チャイコフスキー (1840 - 1893)

弦楽セレナード ハ長調 作品48

 この曲は、1880年秋、わずか1か月ほどの間に完成された。チャイコフスキーはこの曲を、興に乗って一気に書き上げたようで、自己批判の強い彼には珍しく「この作品は感情に満ちたものであり、それゆえ真の価値を失わないものです」とまで書いている。また彼は、この曲の第1楽章について「モーツァルトへのオマージュで、彼の様式の模倣を意図しています」とも書いた。実際には、聴けばわかる通り、音楽そのものは「模倣」というほどモーツァルト風ではないが、優美で明るい雰囲気には彼のモーツァルト観がいくらか反映していると思われる。

第1楽章〈ソナチネの形式の小品〉アンダンテ・ノン・トロッポ―アレグロ・モデラート ハ長調。印象的な序奏のあと、軽快な2つの主題が提示される。ソナチネでよく使われる、展開部のないソナタ形式を採用している。
第2楽章〈ワルツ〉 モデラート(テンポ・ディ・ヴァルス) ト長調。このワルツは初演時からアンコールされるほどの人気だった。現在でもしばしば単独で演奏される。
第3楽章〈エレジー〉 ラルゲット・エレジアーコ ニ長調。夢見るような序奏のあと、ノスタルジックな歌が歌われる。珍しい長調のエレジー(哀歌)だ。
第4楽章〈ロシア風の主題による終曲〉 アンダンテ―アレグロ・コン・スピーリト ト長調―ハ長調。遅い序奏にはボルガの舟歌の旋律が用いられている。主部は、短い音型を繰り返す舞曲風の主題を第1主題とするソナタ形式。大詰めには全曲冒頭の主題が再登場する。

作曲年代:1880年9月21日~10月22日(旧ロシア暦 9月9日~10月10日)
初演:1881年10月30日(旧ロシア暦10月18日)、サンクトペテルブルク、エドゥアルト・ナプラヴニク指揮、ロシア音楽協会演奏会

(増田良介)