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2026年12月定期公演のプログラムについて ~公演企画担当者から
公演情報2026年10月 9日
四半世紀の時を経て集うアルゲリッチとデュトワ、ふたりの“ラヴェル愛”
[Aプログラム]には、世界最高峰のピアニスト、マルタ・アルゲリッチが、元夫のシャルル・デュトワとともに出演する。2人は私生活での関係を解消した後も、アーティストとして信頼しあい、折に触れて共演の機会を設けてきた。オーケストラを巧みにコントロールしながら、ソリストの自発性や呼吸を尊重してくれるデュトワは、アルゲリッチにとって理想的な指揮者の1人、ということなのだろう。海外ツアーを除くと、2人が東京でN響のステージに立つのは、1996年のショパン《第1番》以来、30年ぶりとなる。
アルゲリッチは長いキャリアを通じて、ラヴェルのほぼ全ての作品に取り組んできた。彼女がユーモアを込めて「ラヴェルも私のことを気に入っているはず」というくらい、運命的な結びつきを自覚する作曲家だ。
《ピアノ協奏曲》も、デビュー間もない1967年に、アバド指揮、ベルリン・フィルと録音しているが、これはこの曲の代表的名盤として、不動の地位を確立している。
一方のデュトワも、ラヴェルへの思い入れでは負けていない。《ダフニスとクロエ》を中心とした昨年のオール・ラヴェル・プログラムでは、音色のグラデーションの美しさに、思わずため息が漏れた。
そういえば何年か前、デュトワの誘いに応じたアルゲリッチがラヴェルの家を訪れ、そこにあるピアノで《協奏曲》の一部を弾いていたら、警備員に締め出しを食らったという珍事件もあった。
そんな“ラヴェル愛”あふれる2人が、一緒にこの曲を演奏するのは、もしかしたら最後になるかもしれない。貴重なチャンスを逃すわけにはいくまい。
《三角帽子》は、ラヴェルと親交の深かったファリャの代表作で、《第2番》はバレエ終盤の華やかな音楽を主体に編まれている。ベースになっているのは、セギディーリャやホタといったスペインの民俗舞曲。目まぐるしく変わるリズムやアクセントの処理、鮮やかな色彩感などに、デュトワらしさが表れるだろう。
ベルリオーズ《幻想交響曲》は、言わずと知れたデュトワの十八番である。常任指揮者の就任記念演奏会や3度の海外ツアーなど、ここぞというタイミングを中心に、N響とは通算17回も演奏してきた。本人としては、もう十分やり切ったという思いもあるようだが、一時代を築いた名誉音楽監督と100周年を共に祝うため、敢えて再びお願いすることにした。“黄金の組み合わせ”は、何度聴いてもよいものである。
周囲に迎合することなく、自分の芸術を追求するマエストロの姿勢は、破天荒な音楽を生み出したベルリオーズに重なるような気がしてならない。

※ 本公演は12月定期公演Aプログラムとして開催いたします。
指揮:シャルル・デュトワ
ピアノ:マルタ・アルゲリッチ
― N響100年特別企画 ―
ファリャ/バレエ組曲「三角帽子」第2番
ラヴェル/ピアノ協奏曲ト長調
ベルリオーズ/幻想交響曲 作品14
デュトワが追求するリズムの推進力で聴く、ベートーヴェン《第7番》《第4番》
[Cプログラム]は、縁の深い指揮者たちと演奏するベートーヴェン交響曲シリーズの第4回。ラヴェルやベルリオーズと違って、ベートーヴェンはデュトワの最適のレパートリーとは言い難いかもしれない。事実、彼がこれまでN響と演奏したのは、《第9》を除くと、《第5番》と《第7番》に限られる。ドイツ音楽が本流であるN響のタイトル指揮者としては、かなり例外的なことである。だが裏を返せば、これら2曲には相応の自信を持っているということになろう。
