ページの本文へ

  1. ホーム
  2. コンサート情報
  3. 定期公演 2022-2023シーズン
  4. Bプログラム
  5. 第1982回 定期公演 Bプログラム

定期公演 2022-2023シーズンBプログラム
第1982回 定期公演 Bプログラム

サントリーホール
Googleマップ 座席表

※約2時間の公演となります(休憩20分あり)。
※やむを得ない理由で出演者や曲目等が変更となる場合や、公演が中止となる場合がございます。公演中止の場合をのぞき、チケット代金の払い戻しはいたしません。
※ご来場の際には感染症予防対策についてのご案内を必ずお読みください。

東京都のイベント開催時チェックリストはこちら

ABOUT THIS CONCERT特徴

コロナ禍、ウクライナ戦争、気候変動による自然災害……現世界のあまりにも無残な在り様を目前にすると、「苦悩を突き抜けて歓喜へ」という物語がむなしく思える。そんな時、本プログラムの3曲に耳を傾けたい。無用な流行に踊らされることなく、あらゆる時代に通底する真(まこと)を見据えながら、人間の本性に厳しく迫ろうとする作曲家の矜持(きょうじ)が清々しく映る。
(神部 智)

PROGRAM曲目

シベリウス/交響曲 第4番 イ短調 作品63

フィンランドの作曲家ジャン・シベリウス(1865~1957)の《交響曲第4番》は、彼が人生上の困難を抱えた時期に取り組まれた大作。第1次世界大戦前夜の1911年4月3日に初演された。
当時のシベリウスを悩ませていたのは、天文学的な額に達した借金と咽喉腫瘍の疾病に伴う健康の悪化だった。幸いなことに、借金は友人カルペランの尽力もあって1910年頃を境に少しずつ減りはじめ、病気の方も手術で回復に転じてはいる。それでもシベリウスは手術後、好物の酒とタバコを一切断たなければならず、数年間に渡り苦しい禁欲生活を送ることになる。内省的な《第4番》は、そうした彼の心境を反映しているのだろう。しかし、この作品におけるシベリウスの潜在意識は「作曲家の個人的な苦悩」よりも、「悲劇的な宿命を帯びた人間存在」そのものに向けられているように見える。
《第4番》の表現主義的な曲調は、後期マーラーや初期シェーンベルクのそれを思わせる。とはいえシベリウスの場合、たとえ自己の内面世界を強烈にえぐり出すような主観的表現であっても、決して端正な筆致を失わない。逆に、ぎりぎりまで研ぎ澄まされたその厳しいフォルム(形式)は、無限の空間に向けて力強く広がる巨大な造形美を生み出しているのである。
交響曲は伝統的な4楽章制に基づく一方、各楽章は従来の図式を下敷きにしながらも独自の構成を示している。不気味なリディア旋法(「ハ─嬰ヘ」のように、増4度の音程が特徴)が曲全体の統一要素となっており、そのため部分的に調性感が希薄である。
第1楽章 テンポ・モルト・モデラート、クワジ・アダージョ、イ短調、4/4拍子。緩徐なテンポのソナタ形式で、再現部が大幅に圧縮されている。作曲者によると、曲の冒頭は「運命のように過酷に」響かなければならない。
第2楽章 アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ、ヘ長調、3/4拍子。フィンランドの清々しい風になびくようなオーボエの楽想が印象的なスケルツォ。最後は謎めいたコーダで唐突に終結する。
第3楽章 イル・テンポ・ラルゴ、嬰ハ短調、4/4拍子。2つの微細なモティーフが少しずつ成長しながら、次第に壮大な音空間を形成していく緩徐楽章。
第4楽章 アレグロ、イ長調、2/2拍子。ロンド・ソナタ形式風の快活なフィナーレ。軽やかなグロッケンシュピールの導入が斬新だが、全体の音調はいぶし銀のように深い。なお演奏によっては、グロッケンシュピールの代わりにテューブラー・ベルが用いられるケースもある。これは出版譜に「グロッケン」と記されたために生じた誤解であり、作曲者はテューブラー・ベルの響きを「あまりにも東洋的過ぎる」として忌避した。

(神部 智)

