NHKホール
Googleマップ
座席表

1回券発売開始日

定期会員先行発売日:2023年3月1日(水)11:00am
定期会員について

一般発売日:2023年3月5日(日)11:00am

チケット購入

料金

S席 A席 B席 C席 D席 E席
一般 7,400円 6,500円 5,200円 4,200円 3,200円 1,600円
ユースチケット 3,500円 3,000円 2,400円 1,900円 1,400円 800円

※価格は税込です。
ユースチケットのご案内(要登録/取り扱いはN響ガイドのみ)
※定期会員の方は一般料金の10%割引となります。また、先行発売をご利用いただけます(取り扱いはWEBチケットN響・N響ガイドのみ)。
※車いす席についてはN響ガイドへお問い合わせください。
※券種により1回券のご用意ができない場合があります。
※当日券販売についてはこちらをご覧ください。
※未就学児のご入場はお断りしています。
※開場前に屋内でお待ちいただくスペースはございません。ご了承ください。

定期会員券
発売開始日

年間会員券 7月18日(月・祝)11:00am
 [定期会員先行発売日: 7月14日(木)11:00am]

シーズン会員券 2023年2月17日(金)11:00am
 [定期会員先行発売日:2023年2月14日(火)11:00am]

ユースチケット

25歳以下の方へのお得なチケットです。

(要登録)

WEBセレクト3+

お好きな公演を3つ以上セレクトすると、1回券がお得になるチケットです。

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お問い合わせ・
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N響ガイド TEL:0570-02-9502

WEBチケットN響

BROADCAST放送予定

EテレEテレクラシック音楽館
「第1981回 定期公演 Cプログラム」

2023年6月11日(日) 9:00PM~11:00PM

曲目: ルーセル/弦楽のためのシンフォニエッタ 作品52
プーランク/シンフォニエッタ
イベール/室内管弦楽のためのディヴェルティスマン

指揮:パーヴォ・ヤルヴィ

収録:2023年4月21日 NHKホール

配信でもご覧いただけます

NHKオンデマンド

※動画配信サービス(有料)/配信期限有り

NHKプラス

※同時配信サービス・登録制/放送後から7日間見逃し番組配信も行われます

主催:NHK / NHK交響楽団

※CプログラムはNHKホール改修工事の終了にともない、今シーズンより会場をNHKホールに戻して開催します
※C-1の開演時刻は7:30pmとさせていただきます

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