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2027年1月主催公演のプログラムについて ~公演企画担当者から

公演情報2026年10月 9日

ルイージと声楽界の至宝たちによる、ワーグナーとオペレッタのニューイヤーコンサート

2027年1月以降、[Bプログラム]はしばらくお休みして、その間に特別公演をお送りする。せっかくなので普段あまりやらない企画を、ということで、1月はオペラ・アリアのガラ・コンサートである。「オペラを得意とするファビオ・ルイージの指揮で、いつかこういうプログラムを」というリクエストを、以前から多く頂いていた。豪華ソリスト2人を招いてのコンサートは、創立100年記念の一環でもある。
ソプラノのカミラ・ニールンドと、テノールのクラウス・フロリアン・フォークトは、現代を代表するオペラ歌手であり、特にワーグナーの歌唱においては絶対的とも言える評価を確立している。中でもニールンドが演じる《タンホイザー》のエリーザベトや、《ワルキューレ》のジークリンデ、フォークトの《ローエングリン》などは、彼らの最高の当たり役で、その名アリアが次々に聴けるのは、贅沢この上ない。
前半を締めくくるのは、《トリスタンとイゾルデ》第2幕のハイライト〈愛の夜よ、とばりを降ろせ〉。いつ果てるとも知れないデュエットが、聴き手を陶酔の極致へと導くだろう。
実は2人から、かなり長い希望曲のリストが届いたのだが、マエストロとも相談し、涙を呑んで数曲に絞り込んだ。密度の濃い時間になること、請け合いである。



後半はがらりと雰囲気を変えて、新年にふさわしいウィンナ・オペレッタの世界。
レハールとカールマーンはどちらも19世紀後半、オーストリア・ハンガリー帝国の一部だったハンガリーの小都市に生まれた。ヨハン・シュトラウスII世も、遡ればハンガリーにルーツを持つと言われる。そのせいもあるのか、《こうもり「チャールダーシュ」》や《メリー・ウィドー「ヴィリアの歌」》は、帝国の辺境あるいは周辺地域への郷愁を歌ったものだ。甘美な旋律の背後に、ハプスブルク帝国の文化の重層性を感じ取ることができよう。
後半の締めは《ほほえみの国》の名デュエット《私たちの心に誰が愛を沈めたのか》。官能的な愛の歌でありながら、どことなく破局への予感が兆している点で、この曲は《トリスタンとイゾルデ》のパラフレーズとも言える。sinken(沈む)、senken(沈める)がそれぞれのキーワードになっていることを意識した選曲でもある。



創立100年記念 N響ニューイヤーコンサート(NHKホール)
2027年1月10日(日)3:00pm
2027年1月11日(月・祝)3:00pm



指揮 : ファビオ・ルイージ
ソプラノ : カミラ・ニールンド◇
テノール : クラウス・フロリアン・フォークト◆

ワーグナー/歌劇「リエンチ」序曲
ワーグナー/楽劇「ワルキューレ」─ジークムントの愛の歌「冬の嵐は過ぎ去り」◆
ワーグナー/楽劇「ワルキューレ」─「きみこそは春」◇
ワーグナー/歌劇「ローエングリン」─聖杯の物語「はるかな国に」◆
ワーグナー/歌劇「タンホイザー」─「おごそかなこの広間よ」◇
ワーグナー/楽劇「トリスタンとイゾルデ」─「愛の夜よ、とばりを降ろせ」◇◆
J. シュトラウスII世/喜歌劇「こうもり」─序曲、チャールダーシュ「ふるさとの調べよ」◇
レハール/喜歌劇「ほほえみの国」─「きみはわが心のすべて」◆
レハール/喜歌劇「メリー・ウィドー」─「ヴィリアの歌」◇
カールマーン/喜歌劇「伯爵夫人マリーツァ」─「ウィーンによろしく」◆
J. シュトラウスII世/皇帝円舞曲 作品437
レハール/喜歌劇「ほほえみの国」─「私たちの心に誰が愛を沈めたのか」◇◆


