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- 第1980回 定期公演 Aプログラム
※約2時間の公演となります(休憩20分あり)。
※やむを得ない理由で出演者や曲目等が変更となる場合や、公演が中止となる場合がございます。公演中止の場合をのぞき、チケット代金の払い戻しはいたしません。
※ご来場の際には感染症予防対策についてのご案内を必ずお読みください。
ABOUT THIS CONCERT特徴
リヒャルト・シュトラウス(1864~1949)が交響詩の数々によって時代の寵児(ちょうじ)となったのが1890年代、そして1900年代に入ると彼は、オペラの分野でも、《サロメ》や《ばらの騎士》など大ヒットを飛ばした。創作の転機が訪れるのは第1次世界大戦の前後。このころから徐々に彼は、モダニズム最前線に後れを取り始める。そして《ヨセフの伝説》はまさに第1次世界大戦勃発(ぼっぱつ)の直前、そして《アルプス交響曲》は大戦の最中に初演された作品である。
(岡田暁生)
PROGRAM曲目
R. シュトラウス/「ヨセフの伝説」から交響的断章
《エレクトラ》《ばらの騎士》《ナクソス島のアリアドネ》につぐ、オーストリアの作家フーゴー・フォン・ホフマンスタールとシュトラウスとの4つ目の共作。ディアギレフ率いるロシア・バレエ団の委嘱によるもので、シナリオは旧約聖書のエピソードに基づく。裕福な商人ポティファルの妻から誘惑されたヨセフ少年は、それを断ったために監禁されるが、夢の中に現れた天使によって解放されるという物語である。
中東を舞台にした《ヨセフの伝説》の官能的な空気は《サロメ》によく似ている。ただしかつての不協和音は和らげられ、代わって豪華絢爛(けんらん)たる音色の饗宴(きょうえん)が全面に押し出されている。これを同時代の多くの識者は、シュトラウスの創造力の鈍化と受け止めた。例えばイギリスの批評家アーネスト・ニューマンは「亡くなった指導者の葬式に列席しているようだ」と言った。
しかし1914年5月14日の初演は大成功であった。ちょうど1年前の1913年5月に同じロシア・バレエ団がパリで上演したのがストラヴィンスキー《春の祭典》だったことを思えば、シュトラウスがもはや時代の最も過激な作曲家ではなくなりつつあることに、少なからぬ観客が気づいただろうが、それでも曲の開始とともに豪華なメロディで一気に聴き手を虜(とりこ)にするシュトラウスの腕前はまだまだ健在である。本日演奏される交響的断章は最晩年にシュトラウスが編曲したものである。
(岡田暁生)
作曲年代:[バレエ]作曲1912~1914年[交響的断章]1947年
初演:[バレエ]1914年、ロシア・バレエ団、パリ[交響的断章]1949年、フリッツ・ライナーの指揮、シンシナティ
R. シュトラウス/アルプス交響曲 作品64
《サロメ》から《ナクソス島のアリアドネ》に至るオペラの時代をはさんで、1903年の《家庭交響曲》以来シュトラウスが10年ぶりに書いた本格的な交響的作品。しかもかつての交響詩と比べ桁(けた)外れに長大な作品。巨大戦艦にも比すべきこのサイズをシュトラウスは、逆説的なことだが、「形式の細分化」という手段でまとめあげた。作品全体を無数の小さな区画から組み立てるのである。〈夜〉〈日の出〉〈登り道〉〈森に入る〉等々─シュトラウスの交響詩でこれほど多くの短いセクションから出来ている例はない。「セクション」というより「ショット」といった方がいいかもしれない。この作品が成立したころ、すでに映画はオペラや交響曲を駆逐しつつあった。シュトラウス自身も少し後に、《ばらの騎士》の無声映画版を作ったりしている。じっくり腰を据えて長いひとつの場面を展開するのではなく、効果的な短いショットを次々に繰り出す。これは明らかに映画的手法だ。
シュトラウスが「レストランのメニューでも音楽に出来る」と豪語して、音楽による描写能力に絶対的自信をもっていたことは、よく知られている。《アルプス交響曲》はシュトラウスの映像的音楽語法の見本市ともいうべきもので、聴いているだけでストーリーの細部まで追える。1920年代のドイツでは「山岳映画」というジャンルが大流行したが、《アルプス交響曲》はそれを先取りしていたとすらいえる。アルプス登山を豪華に描くこの作品は、シュトラウス自身の10代のころの経験に基づいているといわれる。ツークシュピッツェのふもとにあるガルミッシュに、彼は豪華な別荘をもっていたが、そこの裏山からもう登山道になっていて、シュトラウス自身も山登りが大好きであった。ここで描かれるのは、ドイツ帝国の大ブルジョアの楽しい夏のバカンスの一日である。