作曲年代:1909年から1911年にかけて
初演:1911年4月3日、シベリウス指揮、ヘルシンキ・フィルハーモニー管弦楽団

ラフマニノフ/パガニーニの主題による狂詩曲 作品43*

1914年に勃発した第1次世界大戦(1914~1918)は、作曲家として円熟期を迎えていたセルゲイ・ラフマニノフ(1873~1943)のキャリアを一変させることになる。大戦の最中にロシア革命が起こると、300年あまり続いたロマノフ朝が瞬く間に崩壊。その政治的混乱を機にラフマニノフは祖国を離れ、新天地アメリカに活動拠点を移すのである。以後、彼がロシアを訪れることは二度となかった。
アメリカに渡ったラフマニノフはコンサート・ピアニストの仕事に忙しく追われたため、作曲活動に支障をきたすようになる。創作意欲も衰えを見せ始め、望郷の念に駆られた彼は「もう何年もの間、ライ麦や白樺(しらかば)のささやきを聞いていない」と友人で作曲家のニコライ・メトネル(1880~1951)に伝えたという。そうした事情から、1934年にスイスの別荘で手掛けた《パガニーニの主題による狂詩曲》は、ラフマニノフがアメリカ移住後に完成させた数少ない大作のひとつとなった。ピアノ協奏曲風のこの狂詩曲はソリストの超絶技巧が随所に散りばめられた難曲で知られ、ロマンティックな曲調と相まって、ラフマニノフの代表作に位置づけられている。
曲はリズミカルな主題と24の変奏からなる。リストやブラームスの作品でも馴染(なじ)み深いこの有名な主題(旋律)は、イタリアの奇才ニコロ・パガニーニ(1782~1840)の無伴奏ヴァイオリン曲《24の奇想曲》第24番に基づくものである。
短い序奏に続いて、まず第1変奏を配置するという異例の処理が施されているが、これは主題の登場を予示する役目を果たしている。その後オーケストラがイ短調の主題を提示し、第2変奏でピアノが再び主題を奏する。第3変奏以降は、オーケストラとピアノが掛け合いながら主題を多彩に変化させていく。特筆すべきは、第7変奏でグレゴリオ聖歌の《怒りの日》が突然引用されることだ。デモーニッシュな「死」をイメージさせるこの旋律は、第10変奏や最後の第24変奏でも姿を見せる。第12変奏からは主調のイ短調を離れていき、第18変奏で遂に変ニ長調に達すると、ラフマニノフらしい甘美な旋律(主題の転回形)が朗々と奏でられる。第19変奏以降はイ短調に戻り、少しずつエネルギーを増幅させながら壮麗な終結へと導かれていく。

(神部 智)

作曲年代:1934年
初演:1934年11月7日、ラフマニノフのピアノ独奏、レオポルド・ストコフスキー指揮、フィラデルフィア管弦楽団

チャイコフスキー/幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」作品32

ダンテの『神曲』より「地獄篇(へん)」第5歌を題材とした《フランチェスカ・ダ・リミニ》は、1876年にピョートル・チャイコフスキー(1840~1893)が作曲したオーケストラのための幻想曲。当初チャイコフスキーは同題材に基づくオペラを構想したが、「それは全く不可能」と判断し、幻想曲の創作に踏み切った。
「地獄篇」第5歌は、フランチェスカとパオロの悲恋を描いたもの。宿敵との和解のため、ポレンタ家の美しい娘フランチェスカは、マラテスカ家の醜い長男ジョヴァンニと政略結婚させられることになる。しかし彼女を迎えに来たのは、ジョヴァンニの弟で美青年のパウロだった。結婚式のあと、フランチェスカは騙(だま)されたことを知るものの、夫ジョヴァンニを愛することができず、パオロとの密会を続ける。それに激しく嫉妬したジョヴァンニは、怒りに任せて2人を刺し殺してしまう。色情の罪を犯したフランチェスカとパオロの魂は、地獄の嵐の中を永遠にさまようことになる……。
チャイコフスキーは幻想曲の自筆譜冒頭に上のプログラム(物語)を掲載したが、出版の際にそれを全て削除し、文章数行とダンテの詩文からの短い引用に改めている。チャイコフスキーがこの幻想曲で真に向き合おうとしたのは「悲恋の物語」ではなく、「愛欲と嫉妬、苦悩、罪」という全ての人間が抱える宿命的問題であることを聴き手に示したかったからだろう。
幻想曲は重苦しい4/4拍子の導入部で幕を開け、一気に地獄を思わせる過酷な雰囲気に包まれる。ここでは続く主部の動機をわずかに暗示するのみで、調的につかみどころがない。ホ短調の主部から6/8拍子に転じてテンポが急速になると、曲はさらに緊迫感を増していく。この主部は「人間の業」が凝縮された地獄の嵐のようだ。クラリネット・ソロのレチタティーヴォを境に嵐はいったん静まり、中間部へと入る。夢のような「男女の愉悦」が甘く官能的に奏でられる箇所であり、主部との対比が著しい。しかしホルンの合図を機に、再び地獄界へと引きずり込まれてしまう。主部が再現されてそのままコーダに突入し、最後はホ短調主和音の執拗(しつよう)な連打で劇的に幕を下ろす。

(神部 智)

作曲年代:1876年
初演:1877年3月9日、ニコライ・ルビンシュタイン指揮、ロシア音楽協会

[アンコール曲]
4/27:ラヴェル/左手のためのピアノ協奏曲 ― カデンツァ
(ピアノ:マリー・アンジュ・グッチ)