「マーラー・フェスティバル」を経て、ルイージ&N響が取り組む7作目のマーラー《第9番》

20世紀初頭のウィーンでは、オペレッタが盛んに上演されたが、[Aプログラム]のマーラー《交響曲第9番》が同地で初演されたのも、ちょうど同じ頃である。
ルイージがN響とマーラーの交響曲を演奏するのは、首席指揮者就任前も含めると、これで7曲目。任期のゴールも見えてきた今、いよいよ最晩年の傑作に挑む。
ルイージがマーラーと出会ったのは15歳。故郷のジェノヴァで、《第5番》のコンサートに行き、すっかり虜になったという。それ以来、マーラーの音楽を聴き、スコアを繰り返し研究し、指揮することが、人生の最大の楽しみの一つになった。
「マーラーは、魂の奥深くに入り込んでくる。その音楽を体験することは、強力なセラピーのようなものだ。終わると浄化された気持ちになる。」
かつてインタビューでルイージが述べた言葉は、マーラーに取りつかれた多くのファンに共通する思いではなかろうか。
演奏に80分以上を要する《第9番》も、壮大な「魂の探求の旅」と言えよう。マーラーの死の前年に完成したこの曲は、あえぐような第2ヴァイオリンの主題に始まり、消え入るように終わるアダージョの終楽章まで、全曲、別れへの予感に満ちている。
2022年に《第9番》を指揮したブロムシュテットは、別れと言っても、これは愛する者への惜別の辞であり、今まで過ごした幸福な時間を回想するような音楽である点を強調していた。
《第9番》は、ルイージにどのように映るのだろう。これまで指揮してきたマーラーの交響曲がそうであったように、粗野なレントラー舞曲やアイロニーに富んだブルレスケなども含めて、独自の美意識を細部まで徹底させた演奏になるのだろうか。
2025年のマーラー・フェスティバルで指揮した《第3番》と《第4番》、2026年の《第5番》と《第2番》からもわかる通り、半世紀以上に及ぶ彼の“マーラー熱”は、ますます高まりつつあるようだ。



Aプログラム(NHKホール)
2027年1月16日(土)6:00pm
2027年1月17日(日) 2:00pm


指揮:ファビオ・ルイージ

マーラー/交響曲 第9番ニ長調


ベートーヴェン「ピアノ協奏曲全曲演奏」始動!ニルセン最後の交響曲《第6番》も

[Cプログラム]では、1月から6月にかけて、ベートーヴェンの没後200年にちなんで、5つのピアノ協奏曲を順番に演奏する。最初は《ピアノ協奏曲第1番》。実際には《第2番》のあとに作曲された。
アレッサンドロ・タヴェルナは、ルイージが高く評価するピアニストの一人で、2024年にも彼の提案により、急遽代役として招聘したことがある。華やかなパフォーマンスで聴衆を酔わせる、といったタイプではないが、技術が常に安定していて、全体の流れも無理なく自然。豊かな詩情にも事欠かない。ルイージの音楽性と合うのも納得できる。
主調のハ長調から遠く隔たった変イ長調の第2楽章では、前回弾いたシューマンがそうだったように、私たちを夢心地の別世界に誘ってくれるだろう。

ベートーヴェンの創作は一大革命だったが、特に彼の交響曲が、後世の作曲家に及ぼした影響は計り知れない。ピアノ協奏曲と組み合わせるのは、ベートーヴェンの衣鉢を受け継ぎながら独自の語法を見出した、ヨーロッパ各地の“シンフォニスト”たちの作品である。
20世紀前半のデンマークで活躍したニルセンもその一人。6つの交響曲はすべて、誰にも真似できない異彩を放っているが、最後の交響曲である《第6番「シンフォニア・センプリーチェ」》は一段とユニークだ。“シンプル”という意味の標題通り、重厚長大路線とは正反対の、平明な筆致で書かれている。特に、打楽器と木管楽器、トロンボーンだけで演奏される第2楽章の、人を食ったようなユーモアの味わいは格別である。
デンマーク国立交響楽団の首席指揮者でもあるルイージにとって、ニルセンはなじみの深い作曲家であり、これまでにもN響と《第2番》《第4番》を演奏してきた。

1曲目にもデンマークの作品を置くことにした。ソレンセンの《夕暮れの大地》は、ちょうど10年前の2017年に作曲された。
幼い頃に体験した、静かな野原に夕日が差す故郷・シェラン島の原風景と、人工的な光がひらめく大都会ニューヨークの黄昏時。対照的な2つの幻影が交錯し、豊かなイメージが広がっていく。世界初演の際、そのスコアは「まるで宝石細工のよう」と絶賛された。



Cプログラム(NHKホール)
2027年1月22日(金)7:00pm
2027年1月23日(土)2:00pm


指揮:ファビオ・ルイージ
ピアノ:アレッサンドロ・タヴェルナ

― ベートーヴェン没後200年 ピアノ協奏曲全曲演奏1 ―
ソレンセン/夕暮れの大地(2017)
ベートーヴェン/ピアノ協奏曲 第1番 ハ長調 作品15
ニルセン/交響曲 第6番「シンフォニア・センプリーチェ」



[西川彰一/NHK交響楽団 芸術主幹]

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