ただし初演が第1次世界大戦最中の1915年であったことを考えると、《アルプス交響曲》の底抜けの明るさもまた違ったふうに聞こえてくる。ベルリンでの初演は当時最も注目された大イベントで、わざわざドレスデン宮廷歌劇場管弦楽団をベルリンに客演させて行われ、しかも戦時であるにもかかわらず、シュトラウスには巨万のギャラが払われた。高名な音楽批評家だったパウル・ベッカーは、大戦勃発直後に招集されて西部戦線に投入されたが《アルプス交響曲》初演のまさに当日、戦場で本作のスコアを読みながら、「アルプス交響曲 ある戦場通信」と題された感動的な批評をつづった。「相変わらず豊かで魅力的だが、見紛(みまが)うことなく没落しつつある萎(しぼ)みゆく花の明らかな兆候」を指摘するベッカーは、このエッセイを次のように締めくくる。「私にはこの作品の標題が、作曲者が考えていたのとはまったく別の、そしてはるかに広い意味で、実現されたように思える。下山/衰退─終結部/終焉(しゅうえん)」。ベッカーは間違いなくこの作品に、かつてシュトラウスが体現していた世紀転換期の輝かしいドイツ・ブルジョア文化の終焉の兆候を聞き取ったのである。
(岡田暁生)
作曲年代:1911~1915年
初演:1915年、作曲家自身の指揮、ドレスデン宮廷歌劇場管弦楽団、ベルリン
ARTISTS出演者
指揮パーヴォ・ヤルヴィ
指揮者ネーメ・ヤルヴィを父に持ち、弟のクリスティアンも指揮者という名門一家の出。シンシナティ交響楽団、hr交響楽団(フランクフルト放送交響楽団)、パリ管弦楽団、チューリヒ・トーンハレ管弦楽団といった各地のオーケストラで要職を歴任しており、N響では2015年から昨シーズンまで首席指揮者を務め、2022年9月には名誉指揮者に就任した。また母国エストニアの音楽の発展にも大きく寄与している。
パーヴォの名前を広く世界に知らしめたのは、2004年より芸術監督の任にあるドイツ・カンマーフィルハーモニー管弦楽団とのベートーヴェンの交響曲演奏だったろう。アーティキュレーションをぴしっと揃え、パンチを効かせて颯爽(さっそう)と駆け抜けるスタイルには、21世紀の幕開けを思わせる斬新さがあった。とはいえ、パーヴォは作品に柔軟にアプローチすることで、膨大なレパートリーを築いてきた指揮者でもある。明晰(めいせき)なサウンドを導き、全体のプロポーションを過不足なく描き出す姿勢には、グローバルな時代のひとつの方向性が示されているように思う。そうしたコスモポリタンとも言うべき音楽性はN響とも共鳴し、後期ロマン派から近現代、エストニアの知られざる作品、さらには武満まで、両者は精緻なアンサンブル、きりっと硬質、クリアな音像で作品の持ち味をスリリングに開示し続けている。今回の来日でも、2020年5月から延期されていたR. シュトラウス・プロをはじめ、北欧・ロシア、フレンチと魅力的な選曲の3つのプログラムを振る。
[江藤光紀/音楽評論家]
MOVIEムービー
【マエストロ・メッセージ】パーヴォ・ヤルヴィ/4月N響定期公演Aプログラム
料金
S席 | A席 | B席 | C席 | D席 | E席 | |
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一般 | 9,800円 | 8,400円 | 6,700円 | 5,400円 | 4,400円 | 2,800円 |
ユースチケット | 4,500円 | 4,000円 | 3,300円 | 2,500円 | 1,800円 | 1,400円 |
※価格は税込です。
※ユースチケットのご案内(要登録/取り扱いはN響ガイドのみ)
※定期会員の方は一般料金の10%割引となります。また、先行発売をご利用いただけます(取り扱いはWEBチケットN響・N響ガイドのみ)。
※車いす席についてはN響ガイドへお問い合わせください。
※券種により1回券のご用意ができない場合があります。
※当日券販売についてはこちらをご覧ください。
※未就学児のご入場はお断りしています。
※開場前に屋内でお待ちいただくスペースはございません。ご了承ください。
定期会員券
発売開始日
年間会員券 7月18日(月・祝)11:00am
[定期会員先行発売日: 7月14日(木)11:00am]
シーズン会員券 2023年2月17日(金)11:00am
[定期会員先行発売日: 2023年2月14日(火)11:00am]
主催:NHK / NHK交響楽団
※AプログラムはNHKホール改修工事の終了にともない、今シーズンより会場をNHKホールに戻して開催します
※A-2の開演時刻は2:00pmとさせていただきます