デュトワのスタイルを考えれば、それも十分に納得のいくことだ。《交響曲第7番》では、同じ音を畳みかけながら、もっぱらリズムの推進力で音楽が展開されていく。オーケストラのドライブに長けたデュトワの棒は、曲の命であるリズムを損ねることなく、一貫性のある大きな流れを生み出していくことだろう。
デュトワは、ハイドンやプロコフィエフの《古典交響曲》など、小ぶりでウィットに富んだ曲も得意にしているが、その意味では《交響曲第4番》も、同じカテゴリーに収まる作品と言えそうだ。
シューマンはこの曲を「北欧の巨人(《英雄》と《運命》)に挟まれたギリシャの乙女」と評し、かつては前後の大曲の息抜きとして書かれたように言われた時代もある。だが、献呈先の貴族の好みに、ベートーヴェンが柔軟に対応したと見るべきだろう。フルートが1本だけなのも、初演が想定されていた地方の宮廷楽団の実情に合わせたようである。
デュトワ持ち前の機動力が生かされた演奏を期待したい。《第7番》も同様だが、木管が主役となる第3楽章トリオの音色の配合には、マエストロの繊細な感覚が発揮されそうだ。

Cプログラム(NHKホール)
2026年12月4日(金)7:00pm
2026年12月5日(土)2:00pm
指揮:シャルル・デュトワ
― N響100年特別企画 ベートーヴェン交響曲全曲演奏4 ―
ベートーヴェン/交響曲 第4番 変ロ長調 作品60
ベートーヴェン/交響曲 第7番イ長調 作品92
N響は2023年6月にも、彼の新作《スーパーオーガニズム》を世界初演している。オーケストラを蜂や蟻などのコロニーになぞらえ、個々の奏者の独立した動きが、一つの生命体を形作るという発想のもとに書かれた曲で、各自がわざとタイミングをずらして演奏することで、巨大なうねりが起きる様子は圧巻だった。日本では今年2月にも、ヴァイオリン独奏のための《アプリボワーズ・モア》が、諏訪内晶子によって演奏されている。
スルンカはこれらの作品を通じて、白か黒かの二項対立ではなく、その中間に広がる、どちらともつかない領域に意識を向けようとしている。その姿勢はまるで、デジタル化社会や、極端な言説がまかり通る世の中へのアンチテーゼのようにも思える。
《スーパーオーガニズム》で、“あいまいさ”を象徴するように響いた2台のアコーディオンが、《煙》でも使われる。独奏チェロとオーケストラの関係にも、シンプルな掛け合いに留まらない仕掛けが施されるのではなかろうか。
ソリストのニコラ・アルトシュテットは、スルンカの推薦による。古楽から現代曲まで幅広いジャンルをカバーする名手が、研ぎ澄まされた感性で、出来たての作品のエッセンスを伝えてくれるだろう。
指揮のマキシム・エメリャニチェフは、今回がN響デビューとなる。鍵盤楽器奏者としての顔も持ち、アルトシュテットとは早くから室内楽で共演してきた。
スコットランド室内管弦楽団の首席指揮者であるエメリャニチェフにとって、《交響曲第3番「スコットランド」》は、特別な意味を持つ曲であろう。
同オーケストラとの録音では、ヴィブラートを抑えた弦が、静かに語り始める。まるでソロ楽器のレチタティーヴォのようだ。この曲は、スコットランドの首府エディンバラを訪れたメンデルスゾーンが、荒れ果てた礼拝堂を目にして着想したというが、情景の描写というよりも、そこにたたずむ人の詠嘆が聞こえてくるような歌い回しである。
バロック音楽やモーツァルトなどの古典は、エメリャニチェフの主要レパートリー。《歌劇「魔笛」序曲》の荘重な和音とともに、コンサートは始まる。

2026年12月4日(金)7:00pm
2026年12月5日(土)2:00pm
指揮:シャルル・デュトワ
― N響100年特別企画 ベートーヴェン交響曲全曲演奏4 ―
ベートーヴェン/交響曲 第4番 変ロ長調 作品60
ベートーヴェン/交響曲 第7番イ長調 作品92
