明電舎 presents N響名曲コンサート2022

古い伝統や土着の文化に心を寄せ、作品にそのエッセンスをとりいれながら、オリジナリティあふれる芸術作品に昇華させた作曲家たち。彼らのオーケストラ作品は、心に沁みる旋律とハーモニー、そして壮大なスケールを持つ。
今回、N響名曲コンサートで演奏されるのは、ヨーロッパの社会が大きく変化した19世紀の終わりに書かれた作品だ。
オープニングを飾るのは、シベリウスの《フィンランディア》。19世紀末、隣国ロシアの支配に苦しんだフィンランドが独立に向けて奮起する中、愛国心を託して書かれた。第二の国歌とされるフィンランディア賛歌の旋律は、どこかなつかしく、胸を打つ。
《スコットランド幻想曲》は、優れたメロディーメーカーだったドイツの作曲家ブルッフが、スコットランド民謡も用いながら書き上げた代表作。ソリストには、幼少期からアメリカ、ドイツで学び、2019年チャイコフスキー国際音楽コンクールで入賞して注目を集めたヴァイオリニスト、金川真弓を迎える。
そして後半は、ドイツ後期ロマン派を代表するブラームスが手がけた最後の交響曲にして、自ら最高傑作と評した《交響曲第4番》。ドイツ音楽の伝統とブラームスの革新性が交わり生まれた、美しく重厚な響きが広がる。
指揮は沼尻竜典。ブラームスの生地から近い北ドイツのリューベック歌劇場で音楽総監督をつとめた経験もあり、ドイツものはじめ幅広いレパートリーで生きた音楽を届ける指揮者だ。
コンサートホールに響きわたるのは、偉大な作曲家たちの熱い想い。オーケストラが生み出すエネルギーを、ぜひ会場で体感しよう。

高坂はる香（こうさか　はるか／音楽ライター）