ARTISTS出演者

パーヴォ・ヤルヴィさんの画像 指揮パーヴォ・ヤルヴィ

指揮者ネーメ・ヤルヴィを父に持ち、弟のクリスティアンも指揮者という名門一家の出。シンシナティ交響楽団、hr交響楽団(フランクフルト放送交響楽団)、パリ管弦楽団、チューリヒ・トーンハレ管弦楽団といった各地のオーケストラで要職を歴任しており、N響では2015年から昨シーズンまで首席指揮者を務め、2022年9月には名誉指揮者に就任した。また母国エストニアの音楽の発展にも大きく寄与している。
パーヴォの名前を広く世界に知らしめたのは、2004年より芸術監督の任にあるドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団とのベートーヴェンの交響曲演奏だったろう。アーティキュレーションをぴしっと揃え、パンチを効かせて颯爽(さっそう)と駆け抜けるスタイルには、21世紀の幕開けを思わせる斬新さがあった。とはいえ、パーヴォは作品に柔軟にアプローチすることで、膨大なレパートリーを築いてきた指揮者でもある。明晰(めいせき)なサウンドを導き、全体のプロポーションを過不足なく描き出す姿勢には、グローバルな時代のひとつの方向性が示されているように思う。そうしたコスモポリタンとも言うべき音楽性はN響とも共鳴し、後期ロマン派から近現代、エストニアの知られざる作品、さらには武満まで、両者は精緻なアンサンブル、きりっと硬質、クリアな音像で作品の持ち味をスリリングに開示し続けている。今回の来日でも、2020年5月から延期されていたR. シュトラウス・プロをはじめ、北欧・ロシア、フレンチと魅力的な選曲の3つのプログラムを振る。

[江藤光紀/音楽評論家]

マリー・アンジュ・グッチ*さんの画像 ピアノマリー・アンジュ・グッチ*

1997年、アルバニア生まれ。13歳でパリ国立高等音楽院ピアノ科に入学し、ニコラ・アンゲリッシュに師事。その後、同音楽院の音楽学と分析の分野の博士課程で、またソルボンヌ大学の修士課程でも学んだ。2015年ニューヨークのIKIF国際ピアノコンクール、2018年スイス・ジュネーヴ芸術協会主催のコンクールなどで優勝。7か国語を使いこなし、『ヴァニティ・フェア』誌フランス版に「世界を変える若者」のひとりとして紹介されている。2017年に初のアルバム『鏡 EN MIROIR』をリリースし、フランスの各誌で絶賛された。最近ではパリ管弦楽団、BBC交響楽団、デンマーク国立交響楽団などと共演、2022–23シーズンにはシドニー交響楽団、RAI国立交響楽団、バーゼル室内管弦楽団、ベルギー国立管弦楽団などと共演する。知性と伸びやかさの共存する音楽性の持ち主で、レパートリーもバロックから演奏機会の少ない現代作品まで幅広い。
2018年ラ・フォル・ジュルネ東京のため初来日。N響とは今回が初共演となる。

[高坂はる香/音楽ライター]

MOVIEムービー

【マエストロ・メッセージ】パーヴォ・ヤルヴィ/4月N響定期公演Bプログラム

DOWNLOADダウンロード

TICKETチケット

定期公演 2022-2023シーズン
Bプログラム

第1982回 定期公演
Bプログラム

サントリーホール
Googleマップ
座席表

1回券発売開始日

定期会員先行発売日:2023年3月1日(水)11:00am
定期会員について

一般発売日:2023年3月5日(日)11:00am

チケット購入

料金

S席 A席 B席 C席 D席
一般 9,800円 8,400円 6,700円 5,400円 4,400円
ユースチケット 4,500円 4,000円 3,300円 2,500円 1,800円

ユースチケットのご案内(要登録/取り扱いはN響ガイドのみ)
※定期会員の方は一般料金の10%割引となります。また、先行発売をご利用いただけます(取り扱いはWEBチケットN響・N響ガイドのみ)。
※この公演のお取り扱いは、WEBチケットN響およびN響ガイドのみです。
※車いす席についてはN響ガイドへお問い合わせください。
※券種により1回券のご用意ができない場合があります。
※当日券販売についてはこちらをご覧ください。
※未就学児のご入場はお断りしています。

定期会員券
発売開始日

年間会員券 7月18日(月・祝)11:00am
 [定期会員先行発売日: 7月14日(木)11:00am]

ユースチケット

25歳以下の方へのお得なチケットです。

(要登録)

WEBセレクト3+

お好きな公演を3つ以上セレクトすると、1回券がお得になるチケットです。

WEBチケットN響のみでの発売となります

お問い合わせ・
お申し込み

N響ガイド TEL:0570-02-9502

WEBチケットN響

BROADCAST放送予定

EテレEテレクラシック音楽館
「第1982回 定期公演 Bプログラム」

2023年6月18日(日) 9:00PM~11:00PM

曲目: シベリウス/交響曲 第4番 イ短調 作品63
ラフマニノフ/パガニーニの主題による狂詩曲 作品43*
チャイコフスキー/幻想曲「フランチェスカ・ダ・リミニ」作品32

指揮:パーヴォ・ヤルヴィ

ピアノ:マリー・アンジュ・グッチ*

収録:2023年4月26日 サントリーホール

配信でもご覧いただけます

NHKオンデマンド

※動画配信サービス(有料)/配信期限有り

NHKプラス

※同時配信サービス・登録制/放送後から7日間見逃し番組配信も行われます

主催:NHK / NHK交響楽団

閉じる
公演カレンダーを閉じる