才人エメリャニチェフが命を吹き込む、100年記念委嘱作と《スコットランド》
[Bプログラム]も、創立100年に関連しての企画である。最も注目される現代作曲家の一人、チェコのスルンカに新作を委嘱した。N響の世界初演に続いて、ヨーロッパ各地でも再演される予定である。もともとは和楽器を使った協奏曲を書いてほしいと依頼したのだが、「興味はあるが、楽器の特質を理解するのに時間を要する」という返事で、紆余曲折を経た末、《煙―チェロとオーケストラのための》に落ち着いた。N響は2023年6月にも、彼の新作《スーパーオーガニズム》を世界初演している。オーケストラを蜂や蟻などのコロニーになぞらえ、個々の奏者の独立した動きが、一つの生命体を形作るという発想のもとに書かれた曲で、各自がわざとタイミングをずらして演奏することで、巨大なうねりが起きる様子は圧巻だった。日本では今年2月にも、ヴァイオリン独奏のための《アプリボワーズ・モア》が、諏訪内晶子によって演奏されている。
スルンカはこれらの作品を通じて、白か黒かの二項対立ではなく、その中間に広がる、どちらともつかない領域に意識を向けようとしている。その姿勢はまるで、デジタル化社会や、極端な言説がまかり通る世の中へのアンチテーゼのようにも思える。
《スーパーオーガニズム》で、“あいまいさ”を象徴するように響いた2台のアコーディオンが、《煙》でも使われる。独奏チェロとオーケストラの関係にも、シンプルな掛け合いに留まらない仕掛けが施されるのではなかろうか。
ソリストのニコラ・アルトシュテットは、スルンカの推薦による。古楽から現代曲まで幅広いジャンルをカバーする名手が、研ぎ澄まされた感性で、出来たての作品のエッセンスを伝えてくれるだろう。
指揮のマキシム・エメリャニチェフは、今回がN響デビューとなる。鍵盤楽器奏者としての顔も持ち、アルトシュテットとは早くから室内楽で共演してきた。
スコットランド室内管弦楽団の首席指揮者であるエメリャニチェフにとって、《交響曲第3番「スコットランド」》は、特別な意味を持つ曲であろう。
同オーケストラとの録音では、ヴィブラートを抑えた弦が、静かに語り始める。まるでソロ楽器のレチタティーヴォのようだ。この曲は、スコットランドの首府エディンバラを訪れたメンデルスゾーンが、荒れ果てた礼拝堂を目にして着想したというが、情景の描写というよりも、そこにたたずむ人の詠嘆が聞こえてくるような歌い回しである。
バロック音楽やモーツァルトなどの古典は、エメリャニチェフの主要レパートリー。《歌劇「魔笛」序曲》の荘重な和音とともに、コンサートは始まる。

Bプログラム(サントリーホール)
2026年12月10日(木)7:00pm
2026年12月11日(金)7:00pm
指揮:マキシム・エメリャニチェフ
チェロ:ニコラ・アルトシュテット
モーツァルト/歌劇「魔笛」序曲
スルンカ/煙 ─ チェロとオーケストラのための[NHK交響楽団100年記念委嘱作品/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 国際共同委嘱/世界初演]
メンデルスゾーン/交響曲 第3番イ短調 作品56「スコットランド」
[西川彰一/NHK交響楽団 芸術主幹]
2026年12月10日(木)7:00pm
2026年12月11日(金)7:00pm
指揮:マキシム・エメリャニチェフ
チェロ:ニコラ・アルトシュテット
モーツァルト/歌劇「魔笛」序曲
スルンカ/煙 ─ チェロとオーケストラのための[NHK交響楽団100年記念委嘱作品/チェコ・フィルハーモニー管弦楽団 国際共同委嘱/世界初演]
メンデルスゾーン/交響曲 第3番イ短調 作品56「スコットランド」
[西川彰一/NHK交響楽団 芸術主幹]
